コロナ禍で脚光集まる「移動スーパー」とは?とくし丸、カスミ等を参考に解説

2021.03.23

日本が超高齢化社会への道をひた走る中、熱い注目を集めているビジネスモデルが「移動スーパー」だ。

場所を移動しながら販売し、商品を絞り込み、ニーズに応じた商品を展開する。ご年配の方はもとより、気軽に移動できる距離に買い物できる場所を持たない「買い物難民」「買い物弱者」を救済し、コロナ禍における三密を避けられる販売形式として脚光を浴びた。現在は、大手スーパーやコンビニの参戦が相次いでいる。

ここでは、移動スーパーが注目を集めるワケや移動スーパーのビジネスを成功させるための課題などを解説しつつ、すでに大きな成功を収めた事例として「とくし丸」と「カスミ」を挙げ、紹介していく。

移動スーパーが注目を集めるワケ

超高齢化が進みつつある日本において、山間部の過疎地域などを中心に、「買い物難民」「買い物弱者」と呼ばれる層が年々増えている。さらに、2020年初頭からのコロナ禍にあって、三密を避けようという動きも生まれるなど、買い物をめぐる問題も多様化してきた。

そこで脚光を浴びたのが、「移動スーパー」というビジネスモデルだ。ここではまず、移動スーパーがどういうものか、今なぜ移動スーパーが注目を集めるのかについて解説していく。

移動スーパーは買い物難民の強い味方

「買い物難民」「買い物弱者」とは、周辺の地域にスーパーなどが存在せず、食料や生活用品を買いづらい状態にある人のこと。現在、日本における「買い物難民」「買い物弱者」は約700万人にのぼるとも言われ、高齢者人口も年々増加。総人口に占める高齢者の割合は、過去最高を記録している。

5人に1人は70歳以上という中、食料品にアクセスしづらい「食料品アクセス困難人口」(食料品を手に入れられる店舗まで直線距離で500m以上離れており、自転車を利用できない65歳以上の人)は、地方圏・都市圏ともに増えている。

目を惹くのは、三大都市圏において10年の間に約44.1%も「食料品アクセス困難人口」が伸びていること。この中にあって、生活必需品や食料品などを移動販売車に乗せ、直接自宅まで届け、公共スペースなどを利用して販売する移動スーパーが大きな味方と目されるのは、当然の流れだろう。

かゆいところに手が届く品ぞろえと場所選び

コンビニの店頭には約2,500種類の商品が並んでいるが、お客の動向を見つつ、1年でその7割を入れ替えていると言われている。これはデータ管理を行っての結果だが、移動スーパーの場合は、お客さまの声がそのままダイレクトに届くのがだいご味。

後述する移動スーパー「とくし丸」では、軽トラックなどを利用したコンパクトな荷台に、約400種類、1,200~1,500もの商品を積んで回っている。荷台に載せられているのは、お客さまから依頼のあった商品、その地域で人気の商品など。かゆいところに手が届く品ぞろえと、足を伸ばしやすい範囲にスーパーが来てくれるという手軽さが、年配層のニーズをつかんでいる

三密を避けられるビジネス形態

コロナ禍にあって、都市部でも移動スーパーに注目が集まっているのは、三密を避けられるビジネス形態だという認識から。人込みに出ることを極力避けたいという人は、移動スーパーを利用することで多少なりとも安心感を得られる。

年配者や幼児などがいる家庭においては特に、コロナリスク軽減を目的に移動スーパーを利用する例も多く、コロナ禍ならではの需要の高まりが予想されている。

移動スーパーを成功させるための課題とは

需要の高まりが期待できる移動スーパーだが、ビジネスモデルとして成立させるための課題もある。お客さまのニーズに応えつつ、いかに在庫管理をし、収益を上げるか――ここではまず、個人事業主が販売パートナーとして移動スーパーを営むうえでの課題を取り上げていく。

お客さまの声をどう受け止め、どこまで応えるか

移動スーパーにおける第一の課題が、お客さまの声をどう受け止め、どこまで応じるかということ。お客さまのリクエストにすべて応えようとすると、複数の仕入先と提携しなければいけなかったり、少数仕入れゆえのコストの問題も生じかねない。

自宅前までの移動といったリクエストに応えるのが難しいケースもあるだろうし、時間の制約がある場合もある。直接顔を合わせて販売する移動スーパーだからこそ、どのような形で個々のお客さまのリクエストを受け止め、どこで線引きするかが課題にもなるのだ。

商品の仕入れや管理の問題

移動スーパーを経営するうえで、商品を仕入れ、在庫を管理する責任は自分自身にある。中には、既存のスーパーと契約を結んでいる業者もあるが、フランチャイズ契約の場合は、利益が少なくなることも覚悟しなければならない。

個人で移動スーパーを運営する場合は、お客さまのリクエストに応えられる仕入先探しが必要になるし、場合によっては複数の仕入先を用意しなければならないだろう。さらに、冷蔵・冷凍品をそろえるための設備が必要になる場合もある。在庫管理のための設備投資、在庫の管理方法なども重要な問題である。

収益の問題

社会貢献的な側面に光が当てられがちだとは言え、収益を出さないことには事業としての継続はないし、社会的な継続も可能にならない。移動スーパーにかかる設備投資や仕入れ・在庫管理上のコストはそれなりのものだが、それらをペイして利益を出せるかどうかが、最大の課題である。

移動スーパーにかかるコストをペイできるだけの安定した利用を獲得し、事業として成り立たせることに成功して、課題を解決した例を次の項目で挙げる。いずれも、企業体が移動スーパー事業に取り組み、成功を収めたものだが、個人が販売パートナーとして移動スーパーに取り組む際にも参考にすべき点がある。

移動スーパーの成功モデル①:とくし丸

とくし丸さんが徳島で地域密着型の移動スーパーとして開業したのは2012年のこと。それ以来現在までに全国47の都道府県に急拡大し、600台以上が稼働するようになった移動スーパーの成功例である。ここでは、とくし丸の特徴を取り上げ、解説していく。

販売パートナーが提携先企業から商品を仕入れるビジネスモデル

とくし丸の特徴は、「販売パートナー」と呼ばれる個人事業主が提携先のスーパーから仕入れた商品を販売代行するというもの。スーパーの商品を運び、売れ残ったものはスーパーに戻すため、食品ロスがない。冷蔵機能を備えた移動販売車両に詰め込む商品は、400種類1,200点ほど。高齢者の多い地域などを中心に定期的に巡回し、買い物支援と同時に高齢者の見守り活動も行っている。

対面販売を行って地域ならではのニーズに対応するとともに、共通の掲示板を通した事業主同士の交流で情報を共有化する。本部と販売パートナー、スーパーが提携することで売上を上げるビジネスモデルである。

個人事業主として得る完全成果報酬と「プラス10円ルール」

とくし丸の販売パートナーは、個人事業主として売上の17%の完全成果報酬を得ていて、売上を上げれば上げるほど報酬が上がるということ。

さらに特徴的なのは、すべての商品がスーパーの店頭価格より10円高く設定されていることだ。この10円から5円ずつを販売パートナーとスーパーとで分け合うことで、仕入れずに商品を借りて売るというスタイルが成立している。

この「プラス10円ルール」によって販売パートナーとスーパーの双方に利益が生まれる。販売パートナーは月に30~40万円ほどの収入が見込め、提携先であるスーパーは本部への契約金と月々3万円のロイヤリティを支払う見返りに月150~200万円程度の売上増が期待できるのだ。

個人商店と共存するための「半径300mルール」

高齢者にとっては、自宅の300メートル圏内にスーパーやコンビニなどがないことが死活問題につながる。自動車やバイク、自転車などを運転するのは危険で、杖などを頼りに移動するのは300m圏内がやっと。とくし丸は、そういった高齢者をサポートすると同時に、個人商店との共存も目指している。

徒歩圏マーケットと呼ばれる300m圏内にあえて立ち入らないことで、個人商店に負担をかけない。個人商店を存続させることで、高齢者の買い物の機会を奪わないというスタンスを掲げているのだ。

移動スーパーの成功モデル②:カスミ

食品スーパーのカスミが運営している移動スーパーカスミは、茨木県の市町村との「包括連携協定」を結ぶことに特徴がある。運営を開始したのは、2013年のつくば市から。現在は、10台を超える専用車両がさまざまな市町村を巡回している。ここでは、カスミの特徴を取り上げ、解説していく。

市区町村と結ぶ包括連携協力

カスミは、日常の買い物が不便だと感じている人の買い物を支援する目的で、市町村と「包括連携協定」を結んできた。自治体と協力することで地域包括センターや民生委員などとの提携が図りやすくなり、よりこまやかなサポートが可能になっている。定期的に顔を合わせる見守り役としての役割も担っている。

公民館や公共施設の駐車場などを利用するビジネス

市町村と連携することで、カスミは公民館や公共施設の駐車場などを利用して移動スーパーを展開している。住民になじみの深い場所を定期的に巡回することで、地域のインフラを担う狙い。市町村のホームページなどにもその巡回予定が載せられ、周知されている。

移動スーパーは更なる拡大が予想される

移動スーパーは、「買い物難民」「買い物弱者」の大きな味方である。このビジネスモデルにおいて収益を上げるための課題も多いが、団塊世代の高齢化が進む現在、需要拡大が予想される市場でもある。ここに挙げた成功例のように、お客さまと販売元がウィンウィンの関係を築きながら、社会課題を解決する方向が生まれつつある。

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