ローソンストア100はなぜ、ストアコンセプトを「献立応援コンビニへ。」に刷新したのか?
2022.04.12
2021.08.06
ローソンストア100が7月7日からストアコンセプトを刷新した。社会変化を背景に内食需要が増加したことを受け、新たなストアコンセプトとして「献立応援コンビニへ。」を掲げ、毎日の食卓を応援する旬の提案を強化するとしている。
今回のストアコンセプト刷新の背景について吉田貫臣・ローソンストア100運営本部長代行兼広告販促部長は次のように話す。
「いままでわれわれは『スーパー、コンビニ、100円均一の良いところ』というコンセプトで創業以来、商売させていただいていたが、お客さまのし好やライフスタイルの変化があり、なかなかお客さまのニーズに十分に応えられていないところが出てきた」
「生鮮コンビニ」などと呼ばれた「SHOP99」などを展開する九九プラスを源流に持つローソンストア100は、2010年に直営とフランチャイズ店とを合わせ総店舗数1000店を達成したが、18年2月期から20年2月期までの3期は営業赤字を喫するなど厳しい状況が続いていた。
そうした中、20年2月期、19年度から構造改革を進めることで21年2月期には営業黒字に転換。不採算店舗の閉鎖なども行い、7月26日現在は674店体制となっている。
構造改革を進めた19年度には、それまで取り揃えていなかった生鮮食品、加工食品などを品揃えに加える実験も開始。東名阪でそれぞれ数店舗実験店舗を設定し、新規商品の投入を実験してきた。さらに、その中からお客の支持に手応えのあった商品を他店にも導入してきていた。
以前は、100円(本体価格、以下同)を基本とし、それ以外の売価の商品を扱っていないことから、例えばタルタルソースといった特殊な調味料、あるいは食用油でも大容量のものなど、食事づくりにとって便利な商品でも、どうしても100円では商品化できないために取り扱うことができないケースが多かった。そのため、毎日の食生活にとって便利な商品をローソンストア100だけではまかなうことができないという問題が表面化していた。
一方で、「100円均一」という認知が強いことから、商品を一気に変えることも適切でないと判断。結果、100円で支持されている商品を維持しつつ、機能として欠落していた商品を差し込むことにした。
食事担当の悩みは「献立」に関するものが多い
19年当初に追加した商品は、店の大小にもよるが約50SKU、その後、徐々に広げていき、直近では100円の商品が占める割合は6割強にまで下がっている。吉田氏は、「その中で、一番大きかった環境の変化がコロナ。自炊をする方が増えたり、調理をする回数が増えたりした。商品自体に加え、買われる容量も、使い切りからファミリーサイズのニーズも非常に増えてきて、品揃えを増やす中で、価格も100円以外の商品が増えてきた」と語る。
その成果もあって、100円以外の商品や、それまで取り扱っていなかった果物などに支持が得られるようになってきていたところに、昨年の新型コロナウイルスによる買物行動の変化も重なった。品揃えも、お客の買物の仕方も変わる中で、今回のストアコンセプトの刷新につながっている。
実際に生鮮、加工食品中心に導入を進める中では、「内食需要」を狙い、スーパーマーケット(SM)を意識して値頃感のある価格設定も心掛けた。
「既存のコンビニのように、主食完結で、個食ということではなく、まさに今回、『献立応援』と打ち出しをしているが、ご家庭の食卓をイメージできるような品揃えに変化をしていくという流れになっている」(吉田氏)
同社の調査では、家で食事をする際、「献立」「買物」「調理」「洗いもの」といった段階がある中、食事を担当する人の悩みとして「献立」が大変だという意見が多かったという。今回、ストアコンセプトに「献立応援」が入ったのはそのためだ。
20年はコロナ禍で、特にSMにおける買物の形が「頻度を減らして、まとめ買い」へと大きく変わった。吉田氏によると、今年も数値上は昨年との裏表はあるものの、マインド自体は20年以降と大きく変わっていないという。「混雑を避けて買物をしたい」、あるいは「遠くの大きな店ではなく、近場でできるだけ速く買物を済ませたい」といった傾向は依然みられるという。
一方で、ある店ではこれまでは第3のビールが売れ筋であったものが、飲食店の利用が減ったためか、ビールが売れるようになったとか、今年に入ってから日本全国カップ麺を集めたご当地ラーメンシリーズの反応が非常に良くなっているといった動きもある。しかも、単価が高いものでも売れるケースが出ているという。
「消費者心理として、無駄な出費を抑えたいという心理はあるものの、なかなかいままでのように生活ができない中で、お客さま自身も非日常というか、変化を付けたいという思いがあるのではないかと感じている。『毎日の食費は抑えたい一方で、非日常の購買もしたい』。こうした二極化が出てくるのではないか」(吉田氏)
コンビニ的な使われ方を維持しつつ、SM的な使われ方を増やす
現在のローソンストア100の店舗の平均売場面積は40~50坪で、コンビニとほぼ同じ。SKU数は3800~4000で、こちらもコンビニとほぼ同じだ。
SKU数自体は、100円が主体のころから変わっておらず、その中身が変わってきたということになる。店舗の大型化ではなく、品揃えの精査をしながらの絞り込みで商品を付加してきた。同社の場合、日用品も取り扱い、約1割の売上高構成比を占めるため、絞り込みはより重要になる。
また、売上高構成比でいうと、生鮮品については、構成比自体はそれほど大きくない。現状では、どちらかというとSM的な使い方、コンビニ的な使い方といったように、お客の使い方が分かれている傾向にあり、コンビニ的な使い方をするお客も半数程度いるためだ。
今回のストアコンセプトの刷新によって、内食需要であるSM的な使い方のお客を増やしていきたい意向だ。
「コンビニ的な使い方のお客さまの期待にはしっかりと応えつつ、メインのターゲットとして狙っていくのは内食ということで品揃えを考えていく。内食のお客さまは伸びしろが大きい。まだまだ遠くのスーパーまで買いに行かれている人も多いが、やはり小商圏の中で内食の需要をわれわれのお店で満たしていただけるということで、結果として比率が上がっていくことを想定している」(吉田氏)
出店立地も、もともとオフィス立地ではなく、日常の生活に密着した住宅立地が多い。「(コロナ禍で)人が多い店にはなかなか行きづらい。やはり近くのお店にさっと行って、必要なものをぱっと買えるニーズは間違いなくあったし、今後も堅調に増えていくのではないかと考えている」(吉田氏)
コロナ禍でまとめ買いの傾向が増えてきたこともあって、現状の客単価は19年から1割強増えている。
「今後は、いままでローソンストア100で夕食のお買物、朝食のお買物をされていなかったお客さまに『われわれのお店は献立の提案ができるお店ですよ』ということをしっかりとお伝えしていく中で、新しい客層を掘り起こしていきたい。結果として客数、客単価を上げていきたい」(吉田氏)
生鮮食品や日配といったコンビニとは差別化できる部分を軸に毎日の献立を提案できるような店を目指し、今回の新しいストアコンセプトに合わせて欠落した商品を付加することで店として進化し、客層を広げていくことを目指す。さらに小商圏ということもあって、個店でカスタマイズしながら地域ごとに合った品揃えも目指すとしている。
今後の出店についても住宅立地がメインになると見込むが、まずは既存の店に投資をしていく。特に冷凍食品を含めた要冷ケースの増築などに注力し、品揃えの変更を推進していく。
他の業態と同様、ローソンストア100でも冷凍食品は堅調。
19年以降も、冷凍の野菜やコロッケなど特徴のある商品は「100円」シリーズとしてしっかりと残しつつも、ナショナルブランドの売れ筋の商品で、しかも弁当材料というよりは「おかず」の商品を増やしてきているが、実際、お客の支持も高くなっている。冷凍食品は戦略的に強化していく部門になるとする。
ローソンとは違う商品、使われ方で、グループシェアを向上
コンビニのローソンとは客層も異なり、使われ方が違っていることから、ローソンストア100としてはしっかりと特色と出すことでグループのシェアを拡大することを目指しているが、今回のストアコンセプト刷新は、まさにその特色をさらにはっきりさせる動きといえるだろう。
一方で、小型のSMということでいえば、900店を超えているイオングループのまいばすけっとを筆頭に、同じくイオングループのアコレ、ビッグ・エーなどが競合となってくる。それに対しては、むしろこれまでに築き上げた「100円商品」を差別化要素としたい意向だ。
「代表的な商品では、例えば12月の100円のおせちのシリーズや100円で商品化したデザートなどがある。いまはやっているマリトッツォも商品化した。いままで100円にこだわってきたからこそできる商品がわれわれの大きな差別化の武器になっていると思う。内食需要に加えて、『驚きの100円』もしっかりと商品開発をしながら、オリジナルの業態を目指していきたい」(吉田氏)
特にデザートなどはローソンとローソンストア100で同じメニューを異なる売価で開発する例もあり、それによって100円の価値を伝えることができる。
プロモーション計画では、まず、刷新した7月、および8月は、すでにローソンストア100の店を利用しているヘビーユーザーに変化を伝える。内食需要の高い商品に専用POPやカードのボーナスポイントを付けるといったことに取り組み、内食提案をメニューとセットで打ち出すことで店に対する認識を変えてもらうことを目指す。
9月以降は、新しいお客を開拓することを目指し、外部に向けた打ち出しに踏み込む。ホームページ、ツイッター、インスタグラムなどのオウンドメディアも、メニューの提案の要素を強めた中身に変え、日々に献立を提案していく。
店でも同様に、献立の提案の要素を強め、商品名と価格が中心だったPOPを、その素材を使ったメニューを提案するといったものに変えていく。例えば、7月であれば旬のナスが特売に入るときに、麻婆ナスや煮びたしなどをPOPで提案することで関連商材も併せて提案するといった方向に変えている。
「単品から組み合わせ提案」となると、バイヤーにとっても考え方の変化を促すものになるが、この辺りについて吉田氏は次のように語る。
「生鮮食品を扱っていることがやはり大きな武器。旬を演出する差別化にもなる。例えば野菜のバイヤーはいままでも市場にも行っていたが、商品を買い付けるだけではなく、どのように食べれば一番おいしいのかというところまで、お客さまに提案していこうと取り組みを進めている」
100円のイメージを生かしつつ、次第にSMの機能を強化しつつあるローソンストア100だが、今後は買上点数の増加が大きなポイントになりそうだ。