百貨店へ新規出店、「ヤオコー」まるひろ南浦和店が狙うものは?

2020.08.25

更新:2020.08.26

ヤオコーが、百貨店の1階部分に出店した。7月28日、埼玉県地盤の丸広百貨店の南浦和店の1階食品館跡にヤオコーまるひろ南浦和店を開業。旧浦和市の浦和地区6店目としてドミナントを強化する他、居抜きのため制約のある狭いバックヤードの中での店舗運営に挑戦することで、都心店舗モデルのノウハウ蓄積を図る狙いもある。この出店で店数は169店となった。埼玉県内では92店目となる。

JR京浜東北線、武蔵野線などが乗り入れる南浦和駅から約200m、徒歩約2分の駅前に立地する。周辺には高層マンションや多層階アパートが多く、出店1km圏内の人口密度は1万5000人以上と高い。

年齢構成は30~59歳がボリュームゾーンとなっていて、ヤング層を中心に1㎞圏内で人口は107.0%、世帯数は108.7%と、増加が顕著な地域だという。一方で、世帯年収は埼玉県平均と比較して高く、さまざまなお客が密度濃く存在する商圏といえる。

また、さいたま市南区の1世帯当たりの自家用車保有台数は埼玉県平均と比較して低く、駅利用者が多いことから自転車、徒歩での来店がメインとなるとみている。

ヤオコーとしては、まるひろ南浦和店のメインターゲットを30~49歳の世帯人数2、3人のヤングファミリーに置き、50~59歳の子育てが終わった2人家族と単身者の仕事帰りの人をサブターゲットとした。

高いグレードの商品から値頃の商品まで

まるひろ南浦和店のマーチャンダイジングの特徴は、多様なお客が周囲に住む駅前百貨店の1階らしく、高いグレードの商品から値頃の商品まで、アイテム数や量目のSKUを広げた「幅広く対応した商品構成」としている点にある。

ストアコンセプトは「お客さまに『おいしさ』を伝えて笑顔を提供するお店~『美味しさ』・『楽しさ』・『安さ』でお応えし、お客さまの食生活を豊かにしよう~」。

百貨店らしい品揃えでは、たとえば野菜ではハーブを中心とした洋野菜や京野菜、有機野菜などのこだわり商品を強化。

日配では、埼玉県で消費量が高いチーズを強化。日常の商品から「ちょっといいもの」「専門性」のあるものまで「選べる、充実した品揃え」のコーナー展開によって差別化を図る他、漬物を強化し、産地や原料にこだわった商品、季節を感じる旬の野菜を使った商品などを展開する。

主通路の突き当たり、角にワインとチーズをコーナー化する売場。チーズは同店での強化分野

一方で、幅広い対応ということでいえば、精肉では「和牛3点盛り」などの高いグレードの商品を取りそろえつつ、大容量の買い得商品の「わくわくパック」をコーナー展開することで、「選べる売場・値頃を感じる売場」を実現する。

わくわくパックは580円(本体価格、以下同)。オープン日は2パック1000円でバンドル販売

最近のヤオコーは「テリョーリ(手料理)」に関心の高いヤングファミリーも意識した形で生鮮売場での「素材の売り込み」への注力が見られ、たとえば鮮魚では「切り身」、精肉では「焼肉・ステーキ」を前面に打ち出し、多様なバリエーションでの提供を試みている。さらにまるひろ南浦和店では、ドライ食品で専用調味料に注力し、生鮮素材と組み合わせたメニューの提案に注力。これも素材の売り込みをサポートするものだ。

鮮魚では平ケースで切り身を大々的に展開
鮮魚、精肉では平ケースでの冷凍の商品の展開が目立つ。精肉ではファスナー付きの商品も品揃え。保存性に優れている上、利便性も高い

もちろん、特にまるひろ南浦和店は百貨店の1階ということもあって、果実はではカットフルーツでビジュアルマーチャンダイジングを意識した売場づくりをしたり、鮮魚でも夕方において「選べる」単品盛りの強化や電子レンジやフライパンで簡単に調理できる加工済み商品、さらに精肉売場ではミートデリカを強化するなど、簡便ニーズに応える商品もしっかりと強化している。

ミートデリカでは、オープンセール期間、アンガス牛のローストビーフを販売した

ただし、企業によっては生鮮を含めた素材部門が、それぞれ商品の加工度を高めた商品を強化する中で、生鮮惣菜やミールキットなどの半加工品の品揃えが増加していることを鑑みれば、ヤオコーは「生鮮は素材」「惣菜はデリカで」という要素が強いという感覚を持つ。一時期品揃えを強化していたミールキットは、青果部門にごくわずかを残すのみとなっていることなどからもそうした傾向がうかがえるのである。

その意味で、惣菜を扱うデリカ部門は重要である。インストア製造の強みを生かした焼き魚、魚唐揚げ、煮魚といった魚惣菜の「漁火(いさりび)」は、天ぷらも含めた形でコーナー化。企業によっては鮮魚売場で展開する魚惣菜も、あくまでデリカ部門で取り扱う。

また、鉄板を使ったライブ感のある中華惣菜「味庵」では、新商品の積極的な量販に取り組むことで差別化を図る。また、夕方からの出来たて商品を展開し、夕食のおかず、つまみとしてのもう1品の買い上げを狙う。

隣接した場所に他社のインストアベーカリーがあるため、ヤオコーとしてはインストアベーカリーを導入していないが、鉄板の隣りにバックヤードで製造する様子が見えるような形でピザコーナーを設置。焼きたてのピザ1ホール(約26cm)を500円(本体価格、以下同)で提供するなど強化を図っている。

寿司では、こだわりの「国産生本鮪」を使用した握り寿司や、大型店の一部と同店で初導入となった寿司飯とたねが1対1で、さらに10個にカットして女性でも食べやすくした太巻きなどを開発して展開。ホタテとアジをたねとした商品などが初登場。包丁で10個に切るのは技術的には難易度が高いという食卓のメインとしてだけではなく、こちらもプラスもう1品として「選べる」売場を提案する。

太巻きはバラエティ豊かな展開。自家製厚焼玉子を用いた韓国風海苔巻のキンパなども品揃え

直近にオープンした所沢有楽町店(所沢市)同様、青果で取り扱っているメキシコのアボカド専業農家・ミゲールさんのアボカドを寿司に商品化して展開。ミゲールさんのアボカドのデリカでの商品化は今年1月にオープンした東久留米滝山店(東京都東久留米市)からアボカドのタルタル焼きで始まった取り組みで、今回はワカモレ&タコスソースと鶏惣菜の「幸唐」の唐揚げを使ったチキン南蛮アボカドタルタルを新発売。

また、「惣菜屋さんのデザート」として特大サイズの杏仁豆腐、フルーツゼリーを一部大型店と並行して初導入。所沢有楽町店から取り扱いが始まった「スイートポテト」の売れ行きが良いこともあり、新型コロナ禍による巣ごもり需要の影響も受け、デザート需要を取り込むことを目的に開発したという。

また、「ほっこりカボチャのデザートサラダ」は、まるひろ南浦和店のオープンに先立つ7月8日付でリニューアル。ホイップクリームを自社工場製造に切り替え、おいしさを追求。生クリームは菌数の管理が難しいため、他社にはなかなかできない商品と考えている。

初年度の売上高構成比計画は生鮮が37.1%、デリカ14.1%で、生鮮とデリカで51.2%と過半となる。また、SKUは生鮮が約1200、デリカ約300、グロッサリーは約1万1000、合計約1万2500と、品揃えを強化した分、多くなっている。

レンジアップ惣菜を含む冷惣菜はデリカ売場での存在感も次第に大きくなっている。ヤオコーでは和惣菜には熟成八方だしを使用している
日配のプライベートブランド商品として、「さぬきカレーうどん」が登場。国産小麦を100%使用して本場の香川で製造。甘口ベースのスープを使用しているが、付属のスパイスで辛さを調整できる。紙エプロンも付いていて親切だ

百貨店というと、高いグレードのみに対応した商品構成としがちであるが、ヤオコーの場合、高いグレードの商品を強化しつつ、一方で値頃の商品を展開することも同時に強化している点が大きな特徴といえる。若年層の取り込みを図る上では、やはり価格対応は重要になる。ヤオコーは「商圏内全住民カスタマー化」を目指しているが、そのためにはあらゆる人のニーズに対応しながらシェアを向上していくことが求められる。

価格帯の拡大は、ロスを含めた商品の管理など難易度が高い取り組みである。それにあえて挑戦していることにこそ、ヤオコーの強みが表れている。

ヤオコーまるひろ南浦和店概要

所在地/埼玉県さいたま市南区本町1-7-4
オープン日/2020年7月28日
営業時間/9時~22時
延べ床面積/2577.31㎡(779.64坪、ヤオコー売場面積)
駐車台数/204 台
駐輪台数/149台
店舗面積/1833.60㎡(554.66坪、ヤオコー床面積)
店長/横山 淳
従業員/正社員18人、パートナー・ヘルパー・アルバイト159人(延べ人数)
年間売上げ/初年度22億円(予定)

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