コロナ禍の中で離職を防ぐ!現場に「エールを送る」マネジメントのポイント

2020.08.07

更新:2020.08.17

ARKコンサルティング・オフィス代表 石川和夫

感染症対策や人手不足などから既存従業員への負担が重く

新型コロナウイルスの感染者数が再び全国的に増加しており、スーパーマーケットやドラッグストアなど小売業の現場では感染症対策や人手不足などから既存従業員への負担が重くなっています。そのため、従業員をねぎらい、その負担に報いることを目的に給与に一時金を上乗せしたり、特別手当を支給したりする企業が増えています。

もちろん、そのような金銭的な報酬を提供できれば従業員に喜ばれることでしょう。しかし、全ての小売業がそれを提供できるわけではないでしょう。また、金銭的な報酬だけでは従業員の働くことに対するニーズを満たせない時代にもなっています。

そこで、コロナ過で疲弊した現場をねぎらい、この苦難を乗り切るために、店長や主任など管理職者はどのようなマネジメントをしたらよいのか、「非金銭的な報酬」という視点でポイントを解説します。

現場の従業員ケア・対応策3つのポイント

ポイント①現場の苦労を「受けとめる」ことから始める

日々の感染症対策や人手不足などの要因から、多くの現場では作業的・シフト的に既存従業員への負担が増えています。また、外出規制やテレワークなどさまざまな感染拡大防止策の長期化でストレスを溜めたお客さまも多く来店しています。そのため、ささいなことに対する理不尽なクレームも増えおり、お客さまと接する従業員の精神的負担はさらに増しています。

このような状況の中で従業員をねぎらうときに必要なことは、まず従業員の想い(苦労)を次のように受けとめることです。

会話事例

従業員「この忙しい中、会計の度に殺菌処理をするのは大変ですよ」

店 長「そうだよね、確かに大変だよね」

このときのポイントは相手の感情のこもった言葉を繰り返すことです。事例のように「大変だよね」と自分が発した感情を受けとめてもらうことができると、従業員は「私の気持ちを分かってもらえた」「理解してもらえた」と安心感を持つことができるのです。

アメリカの言語学者デボラ・タネンは、「会話は男性にとって情報のやりとり、女性にとっては心のやりとり」と言いました。全ての女性がそうだとは言えませんが、従業員の多くが女性である職場ではねぎらいの気持ちを伝えるときにはぜひ活用してほしいポイントです。

間違っても、「いやそうはいっても、本部からの指示だからね」などと言ってはいけません。店長にそのつもりがなくても、従業員は「私の気持ち(苦労)を分かってもらえない」と受け取ってしまいます。

ポイント②「私たちは~」の視点でほめる

従業員をねぎらうと同時に協力に感謝したいとの想いから「ほめること」を積極的に行っている職場が増えています。ただ、ほめ言葉には「あなたは~」「私は~」「私たちは~」の3つの伝え方があり、その使い方で相手への伝わり方も変わります。

「ルール通り、きちんと殺菌処理していますね」というほめ方は、「あなたは~」の伝え方です。また、「ルール通り、きちんと殺菌処理してくれてありがとうございます」と感情や想いを込めると、「私は~」の伝え方になります。

さらに、次の事例のように活用すると「私たちは~」の伝え方に変換します。

会話事例

従業員「この忙しい中、会計の度に殺菌処理をするのは大変ですよ」

店 長「そうだよね、確かに大変だよね」

従業員「でも、ルールだからやらないといけませんよね」

店 長「そうですね、Aさんが毎回きちんと殺菌処理してくれているから、お客さまは安心して買い物できていますからね」

つまり、「私たちは~」の伝え方は相手の起こした言動が、私たち=お客さま・従業員同士・店(会社)・地域社会などに対してどのように役立ったのかを理解してもらうためのほめ言葉なのです。

殺菌処理を単なるルール、単純作業として捉えると「大変だ」「面倒だ」という感情を持ってしまいがちです。しかし、ほめ言葉を「私たちは~」で伝えてもらえると、「そうだよね、会計の度に殺菌処理をするのは大変だけど、それでお客さまは安心して買物ができるんだからね」と、従業員は単なる作業ではないと改めて認識することができるため、殺菌処理に対する感情もポジティブになります。

ポイント③現場の苦労が店(会社)や地域社会に役に立っていることを伝える

従業員が働く第一の目的は「経済的な対価」を得ることです。しかし、それだけでは意欲を持って働き続けることはできません、なぜなら、私たちは売場や店で働く従業員、お客さまなどさまざまな人と人のつながりの中(社会)で仕事をしており、その中で「自分の仕事がそれぞれの社会の中で役に立っている」ということを認識して初めて、働くことの意味や喜びを感じることができるからです。

そこで、役に立っていることを伝えやすくするために、2つのアプローチ法を紹介します。

「役に立っている」という情報を収集して伝える

「感染のリスクがある中、営業してもらってありがたい」というお客さまからの声や、医療従事者だけではなく小売業の現場で働く人を「エッセンシャルワーカー(必要不可欠な働き手)」として取り上げている新聞やネットの記事などを朝礼で紹介します。ただ、お客さまからの感謝の声は自店だけだと少ない場合もあるので、会社に全店からの収集を働きかけて定期的に知らせてもらうようにすることもポイントです。

また、従業員を集めてミーティングが開催できれば、「私たちの働きが会社・地域社会に役に立っていること」というテーマで意見を出してもらい、参加者同士で共有化を図ったり、参加できない人のためには印刷物にして配布したりすることも効果的です。

経営理念とリンクさせて伝える

「経営理念」とは、自社の存在意義や経営スタンスを明文化したものです。企業によっては経営理念ではなく「経営ミッション」や「私たちの大切にしていること」など表現に変えているところもあります。

■経営理念の事例

東急ストア

わたしたちの使命は、働く仲間を大切に、パートナートと心を合わせて、地域のお客さまの日々の幸せをお手伝いすることです。東急ストアは、いつも安心で気持ちのよいお買物と、お客さまの暮らしに美味しさと楽しさをお届けします。

スギ薬局

私たちは、まごころを込めて親切に応対し、地域社会に貢献します。私たちは、社員一人ひとりの幸福、お客様一人ひとりの幸福、そして、あらゆる人々の幸福を願い、笑顔を増やします。

このような「経営理念」ですが、多くの店では朝礼の時などに全員で唱和し、さらには経営理念を実現するための「行動指針」なども読み上げて一日の仕事をスタートさせています。しかし、経営理念を読み上げてはいるものの日々の仕事に結びついていないのが現状ではないでしょうか。  いまのようなコロナ禍で従業員が疲弊しているときだからこそ、従業員をねぎらったり、励ましたり、協力を求めたりするときには、経営理念の中にある「安心で気持ちのよいお買物」や「地域社会への貢献」という文言と自分たちの仕事(業務)の1つ1つを結びつけ、いかに店(会社)や地域社会のために役立っているかを伝えることが、リーダーには求められているのです。

いしかわ かずお セブン-イレブン・ジャパンでOFC(店舗経営相談員)として勤務した後、コンビニ3店と伊レストラン2店を経営する会社の統括マネージャー(役員)として勤務。2001年に人材育成コンサルタントとして独立。現在は人材育成コンサルティング、管理職者向けのコミュニケーション力・部下育成力アップ研修(約2万7000人の管理職者に実施)、中小企業の経営顧問などを中心に活動中。経済産業大臣認定 中小企業診断士(中小企業診断協会:東京支部中央支会所属)。HRD社㈱認定:DiSCインストラクター。著書に『人の問題を解決する 実践コーチング』(電子書籍になって、「BOOK☆WALKER」から990円(税込)で発売になりました! 下記サイトをクリックすると試し読みをすることができます)。

https://bookwalker.jp/de6efe8e6a-a976-4c22-8419-a55f478720f8/

関連記事

お役立ち資料データ集

セミナー