西友の中期事業計画「スパーク2022」から学ぶ。PBなど新戦略を続々実施フェーズへ

2020.09.07

更新:2020.09.10

西友が2019年6月に発表した中期事業計画「スパーク2022」に基づいたプライベートブランド(PB)開発および調達における新たな戦略を発表した。

スパーク2022では、「地域のみなさまに、良いものを安く」をコンセプトとし、新たに「お客様への4つの約束」を設定。1つ目は「毎日のお買い物を一番安く」。ウォルマートグループの一員として、同社が始め、守り続けている毎日低価格(エブリデーロープライス、EDLP)を実現するため、価格プロモーション、PBや独自輸入商品を拡充していくことがそれにあたる。

2つ目は「新鮮な生鮮食品」。地域で支持されるスーパーマーケット(SM)になるために品質と鮮度を徹底的に追求。全国6000以上の生産者と契約した直送野菜コーナーや清潔で明るい店内を実現することで「西友といえば新鮮」と言ってもらえるように改善を図る。

3つ目は「うれしい、おいしいお惣菜」。健康的でおいしくて安く、しかもバラエティ豊かな惣菜の品揃えを実現し、地域のお客にいつでも出来たて、焼きたてを提供する。

4つ目は「快適な買い物体験」。探しやすく、分かりやすい売場はもちろん、レジもセルフ化やキャッシュレス対応をすることで、より早く、より親切なレジを目指す。毎日のお買い物だからこそ、ストレスをなくすことが重要と考えている。

22年にグロサリー売上げの20%を「みなさまのお墨付き」に

今回、スパーク2022の「地域のみなさまに、良いものを安く」の実現を目指し、PBの「みなさまのお墨付き」ラインの新商品開発を加速化。発表会に臨んだ同社の木下数基・商品本部 食品・住居・衣料品部 バイス・プレジデントは、「一番目の約束である『毎日のお買い物を一番安く』を実現するために、PBが大きな柱になる」という。

現在、西友では「有名メーカー(ナショナルブランド、NB)と同等以上の品質で10%以上低価格 ~良いのに安い!~」というコンセプトの「みなさまのお墨付き」と、圧倒的な低価格にこだわった「きほんのき」の2つのPBを持つが、「今後は質の高い商品をEDLPで提供できる主力ブランドの『みなさまのお墨付き』をより一層強化していく」(木下氏)。

「みなさまのお墨付き」は12年12月に登場。第三者機関が実施する消費者テストで当初は70%以上、19年10月からは80%以上の支持率を獲得したものだけを商品化する方針の下、ラインアップを充実させてきた。テストで不合格の場合、商品改良をしてテストに臨む、もしくは発売を見合わせることを徹底している他、一度商品化した後も定期的にテストを実施。商品の魅力に変化がないか、消費者のニーズに沿っているかが検証される。

たとえば、カップタイプの「具材を味わうとん汁」は当初、支持率が65.1%となり発売できなかった。消費者テストのコメントに「具材が少ない」という不満の声があったため具材の量を60%以上増やすという商品改良をしたところ、96.4%という高い支持率を得ることができ、販売することができた。

あるいは、80%以上の支持率があったとしても、消費者テストのコメントを参考に改良することもある。トースターで温めて食べる「ピザマルゲリータ」は、もともと88.0%の支持率を獲得、そのまま発売することもできたが、消費者テストのコメントに「バジルの風味が弱い」とあったため、乾燥バジルを追加する改良をしたところ88.9%に向上。バジルの風味が良いとのコメントが寄せられる結果をもたらした。12年にブランドを立ち上げて以来、消費者テストの延べ参加者人数は53万725人に上る。

20年8 月時点のアイテム数は約1000。今回の新商品開発の加速化に際し、8月後半から10月にかけてインスタント食品、菓子、缶詰、日用品、ペットフードなど100品目以上の新商品を発売する。20年12月期は前期比で2倍の新商品を発売する予定で、22年には2000アイテム以上の商品を展開する計画。また、今後はドラッグストアなどへの対策の意味も含め、HBA(ヘルス&ビューティエイド)分野を強化していきたいという。

「名前のとおり、お客さま、一般の消費者の皆さまからお墨付きをもらったもののみを商品化している。お墨付きをもらっている商品だけを発売しているので、お客さまから『どれを買っても間違いがない、外れがない』という声を多くいただいている」(木下氏)

発売から8年近く経った現在でも順調に成長を続けているが、今年は新型コロナウイルスによる需要増もあって売上げは大きく伸長しており、昨年比20%以上の増加を見込んでいる。この勢いを継続しながら22年にグロサリーの売上高構成比で20%以上達成を目指す。

ニューノーマル時代の生活スタイルに合わせた4軸の商品開発

木下氏は、「近年大きな災害が続いているが、SMはお客さまの生活を支えるライフラインであるという思いをさらに強くしている。このたびのコロナ禍、緊急事態宣言などの社会情勢の変化で、お客さまのインサイトも大きく変化していることを、消費動向からはっきりわれわれも認識することができている」と語る。

昨今の巣ごもり、在宅時間の増加による朝昼晩の調理負担の増加、さらに今後、景気が落ち込む見通しからの生活防衛意識の高まりといった要素を鑑み、西友では商品開発においえて大きく4つの機軸を設定した。

簡単、手軽に、料理できる食事をサポートする「Quick & Easy~もっと簡単に、もっと美味しく」、巣ごもりをサポートする「Stay Home~おうち時間を、楽しもう」、健康的な暮らしをサポートする「Healthy~健康生活、はじめるチャンス」、罪悪感を持たない食欲をサポートする「Guilt-Free~罪悪感少なめのおやつ」の4つである。

発表に臨んだ本間哲太郎・商品本部 マーケティング部 ブランド担当 マネジャーは、その背景を次のように説明する。「今後の商品開発を行う上において、新型コロナウイルスの影響を抜きにしては語れない。消費者の行動変化は大きく分けて2つあったと思う。1つは節約意識。先の見えない新型コロナウイルスの影響で消費者には不安が広がり、財布のひもも堅くなっている。小売りの現場でもコストパフォーマンスに優れた商品を、お客さまが求めているし、また、信頼できるブランドの商品が選ばれる傾向が顕著に表れている。もう1つは自宅時間の増加。やはり自宅での料理の時間や家事の時間が増える。一方でテレワークなどもあって自由な時間は増えていない」

女性ターゲットの商品が続々登場

具体的な商品としては、まず、「Quick & Easy」の代表的な新商品として、「On the ごはん」シリーズが挙げられる。レトルトカレーは150円(本体価格、以下同)という値頃の売価で加工食品の中でも人気の高いカテゴリーだが、コロナ禍による在宅需要の高まりもあって、現在、売上げは前年比20~30%増で推移しているという。一番の売れ筋は「カシューナッツ香るマッサマンカレー」。

今回、このようなニーズの高まりに合わせて開発された「On the ごはん」シリーズは、茶わんに盛ったご飯にかけるだけで手軽に、素早く食事が取れるというコンセプトの商品。「胡麻担々」「ユッケジャン」「ガパオ」「黒酢入り酸辣湯」といった外食で人気、かつ家庭で作るにはひと手間必要なメニューをラインアップし、特に「女性の1人での食事」を想定して開発した。家族がそろって食べるようなシーンではなく、本来外食で食べるようなメニューを自宅で、仕事の合間に1人で手軽に取れるというコンセプトで開発したものだ。

時代のニーズにフィットした商品として、発売以来1週間の計画比で約6倍程度の売上げを達成。今後は現在のアジアンメニューに加えて和食メニューの開発も計画している。1食150円の売価だが、9月末までは2個280円のキャンペーンも実施している。

「Guilt Free」の機軸の商品としては、「オトナのお墨付きおやつ」シリーズがある。おからなどを使うことで食物繊維を豊富に含む他、1袋当たりの糖質を9.3gに抑えたロカボビスケットの「ザクザク食感の豆乳ビスケット」(38g150 円)や、チョコレートに食物繊維のイヌリンを砂糖の代替原料として使用することで1袋当たりの糖質を4gに抑えた「やさしい甘さのアーモンドチョコレート」(32g150円)、あるいは「ひじきと野菜のおせんべい」(40g150円)など素材にもこだわったおやつを約20種類開発。

新型コロナウイルスの影響による在宅時間の長期化や不安、ストレスもあってか、菓子は売上げを大きく伸ばしているカテゴリーの1つになっている。これまでは、どちらかといえば「安さ」に対するニーズが強かった菓子だが、昨今では食べ切りサイズの容量、持ち運びやすい形態、NBにないオリジナル性や新規性の高いフレーバーの他、カロリーや糖質の少なさなど「罪悪感なく食べられる」といった要素などが求められるようになっているという。

そこで、今回、大人の女性をターゲットに、手軽に食べられるサイズ、かつ「糖質オフ」や「食物繊維」をキーワードにした菓子を開発。約20種類の商品を開発するために、候補となる商品を50種類ほど集めて商品を選定、改良を幾度となく行いながら発売に至った。さらに消費者テストで80%以上の支持率を獲得することにも大変に苦労した。実際、2品ほどについては、パッケージを作成したものの消費者テストで合格点に届かず、発売できなかった商品もあるという。

「オトナのお墨付きおやつ」シリーズ。菓子のニーズが高まる中、「罪悪感なく食べられる」商品を開発した

「みなさまのお墨付き」でペットフードを初めて開発

「Healthy」の切り口では、もちろん、在宅による運動不足もあって「Guilt Free」の菓子にもあった「糖質オフ」といった切り口も重要になるが、今回、代表的な商品として「無添加せっけん泡 ハンドソープ」「無添加せっけん泡 ボディソープ」が挙げられる。香料、着色料、防腐剤、合成界面活性剤無添加、100%植物由来のせっけん成分と水だけで作られた商品で、「地球にやさしいものは人にもやさしい」という発想から開発に着手。9月1日の発売にこぎつけた。

「Stay Home」では、「みなさまのお墨付き」では初めての発売になるペットフードが挙げられる。ペットフードはペットに意見を聞くことができないため、消費者調査に工夫が求められるが、今回は実際にペットを飼っていて今回発売する商品の類似品を使用しているオーナー100人以上が消費者テストに参加。容量、価格と共に普段使用している商品と比較した食べ具合を総合的に評価してもらい80%以上の支持率を達成した犬のおやつと猫のウエットフード8種類を発売することができた。支持率80%以上というハードルが高く、犬のおやつで3種類、猫のウエットフードで5種類が不合格になったが現在鋭意商品改良中だという。

犬のおやつは新鮮な鶏肉を低温熟成した商品で、着色料や発色剤を使用せずに国内の工場で製造。全5種類のラインアップがあり、各258円。猫のウエットフードは穀物を使用しないグレインフリーを謳う。マグロとカツオを主原料としている。小型の猫やシニアの猫に最適な小容量タイプの缶詰で、3缶パックで各179円の売価設定となっている。

なお、スパーク2022の約束のうち、「新鮮な生鮮食品」に向けては、「みなさまのお墨付き」と青果の野菜を組み合わせた新たなレシピを制作し、「ちょい足し野菜」プロジェクトとして8月31日から開始している。

「日本人の野菜不足」の課題の解消を図るため、厚生労働省が提唱する1日の野菜摂取目標(350g)と日本人の平均野菜摂取量(290g)の差である60gの野菜を「みなさまのお墨付き」の定番食品に加えることで、意外な味の変化をもたらしたり、驚きのおいしさに生まれ変わるレシピ18品を、SNSで有名な料理家「ジョーさん。」「ぐっち夫婦」と開発。8月31日から10月31日の期間、全国の基幹店舗に特設コーナーを設け、レシピブックの配布などを実施している。この取り組みには、「Quick & Easy」「Healthy」「Stay Home」といった要素が複合的に含まれているように思える。

統合型調達モデルが目指す「愛のある調達」とは?

今回、西友はPBの開発加速化と共にスパーク2022に基づく新たな取り組みとして「統合型調達モデル」も発表した。スパーク2022には大きく分けて「成長機会」と「コスト削減機会」が挙げられているが、今回の統合型調達モデルは、そのうちのコスト削減機会に位置づけられる。具体的には、19年7月に戦略調達専門チームを立ち上げることで調達方法をこれまでと変え、川上から川下まで一気通貫とすることで、より良いものをより安く安定的に供給することを目指していく取り組みだという。

背景にはマーケットの変化がある。「日本は人口が減っているが、世界的には人口が増えている。食の需要が、どんどん需要過多になっている」と平山勝也・商品本部 ストラテジックソーシング部 バイス・プレジデントは言う。また、温暖化や異常気象などによって、物の確保も難しくなってきていることもある。さらに日本においては品質と生鮮への期待が非常に高く、国産ニーズや季節性、産地、エリア特性の感度も高く、さらに新型コロナの影響によって価格感度が高まっている。

西友としてこうした状況に対し、地域に密着したバリュー・リテイラーとしての差別化、消費者の信頼を勝ち取るための品質、安定供給、低コストの実現が必要と考え、需要の高い商品を切らさないように安定供給を目指して取り組んでいく意向だ。

「従来の調達の仕方は、最終商品をセレクトするというものだった」と平山氏は語る。また、各部門が同じ商品について同じサプライヤーに個々に商談し、商談結果がばらばらであることもあった。こうした状況を踏まえ、「われわれの組織が調達に横串を刺す」(平山氏)ことで、産地から最終商品ができるまで間の調達プロセスにも深く関与。サプライヤーといっしょになってよいものをより安く、安定的に調達する仕組みを実現していくことを目指す。

「今回の戦略調達専門の組織を立ち上げた背景として、近視眼的な調達ではなく、サステイナブルな調達を目指すことがある。従来のセレクトバイイング的な買い方から、サプライチェーンの川上、川中の構造にも詳しくなり、サプライヤーといっしょになって仕組みを作り上げることを目指す。われわれのように外資の血が入った企業は得てして近視眼的な、短期的な結果を求めてドライ、かつ冷たいイメージで見られるが、われわれはサプライヤーさまとの関係性においては『ウエット』、社内的なスローガンでは『愛のある調達』を目指している」(平山氏)

平山氏は、今回の統合型調達モデルに取り組むに当たって、「QCD+A」の実現をキーワードとして挙げる。Qは「Quality」で「品質向上」、Cは「Cost」で「調達コストの低減」、Dは「Delivery」で「安定調達」、そしてAは「Agility(俊敏さなど)」で「早期実現」を示す。「われわれはこの「QCD+A」の実現で、地域の皆さまにより良いものを提供することに貢献していく」と平山氏は力を込める。

取り組みの肝は「マクロ環境分析」にあり

今回、PBの「みなさまのお墨付き」の「ツナフレーク」と青果の「冬の産直レタス」の調達について、このモデルに取り組み、成果が出たという。

ツナフレークはPBではあるが、いままではメーカーが最終商品を完成させた後、セレクトしていた。それに対し、統合型調達モデルでは、原材料から最終製品ができるまでのプロセスに入り込む。

「いままでは小売りの目線で欲しいときに買い付け、調達をしようとしていた。しかしながら、昨今の外部環境を踏まえ、例えばQの実現のために自分たちで工場を探した。Cでも競争力のあるコスト、売価を実現することができた。サプライチェーン全体の動きを分析しながら、ベストなタイミングとベストな条件で調達していくことを今回から行っている」(平山氏)

商品は「まぐろ油漬」と「かつお油漬」の2アイテムで、1缶70gで 98 円、3缶258円という売価。9月28日に発売される。

また、冬の産直レタスについても、従来は市場調達でコールドチェーンが維持できなかったが、新しい調達モデルで取り組むことによってコールドチェーンが維持できるようになった。5℃以下での管理を徹底できた上で、コストも産直スキームを中心に調達活動することで、単価を17%下げることに成功。産地から店舗までのリードタイムも従来の5日から3日に短縮。17%の単価削減などの効果もあって、今年1月のフリルレタスの関東の売上げは3.9%増加するという結果をもたらした。

平山氏は、「この取り組みの肝はマクロ環境分析をどれだけ深くできるかによる。どれだけ先まで読めるかで獲得できるオポチュニティが変わってくる。われわれとしては情報が顕在化する前に、先の動きを予測してアクションに反映していく」と語る。

すでに現状でも、100施策ほどを手掛けているという。今回の統合型調達モデルは日本独自のモデルとなる。生産者までさかのぼる取り組みは、チェーンストアではバーティカルマーチャンダイジングとして追求されてきたものだが、今回の専門組織による組織横断的な取り組みは、長らく指摘されてきた「部門の縦割り」の弊害についても、解消に向かうための手がかりとなるかもしれない。平山氏は、今回の統合型調達モデルについて、「日本発の取り組みとして成功させて、グローバルに紹介したい」と意気込む。

生活必需品765品目を平均5.1%値下げ

PB、調達の強化に加え、9月4日からはNBの生活必需品765品目を値下げ。価格強化を大きな柱として掲げるスパーク2022に基づくものだが、西友としては、新型コロナウイルスによる先行き不安が懸念されるなど、節約志向は今後も継続すると予想。先手を打った形だ。対象品目はNBのカレー、スナック菓子、コーヒー、衣料用洗剤、シャンプーなどで、平均値下率は5.1%、最大値下率は17.7%となっている。

今回の値下げは期間を限定するものではなく、継続的な取り組みとするなどEDLPを実践。今後も「地域のみなさまに、良いものを安く」をより高いレベルで実現するため、地域に密着したバリュー・リテーラーとして、エリアごとに商品や価格を見直すことも進め、全国一律に実施する「超得」「超超得」などの価格プログラムと共に低価格を追求していく。

Interview1

商品本部 食品・住居・衣料品部 バイス・プレジデント

木下数基

きのした かずき 1982年西友入社。家庭雑貨バイヤー、シニアバイヤーとして仕入れ、販売促進、売場設計、商品開発に従事。海外の有名日用品ブランドの導入や日本における「フラッグシップ・ショップの開発にも携わる。その後、家庭雑貨部、寝具インテリア部、日用品部の責任者を歴任し、2012年より商品本部住居用品部バイス・プレジデントに就任。19年より現職。商品開発部、EC商品戦略部を兼務

商品開発担当と商品部バイヤーが密接に協力できる体制に

——スパーク2022の目標は

木下 PBにおいては、「みなさまのお墨付き」のグロサリーの売上げの20%以上が目標値となる。いまは15%ぐらいだ。

——数字としてはここのところ20%ずつ成長している。新店もそれほど出店しているわけではないが。

木下 1つは、売場の中での展開を増やしている。いままではモジュラー(棚割り)の中にカテゴリーごとに点在していたが、「スパーク2022」を反映した改装店などでは、定番の中に入っているだけではなく、店舗の入り口やエンドキャップ(動線にある売場)にも「みなさまのお墨付き」だけでコーナーを作ったりしている。直近では吉祥寺店(東京都武蔵野市)の1階の、店に入ったところにショップ・イン・ショップとして、30坪ぐらいの売場を作ってそこに「みなさまのお墨付き」のコーナーを作ったりしている。

——節約マインドも強くなる中、PBだけのアルディのような小型店も考えられるのではないか。

木下 将来的にはそういう方向性も1つあるのではないかと思う。ただ、PBだけで全てのカテゴリーをカバーしないとお客さまに不便を与えてしまうので、そこにするまでにはまだまだ領域も足りないところもある。PBだけでSM店をやるのはなかなか難しい。現状の1000アイテムでは成り立たない。ただ、構成比として、いまよりもPBを広く取ったSM店舗はやってみたいとは思っている。

——今回、PB強化に当たり、体制を変えたのか。

木下 昨年、スパーク2022を始めるときに、戦略として差別化の意味でPBを拡大することが明確になったことに加え、もう1点は組織の中でも、商品開発のグロサリー担当と商品部のグロサリー部がある程度密接な組織体をつくったことがあると思う。いままでレポートラインが違っていたが、昨年の3月から私のところに一本化されたことが大きい。そこで戦略が両方とも合致した形で一本化されたことによって、いままで、ややもすればギャップがあったことが整合されて進む道が1本になった。

非常に開発のスピードも高めてくれて、いろんなカテゴリー、例えばペットのカテゴリーも新たに「みなさまのお墨付き」に進出したりすることを精力的にやってくれた。開発のチームとバイヤーが生産性を上げてくれたと思っている。

——低価格ブランドの「きほんのき」はどうするのか。

木下 食品とコンシューマブル(住居用品)の違いは、コンシューマブルはやはりブランドが強いということ。中心のポピュラーラインを取っていくのがなかなか難しい。その中で、西友が一番欠けていたのが、裾値のOPP(オープニングプライスポイント)だった。そこが対ドラッグや対ディスカウンターで弱いということが明確に見えていたので、「きほんのき」はそこを重視して開発していた。

一方、グロサリーはコンシューマブルに比べてブランドが強くない。そのため、OPPをやるよりは、やはり、「みなさまのお墨付き」のボリュームが大きいところを攻めていった方がよいと判断した。「きほんのき」は、OPPに絞っているので、ある程度カテゴリーの中で必要な部分でそろってくると、それ以上のことをいまやろうとは思っていない。

Interview2

商品本部 ストラテジックソーシング部 バイス・プレジデント

平山勝也

ひらやま かつや 1993年、商社の水産物担当としてキャリアをスタート。97年、ジャスコ(現イオン)入社。主に商品本部にて商品政策、調達戦略、商品開発のプロセス改革に従事。MBA留学を経て人事本部にて商品本部全体の教育などに携わる。2010年、ローソン入社。東日本大震災の際、商品調達に尽力、店舗への商品供給を維持した。その後、グループ調達機能会社の立ち上げに参画。19年、西友入社、現職。西友プロキュアメント社長を兼務

俯瞰して見ることでチャンス、リスクがどこあるか分かる

——チームの体制はどうなっているのか。

平山 外から来たメンバーと中のメンバーの混成だが、専門性の高い人材をそろえている。たとえば外から来た人だと、何か1つのカテゴリーではなく、青畜水、加工も全部やったことのある人など。小売業でありながら商社的、メーカー的な発想を持った仕事をしていかなければいけないので、サプライチェーン全体を組み立てることができる人材で組織編成をしたい。

その意味では外からそういう人材が来ているし、内側においては、各カテゴリーの専門性の高い人材もいるが、加えてPBを何年もやってきた人などが在籍している。

——いま、100施策ほど動いているということだが、取引先も100社程度になるのか。

平山 100施策イコール100社ではない。いままではどちらかというと、商品そのものの「点」での商談が多かったが、今度、原料も視野に入れながら交渉ということになると、会社との戦略的な取り組みという感じになる。いままで、例えば原料規格が5つあるうちの3番目だけしか買っていなかったところが、トータルでの交渉、取り組みをしていくということになる。

だから売場を見て同じ原料でできそうなものであれば、それを集約して原料の上流のところでいっしょに商談するということもやり方の1つとしてある。

——具体的にどのような流れで取り組むのか。

平山 マクロ環境分析をして、大体サプライチェーンの上流から川下まで眺め、「マクロ環境がこう動きそうだったら、このプレーヤーと組むのが一番適切だろうな」といった判断をする。全体感の中で、このサプライヤーと組むべきだろうとなる。それはサプライヤーの技術力とか製造設備の能力などを全部鑑みた中で決めていく。あとは経営者の明確な意思があるところの方がなお取り組みやすい。

われわれはあくまでも原料起点の横串の観点なので、まずは生鮮品、惣菜、PBを含めて横串を刺してシナジーが出る部分を優先的に取り組む。

——サプライヤーに西友から原料を供給するといったこともあり得るのか。

平山 まだ取り組んでいないが、PBを含めたオリジナル商品についてはそうした指定原料化はあるかもしれない。

——ウォルマートの調達網を生かして原料を調達して、サプライヤーに供給すると品質面、コスト面のメリットが出てきそうだが。

平山 一概にウォルマートの背景を利用して全てうまくいくということではないが、そういう場面も必ずあると思っている。1つの手段、方法論の一環として、それが一番効果があるときは、そういうやり方も採るということだ。

——こういう発想になったきっかけは。

平山 やはり、いままでのように最終製品をセレクトして買うやり方では、なかなか品質も上げられないし、コストも低減できない環境下にある。世の中の大手小売りの動きを見ていると、大手コンビニ中心に、オリジナル商品を自前で調達する機能をどんどんつくっている。そういったものの一環だ。

——そこまで実際にやるとなるとなかなか大変だ。

平山 肝になるのは、やはり専門性の高いメンバーで構成された組織と、どれだけ俯瞰して見られるか。分析するところは非常に重要かと思う。

——「QCD+A」のA(早期実現)を強調していたが。

平山 やはり、自分たちでサプライチェーンを組み立てるところが一番大きい。全部俯瞰して見ると、どこにチャンスがあって、どこにリスクがあるかが分かる。最終製品だけだと、背景が分からない。全体の流れが分かっていると、われわれの方から「こういうやり方にすればもっと早くなるのではないか」「品質が上がるのではないか」「コストが下がるのではないか」といった会話ができる。

全てとは言わないが、いままで小売りは、「欲しいときにこれを買いたい」という傾向が強かったが、それよりも全体のサプライチェーンの中で一番有利に調達できる、あるいはこのタイミングで買えばリスクヘッジができるといったところも、きちんと踏まえた上で判断していきましょうということ。そこにサプライヤーの強力も得て、いっしょになって作り上げていくという働き方に変えていきたいと思っている。

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