ビジネス衣料偏重からカジュアル、レディース、ウェルネスに踏み込む AOKI 小出大二朗社長
2026.10.28

ビジネス、カジュアル、レディースの比率を4対3対3に
AOKIグループのファッション事業を担うAOKI。紳士服、婦人服および服飾品、ファッション商品の企画販売を手がける。郊外ロードサイドのチェーンストア展開を出発点とする「AOKI」、ビジカジ(ビジネスカジュアル)を軸にショッピングセンター(SC)出店を主体とする「ORIHICA」、メンズ、レディースの2L〜8Lの大きいサイズに特化した「Size MAX」を展開し、2026年3月期末の店舗数はAOKIが493店、ORIHICAが118店で合計611店。持ち株会社であるAOKIホールディングスの同期の連結売上高は1945億3200万円で、5期連続の増収となった。AOKIが担うファッション事業は、そのグループの主力セグメントである。
AOKIの小出大二朗(こいで・だいじろう)社長は今年6月に創業家の青木会長から社長を引き継いだ。大学卒業後、1989年にアパレルメーカーに新卒入社、同社には長らく在籍し、営業、企画、米国・英国ライセンス事業責任者を担当した。その後、繊維専門商社を経て22年にAOKIに入社。川上の素材や原料から川下の販売に至るまで、衣料品の幅広い経験を持つ経営者といえる。スーツ需要の縮小という構造変化の中で、創業事業をどう成長させていくか。小出社長に聞いた。
紳士服チェーンは、車での来店を前提とした郊外の幹線道路沿いに大型の路面店を構え、男性用のスーツを主力に販売することで成長を遂げてきた。仕事着として必需性が高い上、定期的な買い替え需要が発生するという性質が売上を支えていた。
その前提が次第に崩れてきた。ビジネススタイルの多様化が進み、スーツを着る機会そのものが減った。着る場面が減れば買い替えの周期は延び、来店の機会も減っていく。一方で店舗は地域に存在し続ける。効率を維持するためには変化に対応した商品を販売する必要がある。
「やはり直近はビジネス品種がなかなか厳しい。それが続いているのは事実です。いわゆる従来型のスーツです。ある一定の需要はあるのですが、全体としてはなかなかビジネス品種が厳しいということはあります。
それで、カジュアルとレディースのカテゴリーを推し進めているというところで、そこは計画どおりに着実に成長しています」
26年3月期のファッション事業は、ビジネス衣料が前期比97.7%にとどまった一方、カジュアル衣料は114.0%と伸びた。既存店売上高は99.2%、客数96.6%に対し客単価は102.7%。客数減を単価で補う構図が続いている。
「特にこの夏は、6月が思った以上に気温が上がらなかったこともあって各社苦戦して、私どもも思ったような数字が出なかったということはあるものの、今年打ち出した『スーパーエアクールシリーズ』は好調に推移しています。通気性を高めることをテーマに、これまで『エアクール』というシリーズを発売し、今年はさらに『スーパー』を付けて『スーパーエアクール』とし、品種をまたがってシリーズで展開しています。
スーツから、いわゆるカジュアルのセットアップ(上下を同じ素材でそろえた組み合わせ)、(同社オリジナルの)パジャマスーツやインナーなども含めてシリーズで展開し、そこが好調に推移しました。
もう1つの軸は、いま世の中でもかなり話題となっていますが、血行促進作用で疲労回復をサポートする リカバリーウェアです。『リカバリーケアプラス』という名前で展開していますが、数字をかなり上乗せてくれました。
また、レディースでは品種でパンツを主軸に置いています。シルエットがきれいに見える『バレリーナパンツ』の名称で打ち出した商品がご好評いただき、それプラスアルファのインナーで順調に推移しています。
ただ、一方で(27年3月期第1四半期に当たる)4-6月の状況では売上と客数は前年を割ってしまっているのは事実です。ただ、客単価が前年を上回るペースで好調に推移したというのがこの4-6月の業績ベースの結果です」
7月に入ってからの動きは。
「おかげさまで順調です。特にインナー関係を中心に6月は若干苦戦していましたが、ビジネスではワイシャツ、スラックスですとか、カジュアルでもカットソー、インナー系、あとは元々見込んでいた『スーパーエアクール』シリーズのカテゴリーが順調に推移するようになりました」
ビジネスウェアをめぐる構造変化の中、AOKIが掲げる商品構成の目標は明快だ。26年3月期の売上高構成比はビジネス60.2%、カジュアル21.0%、レディース18.8%。これを将来的にビジネス40%、カジュアル30%、レディース30%へ組み替える計画だという。
「ビジネス、カジュアル、レディースでは以前は(構成比で)7割、1割、2割でしたが、最近では6割、2割、2割に近づいています。これを4割、3割、3割に持っていこうとしています。
やはり、AOKIの事業に関してはビジネス偏重からカジュアル、レディースにシフトしていく。ただ、ビジネスに関しても『数字が落ちていくから、金額(予算)をただ下げればいい』ということではなく、一定程度、スーツの需要がある中で新しいご提案をさせてもらいながら、何とかビジネスカテゴリーでは数字を維持していく。そこで4割、3割、3割の構成比に持っていく中で、カジュアル、レディースを増やしていくというのが大きな目論みです」
AOKIが担うファッション事業の売上高は26年3月期で1028億9400万円。現状はこのうちの6割強、約640億円をビジネスが占める状況にある。この金額を落とさず、あるいは成長させながら比率自体を4割まで下げるということになる。
さらにビジネスカテゴリーの中身を分解すると、新たな可能性も見えてくる。
「ビジネスカテゴリーといっても、当然スーツだけではありません。インナー、雑貨など日々の中でのデイリーユースの商材もあります。こうしたシーズン、気温にあまり左右されない商品群にはいままでも力を入れてきましたが、今後さらに踏み込んでもっともっと力を入れていく。そこは数字のかさ上げがまだまだできるところだろうと思っていますね。AOKIでは、これらはビジネスのカテゴリーに入れています。
雑貨は靴、バッグなどがありますが、この辺りのラインロビングには可能性があります。まだ比較的、いままでのラインアップの延長線上ではりますが、トライはしています。カジュアルのシーンに合わせた靴や、ビジネスバッグだけではないバッグパックなどのラインアップなども当然強化しておりますし、シーンに合わせたスタイリングに組める商材の企画、開発を進めています」
多様なシーンに対応できるスーツを開発、価格帯は二極化
新型コロナウイルスのパンデミックを受けて生まれた「パジャマスーツ」も、AOKIを語る上で外せない。登録商標として展開する同シリーズには、社内の定義があるという。
「基本的には『見ためスーツ、着心地パジャマ。』というキャッチコピーでうたっていまして、素材を『ジャージー』メインにしています。専門用語で生地の種類として『布帛(ふはく、縦糸と横糸で織った織物)』と『ジャージー(1本の糸を編んだ生地で伸縮性が高い)』があるのですが、基本的には伸縮性があるカットソー(裁断、縫製)ジャージーを素材として作ったものを『パジャマスーツ』という枠にしています。
もともとはコロナ禍で生まれた商品で、その時はどちらかというとオンライン上での画面で見えるという状況でしたので、見た目きちっとできる、ただ、家で過ごすためにはもうちょっとのんびりしたいので伸縮性が欲しいといったお客さまのお声に応えた商品でした。
ただ、出社が戻る中でもパジャマスーツを着ている方は多くなっています。コロナ禍当時はノーカラーのジャケット(この場合はカラー〈上えり〉とラペル〈下えり〉の両方が付いていないジャケット)の需要がすごく大きかったですが、そこからコロナが明けて、出社する機会が多くなる中で、カラー、ラペルが付いたものに移行しているといったことはありますね。
その辺りは、多様なシーンに対応できるような提案をしています。シャツを着てネクタイを締めればビジネスシーンでも着用していただけますし、もっと砕けた形でTシャツやセーターみたいなアイテムと合わせれば、カジュアルにも着こなせるという、すごく幅の広いアイテムではあるので、そこは本当に当たったと思いますね」
それでも時代的にはビジネス衣料のマーケットはなかなか厳しい状況が続く。今後をどう見ているのか。
「もちろん、スーツが難しいということはありますが、やはりスーツで培ってきたものづくりの技術があります。そこについては、どちらかというと、例えば猛暑でもいかに快適に過ごしていただけるかということでの素材の工夫ですとか、機能や着心地の追求をしていきます。
あるいは『着回しクロススーツ』のカテゴリーを去年の秋に出しました。これはスーツとしても販売するのですが、ジャケット単品、スラックス単品でも着用できるため、着こなしが自由にできるというカテゴリーです。なかなか市場は厳しいとは言いながら、さまざまな工夫をしてスーツを着られる方に対しての需要喚起を目指して新しい提案は引き続きしてまいります」
一方で、他分野でも見られるように、スーツでも価格帯の二極化が進んでいるという。AOKIは高価格ラインの「金のスーツ」を擁し、2025年11月にはイタリアの名門生地ブランド、REDA社との取り組みも開始している。
「やはり『二極化』はあります。私どもは『金のスーツ』という少し価格の高いラインを出しています。一番上の9万9000円から8万9000円、7万9000円のラインになるんですが、ここの高価格帯の商品が、意外と動きが良い。一方で中価格帯がやはり厳しくて(低価格帯も支持が高く)、上と下に(支持が集まる)、いわゆる二極化が起こっています。
高価格帯は立地の影響もあって、銀座の1丁目に店舗(銀座本店)があるのですが、この店などはやはり高価格帯の需要がすごくあります。高価格帯のスーツを求められるお客さまもすごく多く、リピートされるお客さまもいらっしゃるので、リニューアルをして『ロイヤルコーナー』という高価格帯のスーツ、ジャケット、シャツなどがゆっくり見られるようなスペースがあります。そこには「金のスーツ」もあって、非常に動きが良いですね。
もう1つがイタリアの生地メーカーのREDA社との取り組みです。AOKI独自のストレッチ性のある素材を作っていただき、高価格帯のコラボ商品を作っています。店舗限定ではありますが、その辺も非常に支持率が高くなっていますね」
衣料品販売を取り巻く環境ということでは気候の問題も大きい。例えば、最近は暑い時季が長くなり、四季ではなく「二季」のような状態になっているともいわれる。特に春夏、秋冬に向けて商品を展開してきた衣料品専門店としてはこのような変化にも対応が迫られる。
「特に冬、真冬のシーンがかなり減ってきているとは思っています。そういう意味では春から夏、晩夏も含めた着用シーンが構成比としてはどうしても増えていきます。そこに対しては商品企画の工夫、スケジュール感の調整をしていくことですね。
店頭展開で、例えば『9月、10月だからファッションとして秋冬商品を出す』といっても売れないので、そこはしっかりその時季に、気温に合わせた商材を新規で手配するなり、そこに合わせて生産数に奥行きを付けて、ロングシーズンでお買い求めいただけるような商品ラインアップにしていく動きはしています。
コートも諦めてはいけないので、いかに工夫しながら、お客さまのニーズ、ウオンツに合わせた商品を開発できるかに挑戦しています。やはり軽量、軽くても暖かい素材や仕様を研究していまして、商社と吸湿発熱(湿気を繊維が吸う過程で熱を発生させる)ができる素材を開発して『スーパーエアウォーム』というシリーズを打ち出しています。
屋外では寒さを感じる一方で、そのまま電車に乗り込むと一転して暑さを感じてしまう——そうした温度変化への対応は、長年の課題でした。そのため、「しっかり発熱させる機能」と「熱を逃がして快適さを保つ放熱性・軽量性」をいかに両立させるかという点にこだわり、開発を続けてまいりました 」
販路を持つことを生かし、ウェルネス分野の将来にも注目
長期的には日本が人口減少局面に入っていることの影響も考えなければならない。
「日本の人口が減少し、マーケット自体が順調に伸びていくわけではないとなると、やはり世の中の流れに合わせてもともと比較的お堅いスーツを作っていたところから、AOKIでもちょっとカジュアルな領域に踏み込んでいって、そこの構成比を含めて上げていく。
レディースも『MeWORK(ミワク)』というブランドを打ち出していたり、フレッシャーズの対応もしていますが、例えば、管理職の女性に対してのスーツ提案のようなこともまだまだでき切れていない。従来は、どうしてもフレッシャーズと、ミワクというブランドを打ち出す中で20代、30代の働く女性がメインターゲットでした。20代、30代の働く女性をターゲットとした考え方は継続していくのですが、もう少し大人の女性、経営管理職などに対しても、価格帯も含めたグレードの高い商品の提案もメンズと併せて進めていこうと思っています。
特に地方では百貨店も減って購入の場所もなくなっているといったことも聞こえてきます。そこに向けて、『高品質で、リーズナブルな価格で、好立地にあるAOKIの店舗での提案』にはまだまだ可能性があると思っています。
あとは、これはまだ具体的なものではないですが、リカバリーウェアなどのウェルネス分野は、ただ単に疲労回復をサポートする服だけではない、それ以外の商品の打ち出しや、現状各社が展開している一般医療機器よりもう少しレベルの高いものの開発、さらに立地を生かした販路としての売上のかさ上げはまだまだしていけるとは見ていますね」
機能性をうたった商品として話題のリカバリーウェアであるが、衣料品小売り以外も含め、多数の競合が手がける状況にある。AOKIでは「一般医療機器」として届出済みで、着遠赤外線の血行促進作用が疲労回復をサポートする「リカバリーケアプラスシリーズ」を展開している。どのように差別化していくのか。
「1つは、これは他社でもスタンダードですが、シーズン性を持たせたアイテムを企画・販売しています。、季節を問わず年間で着られるアイテムと、例えば春から夏にかけて着られるアイテムといった形で七分袖、五分袖、半袖のアイテムを取り揃えています。さらにそこに夏用の素材を当て込んで、シーズン性を持たせたアイテムなどはおかげさまで非常に順調に推移しています。この「リカバリーケアプラスシリーズ」は、『AOKIで売っている』と認知が広がり、ピンポイントでそこに向けて来店される方もいらっしゃいます。
ただ、お客さまとしても当然、使用シーン、あるいはお好みがあります。暑いから本当に涼しい素材がお好みであるかというとそうでもなかったりもします。特に夜、就寝時に着られる方も多い。もう少し素材がしっかりしていた方がいいとか、むしろ長袖長ズボンの方が良いというお声もあります。実は、その辺りのバリエーションも今回広げました。。その意味では、お客さまの多様なニーズにお応えできたと考えています。
もう1つはAOKIならではの部分です。キャラクターを採用したリカバリーウェアを販売しています。これはあまり他にはないもので、先行して販売できたことは特に女性からの支持の面では良かったです」
多くの企業で取り扱われることで、マーケットの拡大が期待できる分野でもある。
「価格の幅も広がってきています。ウェルネス需要はまだまだ広がりはあるでしょう。また、アイテムの特性上なのか、ギフトが多いようです。今回も母の日、父の日にはやはりその週の売上が上昇しました。
さらに、これは本当におもしろいのですが、リピートが多いということです。例えば1着、自分で買った、あるいは誰かからプレゼントされたということでまずは着用されます。ある程度着た後は当然、洗うわけですが、その洗いの間、違う商品を着ると、『何かがちょっと違う』と思われることがあるようです。それで『もう1着買おう』となる。もともと1着買われた方、送られた方が『やはりもう1着あった方が良いよね』『もう1枚欲しいよね』という需要がすごく顕著にありましたね」
従来のAOKIに、こうしたインナー的な需要はどれだけあったのか。
「いわゆる肌着や下着などの需要はもちろんありました。それもシーズンに分けて、いろんな機能性を付けた商品を販売してきましたが、一般医療機器としてうたえるものはありませんでした」

郊外ロードサイドから駅近、SC立地への転換
フォーマット別の店舗数の内訳では26年3月期は「AOKI」が2店出店、6店退店で493店。「ORIHICA」は20店出店、8店退店で118店と純増した。27年3月期もORIHICAは新規出店を計画している。両ブランドの違いはどこにあるのか。
「AOKIとORIHICAとの違いで申し上げますと、AOKIは『人生の節目に最高の装いを提供する』ということを大切にしています。。人生の節目とは、特にフレッシャーズ(新入学・新入社などを迎える方)が最たる例ですが、それだけではなく、ビジネスシーンで着用する服、礼服なども含みます。カジュアルでも旅行のシーンなど、ちょっとした節目に対してご提案できる商品を大事にしています。お客さまの年齢層の幅もすごく広く、そこに向けた商品提案をしていこうという考え方のブランドがAOKIです。
ORIHICAは、もともとの発祥が『ビジカジ』(ビジネスカジュアル)で、それがメインとなります。最近、例えば『研修にはスマートビズスタイルで来てください』などとよく言われたりします。一般の方は『スマートビズとはどんなスタイルだろう』と考えます。だから、『スマートビズならORIHICA』といった考え方で、いまのビジカジ需要に対応していこうというのがメインです。商品のラインアップではここが大きな違いです。
メインの販路はやはり郊外のロードサイドがAOKIで、店舗面積は150坪がベースになってきます。インショップでのSCの販路がORIHICAでこちらは60~80坪ぐらいです。大きなすみ分けとしてはこのような形になります」
出店の環境についてはどう見ているのか。
「基本的にはいまは精査をして出店しようという動きです。また、いまのところ郊外を積極的に攻めて出店して行こうという考えはないです。当然のことながら全くAOKIがないエリアもありますし、良い物件があって、好条件であれば出店はしていきます。
ただ、AOKIはどちらかというと既存の店舗に対して、例えばそれが駅前の好立地に移れるのであれば移転しよう、あるいは駅の近くにある路面店だとしても、SCのインショップに入れるのであればそういう動きをしようといった流れです。
一気にはなかなかできないですが、どうしてもロードサイドの単独店だと限られたお客さまにならざるを得ない部分があります。やはり駅前やSCのような好立地に行くと店前の通行客がすごく増えます。そこは、われわれが狙っているカジュアルやレディースの売上の構成比を伸ばすという戦略と合致します。それで、そういった立地の変更をしています。
店舗数だけを見れば、まだまだいわゆる郊外型のフリースタンディングのロードサイドの店舗が主流ではあるのですが、チャンスがあれば立地の良いところ、いわゆる店前の通行客が多いところに移転、位置替えをしていこうという動きをしてはいます」
良い立地は面積も狭くなりがちだ。
「そうですね。ただ、面積が縮小されて効率が良くなるということもあります。効率という意味ではAOKIの既存の店舗で『スペースが広すぎる』と考えられるところには、グループシナジーとして例えば『FiT24』(AOKIホールディングスのエンターテイメント事業で24時間営業のフィットネスジム)を、少しAOKIのスペースを狭くして入れて、そこで2事業の売上を取っていくわけです。店舗効率も上げて、なおかつそれぞれの事業で利益をしっかり確保していこうみたいな動きですね。そこはやはり、AOKIグループならではのシナジーでもありますね」
「FiT24」は27年3月期末まで124店に広げる計画が発表されている。
AOKIグループでは「RISING 2026」をコンセプトとする24~26年度の中期経営計画で、ファッション事業の基本戦略に「現行事業モデルからの転換・刷新」を掲げる。SC内立地店舗比率は25年度実績で26.5%、これを26年度目標として28%にまで高めることを目指す。
26年2月にはSC向けの新タイプの店としてAOKIららテラス 武蔵小杉店をオープン。「AOKIの新たな店舗フォーマット」と位置付けるららテラス 武蔵小杉店はどのような店なのか。
「SCの立地やお客さま層を見極めて、『AOKIでも十分戦えるであろう』というところには移転、打ち替えを進めています。ららテラス 武蔵小杉店はSC内への初めての出店というわけではありませんが、今回はそこに向けてしっかり店装や売場レイアウトなどいろいろなことを含めて、今後の未来モデルを作っていこうと進めました。その1号が、このららテラス 武蔵小杉店です。
今回のららテラス 武蔵小杉店は(店舗面積)80坪です。郊外であれば150坪ぐらいのスペース(売場)があるのに対して、約半分に近い面積のため、効率化を目指しています」
ORIHICAは新たな出店パターンの模索もしているという。
「ORIHICAは幾つかパターンを設けていて、立地とスペースを見極めて幾つかのモデルにトライしているところです。直近では30坪のスペースにメンズだけを展開する店をオープンしました。いわゆる『駅近』のようなところでは、なかなか広大なスペースが取れないのですが、(デベロッパーに)お声がけいただいたのです。
当然、見れば店前の通行客は多く、(周囲に)他にビジカジを打ち出しているブランドもなく、確実にお客さまの需要を取れるであろうという立地です。ただ、30坪しかない。そこで、メンズ単独店として開店することに決めました。どちらかといえば重衣料より軽衣料を中心に、ワイシャツやビズポロ(ビジネスシーンでも着られるポロシャツ)といったものを中心にラインアップをするモデルを作りました。ORIHICAに関してはこうした幾つかのモデルを作ってトライをしているところです」
ネットチャネルについてはどうか。
「伸びてはいますし、EC(電子商取引)だけで展開する商品群のラインアップも増やしていますが、まだまだEC化率は低いので、力を入れていかなくてはいけない部分ではあります。ただ、EC単独の事業というよりは、どちらかというとOMO (Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)と言われるような、『オンラインとオフラインをどうつなぐか』ということに注力します。
全国にこれだけの店舗数があって、そこに販売する人がいて、リアルな接客があって、お奨めできるコーディネートがある。これはAOKIの会社としての強みであると思っています。とは言いながら、一般的にはECで商品を購入する方は多くいらっしゃいます。そこをどうリンクさせて、利便性を作っていくか。
ECで購入し、店舗で商品を受け取れる仕組みを作るなどのサービスを数年前から行っていますが、オンラインとオフラインの融合は課題です。その中で、ECのチャネルの数字も併せて伸ばしていこうと考えています」
スーツの需要が減っていくという前提を、小出社長は一度も否定しない。グループの他の事業と併せ、ラインロビングによる成長機会を探ることになるが、それぞれの分野にはそれぞれの競合がいることも確か。スーツで培った素材や縫製など、ものづくりの技術を強みとしながらいかにAOKIならではの商品、サービスが提供できるか。
さらに今後は人口減少の影響がじわじわ迫ってくる。スーツという、まさにマーケットの縮小を先んじて経験した分野を主力とする同社だからこその新機軸を期待したい。










