世界のプラントベースは「ダイバーシティ」の時代へ

2021.01.18

Innova Market Insights 田中良介

世界のプラントベース(植物由来)食品が、ますます進化を遂げている。

植物性食品に関連した用語としては、ヴィーガン、ヴェジタリアン、そしてプラントベースがあるが、当社のアンケート結果によると、世界の消費者は「プラントベース」という言葉に、味、健康、価格などさまざまな観点で「最も魅力的である」というイメージを持っている。

これは、植物性食品が特定の信条を持つ限られた層から、一般の消費者へと広がってきていることを意味する。プラントベースを訴求した新製品食品点数は、過去5年間で年平均37%の伸びを示しているから驚きだ。当社で毎年発表している「世界の食品トップ10トレンド」でも、毎年このプラントベースがランクインしている。

「プラントベース革命」が起きている

日本でも、プラントベース食品が徐々に増えてきた。しかし、世界では、日本人が思っている以上のとてつもないスピードでこのトレンドが加速している。この動向を当社では「プラントベース革命」と呼ぶ。そう、プラントベースはトレンドの域を超え、革命をも引き起こすステージに達しているのだ。

プラントベース食品は、非常にシンプルなものから、複雑な加工を施したものまで、幅広く存在している。アメリカのImpossible Foodsでは、「ヘム」と呼ばれる大豆の根粒に含まれるタンパク質を原料としたものを「代替肉」として開発し、本物の牛肉のような色や味、香りを再現している。

一方、最近では、肉や乳の細胞を培養した「培養肉」もさまざまなところで開発されており、ステーキやヨーグルトを作る技術まで出てきている(これは厳密にはプラントベースではないが!)。

代替肉も、培養肉も、温室効果ガスを大量に排出する家畜を育てる必要がなく、また、食肉処理をすることもない。培養肉は、まだ抵抗がある消費者が多いと思われるが、地球環境や動物福祉の観点から考えると、近い将来こうした技術による食品が常識になっている可能性は否定できない。

もちろん、あまりにも複雑な加工を施してしまうと、消費者からは理解や共感を得られにくく、もう1つの世界的なトレンドである「クリーンラベル」と相反することになってしまう。「加工度の高いプラントベースは、果たして健康的なのだろうか?」と疑問を投げかける企業関係者や消費者もいる。

とはいえ、代替肉や培養肉の技術の進歩は止まらないだろうし、消費者の地球環境への意識がますます高まることは間違いない。クリーンラベルとの両立を図るにはどうしたらいいのか、食品関係者には大きなチャレンジが始まっている。

欧米からの潮流、日本はどうする⁉

プラントベース食品が、植物性の肉や乳製品にとどまらず、バラエティに富んできているのが最近の大きな特徴だ 。近年最も伸びが著しいのが、Ready Meal(レディミール)と呼ばれる調理加工済み食品でのプラントベース化だ。

インスタント食品、レトルト食品、電子レンジで加工できる食品、出来合いの惣菜など、あらゆる加工済みのジャンルでプラントベースの食品が増えている。またマヨネーズなどのドレッシング類やピザの分野でも、プラントベースが注目されている。

このような最先端の潮流は、欧米を中心に発展を遂げてきた。しかしいま、これが世界各国、各地域へと広がり、独自の進化を遂げ始めている。 その代表事例の1つが、香港発の企業が販売している「オムニポーク」だ。

アジアでは、中華料理をはじめ食肉の中では豚肉の消費量が多いが、この会社が開発したのは植物性の豚肉だ。原料には大豆、エンドウマメ、シイタケ、ビーツ、米などの植物由来のものが使用され、豚肉の食感や風味を再現していることから、炒め物、揚げ物、蒸し料理などさまざまな調理に活用できる。

このように、それぞれの文化圏に受け入れられやすい形で、プラントベースの工夫と進化が加速するのが、2021年である。

Omnipork Right Treat Plant-Based Minced Meat(Hong Kong, Oct. 2019)

こうしたグローバル化の流れを受け、日本でもプラントベース食品が徐々に増えてきている。しかし、ここにジレンマがある。

日本には世界に誇るべき、伝統的なプラントベース食品がすでに多数存在しているからだ。みそ、納豆、豆腐…、すべておいしく、健康的なものばかり。「プラントベース革命は、日本では1000年前に経験済みだ!」「いまさら、なぜ欧米流を取り入れなければならないのか?」という思いは、少なからず筆者の心の片隅にもある。

だからこそ、「日本の企業は世界最先端のプラントベース食品を、どのように私たちの食文化に融合させていくのか?」。これが大きな課題であり、挑戦と言える。新しい潮流を受け入れ、独自の文化として発展させることは、日本人が歴史の中で最も得意としてきたことだ。

世界を知り、柔軟に取り入れ、クリエイティブに進化させ、日本発の新時代のプラントベース食品が作れたら――。それは、とてもおもしろいことになる。グローバル社会の中で、次なる発展を日本が成し遂げられるかどうか、今、大きな岐路に立っているのかもしれない。

プラントベースを選ぶ消費者の本音

世界の人々は、なぜプラントベース食品を選び、好んで食べるようになったのだろうか?  当社で実施した最新のグローバル消費者アンケートの結果をお伝えしよう。

健康的だから:53%
食のバラエティとして:35%
地球のためになるから:32%
味がおいしいから:19%
※複数回答可の選択肢

結果から明らかなように、「健康的であること」が、このトレンドを加速している一番の要因だ。「地球のためになるから」というサステナブル要因の割合も、年々上昇傾向にある。プラントベースに「おいしさ」を見いだしている消費者も一定割合いる。

加えて、プラントベース食品の健康訴求メッセージとして注目されているのは、タンパク質である。英語では「Plant Protein」と呼ぶ。日本流に言うと、「ヘルシーな畑のお肉」といったところだろうか。

どのような視点から健康を訴求するかも、ニーズが多様化したいまの時代は重要なポイントとなる。例えば、Plant Proteinとエナジーをかけ合わせたもの、あるいは、腸内環境の良好化や脳の活性化など、はやりの健康トレンドとのシナジー効果を狙ったプラントベース商品が多く見られる。

Nancy’s Probiotic Oat Milk Non-Dairy Yogurt: Plain(United States, Apr. 2019)。プラントベース×プロバイオティクス(腸内環境)のヨーグルト

当社で実施した消費者アンケートで、目を見張る結果が出たものがある。消費者に、100%プラントベースの肉と100%動物性の肉、植物性と動物性のハイブリッド型の肉、3つのうちどれを最も好むかを聞いたところ、世界の多くの人が「ハイブリッド型を好む」と答えたのである。

この結果から分かることは、ヴィーガンやヴェジタリアンのような食の信条を持たない一般の消費者は、極端に偏ったものよりも、ほどよくブレンドされた商品を好むということだ。

余談だが、日本のハンバーグの具には玉ネギなどの野菜が入っており、とっくの昔からハイブリッド型ではないか! 鶏つくねや肉だんごだって同じである。欧米が紆余曲折してたどり着いたハイブリッド戦略を、日本の食文化では自然にやっていたのである。世界のトレンドを追いかけながら、日本の食の強みを再発見し、再構築する。そんなきっかけにもなれば、すばらしい。

プラントベースは本当にサステナブルか?

プラントベース食品は、一般的にサステナブルであると言われている。畜産に比べると、温暖化への影響が少ないという点で、地球に与える負荷が小さいという考えだ。近年ではプラントベース市場拡大に伴い、エンドウマメ、ソラマメ、ヘンプなど、あらゆるプラントベース原料の需要が伸びている。

しかし、ここに新たな議論が生じてきていることを付け加えておきたい。プラントベースは本当にサステナブルな原料と言えるのだろうか? そもそも現代の農業生産手法は、サステナブルと言えるのか? 特定の原料を生産するために、熱帯雨林を伐採していないか? こうした疑問を持つ消費者は少なくない。

食品企業に求められているのは、サプライチェーンや企業活動の透明性だ。「プラントベース=サステナブル」という短絡的な方程式を訴求するのではなく、どのような生産手法や産地とのかかわりを持っているか、なぜ取り扱っている商品がサステナブルと言えるのか、具体的に消費者に伝える必要があり、その誠実さが差別化を生む時代に入ったと言えよう。

※記事中の画像・データは、当社Innova Database及びInnova Reportsより引用

たなか りょうすけ Innova Market Insightsの日本カントリーマネージャー。世界の食品トレンドを読み解き、日本へその知見・視点を伝え、企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。日本と世界をつなぐ懸け橋となり、クライアント企業と一丸となって食産業の発展に貢献することがミッション。Innovaでは90カ国以上をカバーし、新製品情報、消費者動向、原材料トレンド、市場規模データなど、多様化が進む現代の食品産業を、あらゆる角度から深いレベルまで分析できるデータベースを提供している。

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