「社会課題の解消」にこそチャンスがある グッデイ 柳瀬隆志社長

2026.06.23

 北部九州・山口等に67店のホームセンター(HC)を展開するグッデイ(GooDay)の原点は、現社長の柳瀬隆志(やなせ・たかし)氏の祖父が1949年に創業したラジオパーツなどを販売する店にさかのぼる。その後は時代の変化に対応しながら事業領域を広げ、現在ではグッデイをはじめ、イーケイジャパン(電子工作キット)、カホエンタープライズ(データ活用分析)、カホパーツセンター(電子パーツ専門店)、遊舎工房(自作キーボード専門店)などを傘下に持つ持ち株会社・嘉穂無線ホールディングスによるグループ経営体制を築いている。 

 HC業界では売上高上位企業によるM&A(企業の買収、合併)を含めた激しいシェア争いが続く寡占化時代に入っているが、北部九州を地盤とするグッデイはどのように生き残りを図り、成長戦略を描くのか。嘉穂無線ホールディングスの社長も兼務する柳瀬社長に聞いた。

紙のチラシを完全にデジタルに置き換え

 インフレ基調でモノの値上げが続く。必需品も多く取り扱うHCとしては売上を高めやすい半面、節約志向の影響も受ける。直近の販売動向はどうか。

 「HC業界は、(新型)コロナ(ウイルス)のときが一番良く、そこから徐々に下がってきているのが正直なところです。既存店はHC他社と同様に、値上げの影響で客数が減少し、(1品)単価が上がっている状況です。

 2025年4月からの26年3月期の新店は1店舗で、グッデイ志免店(福岡県志免町、2025年4月オープン)です。一昨年には2店舗。グッデイ伊都店(福岡市西区、24年4月オープン)と山口小郡店(山口市、24年12月再オープン)をオープンしました。

 直近の出店の伊都店や志免店は、福岡の中では今後人口が伸びる見込みのあるエリアです。現在は、既存店の改装や棚割り、陳列、販促方法の見直しによる売上向上に取り組んでいます」

 改装の中身はどのようなものとなるのか。また、売上増効果についてはどうか。

 「2015年から19年ぐらいまでは10店舗ずつ、レイアウトの見直しを中心に大規模な改装をしました。いったん全部改装し終わったので、モデル店舗を決め、棚割りや品揃えの見直しをしながら、次の改装のフォーマットはどういうものが良いのか、議論をしています。

 売場は大体1000~1500坪で、10万弱のアイテムを取り扱っています。HC商材の他、食品も取り扱っています。コストコの商品を仕入れているため、食品売場は広がっています。客数減少の中、いかに消費財でお客さまに足を運んでもらうかということも意識しています。

 お菓子などの他、最近はお米の売上などもかなり伸びています。日配はいま実験的にパンを取り扱っていますが、冷蔵ケース販売は飲料、冷凍食品は一部の店舗で販売しています」

 HCとしては中型の規模といえるが、店舗の商圏の範囲はどの程度とみているのか。

 「もともと10km圏内、10万人を想定して出店をしています。出店を拡大して売上を伸ばすよりは、既存店のサービスや品揃えを見直して底上げしていきます。直近はリフォーム関連の売上が伸びています」

 商品面ではプライベートブランド(PB)についてはどのようなスタンスか。

 「商品開発については、グッデイの規模だと(採算が)合わないと思います。前職の商社で大手小売業のPBの輸入開発をお手伝いする部署にいたのですが、相当大きなところでないとメリットが出ないと実際に取り組む中でも感じました」

 販促面はどうか。

 「販促でいま力を入れているのはLINE販促です。まさに客数増が課題で、私も入って販促の取り組みをしています。値段、訴求のポイント、配信のタイミング・頻度などをトライ&エラーしながら見直していますが、LINEのバーコード提示による購入率が大きく向上しています。値段もてこ入れしていますが、日用品、消耗品などは、9割ぐらいはLINE提示で購入されています。

 割引価格で購入できるのは、約72万人のLINE公式アカウント会員限定です。会員の来店・購買データは自社ダッシュボードで可視化・分析しており、販促効果の検証にもつなげています。

 商品は日用品、消耗品・加工食品他、季節の園芸など旬のものも掲載していますが、この習慣化が課題です。現在、2週間に1回ぐらいの頻度で3、4アイテムを掲載しています。これをきっかけに来店していただき、他の商品も見ていただくというあくまで来店促進の位置付けです。

 紙のチラシは数年前から実施していません。いまはあらゆる年代層がLINEを使われています。LINEのアンケート機能を活用し、特定商品の販促時にメーカーとタイアップしてアンケートを流しメーカーにフィードバックしたり、POPにも反映させるといった取り組みをしています。

 LINEで来店された方は、LINEを提示されない方と比較しても客単価が高い傾向にあるので、意外に目的の商品だけを買うチェリーピッカーのような方はいないです。システムを改善したことであらゆることが分かるようになってきました」

 紙のチラシを全てデジタルに置き換えたのはドラスティックな取り組みといえる。

 「紙のチラシは効果測定が難しかったのですが、デジタル化によって販促効果を可視化し、社内で検証・改善できるようになりました」

自社の課題を解消し、それを事業化する

 既存店の売上向上に注力し、成果を挙げている一方で、日本が人口減局面に突入し、出店環境が厳しさを増す中では既存店の成長以外の成長戦略も求められる。

 「グッデイは大きな事業の柱なので、まだまだ伸ばしていきたいですが、当社の中でもいろんな課題が出てくるので、そこをしっかり解消して、その『ソリューション(解消法)を売る』ことにも取り組んでいきたいと思っています。

 グッデイでは2015年ごろからデータ活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めており、そのノウハウを外部向けに展開する形で17年にカホエンタープライズを設立しました。現在は年20%以上の成長を続けており、グループの新たな収益事業に育っています。

 カホエンタープライズは、グッデイで実践してきたデータ活用やDXのノウハウを、外部企業向けサービスとして展開する会社です。グッデイにはデータ活用推進部があり、Tableauを活用したダッシュボードの構築や分析を行っています。そこで培った仕組みやノウハウを、カホエンタープライズを通じて他企業にも提供しています。

 導入企業には、J.フロント リテイリングやエイチ・ツー・オー リテイリングなど大手企業もあります。現場で実際に運用している仕組みであることが評価されており、一度他社サービスへ切り替えた企業が、再び戻ってきたケースもありました。

 最近では、取引先がグッデイ店舗を視察し、実際に活用している現場スタッフの声を聞く機会も増えています」

 特に歴史のある会社だとDXの推進が難しい部分もあると思われる。その辺りはどのようにしてクリアしていったのだろうか。

 「当社は、1949年創業のラジオ・アマチュア無線パーツ店からHC事業へ転換してきた会社です。そのため、私自身も『自分の代で新しい事業をつくりたい』という思いを、入社当初から持っていました。

 私は商社勤務を経て2008年に入社し、店舗勤務や物流センターの立ち上げ、ブランド戦略などを経験した後、店舗の業務改革に取り組みました。その中で感じたのが、データ活用基盤の不足です。

 当時は『数字に基づいて考えよう』と言っても、エクセル分析に膨大な時間がかかり、かえって業務効率を下げてしまう状況でした。そこで2015年にデータ分析環境を整備したことで、業務改革が一気に進みました。

 その結果、業務効率だけでなく、社員の意識や会社の雰囲気も変わっていきました。最近では店長会議でAI(人工知能)活用の発表会を行っていますが、現場からさまざまなアイデアが出てきており、デジタルによる組織変革を実感しています」

 こうしたマインドの変化がカホエンタープライズの展開にもつながったということだろう。多角化という意味では2025年5月にM&A(企業の買収・合併)をした遊舎工房はどのような位置付けになるのか。

 「遊舎工房は、M&A会社から紹介を受けて初めて知った企業でした。秋葉原では『自作キーボード』分野で高い知名度を持つブランドで、リアル店舗を展開している点も特徴です。

 嘉穂無線はもともと電子工作関連を祖業としており、事業との親和性を感じました。加えて、自作キーボード市場には今後も成長余地があり、グループ会社のイーケイジャパンやカホパーツセンター、グッデイとのシナジーも見込めると考え、M&Aを決めました。

 自作キーボードは熱量の高いコミュニティを持つ市場です。実際にグッデイの実験店舗でもキーボードやスイッチを販売していますが、九州では取り扱い店舗が少なく、新たな市場開拓の余地があるとみています」

BtoBを超えて、BtoBtoCへ

 「ソリューションを売る」という考え方に立てば、DXの他にも可能性がありそうだ。

 「BtoBの事業として、『if green…』事業(オフィスグリーン提案)や団地の事業(団地のDIY〈ドゥイットユアセルフ〉によるリノベーション)を始めています。グッデイの既存店の店舗網やネームバリューは大きな資産なので、それを生かして、そこから新しい事業を生み出しました。

 『if green…』事業は、HCで培った植物の仕入れルートを活用したBtoB事業です。もともと植物を大量に取り扱っている強みを生かし、オフィスグリーンの提案につなげています。受注販売に近いビジネスモデルで、売上も伸びています。

 植物を扱うという意味では既存事業の延長線上にありますが、販売先や提案方法を変えた形です。専門知識を持つ社員を中心にノウハウを共有しており、さらに伸ばしていけると考えています。

 私は商社でBtoBの仕事を経験してきたので、BtoCだけにこだわらず、いろいろな事業をやることが重要だと感じてます。BtoCだけでは、人口減少の影響を直接受けてしまいます。

 『if green…』事業を開始した2020年は、新型コロナウイルスが始まるころでした。最初のお客さまは会社の本社を装飾するものでしたが、最近はマンションなどを手がけるようになり、福岡市から『福岡100プラザ』(旧老人福祉センターをリニューアルしたもので、市内7区に各1施設設置)のグリーン化も受注するなど、行政向けの取り組みも始まっています。ここではDIY(ドゥイットユアセルフ)スペースも作成し、グッデイスタッフによるDIYワークショップも開催しています。

 HCのリソースを店舗とは違う形で社会に還元する取り組みであり、BtoBtoCの事業でもあります。

 さらに、少子高齢化が進む中で、元気な高齢者の活躍の場をつくることも重要だと考えています。例えば、リフォームなどの分野では、『福岡100プラザ』などの高齢者施設を利用しているシルバー人材と連携し、担い手として活躍してもらうことも検討しています」

福岡市中央区にある本社では自社の事業であるオフィスグリーンが施され、まさに事業のショールームのようになっている

 もう1つ、団地を「DIYリノベーション」する事業も始まっている。「DIYリノベーション」の意味するものは。

 「DIYの魅力は、店舗だけではなかなか伝えきれません。実際に体験できる場が必要だと考え、福岡県住宅供給公社とタッグを組み、団地リノベーション事業を始めました。

 最初のモデルルームは、工務店に頼らず、社員がHC商材を使って施工まで手がけました。そこで得たノウハウを店舗運営にも生かしています。

 団地は間取りや築年数が似ているため、ノウハウを横展開しやすい特徴があります。空き家や老朽住宅の増加という社会課題に対し、DIYによる低コストの住環境改善の提案につなげたい考えです。

 部屋を買い取ってリノベーションして販売する方法もありますが、入居者自身がDIYに取り組むことで、DIYへの興味や理解を深めてもらい、必要な商材を自ら購入していただくことにもつながります。DIYをする人が増えることで、HC市場そのものの拡大にもつながると考えています。

 団地リノベーションは、福岡市の名島団地に続き、舞松原団地や東福間団地でも始動しました。単なる『Do It Yourself』ではなく、『Do It With Us(DIwU)』を掲げ、グッデイ社員と一緒にDIYに取り組むことを提案しています。一緒に作業することで、信頼関係の構築にもつながっています」

 団地のリノベーションを入居者自身にDIYをしてもらうという仕組みは、入居者が自らの住環境を好みに応じて整備することができる上、それが自然にDIYの普及にもつながる画期的な取り組みともいえる

HCもあくまで「ソリューション」を売っている

 少子高齢化や人口減少が進む中、従来のように出店だけで成長を続けることは難しくなっている。そうした環境変化の中で、グッデイは「社会課題の解決」を起点にした事業づくりを進めている。

 「人口減少は九州だけではなく、日本全体の課題です。だからこそ、店舗を増やすだけではなく、店舗以外の形でも事業を展開していく必要があります。

 小売業はこれまで、人口増加を前提に成長してきました。しかし、人口が減る時代には、それまでと同じやり方では成長が難しくなります。特に地方の企業が大手との価格競争や規模の勝負だけで戦うのは厳しい。だからこそ、私たちは『別の価値』を作らなければいけないと考えています」

 その中で柳瀬社長が重視しているのが、「社会課題の解決を事業に変える」という考え方だ。

 「少子高齢化や空き家問題、DX推進など、社会にはさまざまな課題があります。ただ、『課題だ』と言われているだけで、具体的な解決策が不足しているケースは多い。私たちは、自分たちで課題を解決してきた経験やノウハウを生かして、その解決策自体を事業にしていきたいと考えています」

 その発想から生まれたのが、DX支援を行うカホエンタープライズや、オフィスグリーン事業、団地リノベーション事業ということになる。

 柳瀬社長は、HCの本質も「モノ売り」ではなく「課題解決」にあるとみる。

 「お客さまは、商品そのものを買いに来ているわけではありません。困りごとを解決するために来店されています。DIY用品も、ペット用品も、洗剤も、すべて課題解決のための道具です。

 だからこそ、私たちは『何を売るか』だけではなく、『どう課題を解決するか』を考えなければいけない。店舗という形にこだわらず、さまざまな形でソリューションを提供していく必要があると思っています」

 一方で、その原点にはリアル店舗の存在がある。

 「店舗は、お客さまと直接つながれる場所です。現場があるからこそ、お客さまの困りごとや課題が見えてくる。そこから新しい事業やサービスが生まれていくのだと思います」

 人口減少時代において、ホームセンターを「社会課題を解決する小売業」へ――。

 グッデイの挑戦は、従来の小売業の枠を超え始めている。

お役立ち資料データ

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