ヤオコー新浦安店が3月26日リニューアル、「ヤングミドル層特化型」の南エリア旗艦店として成長けん引を期待
2026.03.27
ヤオコーは、客層の違いなどから出店エリアを南北に分け、よりそれぞれに沿ったマーチャンダイジング(MD)を志向する方針を採っている。大きくは、高齢者が多く、食も保守的な北エリアと比較的年齢が若く、消費に対する感度も高い南エリアといった分け方で、さいたま市大宮区辺りを目安に店舗を南北に区分けしている。「それぞれ、地域に合わせた、根差した、寄り添う商売をしようという」(川野澄人社長)のがその狙いだ。
そのうち北エリアの旗艦店は、2024年9月6日に埼玉県久喜市に久喜吉羽店としてオープンしている。それから1年半ほどの期間を経て今回、3月26日に既存店である新浦安店(千葉県浦安市)を改装する形で南エリアの旗艦店を構築した。
ヤングファミリー層の厚さが持つ商圏のポテンシャルを重視
新浦安店は18年9月27日にオープンしてから7年半ほど経過しているが、イトーヨーカドー跡地を再開発した箱型の大型ショッピングセンターである「ニューコースト新浦安」の核店として年商で50億円を上回る大きな売上げを挙げていた。今回、「8年目(の短期間で)でこれだけの大型改装は異例」(川野社長)という中、新浦安店に白羽の矢が立ったのには商圏が持つポテンシャルの高さがある。さらに今回の改装によって年商を初年度段階で前年比17%増の60億円にまで高める計画だ。

JR京葉線、武蔵野線の新浦安駅南口から南東へ約1kmの距離に位置するなど、駅からはやや距離があるが、路線バスも走っていることから車だけでなく公共交通機関を利用しても来店しやすい立地となっている。車での来店についても、施設全体の駐車場が930台分と十分だ。

店舗周辺には高層マンションを中心とした集合住宅が多く、40~50歳代のファミリー層が多く住むエリア。1km圏内の人口は約3万4000人、世帯数では約1万2000世帯と商圏人口は厚い。競合店が1km圏内に3店、至近にはベルク、オーケーなど価格に強みを持つ企業もあるが、それを吸収するだけの商圏の厚みがあるということだろう。
1km圏内の世代構成では50歳代の構成比が最も高く、次いで40歳代、10歳代と続く。世帯人数では3、4人以上の構成比が高く、逆に単身世帯の構成比は千葉県の平均を大きく下回っていることから、ヤングファミリー層(ヤオコーの定義では49歳以下の親とその子)多いエリアということが想定される。南エリアとして強化していきたいのがまさにヤングファミリー層であることから、この層が厚い新浦安店の商圏が旗艦店を問うのに適していると判断された。
「人口の密度も高く、所得層も高いので、新しいものに対しての感度が非常に高い。その意味では南エリアの象徴的な客層が集まっているエリアだと思っている。感度の高いお客さまに対して、新しいものが刺さらなければ、まず他でもご支持をいただけないだろう。われわれとしても感度の高いお客さまに刺さる、ご支持いただけるようなものを作ろうということで、新浦安店を改装の対象にした。加えて、もともと日販がそれなりに高く、売場面積も広く取れる。商業集積として駐車場も広く構えているので、客数のアップにも十分耐え得るといったことも加味した」(川野社長)
新浦安店の場合、1km圏内の世帯年収は734万円と、平均を大きく上回り、さらに1000万円以上の世帯が約4分の1を占めるなど、高所得者層が多いエリア。一方でヤオコーとしては、高い感度に基づくこだわりの消費に加え、子育て世代ということで頻度品については安さを求めるといったことも想定し、価値と安さの両方を追求した。
また、既存店のためヤオコーカードのデータがあるが、その分析結果によると食への関心が高く、新しい発見を求めて来店している人が多い一方、素材を購入して手調理をする人の来店が他店と比べて低い傾向にあるという。

そうしたことを踏まえ、今回改装後の客層は40~50代のヤングミドル層が最も多くなると想定、子育て世帯が中心で、子どもの好きな料理に合わせて買物をするような買物行動が想定されるとする。
初年度の売上高構成比の見込みは生鮮38%、グロッサリー48%、デリカ14%、SKU数は生鮮1020、グロッサリー1万7840、デリカ370となっている。改装前と比べ、グロッサリーとデリカは増加、生鮮は減少している。
新浦安店は新しいストアコンセプトとして『「新しい魅力」で期待を超え記憶に残る楽しい買い物体験で笑顔になるお店~南エリアの旗艦店としての新しいSMフォーマットの確立~』を設定。川野社長によると、「大きく3つの取り組みをしている」という。
生鮮の強化、新規MD、そしてヤング層への提案強化
1つ目は、改めての「生鮮の強化」。まず、青果では「圧倒的な安さ」を実現するため価格感度の高い商品の安さを打ち出す。そのためにボリューム陳列ができる平台を活用した売場に大きく舵を取った。これによって単品の陳列量を増やすことで開店時に商品を「出し切り」、そのまま「売り切っていく」ことで、できるだけ手がかからないようにする狙いがある。「朝一から量感を出して売り切っていくエイヴイのスタイルに近い」(川野社長)
また、鮮魚では特に対面販売の近海魚を強化、精肉ではジビエ(野生鳥獣)なども取り扱い、「発見がある」など素材で圧倒的に支持を得ることを目指す。



























2つ目は「チャレンジ」につながる部分で、いままで取り扱っていなかったカテゴリーの新規取り扱い。「食品スーパーの枠を超えた新規MDの導入で新たな売上と利益の創出」を目指す。スーパーマーケット(SM)のこれまでの商品構成にこだわらずに、他業種からのラインロビングを含めた新規MDの導入によって「ヤオコー」というフォーマットを進化させるというわけだ。
代表的なものに対面販売する店内製造の「ブルーゾーンジェラート」、あるいは「Reneful(リネフル)」という新たなブランドを冠した化粧品の品揃え、前述のジビエなどある。「新しいカテゴリー、他社にない、あるいは他の業界、業態で扱っているカテゴリーを積極的にわれわれとしても取り込んで行こうということ」(川野社長)







3つ目は、南エリアで比較的多い「ヤング層に向けた提案の強化」。骨取りの切り身、ひき肉の簡便商材の強化はもちろん、特に子育て世代に向けた「めりはり消費」に対応するためにハレの日のごちそうだけでなく、こだわりの少ない特定商品群での圧倒的なコストパフォーマンスを実現するといった商品面の強化、つまり、価格帯を含めた品揃えの幅の拡大が意識されている。

















また、商品により提案に加えて、対面販売による五感に訴える演出や出来たて、作りたての臨場感なども重視した。随所に新規取り組みや新規商品を導入しているが、特に目立つのが「店内製造」の商品だ。ヤオコーではこれまでも試売の意味も込めて新たな商品を店内製造で取扱開始し、取り扱いを拡大する場合にはセンター製造に移行し、水平展開にしていくという考えの下、商品開発をしているが、今回もそうした意図も含めた形で店内製造の商品を多数用意している。

新浦安店を含む戦略特区の店でトライアル&エラーを重ねる
売り方の面でも前述のように、ベーカリーでジェラート、フィナンシェを対面販売するコーナーを設けた。もちろん、こうした商品、売り方については、売上げが高い店だからこそ展開できるという側面もある。その点に対して、川野社長は「とにかく1店舗からでもやってみないと分からない。テーマとしては既存店に波及できる、できないはともかく、まずはやってみようというところがスタートとしてある。もちろん、1店舗で終わるということではなく、次の店につなげたいという思いはあるが、あまりその意識が強くなり過ぎると新しい取り組みができない」との認識を示す。
同時に、「ヤオコーも200店舗を超えてきたので、全店配荷を前提とすると、どうしてもやれることが限られてしまう。そうすると新しいMDも生まれてこない。つまらない店づくりになってしまう。今回は、思い切って変えてみよう、そうすることで新しいものが社内でも生まれてくる、社内の活力にもなる。そこを意図した」(同)とし、今年3月1日付の組織改正で「旗艦店およびプロジェクト推進のための『戦略特区』を新設」した背景にもそれがあるとする。
「全店配荷とか全店統一のMDから少し外れて、自分たちで、お店中心で発想しながら新しいことにトライアルしていこう。そこでトライアル&エラーを速く重ねて、われわれの進化をスピードアップしていく」(川野社長)ことが狙いだという。
戦略特区は現状、南エリア中心に8店舗設定されていて、新浦安店もそのうちの1店舗。他、浦和パルコ店(さいたま市浦和区)、武蔵浦和店(さいたま市南区)、東大和店(東京都東大和市)など、大きな売上げを上げている店が設定されている。
当然、店内製造で人手をかければそれだけ経費が重くなることになるが、ヤオコーとしては基本的には、これをトップラインの売上高を高めることで吸収する考えだ。新浦安店は約750坪の売場に対し、前述のとおり改装初年度で60億円という高いレベルの売上げを想定する。坪当たり販売効率は約800万円となる。
ただし、同時にオペレーション効率化のための施策も進めている。青果の平台の出し切り、売り切りのオペレーションは量感の演出だけでなく、それ自体がローコストオペレーションにつながるという点も重視されている。それによって効率化した人時を店内加工や価格を抑える原資に振り向けるという考え。他、レジはセミセルフ6レーン、精算機12台、フルセルフレジ23台と、フルセルフレジ主体となっていることも生産性という面では大きく変わってきている部分だ。
なお、サービス面でネットスーパーに関しては改装前から展開していて、改装後も継続して展開していくが、作業室を1階から2階に移設し、1階の作業場を拡大した。ここにも店内製造重視の姿勢が表れている。
店内製造を増やしたということは、ヤオコーがそれだけ「出来たて近いことに価値がある」と判断していることになる。もともとSMはセルフサービスが前提で、商品は必然的に「作り置き」となるが、仮に店内で製造するにしても作り置きを前提にまとめて製造することで効率化を果たしてきた。
今回のヤオコーの取り組みは、1つに新しい分野を開拓するためのチャレンジとしてR&D(研究開発)のような位置づけを持つこともあるが、もう1つ、出来たてであることの価値をいかに実現するかということに対する挑戦でもあるといえる。
考えてみれば、仮に作り置きであったとしても、販売量が多ければその商品は次第に出来たてに近づいていく。売上げのトップラインが高い店だからこそできる、出来たてへの近づき方が実現できるということで、今回の新規MDの推移はもちろん、店内製造多用のオペレーションが生み出す「価値」にも注目したいところだ。
一方、新たなブランドとして立ち上げたリネフルはプライベートブランドとして立ち上げたこともあって、当然、ロットの問題もあって広く他店での取り扱いが前提にある。
「ドラッグストアが増えてきて、われわれは住居関連のカテゴリーはずっと縮小してきた。ただ、そういう中でも、われわれの優位性として来店頻度が高いことがあることから、頻度高く買う物についてはニーズが強い。一番はペットフードだが、歯ブラシや歯磨き粉などのオーラルのカテゴリーは売上げも伸びている。改めて縮小だけでなく、チャンスがあるところはどこなのかと考えたときに、化粧水などはいま男性もお使いになるし、他社もたくさん販売されているので、やはり比較的頻度高く、日常的にお使いになるもので、われわれとして自信を持ってお客さまにお勧めできるものをカテゴリーとしてしっかり打ち出せば、普段使いで使っていただけるようなものになっていくのではないか」(川野社長)
ヤオコーが旗艦店を出店することで、そのMDを進化させてきたことは確かだ。今回も、この南エリアの旗艦店に向けて多くの商品が開発され、新規MDとして投入された。特に人口減少の影響が相対的に少ない南エリアは、ヤオコーの今後の成長にとっても非常に大きなマーケットとなる。
今回のラインロビングを含む商品、売り方の開発が「ヤオコー」フォーマットの進化にどのようにつながっていくのかに大いに注目したい。
ヤオコー新浦安店概要
所在地/千葉県浦安市明海4-1-1NEW COAST SHIN-URAYASU(ニューコースト新浦安)内
改装オープン日/2026年3月26日
営業時間/9時~21時30分
駐車台数/930台(駐輪場770台、施設全体の台数)
延べ床面積/3468.93㎡(ヤオコー床面積、1049.35坪)
店舗面積/2474.45㎡(ヤオコー売場面積、748.52坪)
店長/高木 誠
年間売上げ/初年度60億円(予定)
従業員/正社員38人、パートナー・ヘルパー・アルバイト173人(延べ人数)
商圏人口/1km圏内3万4000人(1万2000世帯)、2km圏内7万3000人(2万9000世帯)、3km圏内12万7000人(5万5000世帯)









