英国アズダの一部株式をコンビニグループ経営者と投資ファンドがウォルマートから買収

2020.10.03

画像はアズダ提供

ウォルマートは10月2日、現状100%所有する英国子会社アズダの株式の一部を、イッサ兄弟およびプライベートエクイティファームのTDRキャピタルが運営する投資ファンドが買収することで合意に至ったと発表した。

イッサ兄弟は英国のブラックバーンに本部を置き、コンビニ、ガソリンスタンドなどを運営するEGグループの創業者兼共同CEO。

今回、イッサ兄弟とTDRキャピタルは、ウォルマートが100%所有している英国事業を「事業価値ベース」で68億ポンド(約9500億円、1ポンド=約140円換算、以下同)とみなして買収することをウォルマートおよびアズダと合意、発表した。両社はアズダ株式の過半を取得する一方で、ウォルマートも出資を維持し、事業に関与し続けると共に取締役会の議席も持つ。

今回の新型コロナウイルスによるパンデミックにあって、アズダは数カ月の間にオンライン事業を倍増させた。今後は、新しいオーナーシップの下、アズダはオムニチャネル戦略を加速させるとしている。

アズダのロジャー・バーンレイCEOの「この投資の核心となるのは、成長し、強い英国事業を継続することだ。常に変化する小売業の環境下において、新しいオーナーシップは成長のための重要で、追加的な機会を創出しながら、われわれの回復力をさらに強化するだろう」とコメントしている。アズダは引き続き本部を英国のリーズに置き、バーンレイCEOは取締役会の一員として残る。

ロジャー・バーンレイCEOはボードメンバーとして残る。画像はアズダ提供

コンビニのノウハウを生かし、お客の多様な需要に応える

今回、イッサ兄弟が関与することで、特に6000以上のコンビニの店舗網を構築してきた経験などの専門性を生かすことができると見込む。それはアズダがコンビニ業態を展開する際のサポートとなるなどお客のさまざまな需要に応えることを可能にすることにもつながるとし、競争力ある好業績と、長期的な成長を生み出す差別化された事業モデルの構築にもつながるものであるとしている。

新たなオーナーに変わった後も給与水準や雇用機会は維持される。また、今後3年間で10億ポンド(約1400億円)以上をアズダに投資し、事業とサプライチェーンをさらに強化し、低価格を継続的に提供する。特にガソリン販売においてプライスリーダーであり続けたいとしている。

英国において、ガソリンのプライスリーダーであることは重要だ。画像はアズダ提供

調達面では、鶏肉や乳製品、小麦粉やジャガ芋などで英国産の取り扱いを増加させることで、英国のサプライヤーからの調達割合を毎年増加させる他、牛肉は100%英国からの調達とする。支払い条件についてもアズダのものを維持する。

一方でウォルマートもサポートを継続し、関与していくことで、アズダがグローバルのイノベーションやバイイングパワーとつながり続けられるようにする。

また、英国の貧困線以下の人々を支援し、地域コミュニティを支援する「クリエイト・チェンジ・フォー・ベター・プログラム」に対するコミットメントも維持する。

セインズベリーとの経営統合が実現せず、その仕切り直し

アズダは2018年4月に、同業のセインズベリーとの経営統合を発表し、ウォルマートはその段階で株式の一部をセインズベリーに売却する予定だったが、規制当局から巨大小売企業の誕生によって、英国が極端な寡占状況になると判断され、許可が下りなかったという経緯がある。

今回の新型コロナウイルスの影響もあって業績は回復基調にあるが、当時はドイツ発のハードディスカウンターのアルディやリドルがその低価格によって英国市場で存在感を増す中、ウォルマート流の低価格を武器とするアズダは大きな影響を受けていた。その意味では、価格面で押されるなど苦戦を強いられているアズダをセインズベリーと経営統合させることは、ウォルマートにとっては「出口戦略」の一環ともいえた。

セインズベリーとの経営統合が白紙となったことで戦略の練り直しが求められていたわけだが、今回はようやくそれが形となったものといえる。

ただし、今回の取引も規制当局の承認を前提としているため、完了は21年度上期を予定している。

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