ウェグマンのミールソリューションは何がすごいのか?

2020.08.07

ウェグマンは、ニューヨーク州に47、ペンシルベニア州に18、ニュージャージー州に9、バージニア州に12、メリーランド州に8、マサチューセッツ州に6、ノースカロライナ州に1という101店の店舗網を持つ米国東海岸を地盤とするリージョナルチェーンだ。

2019年の年間売上高は97億ドルと日本円で1兆円を超える規模に達する。店舗数101で割ると約100億円。つまり、同社の店はそれぞれ非常に大きな売上げを上げていることになる。しかも、商品の多くを食品が占める。

素材、半加工、惣菜、出来たての各段階で買える

ウェグマンの注目点は、何といってもそのミールソリューションの手法にある。「市場」のような雰囲気を演出しながら、大々的に展開される生鮮食品や惣菜によって、完成度の高いミールソリューションが提案される。

大きな特徴の1つに、素材、半加工、惣菜、出来たて惣菜という段階にわたる商品をそれぞれの段階で提供すると共に、それらが基本的に同じものでできているという点がある。つまり、お客は買物をする時点の状態に合わせて、あらゆる段階の商品を選ぶことができるわけだ。同時に、それらは全て結果的には同じ味の料理、しかも、レストランレベルの味になるという仕掛けになっている。

色とりどりの料理を量り売りで提供するコーナーもある(ウェグマン提供画像、以下同)
セルフサービスのフードバー、サラダバーはウェグマンの名物コーナーとなっている。温かいものはホットで提供、温度管理も徹底している

例えば、生鮮食品の青果、鮮魚、精肉売場では対面販売で生の素材を展開しているが、その脇にはレディトゥクックの半加工品が販売されていたりする。惣菜の売場では完成品をホットの状態で買うこともできる。さらにそれは持ち帰ることもできるし、店内のイートインで出来たての料理を食べることもできる。

入口からは平台を中心とした広大な青果売場が広がる
鮮魚売場では素材を提供しつつ、半加工のレディトゥクックの商品なども併売。お客に多様な選択肢を与えるのがウェグマンの戦略
精肉でも素材、半加工など多様な商品を提供。精肉ではたれ付けした商品(マリネーテッドミート)を豊富に展開

このように、お客がその日のニーズに基づいて、さまざまな選択肢から選ぶことができ、しかもそれらの品質は安心を持てるものであるという点がポイントになる。ここで、鍵となるのは「お客の選択肢」を最大限に広げていることになるだろう。ミールソリューションとして「お客に寄り添う」というはそういうことなのだ。

実は、この考え方を日本で実践している企業がある。業績好調のサミットである。「個添経営」として、お客がその日の好みに応じて各加工段階の食材を選べるように、品揃えを充実させることで、あらゆる人に頻度高くサミットを利用してもらおうというものだ。

ウェグマンの場合、これを効果的に実現できることに大いに貢献しているといえるのが、調味料まで含めたプライベートブランド(PB)商品の充実である。もともと、店頭で販売する有料冊子『menu』を通じてメニュー提案を行っていたが、そこに書かれているレシピで必要とされる食材はほとんどがPBであった。

つまり、そこに掲載されている食材をそろえ、レシピに沿って調理すれば、誰でもレストランレベルの味が実現できるという仕掛けになっていることが特徴だった。有料冊子の販売は、インターネットの普及もあって無料のアプリに受け継がれたが、同社のマーチャンダイジング(MD)には、その考え方が色濃く反映している。

この一本筋が通ったMDは、一見単純なことのように思えるが、実際にこれを実現できている企業は多くはない。

ちなみに、有料冊子の配布を取り止めた代わりに同社はデジタル戦略を推進している。ポイントカード会員のWegmans Shoppers Clubに入会すれば、レシピ、デジタルクーポン、通路別に並べ替えられた買物リストを作成する機能を提供するWegmansアプリのダウンロードなどが可能になるといったサービスを提供している。

オリーブなどをセルフサービスで提供する地中海バー

古くからグローサラントを体現していた

ウェグマンの惣菜売場は圧巻である。さまざまな分野の料理をそれぞれコーナー化して展開しており、対面販売の要素も生かしながら、ピザ、ハンバーガー、寿司などの他、量り売り惣菜を売り込んでいる様子は、それぞれの専門店の集積のような雰囲気になっている。

スーパーマーケット(SM)とレストランの機能を掛け合わせた店の形態として、少し前にブームの様相を呈した「グローサラント(グロサリーストアとレストランを合わせた造語)」についてはかなり古くから取り組んでいる。もともと、店によってはレストランも運営していたが、こうした一連の取り組みの結果が、現在のあらゆる段階の商品が、高い品質で買える店を作り上げることにつながっている。

対面販売のような形でさまざまなコーナーを展開するのがウェグマンの惣菜の特徴

一方で、素材、半加工品、惣菜、また、日配、グロサリーなどをセルフサービスで販売するなど、別の側面から見るとあくまでスーパーマーケットであることも確かである。特にグロサリーについては大型パックなどをディスカウントしながらローコストオペレーションで販売しており、従業員も多い惣菜などの売場とはかなり雰囲気が異なる。同じ店であっても、さまざまな側面を持つ独特のフォーマットを構築している。

商品構成はSMのそれであるが、ユニークである点はSMとしては、非常に大型の店を出店していることだ。店舗は約2100~約4000坪で、大型店では5万~7万のアイテムを展開している。根底には前述のように「より多くの選択肢を提供」するという考えがある。また、オーガニックを差別化要素として打ち出していて、同社によると店舗全体で4000を超えるオーガニックの商品を取り扱っているという。

ウェグマンは生鮮や惣菜の売場の印象が強いが、一方で広大な売場を活用したグロサリーのディスカウントも実施。生鮮、惣菜とは売場の雰囲気が異なる

強み発揮できる売場でニューヨーク市内を攻める

2019年10月、ウェグマンはニューヨーク市内、ブルックリン区に初出店した。同社は1916年の創業で、ニューヨーク州ロチェスターに本社を置いているが、総店舗数101店になったチェーンストアもニューヨーク市内には出店していなかったのだ。

ブルックリン区の店は、店舗面積約2080坪と、同社の中では小さめの部類に入る。同社によると、アイテム数は5万弱、うちオーガニックが2000アイテム以上ということで、こちらも店舗の規模に即したものとなっている。

新たな商勢圏へのやや小型店での出店となったわけだが、それでも2000坪以上という規模は、SMとしてはかなり大きい。

実際、入口先頭からは広大な青果売場が広がり、右手には惣菜、ベーカリーゾーン、その奥の鮮魚、精肉売場といった配置、また、左手にはこちらも広大なグロサリー売場が広がるといった形で、その雰囲気は既存の同社の店と全く変わらない、同社の強みがよく出た売場づくりとなっている。

核売場の1つである惣菜については、エグゼクティブシェフのステファン・デ・ルシアと157人の料理担当者が寿司、ピザ、ハンバーガー、オーダーメイドのサラダ、温かいスープなどをレストランレベル味で提供。

もちろん、セルフサービスのフードバーでは、メインディッシュとサイド、世界の料理やベジタリアン対応なども含めた温惣菜、冷惣菜を気軽に好きなだけ買うことができ、それらは全てテイクアウトもできるし、店内で食べることもできる。

イートインは中2階に設置されており、座席数は100席ほど。また、壁で仕切られた一角にはワイン、ビール、カクテル、スナックを提供するバーも併設されている。磨き上げてきたミールソリューションの強さは、そのままニューヨーク市内でも実現されている。豊富な選択肢をベースとしたミールソリューションが、新たな商勢圏でさらなる進化を遂げられるかは注目だ。

アメリカはまさに今、新型コロナウイルスの困難の中にいる。そして、それはウェグマンも同様。現在、同社では配送代行業者のインスタカートを活用したカーブサイドピックアップ(車に乗ったまま商品を受け取れる)や配送サービスの利用をユーチューブの映像を活用しながら積極的に促している。ホームページのトップ画面には「カーブサイドピックアップ」「配送」、そして「店内」という選択肢が示されている。

調理の段階だけでなく、買う方法についても、さまざまな「選択肢」を用意する。新型コロナへの対じを経て、ウェグマンの強さにはさらに磨きがかかったといえる。そして、その根底には「選択肢を増やす」という原則が貫かれている。

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