「食」の価値を高める商品軸の成長戦略 紀ノ国屋 富田勝己 前社長
2026.08.19

目次
「調進所紀ノ國屋 京町家」は京都発のブランド発信基地
1910年に東京・青山で果物商として創業し、1953年には日本初のセルフサービス、スーパーマーケット(SM)を同じく青山の地に開いたのが紀ノ国屋。青山店を中心に、都市部立地のイメージが強く、さらに高品質の商品をそろえている「高級SM」のイメージが強いが、現在はフルスペックの「紀ノ国屋」の他、駅ナカ中心の「紀ノ国屋アントレ」、商業施設立地の「紀ノ国屋デイリーテーブル」、百貨店内出店、加えてベーカリー専門店「KINOKUNIYA Bakery」など小型店中心のマルチ業態の企業となっている。
前社長の富田勝己(とみた・かつみ)氏はJR東日本本体で子育て支援施設の展開を手がけた後、JR東日本ウォータービジネス(現JR東日本クロスステーション)、駅ビル開発などを行うJR東日本青森商業開発の社長などを経て21年4月、紀ノ国屋社長に就任。5年あまりの期間、同社を率いてきた。今年6月に退任し、後任の和田充弘氏に社長の座を譲り、本人は現在、JR東日本東北総合サービスに活躍の場を移した。本インタビューは社長在任時に行ったものである。
現状の店舗展開の状況はどのようなものか。
「いま全社で43店舗です(2026年8月4日現在、以下同)。路面店、いわゆるフルスペックのSMが5店舗で、インターナショナル(青山店)(東京都港区)を本店として運営しています。最近出店を増やしているのは百貨店で7店舗です。グロサリーと日配品を中心に、百貨店の集中レジ等を活用して運営しています。
『アントレ』(アントレはフランス語で『入口』の意味)はその名のとおり、プライベートブランド(PB)商品を中心に紀ノ国屋ブランドの魅力を発信する業態で、現在13店舗を展開しています。現在はアントレが店舗数で最大の業態です。
『デイリーテーブル』は日配品も扱いながらPBも扱う、フルスペックとアントレの中間的な業態で、コンパクトでありながら生鮮食品からグロサリーまで、ワンストップショップとして幅広く品揃えをしたお店です。現在12店舗を展開しています。多くは商業施設の中で運営しています。
面積はアントレが50坪程で、デイリーテーブルはやや大きい70坪前後です。とはいえ、立地や面積に応じて柔軟に売場を構成しています。
渋谷にある『グルマンマーケット』は単独店舗としてカフェコーナーを備えた特別業態です。また、京都の町家を改修した『調進所紀ノ國屋 京町家』(京都市中京区)を開設しました。ここは店舗というよりはブランド発信基地のような位置づけです」
業態別の傾向に違いはあるのか。
「アントレは、駅ナカに入っている店が多く、鉄道利用者の増加に合わせて伸長しています。
デイリーテーブルは、立地によってお客さまの利用シーンが異なります。住宅街に近い店舗では、価格に対してかなりシビアになっていますので、必要なものを効率的に選ばれる傾向があります」
価格対応についてはどのようなスタンスを取るのか。
「まず、PB商品は全店で統一価格にてご提供しています。一方で、生鮮やその他の商品については、お客さまの層や店舗の特性に合わせて、最適な品質・規格を選定しているため、価格に違いが生じる場合があります」
店舗の中で青山店や1店だけのグルマンマーケットの位置づけは特別なものに映る。
「インターナショナル(青山店)はおかげさまで売上は安定しています。青山は本店ですし、売上もトップ。一番良い商品を全部そろえるといった位置づけです。昔からご愛顧いただいているお客さまが多く、安定して推移しています。
グルマンマーケット渋谷スクランブルスクエア店(東京・渋谷)は、立地特性もあって最近は海外のお客さまが朝から多くいらっしゃるので、イートインスペースを広くするリニューアルを進めました。イートインの考え方は他店にも応用できると思っています」
出店ペースについてはどうか。
「出店ペースは意図的に落としていて、年に1、2店の出店にとどめています。建築コストが高くなっているので、投資回収が厳しくなってきている状況です。
それに人材の確保が非常に難しくなっています。立地の良いところでも、朝が早いと本当に集まらない。時給も上がってきて、他業種も含めて就業機会が多くなっていますから。
開店のための建築工事でお金がかかって、開業後の運営コストも従来以上に増加しています。今までの出店と比べても、さらに絞っていかないとなかなか難しくなってきています。
出店については、店舗規模ありきで判断するのではなく、デベロッパーとの情報交換を通じて、どのような店づくりが最適か、どのような価値を提供できるかを総合的に検討しています。
生鮮を扱う店舗は、売場規模やスタッフ育成まで含めて計画的に整える必要があります。そのため、『短期間で一気に出店を拡大する』といった考えはありません」
同社の出店の中でも25年4月、京都市役所近くの町家を改修して調進所紀ノ國屋 京町家を開いたことは異彩を放つ。店舗というより「ブランド発信基地」と位置づけているというが、この施設を設けた意図はどこにあるのか。
「拠点を持とうと思って、数年間、物件を探しました。柊家旅館や俵屋旅館といった高級旅館があるエリアで、江戸時代末期の町家を改修したものです。基本的には予約制を取っていて、お客さまにお茶を飲みながらゆっくり商品を見ていただきます。
周辺の高級旅館に泊まったお客さまがお立ち寄りになったりもします。小ぶりですが中庭もあります。ゆったりとした開放感の中で、町家の雰囲気を味わいながら商品をご覧いただいています。こうした取り組みは、一般的なSMにはなかなか難しいでしょう。紀ノ国屋が考える″豊かな日常”を、空間と商品を通じて体感いただけるようにしています。
扱う商品も路面店とは違う。
「物販も行いますが、80商品ほどしか陳列していません。『調進所』という名前のとおり、ご用命をお聞きし調える施設です。取扱商品も他の店舗で売っていない質の高い商品です。施設内で使用しているセミオーダー仕様の椅子も販売しています。こうしたことで当社の考えるライフスタイルをご提案しています」
なぜ、あえて京都という地を選んだのだろうか。
「われわれにとってはインターナショナル(青山店)が本店で、情報発信基地なのですが、それとは違う、『日本の食文化の発信基地としての京都』という位置づけです。特に町家を使って、例えばインバウンドを通じての海外への発信、富裕層への訴求もしていきたい。
SMの中の競争に巻き込まれないようにするためには、ブランド価値をさらに高めたいという考えがあり、その取り組みの1つが京町家です。新しい情報を発信するために、切り口も変えようと。
東京にいると、どうしても今までの歴史の延長線上に留まってしまいます。そうであるならば、京都で新たなものを作っていこうということです」

投資の焦点を「箱物の店」から「商品」に絞る
同社がいち早く取り入れた「セルフサービス」が、レジの世界でどんどん進化している。ただし、全てをセルフサービスにしてしまうことにはさまざまな意見があることも確か。店舗のレジオペレーションについての紀ノ国屋のスタンスは。
「セミセルフレジは導入しています。フルセルフレジについては駅ナカの店舗の一部に限られていますが、今後は路面店にもフルセルフレジを拡大します(26年8月4日時点フルスペック全店で展開中)。
ただ、当社のサービスとしてはサッカー、いわゆる袋詰めまでをやるんですね。精算と袋詰めを分担することで、商品を丁寧に扱い、お客さまに安心してお持ち帰りいただけるよう設計しています。
『レジに2人もいるのは人件費の無駄ではないか』という声が業界では聞かれたりしますが、レジ担当とサッカー担当の2名体制により、商品が崩れないように詰める、袋に空気を含ませて保護するなど、専門性のある技術を伴ったサービスを提供しています。
さらに、お客さまとのコミュニケーションを通じて、“気持ちよく買物を終えていただく”という体験価値を生み出している点も私たちにとって極めて重要なサービス価値だと考えています。
とはいえ、『人手を介するサービスが苦手』というお客さまがいらっしゃるのも事実。ご自身で完結したいお客さまにはその選択肢をご用意する。これまでどおりのサービスが良い方は『いままでどおりのサービスをご提供します』と、お客さまのニーズに応じて、二つの選択肢をご提供する考えです。
単に人件費を減らすということではなく、全体のサービスとしてどのような価値を提供するのかを考えていかないといけません」
決済という意味では、紀ノ国屋はJR東日本スタートアップなどが出資して設立したTOUCH TO GOが提供する無人決済店舗の仕組みにSMとしていち早く取り組んだ。店内のカメラと棚の重量センサーで商品の動きを把握することができるため、お客は商品を取った後、精算する場所に商品を置くだけでレジに登録することなく会計を済ますことができるものだ。
「TOUCH TO GOはわれわれが(SM)第1号として導入しました(22年10月オープンのJR目白駅のKINOKUNIYA sutto目白店、現在は閉店)。やってみて分かったのは、ご利用いただくお客さまの層が大きく変化しました。
もともと目白駅にあったお店にTOUCH TO GOを入れたのですが、無人決済ですからスタッフとお客さまとの会話がほとんどなくなりました。品揃えも絞ったため、商品についてのいろいろな会話を楽しんでお買物されていたお客さまがいなくなりました。その代わり、利便性、スピードを求めるお客さまが増えました。ご利用いただくお客さまの層が大きく変わったという点です。
この経験から、立地やその場所におけるニーズをしっかり見極めることが重要だと分かりました。ご利用いただいていたお客さまが離れた部分もありましたし、ご意見もいただきました。半面、新しいお客さまを呼ぶ効果もありました。
やはり、立地で、お客さまが何を求めていらっしゃるのか。利便性を求める場所であれば良いと思います。機能面を重視するところには良いですね。現在は店舗のある商業施設の従業員休憩室に設置し活用しています。
TOUCH TO GOには向く店舗とそうでない店舗があります。当社は季節商品などで頻繁に棚を変え、商品を詰め込みたいという思いが強い。このような店舗には、向いていないように思います。逆に、ある程度同じような商品を買っていただけるようなお店には非常に良いと思います」
アマゾンが手がけたアマゾンゴーなどのレジレス、あるいは無人決済店舗が未来の小売りの姿として注目を集め、同様の店舗を多数の企業が開発するなどブームのようになったがその後、撤退が相次ぎ、さらにはアマゾン自体も撤退を決断する流れとなった。そうしたことを併せて考えると、紀ノ国屋がTOUCH TO GOを通じて得た知見は「小売業の店舗が何を提供しているのか」を考える上で非常に示唆に富む。
販促面では高齢層の固定客をがっちり押さえていることから、いまのところそれほど積極的ではないという。一方で、未来のお客として若年層の掘り起こしも求められる。
「2010年にJR東日本グループに入りまして、そのタイミングでアントレなど新しい業態を駅ナカに開発しました。路面のSMと駅ナカの店舗がある中で、駅ナカはお客さまの年齢層が若いです。
ただ、その層に対して積極的にPRできているかというと、まだできていない。今後は、JR東日本グループのJREポイントを活用するなどSuica経済圏との連携は積極的に取り組む必要があると捉えています。
まずは紀ノ国屋ブランドの価値をしっかり築くことを優先し、その取り組みを進めてきました。今後のアプリ導入やシステムへの投資を考えると、紀ノ国屋単独というのはなかなか難しい。今後はSuica経済圏との連携を強化しながら成長を図ることが、最も現実的な方向性だと考えています」
出店のハードルが上がっている中、成長戦略についてはどのような方向性か。
「チャネルとして先ほど『出店ペースを落としている』という話をしましたが、これは投資の焦点として『箱物の店』というよりは、『商品』に絞っていきたいということでもあります。商品を通じて『紀ノ国屋』ブランドの価値をより多くのお客さまへ届けていきたい。いままでは直営店舗を中心にやってきましたけれども、今後は卸やネットにしっかり取り組むことを考えています」
SM企業が売場に「紀ノ国屋」コーナーを設ける店があるが、これは卸売事業によるものだ。
「1000店舗ぐらいで商品を扱っていただいています。そこで紀ノ国屋の商品を知っていただいて、お買い上げいただくということが大事だと捉えています。ただ、3尺1本といった規模の店もありますから売上の比率的にはまだ小さいですが、2030年ごろには(売上高構成比の)20%を達成したい。商品に焦点を絞って、いかにお客さまとの接点を広げていくかに軸足を置いていきます」
PB商品の構成はどうなっているか。
「PB比率は現在30%台半ばです。PB商品数は1200SKUほど。国産に軸足を置いた商品開発を意識しています」
グロサリーに限らず、紀ノ国屋としてはベーカリー、あるいはSMタイプにおける生鮮の役割も小さくない。それぞれの供給態勢の現状は。
「ベーカリーは三鷹の工場(東京都三鷹市の第一工場、第二工場)で製造しています。インターナショナル(青山店)など店内に厨房を持っている店舗では店内でも焼成しています。精肉はミート工場(東京都三鷹市)を持っていまして、そこでブロックのカットなどをしています。山形牛(黒毛和牛)は一頭買いをしています。ブランド牛は一部、外部から仕入れています。
鮮魚・青果は市場から、バイヤーが立ち会いながら仲買経由で仕入れています。5店舗のためにそこまでやるのか、という部分は正直あります。ただ、バイヤーが立ち会うことによって、お互いに『もっと良いものを買い付けて、お客さまに提供しよう』という思いが強くなります。そこは大事なところです」
変わる購買行動と小売業のボーダレス化
JR東日本出身の富田前社長。小売業を経営する上で、重視している数値はどのようなものになるのか。
「経営的には営業利益が一番気になります。日々の数値では、来店客数と買上点数ですね。もともと(JR東日本に入社したのは)鉄道会社なので沿線開発、街の開発がしたかったんです。(紀ノ国屋に来て)、小売業は非常に奥が深く、同時に難しさもある事業だと感じています。本当に目先の話と、将来の話を同時に考えていかないと先につながっていかない。変化が激しいですから。本当に難しい」
購買行動の変化も感じている。
「買上点数が減ってきていますし、節約志向は実際に直面しています。ただ、われわれは中小企業ですから、大手と同じことをやっても体力勝負になってしまう。われわれは質をしっかり追求すべきだと考えています。
『そんなに量はいらないけれど、いいものを欲しい』というお客さまが増えていらっしゃるので、その声にどう応えていくかというのがわれわれのミッション、生きる道です。
私見ですが、以前からの富裕層と新しい富裕層では、購買パターンが違うと思っています。以前からの富裕層(従来の富裕層)は『いい家に住んで、いい車に乗って、いいものを食べる』といった生活全体を高品質でそろえる傾向がありました。
一方、近年増えている新富裕層は住環境には強いこだわりを持ちながらも、食に関しては“手軽で十分”と考える方も少なくありません。そういう背景を踏まえるとやはり『食の価値をきちんと伝えていく』ということは大事だと考えています。
高所得者層は増加していますが、それが食への支出増につながっているかといえば未知数ですので、食に対しても価値ある支出をしていただきたいと思っています」
個人、あるいは家庭が食べ物を一から作ることが減る中、「食文化」が失われている部分もあるだろう。食文化を伝える仕掛けとして、食べ比べを軸に置いている。
「例えば『おせちを若い世代にどこまで受け継がれているか』と言えば、どうでしょうか。親御さんは食べられる感じはありますが、『子ども世代が食べなくなったから』『おばあちゃんが作らなくなった』といった理由でどんどん食べなくなっていると捉えています。
例えば『煮しめは食べないけど、栗きんとんだけ単品で買う』といったこともあるのではないでしょうか。食文化がどんどん変わってきていると認識しています。そこにわれわれとして、どう伝えていくのかを考えていかないといけない。
その点では、『食べ比べ』をしっかりやらないといけないと考えています。実際には、食べ比べる機会は意外と少ないのではないでしょうか。お買い上げいただく店が決まっていて、そこでお肉なら何々のお肉を買います、と。他のSMの商品と食べ比べるとか、銘柄牛を食べ比べるといったことがないのではないでしょうか。食べ比べてみると、『これほど違いがあるのか』と初めて分かる。そういう機会を増やしていかないといけないと考えています。
(新型)コロナ(ウイルス)前は試食も多くやっていましたが、コロナでできなくなってしまった。最近、かなり復活しましたが、食だからこそ香りも立てて、五感に訴えていくことをしっかり、地道にやっていくことが大事だと捉えています」
日本は人口減少局面に入っていて、1人当たりの需要がある程度決まっている食を取り扱うビジネスとして、将来の成長のために何らかの手を打たなければならない状況にある。紀ノ国屋が主に事業を展開する首都圏は日本で最も人口減少の影響を受けにくいといえるが、こうした日本の状況、併せて紀ノ国屋の今後について、どのような視座を持つのか。
「SM業というか、小売業は本当に『業』がボーダレスになってきています。そこが難しくて、われわれが取り扱う食品も、昔は取り扱っているのはSM、あるいは百貨店の地下といった状況でしたが、いまはドラッグストアでもどこでも売っていて、さらにネットでも手に入る。送料さえ払えば、どこでも手に入る環境になってきている。
競争相手も、ある意味見えるようで見えなくなってきている。だからこそ、『自社の強みや企業風土』を改めて見つめ直す必要があります。当然、売上も上げて、コストを下げていくといった体力作りも大事になってきます。
長い目で見れば国内人口は減少していくので、今までのままで良いのかと言えばそうは思わない。単純に人口という面では、海外が伸びている。成長機会を考える上では、海外市場も視野に入れていく必要があると認識しています」
実は、海外への商品供給も少しずつ走り出しているという。
「小規模ですけれども、商品を海外に卸しています。アメリカ、台湾、シンガポール、香港です。取引先は現地で事業を展開している日本法人で、国内取引で日本法人に商品を渡して、現地の店に紀ノ国屋コーナーを作って商品を売っていただいている、という形です。
いまはお客さまの反応を見ながら、どういう商品が売れるのか、味付けは合うのかといったことを、トライアルしながら反応を見ている状況です。ただ、購入者が日本人なのか、現地の方なのかによっても違うので、いろいろ見ていかなければなりません。海外は原材料の規制が厳しく、法体系も異なります。しかも、毎年変わっていきますので、学ぶことがたくさんあります」

人生を豊かにする「食」だからこそ、働くことにも喜びを追求
今後という点では、小売業の仕事の中身も大きく変わっていくと考えられる。
「いまは過渡期だと思っています。SMは、現状、本当に労働集約型だと思っているんですね。だけど、あと10年もしたら、品出しはロボットがやっているかもしれないですし、見ている風景が、全然違ってくるのではないかと思います。発注業務、品出し、棚卸しなどの人手を介さなくてもできる業務の多くが自動化されていくと考えています。
その中でも、『食』は絶対なくならない分野で、人生を豊かにする源だと思っています。身体の健康と心の健康、この2つの健康をつかさどるのが食だと思っているので、そこで働けるということには喜びがあると思います。
栄養バランスが良いとか、できるだけ添加物を使わずに素材のおいしさを引き出すとか、それで体の健康が作れますし、心の健康も、いやなことがあったときにおいしいものを食べると前向きな気持ちになれたり、何気ない家庭の会話が食と結び付くことで思い出になったりする。食の持つパワーは非常に大きい。
そこで働くことには大きなやりがいがありますし、そこを突き詰めていくことには意義がある。いろいろなやり方がある中で『提供する価値は何なのか』とみんなが考えていく中で、われわれは『高質さ』を追求しないといけない。一方、他社さんの追求する『安さ』も価値だと捉えています。
食に関して、自分たちは何を追求するのかを考え続ければ、そこで働く人たちの喜びや思いは、お客さまに自然と伝わっていくのではないでしょうか。
売場やオンラインは、食の魅力を体現する手段の1つにすぎません。せっかく売場があるのなら、そこでお客さまとどういう会話をしていくのか、売場提案で何を訴えたいのかを考えていくことが重要だと思います。
食には旬があり、季節があります。もし一年中同じ商品しか並ばなければ、食卓から季節の楽しみが失われてしまうでしょう。マンゴーやブドウなど、季節ごとに移ろう果物が並ぶことで、食を通じて季節を感じることができる。
そうした季節の移ろいを楽しめることも、食が人生を豊かにする価値の1つだと思うので、そうした価値をお客さまと共有できることが、私たちにとっても大きな喜びだと思います」
70年以上前、「セルフサービス」という革新的な手法をいち早く取り入れた同社。1910年の創業から115年以上を経たいま、日本における出店環境の厳しさ、またマーケットの縮小という現実も踏まえた形で、今後はそのブランドを生かした形での「商品」軸による成長戦略を描く。
JR東日本グループの資産を生かしつつ、食の提供、さらには食文化の担い手の役割をどのように果たしていくのか。今後の同社のビジネスの革新性に注目したい。









