ベイシアが劇安ワンダーランドココトク!ふかや花園店をオープン、ディスカウント強化型の新フォーマットを開発し、マルチフォーマット戦略を加速
2026.06.17
ベイシアは6月12日、埼玉県深谷市にディスカウントを強化した新フォーマットの1号店となる「劇安ワンダーランドココトク!ふかや花園店」をオープンした。同店が立地するのは関越自動車道の花園IC(インターチェンジ)から車で約5分。
これまで同社がスーパーマーケット(SM)として営業していた旧店をフォーマット転換し、ゼロベースで売場、商品構成、オペレーションの考え方に至るまで見直した新フォーマットの実証店舗と位置づける。同社にとって営業開始から30年の節目の年に投入する戦略店舗であり、価格感度の高い商圏や従来フォーマットでは成立しにくかった立地への出店余地を広げる狙いがある。
「ココトク!」が掲げるコンセプトは「ワクワクな買い物が、おトクになる場所」。屋号の「ココ」には場所や選択の意思を、「トク」には安さと品質の実感を、「!」にはワクワクする体験が生まれ続けるという意味を込めた。
相木孝仁社長は、インフレ基調で食費の負担が年々重くなる中で、「『できるだけ安く買いたい、でも品質は妥協したくない』という思いにもっと応えられるお店が必要ではないか。既存のSMだけでは十分に満たしきれないニーズがあるのでないか」と考えたことが今回の新フォーマット開発の出発点だったと語る。

そして、その答えとして開発したのが今回のフォーマットだと説明した。単に安いから選ぶのではなく、思わず手に取りたくなり、店内を歩くだけで楽しい、その結果としてお得な買物ができたと感じられる体験を重視したという。
今回あえて「ベイシア」の屋号を冠さなかったのも、従来のSMの枠組みにとらわれず新しい価値を届けるという意志の表れだとする。店内では「安い」「地域最安値」といった文言は当然のこととしてあえて前面に出さず、お客自身に「なぜこんなに安いのか」と感じてもらうことを狙う。フォーマットの開発は執行役員出店戦略本部営業企画本部長の安田恵一氏が率いた。


出店戦略の背景には、物価上昇と共働き世帯の増加に伴うライフスタイルや買い方の変化がある。まとめ買いや時短ニーズ、効率重視といった買物のニーズが高まる中、既存フォーマットだけでは十分に対応できないとの判断から新フォーマット開発に至ったという。
これまで、出店用地の候補が出ても既存店との商圏の重なりを懸念して出店を断念するケースがあったという。こうしたことを避けるため、複数フォーマットを使い分けるマルチフォーマット戦略によって物件特性に合わせた出店を可能にし、成長を加速させる構えだ。
加えて、建築費高騰を踏まえ、よりシンプルな店舗を企画してイニシャルコスト、ランニングコストを抑える狙いもある。同社は昨年、海外のチェーンを複数視察しており、インフレ下でも成長するディスカウント業態の可能性、あるいは既存店とのすみ分けと低コスト構造を学んだことが開発の土台になったという。
1号店の選定に当たっては、近隣に同社のスーパーセンターやSMが立地するドミナント内で、旧店が他店と比べて来店客の範囲がやや狭かったというデータが決め手となった。ディスカウントを強めた新フォーマットに転換することで既存店とのすみ分けを図りつつ、深谷市に加え、隣接する熊谷市の一部からも、店舗近くを走る国道140号などを使ってアクセスしやすいと判断した。
主力のスーパーセンターが衣食住をそろえたワンストップショッピング型であるのに対し、ココトク!はアイテムを絞り込み、まとめ買いやストック買いを意識した、より価格を重視した店づくりを目指す。既存のスーパーセンターなどとすみ分け、アクセスによっては10km程度の広域からの集客を図る。来店頻度の目安は週1回程度を設定し、それで成立するフォーマットを目指す。
想定ターゲットは子育てファミリーと親子3世代のファミリー。さらにふかや花園店の周辺は埼玉県の基準と比べて飲食店の割合が多いというデータがあることから、サブターゲットとして事業者の需要も見込む。こうした客層に向け、惣菜を軸とした即食、簡便商材を意識した売場構成とし、より賢く、よりお得に、効率よく買物したいニーズに応える。
店舗の営業面積は約1000坪。総取扱SKU数は約8500で、青果、鮮魚、精肉の生鮮3部門を始め惣菜、加工食品、日配品、飲料、日用品などを展開する。このうちプライベートブランド(PB)商品を含むオリジナル商品は約1000SKU。上席執行役員商品本部長の神戸達也氏は、PB商品、オリジナル商品の売上高構成比を3割程度と見込み、これが同社として過去最高水準になるとの見とおしを示した。

加工食品では既存店から絞り込んだ形で、このフォーマットで新たに取り扱う商品は基本的にないが、生鮮、惣菜ではフォーマット用の商品も新たに開発したとする。また、基本的にはスポット商品は扱わない方針だが、飽きのことも考え、売り切りの目玉商品は入れていきたいという。「激安ワンダーランド」をうたうことからも、この要素は大事にしていく。
3月にオープンしたベイシアタウン新狭山店のSMの「フーズパーク」部分が1万6000SKU近く取り扱っているのに対し、ふかや花園店は半分強にまで絞り込んでいる。モデルとなった米国のフォーマットの品揃えが9000SKUほどだったことから、9000を下回る水準をめどに絞り込み作業を進めたという。
作業効率を上げることでコストを削減しながら粗利益率を下げることで既存店と比べて1〜2割程度安い価格の商品も豊富に取りそろえるという。
「劇安」は「劇的な安さ」を意味する。これを支えるのは構造として安くする仕組みだ。「これまでのベイシアの常識をいったん脇に置いて、売場、商品構成、オペレーションの考え方までゼロベースで見直した。徹底した引き算、そして創意工夫を積み重ねることによって構造として安くできるお店を造っている」(相木社長)
例えば、SKU数を絞ったことで単品当たりの陳列量が増え、補充頻度を下げるようにしている。野菜や果物、飲料、酒、パンなどの売場では段ボールなどを開けた状態のまま、商品によっては倉庫の荷姿のまま運び込み、段ボールを活用して陳列する手法を含め、パレットでの納品、陳列を一部商品において採用。




パレット納品、陳列を採用する商品は基本的に売れ筋で物量が多かったり、重量が大きかったりする商品で、飲料、ビール、油、トマト缶、パスタ、PB商品の柿の種など一部の菓子といった商品。従来の納品方法と異なるため物流センターの協力も仰いだ。





パレット陳列はフォークリフトや電動ハンドリフトを活用したものとなるが、これによって動かせる単位当たりの物量が3倍ほどになるという。また、今回、こうしたオペレーションを実施するに当たって店長がフォークリフトの免許を取得した。


その他、惣菜と精肉ではプロセスセンター(PC)で加工した商品の割合を高めて店舗での作業を減らしてもいる。補充頻度を下げる仕組みづくりには社内のデジタル部門がかかわり、全社を挙げて作業コストを下げる工夫を裏側で積み重ねているという。イメージでは100人~120人程度で運営している店を80人程度で運営できるようにしたい意向。
パレット納品や商品の絞り込みはこの1年あまり複数店舗で実験を重ねており、絞り過ぎてお客から不満が出たこともあったといい、そうしたことを踏まえ、バイヤーが最適な絞り方など工夫をしながら見極めた品揃えに落とし込んだとしている。「8500SKUという品揃えではあるが、お客さまに不便をかける品揃えにはなっていないと思う」(神戸上席執行役員)
また、売場づくりでは、従来は部門ごとに配置していた惣菜、冷凍食品、日配品などのうち、即食、簡便商品を入口付近に集合展開し、利便性を高めるといったことも試みている。即食商品ということでは、入店してすぐ右手にタコス専門店の「TACOCO STATION(タココステーション)」を配置し、作り置きだけでなく、バイオーダー(ツーオーダー)での商品提供も実施する。「ココトクに行ったらタコスを食べよう!!」との考え方で、名物商品にする意図も垣間見える。




バイオーダーでは、店内で1枚ずつ揚げるトルティーヤにタコスミートとレタスを挟み、サルサソースを合わせ、レジで注文を受けてその場で提供する。バイヤーが沖縄まで足を運んで学んだ上での本格的なメニューに仕上げたとしている。そのため、あえて専門店をうたう。沖縄風タコスは1個入り1パック200円(税込み)、4個入り780円(同)。おかわり可能な4種類のドリンクバーも税込み200円で提供する。
タッチパネル方式のセルフレジによるバイオーダーの仕組みは、都市部をターゲットに4月に出店を開始した新フォーマットであるオトナリマート伊勢崎下道寺店(群馬県伊勢崎市)で導入した仕組みを取り込んでバイオーダーに対応する。




また、こちらはバイオーダー対象外ではあるものの、たっぷりの具材の沖縄風タコライスはRサイズ547円(本体価格、以下同)、Lサイズ723円で提供する。

この売場は、改装前のファストフードコーナーの跡を生かす形で設けられたが、「(このコーナーを)どうしようかということで議論になった。合宿などもしている。いろいろな案が出たが、どうせやるのであれば思い切ったチャレンジをしようということで、一回振り切ろうと考えた。タコスが世の中ではやっている、あるいはお米の値上がりを背景に家庭でタコスを手巻き寿司の代わりに楽しむ動きがあるといった情報も踏まえ、今回チャレンジした」(神戸上席執行役員)
また、タコスに限らず、惣菜に関してはアイテムを絞り込み、アウトパックの活用度合いを高めながらも、店内製造による出来たての商品を数多く提供する。ローコストを志向する店舗は、一般的に手がかかる惣菜、ましてやファストフードなどは縮小しがちだが、今回、あえて展開する意図について安田執行役員は次のように語る。
「アメリカの潮流は何年かすると日本にも来ると言われるが、アメリカではインフレ局面で外食がなかなかしにくい中、SMがそこを狙ってデリカ、自営のファストフードを強化している。それがチャレンジのきっかけ」(安田執行役員)
即食では他に180gと圧倒的なボリュームの「はみ盛コッペ」を焼きそば、ナポリタン、からあげ、コロッケの各種で展開し、各本体価格197円で販売する。弁当は297円ながらご飯が250gというボリューム感ある「ココトク!モリモリ弁当」を用意し、デザートやドリンクと合わせても昼食をワンコインの500円以内で収められるような形で、価格設定においては買物のシーンなども意識した。また、おにぎり各種、惣菜バイキング各種も97円と手に取りやすい価格に設定している。








コストパフォーマンスという点では1kgの大容量が売りの「BBB(ベイシアビッグ弁当)」のココトク!版となる「CBB(ココトク!ビッグ弁当)」を3アイテムラインアップ。カレーライス、麻婆豆腐ライス、うどんが1kg入った大型の弁当を587円で販売する。

生鮮については青果に続く鮮魚では、アイテムは限定的だが刺身盛り合わせの他、惣菜まで手がけるなど店内加工を多用したシズル感ある商品を展開するなど、惣菜と同様、ディスカウントとしては手をかけた展開となっている。




一方の精肉については全てPC活用のアウトパックが前提だが、既存店改装のためバックヤードはあることからオープン日は一部、店内加工の商品も活用した。



生鮮のオペレーション面では陳列上の工夫もしている。部門の縦割りをゆるめることで、生鮮の商品のうちJANコードの付いた加工商品についてはグロサリーを品出ししているフロア担当が品出しをするようにすることで、生鮮はより店内作業、特に惣菜の店内加工に集中できるようにする狙いもある。

PB商品、オリジナル商品は、上位ラインのパッケージカラーが赤の「ベイシアプレミアム」と、価格を強化するパッケージカラーオレンジのプライスPBの2本立てで展開。オレンジは店舗のストアカラーとも連動させ、各カテゴリーでの裾値の商品をこのプライスPBが担うというイメージを作り出している。PBについては他のフォーマットより価格を下げ、低価格を強化している。





提供サービスやオペレーションも大胆に見直した。サービスカウンターではラッピングや宅配の受付といった従来サービスを取りやめた他、たばこの販売もしない。チラシ販促も基本的に行わず、エブリデーロープライス(EDLP、毎日低価格)とすることで、お客が自身の都合に合わせて買物ができるようにする。チラシ販促をしない代わりに、このフォーマットに限っては店内撮影も可とし、お客がSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などで広めることも生かしながらアピールをしていきたいという。
また、ペットボトル飲料、酒は常温販売することで設備投資や電気料金を削減する他、他店では導入しているベイシアポイント、楽天ポイントも対象外とすることで、その分、安さを実現する。




一方、会計については他のディスカウント志向の企業がよく採用する「現金のみ」に限定せず、キャッシュレスのクレジットカードやコード決済にも対応するなど利便性を重視している。既存のディスカウント店と比べ、惣菜やPB商品の充実、多様な決済手段を備える点を差別化要素としたい意向だ。

今後の展開については、まずふかや花園店を皮切りに、1〜2年かけて既存店の転換を中心に複数店舗を展開しながらフォーマットとしての完成度を高めていく方針。現在のところ転換に適しているとみられる既存店が5店ほどあるというが、1号店の状況を見極めつつ、候補を絞りながら1、2年のうちにもう1、2店を転換していきたいという。ディスカウントを強化していることから基本は投資が軽い既存店からの転換が想定されるが、適切な物件があれば新規出店も視野に入れるという。
既存店とのすみ分けを意識したフォーマットではあるが、基本的に地代が比較的安く、広い敷地が取りやすい埼玉県以北を中心に出店を模索していくが、都市部でも立地に応じて出店を検討していきたいとする。多店化フォーマットとして育成し、将来的には商圏や立地ごとの最適なモデルを確立した上で本格展開につなげる。
相木社長は、他のフォーマットも含め、マルチフォーマットを活用しながら、「私たちは多様な地域に、そして多様なお客さまのニーズに応える企業へと進化しようとしている」と力を込める。
旧店比では客数、売上げの大幅増を見込んでおり、安田執行役員は客数で最低でも1.5倍~2倍増を目指したいとの意欲を示した。相木社長は「ココトク!はまだ完成形ではない。お客さまの声をしっかりいただきながら、現場で磨き上げ、進化していく」と語った。
また、フォーマットとしては、パレット陳列なども前提となるため、ある程度の売場面積の広さを前提とする。面積としては900~1200坪程度が目安となるという。
劇安ワンダーランドココトク!ふかや花園店概要
所在地/埼玉県深谷市荒川1050
オープン日/2026年6月12日
営業時間/10時〜21時
駐車台数/275台
営業面積/3414㎡(1033坪)、食品817坪、住関連35坪、衣料5坪、テナント11坪、その他共用164坪
従業員数/正社員7人、パートタイマー、アルバイト80人









