日本のオーガニック市場を創造するBio c’ Bon(ビオセボン)の現在地

2022.04.12

2020.09.02

商業施設1階への出店で、天井高が高く、開放的な店内

ビオセボン・ジャポンは8月25日、19店目となるコレットマーレ店をオープンした。首都圏を地盤とする同社は東京都に14店を展開。今回のコレットマーレ店は神奈川県内では新百合ヶ丘店(川崎市麻生区)、横浜元町店(横浜市中区)、小田急藤沢店(藤沢市)、日吉店(横浜市港北区)に次ぐ5店目、全社では19店目となる。

JR桜木町駅から徒歩約1分の場所に位置する大型商業施設の1階のアパレルの撤退跡に出店した。「有機に特化したスーパーマーケット(SM)なので、館自体の集客には貢献できる。お客さまの幅も広がっていくのかなと期待している」と今井顕輝・取締役サプライチェーン本部本部長兼輸入部部長。

同社は、イオンと、フランスを中心にヨーロッパでオーガニック(有機)SM事業を展開するBio c’ Bon SASを傘下に持つMarne & Finance Europe社が50%ずつの合弁の形で2016年6月に設立、同年12月に東京都港区の麻布十番に1号店をオープンして以来、日本におけるBio c’ Bon(ビオセボン)の多店化を進めてきた。

日本では「有機」と認証されるオーガニック商品は、通常とは異なる生産体制を必要とするため調達の難易度が高いが、欧米では十数年前からブームのような状態になって年々、その存在感を増している。その過程で、付加価値型の小売業だけでなく、ディスカウンターまでも当然のように取り扱う状態になり、「オーガニックはもはやメインストリーム」とさえ言われるようになっている。

イオングループで協働してオーガニックの調達

一方で、日本ではなかなか欧米のような広がりを見せていない。さまざまな理由があると思われるが、大きな要因として生産者を含めた調達面の難易度が極めて高いことが挙げられる。そうした中、ビオセボン・ジャポンは生産者と取り組みを進めながら地道にオーガニック商品の調達先を増やしてきた。

ビオセボン・ジャポンが属するイオングループは、大手小売業の中ではプライベートブランド(PB)のトップバリュなどの商品開発を含め、長年オーガニックの販売に注力してきた唯一の存在であると言っても過言ではない。

そうした背景があってこそだが、グループの強みを生かした商品開発は強力な武器になる。コレットマーレ店の店頭に陳列されているオーガニック植物性ミルクの「イソラビオ」は、グループシナジーが発揮できた好事例だ。イタリアで約70%という圧倒的なシェアを持つ人気ブランドをラインアップ豊富に直輸入して販売している。

ビオセボン・ジャポンだけの販売量ではそれほどの量を確保できないが、グループの分とまとめて調達することで物量を確保できる。イソラビオはグループ供給を視野に入れて輸入したが、実際、ビオセボンの他、イオンリテールの約190店、ダイエー、光洋の一部の店でも販売。グループ供給前提の直輸入のため値頃での販売が可能になったこともあって、大きな反響があったという。

もちろん、1店当たりの販売は全く違い、20店足らずのビオセボンが全体の6割ほど売上げる結果とはなったが、それでもラインアップの充実や値頃の価格などはグループで調達してこそ実現できたといえる。また、現在は必然的に大商圏型の店となっている日本のビオセボンのお客にとっても、より身近な店であるグループの店で買えるようになることはメリットとなる。イソラビオ側も日本の市場に可能性を感じていて、ブランディングなどより深い取り組みにもつながっていく見込みだが、これもグループでの調達が生きている。

今後もこうしたグループの強みを生かした調達を進化させていく意向で、同じ調達先に関して、オーガニックのラインをビオセボンで販売し、通常のラインをグループ企業で販売するといった形で調達することで、物量を確保しながらさらに低価格も実現するような商品の展開も予定している。今井取締役は、「さらに購入しやすいリーズナブルな価格のオーガニックの商品開発を秋ぐらいから積極化していく」と意気込む。

植物性ミルクの「イソラビオ」。ソイ(大豆)の他、アーモンド、ライス、オートなどがラインアップとして並ぶが、ビオセボン・ジャポンではアーモンドが断トツで、オートが続く。特にオートは他の商品があまりないためか、しばらく欠品するほどの反響だった。ソイは豆乳など競合が多いこともあるが、欧米の流れではソイはトレンドとして下降傾向にあるという

パレットに混載しての調達ができるメリット

イソラビオは、ビオセボン・ジャポンなどが日本で独自に調達している商品展開であるが、もちろん、フランス本国のビオセボンの調達網が活用できるメリットは非常に大きい。「やはり現地にロジスティックセンターを持っていて、各サプライヤーがそこに毎週商品を運んでいるため、われわれが集荷しなくてもよく、さらにビオセボンが購入している価格で調達できるメリットは大きい」と今井取締役は強調する。

品揃え実現の面ではそのメリットは顕著で、1アイテム当たりわずかな数量から調達できるようになっている。商品を輸入する場合、通常は1パレットに1SKUが基本となるため、相応の販売量が必要となる他、品揃えの充実が図りづらいという問題があるが、ビオセボンの調達を生かすことで1つのパレットに多くのSKUを混載して持ってこられるため、「ロングテールの品揃えが実現できる。これは他社にできない」(今井取締役)ということになる。

コレットマーレ店のアイテム数は2600アイテム。これは最近オープンしている店としては平均的なアイテム数だが、これだけの商品をそろえられるのも、フランスのビオセボンの調達網があってこそということになる。

一方で日本のビオセボン独自の商品展開として「惣菜」がある。これはフランスなどのビオセボンでは扱っていないものだが、オーガニックが普及していない日本で展開を始めるに当たって、「まずは食べてもらって知ってもらう」という意味合いもあった。もちろん、昨今の簡便に対する需要に応える意味もあり、逆に「日本発」の取り組みとしての広がりも期待できる。

当初は店数も少ないこともあり、大型店を中心に店内加工での提供がメインだったが、店数の増加と併せ次第にサプライヤーの開拓も進み、アウトパックによる豊富な商品展開が実現できるようになっている。今後、店内加工については旗艦店に近い形の、店内で製造して提供することが適した店では展開するものの、アウトパックの商品が充実してきたため無理に手掛ける必要がなくなった。

主力となる弁当については模索が続いていたが、今年の6月から日替わりの低糖質弁当という新しい切り口としてスタートした商品に手応えを得ている。ビオセボン・ジャポンがサプライヤーに食材を供給し、協業でメニュー開発をして取り組んでいる。現状は全ての食材がオーガニックではないが、安定的な販路がオーガニックの生産における大きな鍵となる中、全てをオーガニックにすることを目指して販売量の拡大に努めていく。

日替わりというのもポイントで、お客からすると飽きずに楽しめるという側面もあるが、供給側としても、オーガニック自体、安定供給が難しいという性質があることから、状況に応じて対応できる日替わりが適しているという側面もある。

有機をアピールした各種弁当が並ぶ。売れ筋は日替わりの「ザ・低糖質弁当」。本体価格950円だが、もう少し下げたいところだという。ただし、サプライヤーの採算も考えると継続できる水準でなければならないということもある。その点では付加価値をどれだけ上がられるがポイントになる

巣ごもり消費と野菜の相場高で農産の売上げが大幅増

新型コロナウイルスが生活に大きな影響を及ぼしているが、巣ごもり需要に加え、野菜の相場高の状況もあって、8月までは農産部門の売上げが全体をけん引する状況にあった。長雨も影響もあって農産の調達はひっ迫、農産物の状態が良くなく、産地にも出荷しない動きなどもあったというが、何とか乗り切ったという。

巣ごもり需要もあって家庭内で調理する時間が長く取れたためか、調理野菜の伸びが野菜カテゴリーの中では一番高く、よく売れたという。また、相場高のため一時期、同社が取り扱う有機の商品と通常の商品との価格が逆転し、有機の商品の方が安いケースもあったことも、今回の農産の支持率が上がることにつながったとみている。

コレットマーレ店では農産物を156アイテムそろえる。同社の店の中では比較的アイテム数が多い部類に入る。野菜はほとんどの商品が有機認証(オーガニック)の商品。昨今の相場高騰で相対的に値頃になり、大きく売上げを伸ばした
7月に発売を開始し、農産が売れる中でよく動いているドイツのメーカーのオーガニックのプレミックスの調味料。通常のプレミックスより調理工程を多く必要とするが、それがかえって料理をする楽しみにつながったり、本格的な料理ができるといった要素が支持の理由と考えている
冷蔵の精肉ではイオンのPBトップバリュグリーンアイナチュラルのタスマニアビーフなどを取り扱う
生産者と取り組みを進めてきた榛澤牧場の有機認証を受けたアンガス牛を冷凍で取り扱う

特に盆の時期を含む週は、農産の売上高構成比が約19%と全部門でトップとなった。既存店売上高前年比では2倍以上。同社が出店する東京都と神奈川県の都市部では、今年、流出が減ったことも大きかったようだ。麻布十番など都心エリアは通常であれば流出が多いが、今年はほとんどそれが感じられなかったという。今年はゴールデンウイークも流出の影響があまり感じられなかったというが盆の時期はそれ以上だった。

農産だけでなく、全体でも盆の時期を含む週は前年比170%ほどの売上げとなった。さらに、通常は盆の時期が過ぎると帰省や旅行などから帰ってきて、改めて冷蔵庫に補充するケ型の納豆、豆腐、牛乳といった商品が売れるが、今年はその傾向がほとんどなかったという。

出店立地で言えば、やはり住宅立地の店の支持率が高くなっている。ただ、住宅地、あるいは商業施設内や都心部など出店立地にかかわらず、ビオセボンというフォーマットの全体的な傾向として、岡田尚也社長は次のように特徴を説明する。

「日常使いする店として認知されているか、されていないかがすごく大きいと判断している。早いと半年ぐらい、大体1年ぐらいすると、日常使いができるということが定着するとお客さまが増える」

前述のように、そもそも日本のビオセボンは、現状は必然的に大商圏型になる。今回のコレットマーレ店の場合、同じ商業施設内の地下にはサミットが出店していて、その意味ではすみ分けも前提となる。一方で、今後ビオセボンが「日常使いする店」にどの程度なっていくかによって、その競合関係も変わってくることになる。

それは日本において、今後オーガニックなどのライフスタイルがどのような存在になっていくかによって決まる。特に今後の日本を支える若年層の意識が大きく影響を及ぼすことになるが、その中にはオーガニックに通じる文脈も色濃く見られるという。そうした諸々の要素を反映する場として、ビオセボンはまさに最先端を走っている。

「新しい生活様式」にプラスチックの代替素材を使用したオリジナルマスクケースを開発。マスクケースの内側に抗菌製品技術協議会(SIAA)認定の抗菌加工を施している他、石灰石を主原料としたプラスチック代替素材の「LIMEX(ライメックス)」(株式会社TBMが国内で自社開発、特許取得)を使用し、環境に配慮。本体価格500円。「マスク派生品のニーズが高まっている。せっかくだったらビオセボンのアイデアでできないか。生活の変化に合わせたもので、ニーズがあるものに関しては、食品問わずどんどんチャレンジしていきたい」(今井取締役)
ビオセボン全店で人気の量り売りは63種類。ドライフルーツやナッツ、チョコレート、グラノーラなどを好みの量(20gから)で購入できる。そのまま食べられる他、料理や菓子を作る際の材料としても活用できるアイテムが豊富。新型コロナウイルスの影響で巣ごもり消費が注目される中、「おうち時間」が楽しく過ごせるアイテムとして提案
オーストラリアから輸入しているオーガニックのコンブチャもよく売れている(右側の商品)。コンブチャは発泡性の発酵飲料
米国コカ・コーラ・カンパニーが買収したオーガニックのお茶を製造するオネスト・ティーの商品を販売。現状は有糖の商品を試験的に販売しているが、将来的には無糖の商品も取り扱っていきたいとしている
スイーツではグルテンフリーの商品も取り扱う。ピンク色のシールを貼って分かりやすく販売している

Bio c’ Bonコレットマーレ店概要

所在地/神奈川県横浜市中区桜木町1-1-7-1階

オープン日/2020年8月25日

営業時間/8時~22時

駐車台数/546台(施設共有)

駐輪台数/218台(施設共有)

売場面積/52.38坪

アイテム数/2600アイテム

お役立ち資料データ

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