「選ばれる会社」であり続けるために、高付加価値を磨き込む ロイヤルホールディングス 阿部正孝社長
2026.08.27

目次
4事業で描く「食とホスピタリティ」の全体像
ロイヤルホストやてんやを展開することで知られるロイヤルホールディングスは1950年4月に設立され、福岡市に本社を置く。外食、コントラクト、ホテル、食品の4事業を核に据え、子会社8社および関連会社6社で構成され事業展開を行っている。
現在、ロイヤルグループを率いるのは阿部正孝(あべ・まさたか)社長。1993年の入社以来、外食の現場からグループ経営まで幅広く歩んできた。100年企業を見据え、全てのステークホルダーから「選ばれる会社」となることを掲げる同氏に、値上げ局面で外食各社が対応に追われる中での高付加価値戦略の中身と4事業の展望を聞いた。
現在、ロイヤルグループの事業の枠組みはどうなっているのか。
「ロイヤルホストやてんやといった外食事業がお客さまへ直接サービスを提供するB to Cビジネスであるのに対し、コントラクト事業は当社ではB to B to CもしくはB to B for Cと位置付けています。具体的には、空港や高速道路のサービスエリア、スポーツ・コンベンション施設などの事業主から運営を受託し、そこを訪れるお客さまに飲食や物販を提供するビジネスモデルです。
施設ごとの特性に合わせ自社で培った高品質な食とホスピタリティサービスを提供することで、クライアント企業の施設全体の魅力と価値向上に貢献することを目指しています。
食品事業には大きく2つの役割があります。1つは、外食やコントラクト、ホテルの朝食ビュッフェなどを支えるグループ全体のセントラルキッチン(CK)機能。もう1つは冷凍食品などの外部販売です。『ロイヤルホスト デリ』のように自社店舗やスーパーで販売するものに加え、他社製品のOEMやカフェ・小売業への食材卸なども含まれます」
CKは、さらに供給を伸ばす余地があるのか。
「CKは、福岡と東京の2拠点にあります。工場というと24時間フル稼働をイメージされるかもしれませんが、当社は基本的に、月曜から金曜の6時~22時で稼働させています。製造ラインごとに稼働は異なりますが、稼働計画を見直せば製造キャパシティを増やす余地は十分にあります。
ただし、何でも自前で作るのではなく、作るもの、作らないもの、外注していくものと、生産のバランスを取っています。繰り返しになりますが、当社ならではのコアな価値となるものは、当社で作ります」
一方で、ホテルの事業はどのようなものか。
「ホテル事業は、基本的に『リッチモンドホテル』を中心としたB to Cビジネスです(運営会社アールエヌティーホテルズの資本構成はロイヤルホールディングス 92%、福岡地所株 8%)。ただし今後は運営オペレーションのみを担う手法など、コントラクトと同様に、B to B to Cとしての拡大の可能性もあると考えています。
主力のリッチモンドホテルに加えて、新たに宿泊レジャー型の『THE BASEMENT HOTEL』(ベースメントホテル)というブランドを立ち上げた他、Minor Hotels(マイナー・ホテルズ)と組んで『ロイヤルマイナーホテルズ』(出資比率50%ずつ)を2025年に設立しましたが、これはリッチモンドよりもラグジュアリーな領域のホテルビジネスになります。直営だけでなく、こうした幅広い需要や価格帯の中で運営受託型のMC(マネジメント・コントラクト、受託)オペレーションも加えて展開していくのが、現在のホテル事業の戦略です」
インバウンドを追い風に、ホテルについては中身そのものも変えているという。
「海外からの旅行者が非常に増えており、その需要を取り込んでいます。もともと当社はビジネス需要が中心でしたが、現在はビジネスのアッパー層から、レジャー(観光客)まで対応できるよう改装等を進めています。
従来のビジネスホテルはシングルルーム主体の構成ですが、海外のお客さまは2人、3人のグループで来られることが多い。そこで、シングルルーム2部屋を1部屋に再編して2〜3人対応の客室に改装するなど、ご家族やグループでも泊まりやすい『ビジネスとの複合型の客室設計』へと転換を進め、少しでも多くの方が泊まりやすいホテルにしています」
高付加価値を追求、単純な値上げはしない
ホテルもそうだが、特に主力の外食事業は新型コロナウイルスの影響を非常に大きく受けた。現状をどう見る。
「原材料高騰等により客単価が上がっても利益が出しにくい環境にあります。コロナ前まで外食、惣菜などの中食、内食と分かれていた領域が、コロナ禍を経て境界線が溶け合い、一体化したのが今の日本の食市場だと捉えています。
例えばてんやでは、コロナ禍でテイクアウト比率が一時2割ぐらい伸びましたが、現在は以前の数値に戻っています。これは行動制限解除後の動きだけでなく、物価高によってスーパーの惣菜や、『この価格なら素材を買ってきて自分で作ろうか』と内食に向かう動きになってきたりもしている。食の機会そのものが減っているわけではなく選択肢がシフトしているだけですから、冷めてもおいしさが変わらないテイクアウト専用メニューの開発など、需要の変化に合わせた対応を進めていきます」
原材料高には、どう対応しているのか。
「私たちが目指すのは単純値上げではなく、メニューミックス等を含む高付加価値の提供です。例えばてんやで米の価格が上がった際には、『天ぷらは食べたい』という方に対して、天丼とそばのセットや、天ぷらそばなどのメニューの選択肢を拡充し訴求も強化しました。
また、そばをよりおいしく召し上がっていただくために藪そばへ変更し、つゆも試作を重ねて天ぷらやそばとうどんのうま味を引き立てる味わいへと改良をいたしました。価値を感じるコンビネーションを選んでいただき、その対価を頂戴するアプローチです」
価格を維持するために、原材料のランクを下げて価格を維持するという考えもある。
「当社の考え方は高付加価値戦略です。量を減らしたり質を下げたりして価格を抑制する考えはありません。食材や提供価値を進化させながら、納得感のある対価を頂戴できるように努めています。
特に低価格帯の商品ほど、価格変化への感度が高くなります。300円の商品を10円上げるのと、1000円の商品を10円上げるのとでは、お客さまが受けるインパクトの強さが全く異なります」
舵取りが難しい状況下、ロイヤルグループが目指す「外食」の姿はどのようなものになるのか。
「『せっかくの外食だから、良いものを食べよう』『ここであれば安心だ』と思っていただけるブランドを目指しています。同じような価格帯の競合他社よりも価値が高いことをお示ししていくことが重要です。
例えばてんやであれば、『この値段を払って、この価値であれば納得』と思っていただけるポジションを絶対に貫こうと思っています。競合の中で差別化の要素は何かをしっかり具現化していきます。揚げたてであること、素材や季節・旬にこだわることです。メニューを固定化すれば仕入れコストは下がりますが、それでは外食ならではの楽しさや季節感を提供できません。ここを妥協せずに訴求していきます」
てんやではリブランドに踏み込んでいるという。
「てんやは従来、昼はサラリーマンの方、夕方以降はテイクアウトでご自宅にお持ち帰りされる女性の方が多い店でした。そこで、内装を木目調に変えるなど店の佇まいを見直し、店内でゆっくりくつろげる空間にリブランドしています。そうすると夜にご家族連れやカップル等にご利用いただける店になる。
テイクアウトについても、少し受け取り間口のイメージを変えて、いままでご利用されていなかったお客さまの掘り起こしもしています。リブランディング改装は2024年11月に実験導入し、順次拡大を進めています。ロゴや表記も『天丼てんや』から『天丼・天ぷらそば てんや』へと変更し、改装店では売上が約5%伸びています」
もともとてんやはM&A(企業の合併・買収)でグループに組み込んだブランドだ。事業ポートフォリオ上、「和」のフォーマットを求めていたのだろうか。
「これにはご縁もありますが、当時会社を承継していかなければならなくなったときに、食とホスピタリティに真摯に向き合っている会社に任せたいという中で当社を選んでくださったと聞いています。調理人がしっかり料理をすること、品質にこだわること、安全・安心であること、そして人を大切にすること、こういうところが寄与したのだと思います。
私たちは『選ばれる会社』になりたい、と強く思っています。それは、お客さまからも、従業員からも、株主や取引先からも、『ロイヤルグループに任せたい』と選ばれる企業でありたいと考えています」

フォーマットごとに「価値」を徹底的に訴求
主力のロイヤルホストでも高付加価値を追求している。
「ロイヤルホストでは2013年冬から日本各地の産地や素材の魅力をお届けする『Good JAPAN(グッドジャパン)』という企画で、日本の厳選食材をグループの商品開発力と店舗の調理人の力を活用して紹介して参りました。コロナ禍が落ち着いた2023年からは、この取り組みをグループ全体に広げています。
また、年6回実施する季節のデザートや、料理とお酒のペアリング提案など、これまでになかった『新しい食の楽しみ方』を打ち出しています。さらに『プレミアムドリンクバー』への転換も進めており、コーヒーやココアの充実はもとより、紅茶を刷新し季節デザートとのペアリングをご提案するなど、目に見える形で価値を高めた上で価格変更を行っています。
コロナ禍ではさまざまな制限がある中で外食を控える動きがあった中、『やはり、外食っていいよね』ということを訴求したいと思っていました。それで、最初にロイヤルホストならではの洋食を強くしたフェアを打ちました。定番のオムライスやエビフライ、ハンバーグ。家でも1品の料理は作れるけれど、レストランだからこそコンビネーションで食べられる。『家で作るのは大変だけれど、外食だと手軽にごちそうがテーブルに並ぶんだ』ということをお伝えしたかった。
次は海外旅行に行けない時期に合わせたシンガポールフェア、そして『日本各地の素晴らしい食材を伝えよう』という流れで、改めて『Good JAPAN』に行き着きました。能登や金沢の復興支援、広島の牡蠣、北海道のホタテやイクラなど、地域の優れた食材を洋食として提供することで、地域社会への貢献と持続可能な社会づくりにも寄与したいと考えています」
ロイヤルホストの海外での展開の可能性についてはどう考えるのか。
「ロイヤルホストの料理は、オムライス、ドリアなど俗にいう『ジャパニーズ・ウエスタン』(日本で生まれた洋食)と呼ばれる日本独自の進化を遂げた料理です。ホテルニューグランドの伝統を汲む本格的なフレンチをベースにしており、クオリティには自負があります。
しかし、これを海外で展開するのは容易ではありません。シンガポールに出店したのですが、ロゴを見ても日本のお店だと分からないし、『ジャパニーズ・ウエスタン』という概念自体が現地の方に伝わりにくいという壁に直面しました。
例えば、ステーキやハンバーグに茶わんのご飯とおみそ汁が付く『御膳スタイル』は、ナイフとフォークで食べるのか箸で食べるのか、海外の方には食べ方の作法すら分かりづらいのです。ラーメンや寿司のように一目で『日本食』と伝わるフォーマットではないため、海外での認知・ブランディングには現在も試行錯誤を重ねています」
サラダバーを軸とするシズラーやシェーキーズの方針は。
「シズラーはプレミアムサラダバーをしっかり充実させ、ビュッフェとしての価値を徹底的に高めています。私はビュッフェと食べ放題は違うと思っていまして、シズラーでは高品質な野菜やひと手間加えて調理をしたサラダ、シーフードマリネなどを提供しています。
また、ホテルの朝食運営のお話も非常に多くいただいています。グループのリッチモンドホテルもそうなのですが、昨年からは新宿・歌舞伎町の新宿東宝ビルにあるホテルグレイスリー新宿(運営・藤田観光)の朝食をビル1階のシズラーが受託させていただきました。
ビュッフェとしての価値をしっかり訴求できることに加え、グリルもありますので夜にも対応できる一方で、朝食にも対応できる。これは当社がいろいろな専門店をやってきているノウハウがあるからできることだと思っています。キッチンに調理人がいて、時間帯ごとに料理を作れるのが強みです。
シェーキーズは店内でオリジナルの小麦粉から生地をこねてピザを焼き、圧力フライヤーを使って特別な調理法でつくるフライドポテトなど手作りにこだわっています。アメリカンタイプのピザを気軽に楽しめるピザレストランとして改装も進めました。日本でオープンしてから50年以上続くピザレストランとして、今後も多くのお客さまに親しまれるように、店舗展開を行います」

「100年企業」に向け、「ここにあって良かった」店づくりを目指す
現状の店舗数はフランチャイズ店を含め国内外でロイヤルホスト224店、てんや168店(2026年6月30日現在)。国内の出店は、どう進めるのか。
「国内出店は積極的に推進します。既存ブランドの出店に加え、7月には新たに15坪前後で多店舗展開可能なファストカジュアルブランドとしておにぎり天丼専門店の「おにどん」、クラフトバーガー専門店の「JB’s TOKYO」の2業態をJR御茶ノ水駅エキュートエディション御茶ノ水の2階へ同時にオープンしました。
てんやの天丼を、もっと気軽に、より多くのお客さまへお召し上がりいただくために、長年培ったノウハウを最大限に生かし、目の前で天ぷらを揚げるライブ感と共に、揚げたて・握りたての新しい形のおにぎりをクイックに提供いたします。
こうした専門店開発は、自社店舗の拡大だけでなくコントラクト事業において、空港や高速道路などで唯一無二に近いブランドを求められたときに、その選択肢を増やす狙いもあります。また、ラグジュアリーホテルでアッパーな料理を求められたときにも応えられる。宿泊もやれるし、食もやれると。これが当社におけるビジネスの筋としては良いのではないかと思っています。
新しく手がけるラグジュアリーホテルでは、飲食の選択権を当社が持てる形にしています。ただ、ラグジュアリーホテルは飲食店をたくさん作らなければならないので、全部を自分たちでやるわけにもいかない。
例えばキラ星のようなブランドや、三ツ星のレストランに入っていただいた方がホテルの価値も上がるということもあります。われわれはベーシックなところをしっかりやって、何でもやれる体制にしておく。それが一番いいと思っています」
出店立地やフォーマットの変化は。
「ロイヤルホストは従来の郊外型ロードサイドから、一部の地域では駅近や商業施設内へのリロケーションを進めています。てんやについても、従来は適さないと考えていたフードコートへの出店が軌道に乗り始めています。てんやは、ご注文を受けてから天ぷらを揚げて提供するため、クイックに商品を提供することが重要であったフードコートへの出店は適さないと考えていました。
それがいまはフードコート内にもこだわった料理を提供する店舗が増え、価格帯も上がり、待つことにそれほど抵抗がなくなってきています。どちらかというと、食事を楽しむという価値をお客さまも重視するようになってきているので、いま出すタイミングになったと考えています」
環境の変化もある中、出店形態を含めた外食の形も変えていく必要があるということだろう。経営数値として最も重視している指標は。
「日々のマネジメントではやはり客数を意識しますね。週末の台風の影響が大きかった今年6月を除いて、てんやは21年3月から、ロイヤルホストは24年8月から継続して既存店売上高が前年を超えるなど好調に推移しています。客単価が好調で、客数は前年を割る月もありますが、ここでしっかり客数も前年を超えるということを意識していくのが日常の数字になります」
ロイヤルでは「『食とホスピタリティ』で、地域や社会を笑顔にする」ことを目指しているという。客数はまさにそのバロメーターでもある。
「いまロイヤルグループは設立75年の企業になりました。100年企業を目指して、しっかりと価値を高めながら、全てのステークホルダーに選ばれる会社にしていきたい。その中で、地域や社会を笑顔にできる、そんな企業を目指しています。
従業員にも、地域や社会を笑顔にすることをキーワードにしていて、『ここにあって良かった』と思ってもらえることがわれわれの価値だと思うので、そこを目指して行こうと言っています。そして、100年企業を目指すための土台を、いましっかり作ろうと言っています。
実はこの目標は、去年、従業員とコミュニケーションをしながら決めたものです。『Rセッション』という会を、半年に1回、全国20カ所ぐらいで開いています。当社はいま2400人ほどの社員がいますが、延べ1000人ほどが参加する会を、年に2回やっています。
会社の業績やいまの取り組みを伝えた上で、参加者が同じ題材でディスカッションして、どんな会社にしたいかを議論する。私自身も20回のうち半分ほど出ますし、役員やグループ会社の社長も参加します。そうやって吸い上げて考えたことが、いまの経営ビジョンなんです」
原材料高や人手不足が続く中、外食に限らず、同社が展開する4つの事業全てが多くの困難に直面せざるを得ない環境にある。コロナ禍という大きな困難を乗り越えたいま、新たな困難にどのように立ち向かい、地域や社会を笑顔にしながら「100年企業」への土台を築いていくのか。4事業の総合力を武器に高付加価値の追求を続けるロイヤルグループの歩みに、改めて注目したい。










