ヨークベニマル今泉店の小型店戦略を体験&分析
2022.04.12
2021.03.18
ヨークベニマルが小型店をオープンした。営業時間は9時30分~21時30分、駐車場台数50台の小型店だ。売場面積は389坪。既存のヨークベニマル泉が丘店からは車で8分、徒歩30分の距離だ。「小型店は採算が合わない」と言われているが、あえて小型店の出店に踏み切った背景とその根拠はどこにあるのか実際に店を視察してみた。
小型店を出店する3つの理由
①消費者の変化
高齢化、人口減、過疎化により、遠くの店へ車で行かなくても近くの店で買物を済ませる傾向が見られる。特にコロナ禍においては買い回りが減っている。過疎地域においてもそれほど大型店は必要なくなった。店があるだけでありがたいという地域もある。
②外的環境の変化
大型店に必要な3000坪、5000坪の土地が確保できなくなった。土地を探して出店を待つより、2000坪以内の土地であればまだ容易に出店することができる。ライフラインであれば300坪ほどでも生活に不自由しないだけの品揃えができる。
③採算が見込める
かつて売場面積は拡大を続け、450坪、600坪へとシフトしていったが、消費者の変化、環境の変化により300坪の店で利益が出るフォーマットを各社模索している。一番の課題は「ローコストオペレーション」。
生鮮部門の作業改善はインストア作業を削減し、アウトパック比重を高める。AI(人工知能)、IT、機械化による作業の削減、店内の組織変更などによってローコストも可能になってきている。
今泉店のレイアウト、品揃えの特徴
今泉店の389坪の売場レイアウトは、大きな正方形と小さな正方形をつなぎ合わせたような形だ。店を見ると4つにゾーニングされている。
入口から壁面沿いに進めば、インストアベーカリー、米飯、寿司の焼きたて、作りたてゾーン。インストアベーカリーは店の入口であるだけに、商品を山積みしてボリーム感を出している。
壁面に沿って寿司、弁当売場。揚げ物、冷惣菜は平台で展開している。惣菜売場近くにはサラダとカットフルーツをまとめた即食コーナーを設置。カウンターのイートインコーナーも設置されている。
入口から右方向に進めば、果物、野菜、和日配、鮮魚、精肉による「生鮮ゾーン」「加工食品ゾーン」。四角い売場であるため360°見渡せば生鮮食品と冷蔵の加工品が見渡せる。
バックヤードもガラス張りであるため、まるで生鮮市場にいるような雰囲気である。鮮魚売場の平台には冷蔵のミールキット、その隣には精肉のマリネーションが並びミールソリーションの提案も行っている。
右側部分の小さな四角は、洋日配と飲料類、冷凍食品を集めた「ウエット加工品ゾーン」。
飲料は紙パックとペットを一緒に陳列している。牛乳と豆乳などのオルタナティブ飲料に比率は1対2であった。1900㎝のハイゴンドラを使っているためℓサイズの商品も中段に陳列できている。
冷凍食品の売場も十分確保し、地元の冷凍ギョーザ3社の商品を縦割りで陳列している。最後はホールセールパンと和洋生菓子コーナーを通りレジへと向かう。
店の中央部分はドライグロサリーゾーン。ハイゴンドラを使っているが中通路を1200㎝は取っているため高さはあまり感じないし圧迫感もない。ケース最上段にストックスペースを確保しているため、バックヤードの在庫スペースも減らすことができる。ちなみにこの店の入口は1つのワンウエーコントロールだ。
オープンから1カ月ほど経過しているが、鮮度よく定番売場を管理し、生鮮食品だけでなく、日配のデザートやパン売場に値引きシールがあまり見られなかった。
鮮魚の切り身を見ると安く売られていた。最初から高い値入れを入れるより、低値入れで最初から安く売って売り切る方針だ。
日配も適正在庫を維持しながら、入、出、残がうまくいっているように見える。
また、個店対応の品揃えも随所に見られる。小型店は大型店の縮小コピーになりがちであるが、どうもこの店は地域に合わせて個店で商品を選択して仕入れているようだ。
プライベートブランド(PB)商品のセブンプレミアムも数多く導入されている。知名度があり利益の取れる商品を販売すれば、ナショナルブランド商品を安く売ることができる。
ローコストオペレーションの実現度
まず、人員配置はどうか。プレスリリースを見ると、正社員7人(ライフフーズ除く)、地元採用者93人、合計100人の計画である。正社員7人をどう割り振るかが問題だ。ライフフーズの惣菜、ベーカリーの人員は除くが、生鮮にはある程度の人員が必要であることから、グロサリーなどを中心に兼務態勢が敷かれているものと思われる。
AI、IT、機械化への対応として、AIを活用した自動発注、電子棚札の導入などが進めばさらにローコストオペレーションが加速しそうだ。レジは現状でも対面レジ2台、セルレジ6台というローコストの構成だが、今後、お客自身がスキャンするシステムやカートなどの導入によって、さらに踏み込んだローコスト化が可能となるかもしれない。