第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」金賞商品の開発秘話 野川食肉食品センター「ガリスパ!(ガーリックスパイス)」

2023.09.12

くふうカンパニーグループにおいて、チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」を運営するロコガイドは第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」を実施しました。2023年5月1日(月)〜24日(水)の期間で集まった一般生活者からの投票件数は、昨年の約3倍となる12万6313票。今回、リテールガイドでは4部門の「金賞」に輝いた商品の開発物語を取材しました。今後の商品開発の参考に、ぜひ、ご覧ください!

⇒第2回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」結果はこちら

グロサリー部門

週末びっくり市

ガリスパ!(ガーリックスパイス)

430円(税込み)

サガリの販売促進のための調味料を開発、しょうゆベースの汎用性の高さもあって大ヒット商品に

野川商事グループの1社である野川食肉食品センターは食肉専門商社として山形県内を中心に食肉を卸売りする他、週末の金曜日、土曜日、日曜日には山形県の9店、宮城県の2店の計11店で一般向けの小売りとして「週末びっくり市」を開催している。

グロサリー部門の金賞に輝いたのは同社が開発した調味料の「ガリスパ!(ガーリックスパイス)」。いわば精肉のわき役のような商品であるが、同社にとっては重要な商品である。

開発を担当した結城和真・取締役商品部部長は、「当社が看板商品として売っている牛肉のサガリ(横隔膜の一部)をもっと食べてもらおうと考えたとき、『サガリに合うような調味料を作ろう』ということで商品開発の着手に至った」とその開発経緯を語る。

同社が週末に開催する週末びっくり市でも、サガリは昔からの売れ筋商品だという。びっくり市では売上金額こそ牛タンがナンバーワンとなっているが、サガリも2大看板として大きな売上げがある。サガリは横隔膜の腰椎に接する部分で内臓肉ではあるが、脂肪をそれほど含まない赤身に近い食感であると同時にやわらかくもあり、かつ同社が輸入牛をメインに販売していることから価格の手頃さもあって人気となっている。「値段と食べたときの味のバランスがやはり人気の秘密ではないか」(結城部長)

一方で、サガリは色変わりが早く、ドリップが出やすいなど販売が難しい商品でもあるという。最近ではスーパーマーケット(SM)でも取り扱いが増えているが、それでも販売の難しさもあって、専門店の週末びっくり市としては差別化商材になっているとみられる。

さらに週末びっくり市はその名のとおり、週末の金曜日、土曜日、日曜日の週3日間だけの営業のため、「大量のサガリを3日間で売り切る」ためにも、販売を促進する商品が求められていた側面もある。

ガリスパ!が発売されたのは2017年のこと。サガリの販売を促進しようと結城部長が発案し、実際に開発に動いた。開発にはそこからさかのぼること1年ほどをかけたという。

焼肉やステーキなど基本的に「焼いて食べるシーン」を想定して開発したが、当時、焼肉もステーキも液状のたれやソースで食べるシーンから少しずつ粉末のスパイスを用いる傾向への移行がみられた。アウトドアのブームもあって、「アウトドアでより使い勝手の良いスパイスが少しずつ増えてきたときだった。これはスパイスの方が絶対いいなと思って、スパイスにしましたね」と結城部長は振り返る。

もともとたれ関連で取引のあった老舗しょうゆメーカーが「しょうゆ粉末」を製造していたこともあって、それを活用することで味をしょうゆベースとすることとし、名前にもあるガーリックについてはフライドガーリックを用いて、黒コショウなど他のスパイスとのバランスを取りながら味を決めていった。

「サンプルを送ってもらって、『もっとこうしてほしい』とか何ターンもやり取りしながら開発した。材料に関しては特別何かすごいスパイスを入れてるといったことはなく、決め手はしょうゆとニンニクのバランスにある」と結城部長。

パッケージの変更と日経トレンディが転換点

結城部長の発案と開発のもと、発売に至ったガリスパ!だが、発売当初から大ヒットしたわけではない。少しずつ支持を拡大してきたが、一方で昨年、大きく販売量が増えるきっかけがあった。パッケージを変更したのだ。

ガリスパ!は、発売当時はアウトドアをターゲットにしたスパイスということでキャンプ用品店やつながりのあるSMなどにも卸していたが(現在は卸していない)、そのキャンプ用品店のオーナーからパッケージについてアドバイスがあった。「味の評判は良かったが、『パッケージをもう少しインパクトのあるものに変えた方が良いのではないか』かと言われた」(結城部長)

当時のパッケージは、赤色ベースのラベルに小さく、細い文字が書いてある目立たないものだったが、それを現在の黄色ベースのラベルの黒文字で「ガリスパ!」と大書されたインパクトのあるものに変更。もちろん、もともと味の評判が良かったこともあるが、そのパッケージの変更によって爆発的に販売量が増えたという。さらに日経BP社が発刊する『日経トレンディ』の2022年7月号にガリスパ!が取り上げられたこともそれに拍車をかけた。

もともと味のポテンシャルに加え、パッケージの変更やメディアに取り上げられたこともあって、大きく販売量を伸ばしたガリスパ!だが、お客からは「汎用性がすごく広い」という声が多く寄せられるという。

「チャーハンを作るときに使う、目玉焼きにかけて食べるとおいしいとか、いろいろな料理の調味料として使えるからすごく良いとか、唐揚げの下味に使えるとか、ご飯に直接かけて食べていますとか、お客さまから教えてもらっている感じですね」(結城部長)

こうした汎用性の高さは、実際には当初から狙っていたものでもないという。「結局、しょうゆなので、絶対いろいろなものに合うだろうなとは思っていましたけど」と結城部長。開発者にとってはうれしい誤算といったところだろう。

お客が喜び、製造メーカーのスタッフが応援する商品開発

今回、見事にグロサリー部門で金賞を受賞したガリスパ!だが、受賞後は売場でも金賞受賞を訴求していることもあって、販売量は1.5倍程度に増えているという。

結城部長は、金賞受賞に対して「お客さまに喜んでもらっているのが一番うれしい。作ってくださっている工場のスタッフの皆さんも今回応援してくれて」と、お客を含む関係者が軒並み喜んだり、応援してくれていることが、何よりうれしいという。何より、それはガリスパ!が多くの人に愛されていることの表れでもあるだろう。

単品大量陳列で圧倒的なボリューム感で売り込む

ガリスパ!のヒットを受け、結城部長としては現在、シリーズとしてラインアップの拡大を図っている。最近発売したのがポン酢をベースとした「ガリ酢ポ!」。こちらは以前から販売していた商品をリニューアルしてシリーズに組み込んだものだが、発売後、好調に売れているという。

また、スパイスではないが、「ガリスパ!と酢を合わせ、ギョーザを食べるとおいしい」という声がお客から寄せられたことを受け、それに合う【酢ガリスパで食べる生ギョーザ】を開発。販売を開始してもいる。

精肉専門店が開発していることもあってひき肉には100%豚肉を使用したこだわりのギョーザだ。さらに一次加工で蒸すことなく、生素材のまま非加熱で冷凍した状態で商品化するなど品質にこだわった。ガリスパ!の味が強いこともあって、それに見合う品質のギョーザにすべきという考えからの仕様だ。

さらに結城部長はガリスパ!のシリーズの次を見据えた商品開発にも着手している。現在取り組んでいるのは魚介ベースの焼肉のたれ。「あるメーカーのキムチ鍋のスープを飲んだときに、すごく魚介の味がするなと思った。それで、『そういえばキムチ鍋のスープは豚肉とよく合う商品』と思い出して、これをヒントに焼肉のたれを作ってみようと思った」(結城部長)

ガリスパ!を生み出した原動力は、結城部長のこうした新しい需要を作る姿勢にありそうだ。

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