日本進出から20年超、人気を高め続けるコストコの強さ、その理由に迫る!

2020.12.30

天井の高い倉庫型の店内は、スチールラックが組まれ商品を目いっぱい陳列、エンドも設けて商品を売り込んでいる

コストコ幕張倉庫店(千葉市美浜区)は、1999年4月にオープンした日本1号店の久山倉庫店(福岡県久山町)に続く日本2号店。2000年12月にオープンし、今年で20年目となり、コストコホールセールジャパンの27店の中では上位の売上げを誇る店舗だ。

国内最大級のコンベンションセンター「幕張メッセ」、千葉ロッテマリーンズの「ZOZOマリンスタジアム」、オフィスビル、マンションが立ち並ぶ開発エリア「幕張新都心」に位置している。開業当初は、JR海浜幕張駅前に、「ガーデンウォ〜ク幕張」(現「三井アウトレットパーク 幕張」)があるくらいだったが、13年12月、すぐ近くに巨大モール「イオンモール幕張新都心」が出店し、一大商業集積エリアとなった。

「コストコ海浜幕張倉庫店」は地域住民の利用も多く、地域にすっかり溶け込んでいる

店頭の「フェンス」コーナーのインパクトがお客を迎える

幕張倉庫店は店舗面積約4800坪と、コストコホールセールジャパンでは最大規模。駐車場は平面はなく3~5階、屋上の4フロアでコストコでは珍しい売場2フロアの店舗だ。

2階は家電、衣料、日用雑貨、家庭雑貨、ペット用品、文房具、医薬品などをそろえる他、調剤薬局、眼鏡や補聴器のコーナーもある。1階は食品売場と、屋外にも席を設けたフードコート、タイヤ売場。ガソリンスタンドは併設していない。

2階から売場に入るよう設計されており、まず「フェンス」と呼ばれるコーナーがあり、インパクトのある商品を展開し、来店客を引きつける役割を果たしている。

入口付近の「フェンス」と呼ばれているコーナーには、売り込みたい商品や特色あるアイテムを展開している

続く家電売場ではテレビが良く売れているという。取扱数も多く、韓国の家電メーカーLGエレクトロニクスの商品をコーディネーションしたコーナーも設けるなど提案力を高めている。

家電売場の商品を集積しコーディネーション提案している韓国の家電メーカーLGエレクトロニクス

約2000万円のダイヤモンドや高級ブランドのバッグなど高額品もそろえるなど、非日常のハレの日需要にも対応している。さらに大型の金庫といった一般的な店ではお目にかかれないアイテムも取り扱ったり、日常ではなじみのない業務用のグッズもそろえたりと、来店客にインパクトを与え、サプライズを感じるようにしている。

宝石、高級ブランドのバッグなど高額品も投入し、非日常需要の取り込みを図っている

売場が広めで商品も豊富な衣料の品揃えは有名ブランド中心で、ライフスタイルを提案、品揃えを絞りながら単品大量販売を行っている。

衣料もマネキンなどは使用せず、他の商品同様、単品大量陳列。島陳列の売場もある

天井まで届く大量陳列の日用雑貨は、内外の有名ブランドの商品の大容量の商品を低価格で提供。顧客の支持につなげている。

眼鏡、補聴器も品質を担保した上で低価格を打ち出し、需要を取り込む。調剤薬局も土日営業などの利便性もあって利用客は多いという。

コンタクトレンズも取り扱う眼鏡売場は広く、PB商品も投入しながら低価格を打ち出している
医薬品売場に隣接して設けられている調剤薬局

生鮮も幅広く取り扱う食品売場は集客の核

集客の核となる食品売場は、生鮮品は精肉、鮮魚の他、野菜や果実も豊富にそろえ、大容量パックで安さをアピール。惣菜もロティサリーチキンなどの人気商品をはじめ、品数を売れ筋に絞り込みながら店内で加工し、出来たてを提供。高い支持を得ている。

国内産に加え海外産も展開している青果売場。SMの売場づくりとは異なる
ドライフルーツではオーガニックデーツも投入するなど、オーガニックもアピールしている
ナチュラルチーズでは国内で流通量が少ない、見慣れない大容量アイテムを展開し安さをアピール
惣菜の作業スペースはガラス張りで製造している様子がよく見える。ただし、対面売場ではない
スーパーマーケットではお目にかかれない巨大なホールサイズの冷蔵ピザも人気を集めている
一番人気のロティサリーチキンは設備を充実させ焼きたてを提供している
精肉は大容量パックで展開し、品質も追求しながら安さをアピール
ベーカリーアイテムは大容量パックを大量陳列して販売している

アメリカンサイズのケーキや巨大なピザなどもそろえ、大容量や超巨大サイズを打ち出し通常のスーパーマーケット(SM)にない「コンテンツ」でお客を引きつけている。

アメリカンサイズの巨大なホールケーキはコストコの名物。コーナーも広く取られている

ワインを中心に酒類や冷凍食品も充実。グロサリー売場は国内外のトップもしくはセカンドのナショナルブランドを大容量で低価格で販売している。

酒売場はワインを中心にした商品構成。日本酒、焼酎は大容量を前面に打ち出す
冷凍食品売場はオープンケースではなくリーチイン什器で展開している

7年前に着任した渡邉誠司ウェアハウス マネージャーは、「売上げは伸び続けている。平日は主婦が中心で、友だちと連れ立って来店するケースも多く、購入した商品をシェアすることも。週末は家族連れが目立ち、まとめ買いも目立つ。出店して20年以上経つのでシニアの顧客もいらっしゃる。トイレットペーパーなど日常生活に必要なものがなくなると買いに来るといったストックベンチマークを決めて来店するリピーターも多い」と語る。

現場に精通しベテランの渡邉誠司ウェアハウス マネージャー

こうして地域の顧客をがっちりつかみながら、イオンモール幕張新都心との集客の相乗効果で広域からも集客し、売上げを増やしてきたコストコ幕張倉庫店。

19年、空調など老朽化した設備を最新のものに換え、売場にも手を入れるなどリニューアルを実施。オペレーションコストを削減、より買いやすい売場を目指した。

さらなる売上増をもくろむが、幕張倉庫店に限らずコストコは、会員制ホールセールクラブという業態による差別化と品質を担保した上での低価格を武器に、エンタテインメント性も加味し、顧客の支持を得て躍進を続けている。

パレット陳列のローコストオペレーションが生む低価格

何といっても消費者にとって一番の魅力は価格。その低価格を可能にしているのはローコストオペレーションだ。SMの販売管理費率は一般的に25%前後だが、コストコは10%前後。従って粗利益率もSMより10ポイント以上低く設定でき、十数%に抑えることで価格に反映させることができる。

売場においてもパレット陳列など手間を省くことで、その分を価格に反映させている。さらに巨大なバイイングパワーを背景にしたグローバルな商品調達、メーカーとの直取引による原価引き下げと効率的なサプライチェーンの構築で低価格を実現している。

メーカー直取引では、進出当初は従来の商習慣と異なることもあり苦労もあったが、大量販売のメリットや、取引すれば世界中のコストコに商品が提供される可能性もあるなどのメリットから互いの成長につながるといった点も踏まえ、「ウィンウィン」の関係の構築に取り組むことで取引先を増やしていった。

その後はメーカーと協働で大容量アイテムを独自に開発するなど連携を深めていった。

また、プライベートブランド(PB)商品の「Kirkland Signature(カークランド・シグネチャー)」も価格の打ち出しに寄与しており、ヒット商品も数多く輩出している。

グローバルの売上げベースでPB比率は25%程度、国内でも価格の安さと安定した品質で支持を得ている。

総取扱SKUは約3400。コンビニが50~60坪で約3000SKUであるのと比較してコストコは約およそ3000~4800坪なので、規模は50~80倍程度になるが、商品数はほぼ同じ。300坪程度のSMでも約1万SKUあることからしても、商品数を極端に絞り込んでいることが分かる。

その結果、物流から売場における商品管理の効率化も図ることができ、大幅なコスト削減につながっている。商品の売場への搬入や補充の頻度も極力少なくできるのもそのためだ。

売場ではPOPも極力少なくし、ブランド名、価格、容量などの最低限のプライスカードにとどめて、POPの書き換えの手間を削減。

こうした取り組みで、低粗利益率構造でも利益が出る事業構造を構築。加えて売上げの数%に当たる会費収入もあり、営業利益率でも3%は確保していると思われる(数値は決算書からの推定)。

SMは多くが営業利益率2~3%、中には1%に満たない企業もある他、総合スーパー(GMS)に至っては黒字化することに四苦八苦している状態にあることと比べると、コストコの強靭な収益構造が光っている。

非日常を演出するエンタテインメント性の重要性

消費者にとっては価格だけではなく、エンタテインメント性も店舗に引きつける役割を果たしている。

「倉庫店」と名付けているように、天井が高く内装も簡素で、広い通路を歩きながら大きなショッピングカートで買物をする体験。1坪1アイテムを基本とし、パレットがうず高く積み上げられた売場はSMやGMSとは大きく異なり、他では見られない店舗スタイルだ。これだけでも十分驚きを与える。

パレット、段ボール陳列によって売場づくりの手間を省きコストを大幅に削減
メインやサブの通路は広く、大型カートも楽々と行き交うことができる
メーカーとは大容量化にとどまらず、オリジナルの香りなど商品内容まで入り込んだ取り組みも行っている

「WOW (ワオ) 」と呼ばれるユニークな商品の提案や、季節商品もシーズンごとに随時投入、売場の鮮度や目新しさもアピールしている。

取材日はクリスマス1カ月以上前の11月20日だったが、関連アイテムを集積するなどシーズンモチベーション対応。早めの仕掛けは業者が利用する卸売業ならでは

食品では試食販売にも力を入れている。コストコ専業の試食販売の会社があり、ときにはワゴン車やカウンターを設け、大量に商品を積み上げるなど見た目のインパクトも重視。見ても食べても楽しい試食販売を行っている。

試食販売に力を入れており売場の各所でマネキンを付けて実施している

極め付きは、アメリカンサイズのケーキや巨大なピザ、特大の洗剤、超巨大パックの肉などの大容量や巨大サイズの商品。この打ち出しが通常のSMにないコンテンツとなってお客を引きつけている。

こうした展開によって店舗を劇的な空間に変え、非日常を体験できることも集客につながっているといえる。

リピーター率が高いことも強みとなっている。会員になるには法人会員で3850円、個人で4400円(いずれも本体価格)を支払う必要があるが、会員は一貫して増え続け、600万人を超え、更新率も80%以上。会費の存在が店舗に足を運ぶことにつながり、来店動機にもなっている。

ショッピングカートは超大型で、商品の大量購入を促す役割も果たす

従業員満足度の高さが顧客満足度の高さを生む

こうした一連の取り組みで顧客満足度を高めてリピーターを増やしているが、一方でコストコで働く従業員の満足度も高いことは意外と知られていない。

性別や国籍などに左右されないダイバーシティで、パートタイマ―も対象の社内公募制度も設けて誰でも活躍できるステージが平等に用意されている。思う存分実力が発揮できる他、上司と相談しやすい風通しの良い社風など働きやすい環境の構築にも配慮している。

男女平等も社内で周知徹底され、管理職に占める女性比率は約3割と、女性の活躍できる職場にもなっている。離職率も非常に低い。

小売りとして比較的時給が高いことも従業員満足度を高めている。「良い賃金を払うことで、良い人を雇用し、良い仕事を提供すれば、良い結果が得られる」というシンプルな考えに基づくが、高待遇を用意することで、コストコに長く勤め続けて欲しいという思いもある。実際、米国のコストコでは、三世代に渡って勤めている家族もたくさんいるという。

コストコで働くことで自分のキャリア形成を図り、家族を養い、安心して生活を送ることができたという人も非常に多いという。家族も含めて、その人のキャリアを支える存在でありたいと思いながら、安定した形で高い賃金や福利厚生を提供していく方針だ。

従業員満足度が高いことが、顧客満足度を高めることにもつながり、結果的に売上増をもたらし収益向上をもたらすことになり、コストコ躍進の原動力となっているともいえるのである。

さらに、「会員の皆様に高品質な商品とサービスを出来る限りの低価格で提供する」という同社の企業理念も、何よりの原動力となっている。

これを実践するための倫理綱領として「法律の遵守」「会員に対する心遣い」「従業員に対する心遣い」「納入業者に対する敬意」「株主に対して報酬をもたらす」の5原則も定めている。普段、何か問題があったら常にここに立ち返って対応する。

リアルの強さに加え、ECにも注力

ネットとリアルの構図の中で、EC(電子商取引)が伸長し、リアル店舗が防戦を強いられている。そうした状況にあってもコストコは強靭なリアル店舗を築き上げ、現在日本で27店舗を展開するに至っている。

20年は7月に、千葉県木更津市に新店を出店したが、来年には北海道石狩市、熊本県御船町、愛知県名古屋市に店舗をオープンする予定で、将来的には60店舗まで拡大させることが可能とみている。

オンラインショッピングの取り組みもすでに米国、カナダ、イギリス、メキシコ、韓国、台湾などでは展開されているが、日本でも19年12月からスタートした。

日用雑貨、家電製品、アウトドア用品、宝飾品など幅広くそろえ、PBのカークランド・シグネチャーやワオアイテムも投入し、リアル店舗では取り扱わないオンラインサイト限定の商品も取り扱っている。

ECの開始や新規出店による販路拡大による販売量の増加に対応するために物流体制も拡充させた。兵庫県三木市と千葉県市川市の2つの物流拠点から、市川市の施設を閉鎖し、市原市に最新設備の新たな拠点を設け、20年11月から稼働させた。

過去、外資のスーパーマーケットは、00年代初めにフランスのカルフール、米国のウォルマート、英国のテスコが日本に進出し、迎え撃つ国内勢は脅威を感じ身構えた。

しかし、カルフールとテスコは撤退を余儀なくされ、ウォルマートも21年、傘下の西友への関与を薄め事実上日本事業から手を引くことになった。

このよう中で、コストコは会員制ホールセールクラブというプラットフォームを基に、圧倒的な低価格の大容量販売という従来見られなかった手法で、新たな購買スタイルを導入して定着させた。その結果、既存業態との明確な差別化に成功し存在価値を高めていった。

さらに、ドン・キホーテなども追求しているエンタテインメント性を異なる形で実現し、リアル店舗の魅力を高めることに成功している。

こうしたことから、これからもECの攻勢にも十分耐性があると考えられる。日本市場での出店余地も大きく、さらに自らもECを手がけることでさらなる成長も期待できる。

新型コロナ禍においては衛生対策や顧客のソーシャルディスタンスの維持といった取り組みを実施。この間、消費者の意識や行動の変容が表面化したが、そうした中にあっても強みを最大限に発揮することで売上げも堅調に推移している。

追い風が吹いているECを拡充しながら、リアル店舗においても態勢を強化し、アフターコロナでも顧客の支持を得て、売上げや収益性の向上を図っていくだろう。(取材・文/西川立一)

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