新技術&MD 23年春、スーパーマーケット関連展示会トレンドレポート第57回スーパーマーケット・トレードショー2023①

2023.03.30

春に実施された展示会から、特に最新の技術回り、商品について注目トレンドをシリーズとして紹介する。新型コロナウイルスから3年、スーパーマーケット(SM)および小売業界は大きく動き出している。

一般社団法人全国スーパーマーケット協会は2023年2月15日~17日、千葉市・幕張メッセ全館において、スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会「第57回スーパーマーケット・トレードショー2023(SMTS2023)」を開催した。

出展者数は2046社・団体、3271小間の規模で、全国各地から1400社以上の地域産品メーカーが出展し、海外からも16カ国、95社・団体、104小間が参加した。

登録入場者(初日、2日目の来場者が3日目に来場した場合は数に含みない)は3日間で 6万2525人に上った。

主催者企画「食のトレンドゾーン」では、従来の「美と健康×食」ゾーン、「サステナビリティ×食」ゾーンに加え、今回新たに「冷凍×食」ゾーンを新設。「冷凍×食」ゾーンには58社・団体、134小間の冷凍関連事業者が出展。有識者による9本のセミナーを開催した他、冷凍 PB(プライベートブランド)商品を紹介する「全国スーパー冷凍 PB 試食体験」、新商品約100品を集めた「『冷凍×新商品』ピックアップ展示」など、体験提供と情報発信を実施した。

寺岡精工

DX(デジタルトランスフォーメーション)と共にSX(サステナビリティトランスフォーメーション)を打ち出したソリューションを展示し、その結果、得られるCX(カスタマーエクスペリエンス)をテーマとした。

レジ、バックヤード、売場の計量器、売価表示などをシステムで連携してDXを、脱炭素、脱プラ、フードロス削減のソリューションでSXを実現するというストーリーだ。

サステナビリティの側面では、まず、ペットボトルの減容回収機の「ボトルスカッシュ」を提案。約3分の1に減容しながら回収。資源として循環するリサイクルの入口として推進している。再度ボトルに再生するものと、容器にするものに分けられるが、ボトルに再生するものだと循環がしやすい。いまビオセボン・ジャポンやセブン-イレブン・ジャパンの関東、関西の一部の店など2200カ所以上に設置されるまで広がっている。

コンビニ向けには250本回収できるタイプ、SMなどは700本回収できるタイプ(上記写真)が多い。

今回、バルク販売システムの「GramX」が初めて登場。セルフサービスの量り売りの課題解決を目指す。これまでは異なる単価のものについて運用が難しかったが、軽量方法について、異なる売価ごとの商品について全体からの引き算方式を採用することで解決。量り売りは海外で多く導入されているが、日本発の技術で普及を図りたいところだ。また、環境配慮の観点から今後、日本でも量り売りが広がる可能性もある。

チェックアウトは、セキュリティ面、年齢認証などの技術のアップデート、インボイス制度への対応が実装されている。

決済のソリューションではスマホレジの「Shop&Go」、フルセルフレジなど幾つかのタイプを提案した。

昨今はフルセルフの利用率が上がっているが、フルセルフは間違いをいかになくすかが問われる。一連の決済の模様をカメラで撮影している他、商品を通したときにスキャンができなかったり、時間がかかったりしたとき、あるいは精算していない場合にアラートを出すなど、注意を喚起するような仕組みの導入が進む。最後に会計が終わったことをゲートで確認することで、さらに確実なものとしている。こちらはShop&Goも同様。

商品がスキャンできなかったときにアラートが出る
スマホレジでもカート内にスキャンされない商品が入るとアラートを出す
年齢確認が必要な商品では確認を促す

バックヤードソリューションとしては、「自動値引きシステム」を提案。惣菜など見切り作業弁当や惣菜などを見切る際、バーコードを貼る作業の一連のコストがかかるケースが多い。これに対して、商品の製造時間帯別に軽量ラベルプリンターが「自動値引き対応バーコード」を印字したラベルを発行。あらかじめPOSレジに対象の時間帯ごとの値引き率を設定することで自動的に値引きをする。

ラベルのマークを変更することでお客にも分かりやすくしている。

設定の一例

また、こちらもサステナビリティへの取り組みとなるが、長年取り組んでいるごみを減らす取り組み、作業環境の改善なども継続提案。

ごみは軽量するだけで削減につながるという。分別を促した上で、事業者が自ら軽量し、登録するため、自然と削減する方向に向かうという。これまで把握ができていなかったことが数値化されることによる効果に加え、また、自ら軽量し、どこのごみか明確になることが削減につながっている。

従業員の作業環境改善は、オゾンを発生させ、除菌、消臭で働く環境を改善するもの。これまでも食品関係で関心が高かったが、感染症対策で他業種からも注目が集まっているという。

東芝テック

東芝テックはセルフレジの「ピピットセルフERELA」でトライアルグループと協業。デジタルサイネージをバックヤードの作業と連動させる仕組み。例えば惣菜などが出来上がったタイミングで、ペダルを踏むことでサイネージの内容が変わるような運用が考えられる。

最新型のフルセルフレジではスキャナーの設置を工夫することで、商品を傾けることなくスキャンできるようにしている他、顔認証や静脈認証にも対応。さらに上からはカメラで撮影することで間違いを防ぐ。

参考出展として分断型のセルフレジも提案。登録と会計を別の端末でできるようになる。現金使用時など時間がかかりがちのものを分散させることで、生産性を高めることを狙う。

昨年に引き続き、スタートアップのハルモニアと組んだ形でダイナミックプライシングを提案。惣菜のロスを削減するための取り組み事例を展示。惣菜のロスの多くを占める値引きロスの削減を目指す。売り切りの際は50%引きなどで販売されるが、その値引率をいかに下げるかを追求。

ただし、現場に負担をかけないように、これまでの値引き作業を前提した上で、棚割りごとに値引率、廃棄率、粗利益率をシミュレーションできるように見える化。それによってこれまで機械的に一律に値引いていたものを、粗利益率を最大化するように変えていくような運用を想定。現場としてはこれまでの作業を前提とした上で、貼る値引きシールが変わるだけで済む。いかに現場の作業に負荷をかけない形での運用にするかを重視しているという。

シミュレーションは、過去のPOSデータと廃棄データで計算して実施

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…