自由が丘ミューズスクエアが9月17日開業、約100年ぶりの都市機能更新、59店を擁する駅前複合施設
2026.09.18
自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合と、参加組合員のヒューリック、鹿島建設は9月17日、「JIYUGAOKA MUSE SQUARE(自由が丘ミューズスクエア)」(東京・目黒)をグランドオープンした。東急電鉄東横線、大井町線の自由が丘駅の正面、改札を出て最初に目に入る一等地に建つ。
自由が丘の街は1927(昭和2)年の東横線開通以来約100年の歴史を重ねてきたが、この間、駅前の都市機能はほとんど更新されてこなかった。建物の老朽化と道路の狭さ、そこをバスが通る歩車混在という積年の課題を、権利者30人あまりが10年以上をかけてまとめ上げた第一種市街地再開発事業によって解決したのが本施設である。
組合の岡田一弥理事長は、「幸いなことに、全国の商店街が非常に苦戦している中で、自由が丘は長い目で見ればずっと右肩上がりを続けてきた街かもしれない」とした上で、東急電鉄以外の路線との相互直通運転の進展により池袋や新宿、都心の各エリアと広域の地域間競争をしなければならない立場になったとも強調。本事業を次の100年に向けたスタートと位置づけた。参加組合員のヒューリック側も、近隣の二子玉川や武蔵小杉で大規模な開発が進む中で自由が丘は転換期にあったとの認識を示した。
施設は地上15階地下3階、高さ約60m。施行区域は約0.5ha、敷地面積は約4000㎡、延べ床面積は約4万6000㎡に及ぶ。低層の地下1階から5階までを商業施設とし、6階にオフィス、その上層に170戸の賃貸住宅を積む構成だ。6階には、従前この地で営業していたみずほ銀行の店舗を集約した。同行の開業は11月ごろを予定するという。
自由が丘にこれまで存在しなかったボリュームの建物であるため、低層部は街に顔を向けつつ高層部を駅前広場側から後退させ、水平フィン(水平方向に取り付けた部材)による統一デザインで「塊感」をやわらげたという。

商業施設の店舗数は59店、店舗面積は約1万1000㎡。駅前ではあるが、商業用の駐車場は69台、駐輪場は361台を備える。商業運営は住商アーバン開発が担当する。施設名称は自由が丘のシンボルである自由の女神像に由来し、女神を意味する「MUSE」を冠した。ロゴは女神像の翼をモチーフに、頭文字のMを3本のラインに見たてた上で、それぞれが過去、現在、未来を表すようにした。
再開発にあわせて整備された地区施設も本事業の要である。都市計画道路46号線を先行整備して歩車分離を進めた他、カトレア通り、女神通り沿いには2.6mの歩行者通路を設けた。敷地内には駅を中心に人が集散する貫通通路を通し、始発から終電まで開放する。また、自由が丘の狭い道路では路上での荷さばきが常態化していたため、周辺の商店も使える地域荷さばき場を4台分確保した。
さらに電柱は可能な限り地中化し、1階部分の壁面を後退させて1.4mのにぎわい環境空間を歩行者通路沿いに整備している。防災面では老朽建物の共同化による不燃化に加え、防災備蓄倉庫と自家発電設備を整備。4階に入る自由が丘商店街振興組合の事務所は、災害時の避難誘導の担い手となる活動拠点としても位置づけられている。
商圏は1次商圏の2km圏と2次商圏の3km圏を基本商圏の柱に据え、5km圏および鉄道10分圏を戦略商圏として日常的な来館を狙う。1次商圏は食物販やカフェを高頻度で利用する層、2次商圏は月3、4回程度の利用を想定する。大型商業施設を抱える二子玉川駅と武蔵小杉駅に挟まれながら、3km圏内が大型商業施設の空白エリアである点を突く構図だ。
ターゲットはメインに生活レベルと情報感度の高い周辺エリア居住者を置き、年収1000万円程度の層を中心に据える。サブターゲットには自由が丘周辺に住む資産家富裕層と、ライフスタイルの充実を重視する年収700〜800万円程度の沿線居住者を想定。デイリー要素と飲食利用で集客する組み立てとした。
企画コンセプトは「JIYUGAOKA FIRST -自由が丘らしい本質的な価値の追求-」。マーチャンダイジングコンセプトには「洗練された高感度“FINE QUALITY LIFE”」を掲げる。ただし、「高感度」と掲げるものの決して敷居の高い高級路線を目指すのではなく、肩肘を張らずに自然体でリラックスして楽しめる街でありたいともいう。
日常から著しく逸脱しない、それでいて「この街にそういう店があったら良かったのに」と思わせる業種を、地権者と相談しながらリーシングしてきたという。営業戦略としては、上質でゆとりあるライフスタイルの提案、街のランドマーク化、そして「ハレの日」利用機会の創出による施設ファンづくりの3点を置く。
各階にもコンセプトを設定していて、まず地下1階は「GOOD DAILY LIFE」。明治屋自由が丘ストアーとマツモトキヨシを核に、食から日用品、美容、健康までを集積した。明治屋は自由が丘エリア初出店で、売場面積約217坪のプレミアムスーパーマーケット(SM)。

マツモトキヨシの営業時間は9時〜22時で、館内の物販店舗の中では最も長い。最も近い同駅北口の自由が丘北口駅前店(東京・目黒)が日用品や食品をデイリー寄りにそろえているのに対し、同店は目の前にSMが入ることから食品は飲料など一部にとどめ、得意とする医薬品と化粧品を強化したという。

同社としても自由が丘周辺は世帯年収が高く、比較的若い世代も多い人口増エリアであり、マツキヨココカラ&カンパニーグループとしても強化しているエリアだとする。同じく西口側の至近にはココカラファイン自由が丘店(東京・目黒)もあり、3店でドミナント強化にもつなげる意向。今回の施設では始発から終電まで貫通通路が開くことで駅北側と南側の人の流れが変わることにも期待を寄せる。

1階は「QUALITY LIFE」。施設の顔としてトレンドを発信するフロアで、自由が丘の老舗と国内外の人気ブランドが並ぶ。地権者として従前からこの地で営業してきた時計、眼鏡、宝飾専門の自由が丘一誠堂(1932年創業)と、1933年開店で長い歴史を持つ老舗洋菓子店の自由が丘モンブランが、いずれも路面に顔を出す形で戻った。



一誠堂は施設内で唯一2フロアに渡る店舗で、正面には長年自由が丘の時を刻んできたレリーフ入り時計を据える。他にUNITED ARROWS WOMEN’S STORE、LOISIR、Cosme Kitchen、Déclic、Theory、PIERRE MARCOLINI、VANILLABEANSなどが並び、横浜元町のパティスリーパブロフと自家製パン、自家焙煎コーヒーのBread&Coffee IKEDAYAMAがエリア初出店、京都祇園に本店を構える「ににぎ」が新フォーマットで出店する。ニホンドウ漢方ブティック、FLEURISTE BON MARCHEも同フロアに入る。

2階は「ENJOY HOBBY LIFE」。MICA & DEAL、エーグル、maison de soil Plus、かぐれといったファッションに、MARKS&WEB、プラスダイアナ、ACE Bags & Luggageが加わる。家具・インテリアのRe:CENOは商業施設初出店、レディスのMAQWELはエリア初出店となる。ネイルのSPANAIL、エステティックTBCといったサービス業態も配した。
3階は「ESSENTIAL LIFE」。生活雑貨、文具、玩具とクリニックが同居する構成で、ハンズ、ホットマン、Forma、アトリエニキティキ、HANSEL & GRETEL、XEXYMIXが並ぶ。LIVING HOUSE / SEMPRE editは新フォーマット。飲食、カフェ機能としてCAFÉ AUX BACCHANALESとNODERIUM/SOHOLM CAFÉ、また、クリニックでは自由が丘フロントクリニック、徳誠会歯科、矯正歯科の他、コンタクトレンズのMenicon Miruが出店。
ハンズ 自由が丘店の店舗面積は約482㎡、営業面積は約380㎡でハンズとしては小型。直近の7月まで4km弱離れた武蔵小杉駅直結の施設で小型店のハンズビーを営業していた他、自由が丘駅近辺では22年まで駅の反対側の施設に同じくハンズビーを展開していたこともあって、今回、自由が丘エリアに標準フォーマットでの再出店となる。
ただ、標準フォーマットではあるが、面積が限られることからヘルス&ビューティとステーショナリーを軸に、ハウスウェアを加え、さらにギフトに大きく特化した商品構成となった。アイテム数は1万6400。アイテムとしては地下1階のマツモトキヨシと競合する部分もあるが、ハンズとしてはラッピングを2種類に増やした他、色も従来の「ハンズグリーン」から「ベージュ」を基調としたものに代えるなど、ドラッグストアと重なるアイテムをギフト提案で差別化する構えだ。



4階は「NATURAL LIFE」。SHARE LOUNGE/スターバックスの他、叙々苑、AGIO、香華園、鮨 Yasuke 潮彩といった飲食を集積。ここにも地権者店舗が戻っており、1934年創業のそば処 自由が丘薮伊豆が出店した。雑貨のホッチポッチ、はちみつ専門の杉養蜂園に加え、産業能率大学のラウンジ、そして自由が丘商店街振興組合の事務所も4階に入る。同組合は自由が丘の12商店街が1963年に単一組織として発足したもので、会員数は約1300軒にのぼる国内最大級の商店街組織だ。
併せて自由が丘に初めてとなる最大約75坪のコンベンションホールが誕生し、会議やシンポジウム、教室に使えるコミュニティセンター機能を持つ。組合が使わない時間帯は貸会議室として外部にも開放する。高めのフロアのため、目的を持った人が集まるフロアという位置づけとしている。
5階は「こどもでぱーと 自由が丘」。ヒューリックが企画・開発・運営を手がける子育て・教育フロアで、同社としては中野、たまプラーザに続く第3号施設になる。既存2施設が1棟丸ごとの展開だったのに対し、商業施設のワンフロアで展開するのは初のケースだという。同社はリソー教育、コナミスポーツとの業務提携に基づき、2029年をめどに首都圏を中心に20棟程度の事業化を目指している。
今回は伸芽会と伸芽’Sクラブの託児・学童を軸に、探究学舎 自由が丘、ABC Cooking Studio、石戸珠算学園「いしど式」と0〜3歳向けの「できたっち」、こども専門美容室KID’S HAIR DESIGN CHOKKIN’S、日替わり、週替わりで習い事コンテンツを提供するこどもでぱーとStudioを集約。小児科のキッズクリニックまるまるは11月開業予定となっている。誰でも利用できるベビー休憩室とコンシェルジュを備え、教育熱の高い自由が丘の土地柄に応える。
施設は単体で完結させず、街との連携を強く意識する。2026年5月に始動した地域連携プロジェクト「WE JIYUGAOKA」では、開業前から「Jiyugaoka Sweets Festa」にスタンプラリー賞品の提供とライブアートパフォーマンスで参加し、「自由が丘納涼盆踊り大会」には提灯とうちわで協賛した。開業後も秋の恒例イベント「自由が丘女神まつり」、クリスマス時期の「自由が丘 Thanks Liberty」など継続して連動していく意向。
ヒューリックとしても、この施設単体で大きなことができるとは考えていないとし、地域との連携で街全体を底上げすることが結果として他エリアとの差別化になるとの見方を示す。岡田理事長も「東側ブロックと駅前ブロックが続いて再開発の準備組合になっている」とし、「周辺の地域といっしょになって、さらに新しい施設が長いスパンで出来上がっていくと自由が丘の魅力と商業の総量、あるいはその力の総体が上がっていく(中略)。このプロジェクトをリーディングプロジェクトとして、まずは1つ目の事業として自由が丘の100年ぶりのハードの更新となる」と今回の施設の意義を語った。
JIYUGAOKA MUSE SQUARE(自由が丘ミューズスクエア)概要
所在地/東京都目黒区自由が丘1-29-1
オープン日/2026年9月17日
駐車場/商業用69台
駐輪場/商業用361台
施行区域/約0.5ha
敷地面積/約4000㎡
延べ床面積/約4万6000㎡
階数・高さ/地上15階、地下3階/約60m
商業フロア/地下1階〜5階
店舗数/59店舗
店舗面積/約1万1000㎡
住宅/170戸









