第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」金賞商品の開発秘話 丸久「贅を尽くしたハンバーグ」

2023.09.07

くふうカンパニーグループにおいて、チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」を運営するロコガイドは第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」を実施しました。2023年5月1日(月)〜24日(水)の期間で集まった一般生活者からの投票件数は、昨年の約3倍となる12万6313票。今回、リテールガイドでは4部門の「金賞」に輝いた商品の開発物語を取材しました。今後の商品開発の参考に、ぜひ、ご覧ください!

⇒第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」結果はこちら

生鮮・日配部門

丸久

贅を尽くしたハンバーグ

734円(税込み)

精肉の主力商品「宮崎県産牛」で加工肉のオリジナル商品を開発、カテゴリーナンバーワンの売れ筋に

生鮮・日配部門で金賞を受賞したのは、山口県を地盤とする丸久が開発した「贅を尽くしたハンバーグ」だ。丸久が精肉部門で長年販売し、支持を得ている「宮崎県産牛」を使用しての商品化で、さらに昨今、消費トレンドとして需要が高まっているとされる「冷凍」での商品化。長期保存ができるなど、売場や家庭での利便性も高く、まさに時代にマッチした商品といえそうだ。

「宮崎産牛はお客さまからかなり支持を得ている定番商品だったこともあって、この牛肉の良さを広げていくためにも、加工品として宮崎県産牛を使った商品ができないかと考えて開発した。冷凍は安定したおいしさを継続的に提供できる上、保存量も控えめで済むため、より素材の味を分かっていただけるメリットがある」(磯部洋介・精肉部長)

ただし、商品を開発した8年前はまだ、「冷凍のハンバーグを受け入れてもらえなかった」(磯部部長)という。「どちらかというと冷凍食品は『安売り』のイメージが強かったこともあって、苦労しましたね」(同)。いまでこそ品質面も含めたメリットが認識され、商品開発も多様化しているが、長らく冷凍食品のイメージは「弁当のおかず」が多く、一律値引きで販売されているといったイメージだった。

そうした中にあっても、丸久としてはチラシに掲載したり、宣伝活動を地道に行ったりしながら粘り強く販売してきた。それが昨今の冷凍食品ブームによって大きく花開いたともいえる。

売場でのシズル感が出しづらい冷凍の商品だが、粘り強く販売を続けてきたことに加え、昨今の冷凍食品への支持の高まりもあってコンスタントに売れる商品になっている

途中、冷蔵の加工品、あるいは生ハンバーグの状態での商品化は想定しなかったという。特に生ハンバーグの場合、お客が焼いて調理することになるが、そうなると味にばらつきが出てしまい想定した味が表現できない可能性があると考えた。

そもそも同商品を開発した狙いとして、「市場が柔らかいハンバーグ中心だったこともあり、歯応えのあるハンバーグを出すことで差別化を図る」(磯部部長)こともあった。安定した味を提供することは重要な条件でもあった。

精肉部門の主力の牛肉を本格的、かつ簡便なハンバーグに商品化

主原料の宮崎県産牛は和牛とホルスタインの掛け合わせの交雑種で、丸久での販売期間はおよそ30年になるという。同社の牛肉カテゴリーの中で70%を占める主力商品になっている。

確実に支持を得ている同牛肉を主原料とし、満を持してしっかり歯応えのある本格的なハンバーグを投入した。原料は牛豚の合いびきで牛肉と牛脂で40%、豚肉で21%の割合とした。他、つなぎの玉ネギ、パン粉などで構成される。比率についてはいろいろ試した結果、この比率に落ち着いたという。

牛肉の比率をさらに上げれば味わいは向上するが、一方で原価が上がってしまうため、「牛肉40%」には値頃の観点も考慮されている。商品規格は120gのハンバーグと20gのソースが各2個入りで、現在は原価やコストの上昇の影響もあって税込み734円(本体価格680円)で販売しているが、発売当初は税込み645円(本体価格598円)で販売していた。

「専門店、レストランのような本格的なハンバーグ(2個)が734円で食べられているのは、なかなかないと思う。しかも簡便商品。競争力はあると思う」(磯部部長)

それぞれの原料についても牛肉については内側を中心に粗びきにしている他、玉ネギは10mmと5mmにカットしたものをミックスしているなどこだわっている。こちらも理想の食感に近づけるように試作を繰り返した。開発には実に1年を要したという。

また、付属のソースについてもこだわり、こちらも試作を繰り返しながら「オリジナルソース」としてしょうゆベースの和風ソースを開発した。当初はデミグラスソースも検討したというが、デミグラスソースはそもそも味が強い上、粘度が高い特徴を持つことから「ソースの味で食べる」ような感じになってしまう。

素材の味をしっかり感じられるようにしたいとの考えのもと開発を進めた結果、あっさりした和風ソース、かつ粘性の低いサラサラしたソースに落ち着いた。高齢者層を含む幅広い年代に支持されるという点でも、結果的にしょうゆベースの方が良かったと判断している。「お客さまの声にも、ソースがおいしいという意見もあった」(磯部部長)

ちなみに、包材のデザインについてもかなり時間を要して決めるなど、細部にまでこだわった。メインで打ち出すハンバーグの「断面の写真は何度も撮り直した」(森重智美・営業企画部マネージャー)他、「本格的な味わいを家で簡便に楽しめる」というコンセプトを表現するために、例えばシェフの横顔のシルエットをさりげなく入れるなど細部にまでこだわった。

包材のデザインについては細部にまでこだわたった

月間3000~3500個を販売、加工肉ナンバーワンの売れ筋に

「贅を尽くしたハンバーグ」は現在、丸久全店で販売。月間で3000~3500個コンスタントに売れる商品になっている。加工肉カテゴリーではナンバーワンの売れ筋商品だという。

また、週1回のペースで発売当初の本体価格598円、税込み645円で販売する販促をかけているが、やはり、そのときのまとめ買いも多いという。着実にリピーターが増えてきているというが、そうした販促の機会がトライアルを促す形になっているともいえるだろう。

今回、「おいしいもの総選挙」金賞受賞を受け、金賞のロゴを入れた販促を開始。1回目の当日は大雨の中ではあったが、前週比107%の実績となった他、店頭ではお客からの直接の問い合わせもあった。今後も「金賞」を前面に打ち出した形で拡販を目指していきたいという。「全国に名が知れ渡るような商品に育てていきたい」と磯部部長は意気込みを語る。

「おいしいもの総選挙」金賞受賞といったトピックを前面に打ち出しながら拡販を図る

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