ウイズコロナのいま、疲弊する現場の人手不足解消を急ぐには?

2020.08.07

新型コロナの登場は小売業にとっては人手不足を解消するチャンスにもなり得る

スマイル・ラボ パートアルバイト労働総研 赤沼留美子

多くのスーパーマーケット(SM)にとっては、数年前からの人手不足のまま、こんな騒ぎに突入してしまいました。しかし、新型コロナの登場は小売業にとっては人手不足を解消するチャンスにもなり得ます。

図表① 厚生労働省2020年6月30日発表 一般職業紹介状況

コロナ禍の変化は採用環境も変えた

世の中の状況としては図表①からも分かるように、これまで高止まりしていた「求人数(企業が人を求める数)」が3月に入って一気に下がっています。つまり、「人を求めている企業が減っている」ということです。同時に「求職者数(仕事探しをしている人の数)」は横ばいのままです。

これがSMにとってはどういう意味があるかというと、ずばり「久々に採用しやすくなる」という良いニュースです。特に経営不振に苦しむ飲食店、サービス観光業からの離職が一気に増えていますので、求人を出しているお店は応募が増えています。12年前にリーマンショックという大きな経済的ダメージがあった時(図表①の平成20年参照)も派遣の雇い止めや、解雇が相次ぎ、仕事探しをする人が一気に増えました。

SMでも応募が急増しましたが、この時は製造業からの転職が多かったため、正直接客業にはあまり向いていない人が多く面接に来た記憶があります。今回は全く違います。サービス業出身者が多く仕事探しをしていますので、良い人と会える機会は増えています。

いま、やっておきたい「求人方法」とは

今回のコロナ騒動はSMにとってはおよそ10年ぶりに来た人手不足解消の絶好のチャンスなので、次のようなことに留意してやってみてください。

求人でお困りのお店がやるべきことはこの3つです。

  • 誰を狙うのか決める

まずは今働いてくれているパートタイマ―さんの友人、知人を狙います。「お友達でパート先が倒産や閉店してお仕事探しで困っている方がいたらぜひ教えてください。こんな条件です。お会いしてお話をお聞きしますよ」と紹介を頼みましょう。良いパートさんは良い人を連れてきてくれるのは昔からテッパンです。

次に「飲食・宿泊業出身の方応援キャンペーン」としてお仕事探しで困っておられる方を狙います。接客に向いていることと、夕方以降の遅い時間帯や土日など、SMで特に人手が足りない時間の貴重な戦力となり得る可能性が高いからです。

  • 何を書くのか絞る

新型コロナ禍のいま、SMの求人ポスターや原稿に書いてみて欲しいのがこちら。

①ウイルス感染予防対策について書く

SMの店員さんの感染ニュースを幾つも世間の人たちは見ているはずです。感染したことはニュースになっても、無事復帰したことはニュースにはなりません。なので「SMは感染する危ないところ」というイメージがやや伝わっている気がします。これは大変不利なので、マスクや手袋が毎日支給されること、体調管理をみんなでしていること、危険手当が出ることなど、安全への配慮をアピールしていきたいところです。

②喫煙者は今回、採用見送ることについて書く

とはいえ、感染のリスクが全くないわけではありません。それはSMで働いても、他で働いても同じことですが、できれば日ごろから呼吸器が弱い喫煙者については、私は今の時期は採用を見送りたいと思います。「3密」になるお店の喫煙所を封鎖しているところも多く見かけます。お店のバックルームについても同じです。喫煙所が狭いことと、健康への配慮を理由に喫煙者はご遠慮いただきたいことを伝えます。

③「勤務希望時間、曜日、日数はご相談ください」と大枠にする

SMの伝統的な求人は例えば「惣菜部門 7:00~11:00  15:00~21:00  900円~1100円 3名」という細かい内容まできっちり書くのが習わしです。が、私は良い人と出会う確率を上げるために事例のように、「時間、曜日、日数はご相談ください」と大枠で募集して、面接で勤務希望(やりたくないお仕事、働けない時間と曜日)をお聞きし、お店の事情をお伝えしてみるという交渉術をお勧めしています。

特に「週3日以上、1日5時間以上」などとは書かないことをお勧めします。なぜなら例えば「週3日、ダブルワークで夕方以降閉店までの4時間入りたい!」という条件の人がいた場合、笑顔もさわやかで、若くて覚えも早そうなら採用したいですよね。

でもそういう人が応募して来なくなるともったいない。なので大枠で募集して、面接時に良さそうな人なら「あちらのお仕事もあるから夕方4時の出勤は難しいですよね。ちょうど4時あたりから夕方の調理が始まるのでそのあたり大変助かるのですが」と交渉してみると、あちらの仕事を調整してくれるかもしれないのです。とにかく会って話してみるということです。応募者の考えは話せば変わることがあるのです。

  • どこに出すのか

店頭の求人ポスターを中心に求人を出します。ネット求人に出すのももちろん構いませんが、料金が高いようであれば今後の不景気に備えて求人コストは下げたいので、私ならネットは出さずに店頭と紹介でまかないます。

いま、やっておきたい「面接方法」

この先の不景気を踏まえて、今の時期の採用面接で一番気をつけたいのは「変な人をうっかり採らない」ということです。驚くほどチームワークに向かないマイペースな人、対人関係の基本がなっておらず仲間やお客さまにあいさつすらできない人など、後々の教育でフォローが難しい部分というのがどうしてもあります。

今は10年ぶりに面接で「選ばせていただける」状況です。「う~んどうかな…」と店長の感覚で微妙な応募者は採用しないことです。その微妙な予感はこれまでも的中してきたはずです。

今なら面接でこの3つをぜひやってみてください。

①もの覚えの速さやとっさの対応力を問う

履歴書を受け取ったら、「今日は面接にお越しくださりありがとうございます」とお礼を言います。履歴書のお名前、年齢、職歴をざっと声に出して読み上げながら「お名前は〇〇〇〇さまとお読みするんですね?」「〇〇〇にお勤めだったんですね?」の「ね?」をやや強調して応募者に投げかけてみます。

ここでのリアクションの速さからは、物覚えの応用力の高さや、とっさにお客さまに何か言われたときの機転を垣間見ることができる可能性があります。これで全てが分かるというわけではありませんが、対人関係の瞬発力は少し分かると思います。「まじめそうなら誰でもいいや」と思って長年採用してきましたので、今回はこういう面も少し試してみてください。

②喫煙の有無を問う

前述したように、今回は喫煙者の新規採用は見送りたいと思うようであれば、「たばこは吸われますか?」と確認します。「求人ポスターにも書いてあったのですが…」と前置きし、喫煙所の物理的狭さや、安全に配慮しているとはいえ、お客さまから感染するリスクがないわけではないので、今回は健康を考慮して採用しにくいことをお伝えします。そしてまた収束したらご縁があればぜひ訪ねていただきたいと伝えます。

③人間関係の処理能力を問う

料理人をやっていた方がお仕事探しをされているケースが増えています。SMの鮮魚や惣菜部門ではそういう方は即戦力の可能性があり大変ありがたいです。が、人間関係の対応力だけは確認してから採用をしてください。

料理の世界は多くが男性社会で上下関係がしっかりしています。一方、SMの裏方は女性社会です。しかも年上の正社員上司が仕切っているとは限らず、若い社員をしのぐ勢いでベテランパートさんが仕切っているところも少なくありません、上下関係がはっきり分かりにくいので、空気読みながらなじんでいく必要があります。皆さん仕事そのものよりも、人間関係で辞めていってしまうわけですから、新しく採用する際はある程度人間関係の処理能力のある方が望ましいですよね。

そこを判別するには「今までお勤めだったところで人間関係が大変だったところはありますか?」「もしあれば、そんな時〇〇さんはどう対処して来られたんですか?」と私なら率直に経験をお話しいただきます。「別に人間関係は大変だったという印象はないです」という回答であれば、本当に恵まれていたのかもしれないですし、実はそういうことへの感度が低い(つまり鈍い)のかもしれません。

「ありがとうございます」の気持ちを

パートさんたちも、子どもたちの学校が長期間休みになったこともあって、当時は朝昼の食事をお家に用意して子どもたちを置いたまま出勤していた方も多く、家が片付かずお疲れの様子でした。子どもたちは学校に戻りつつありますが、学校からのイレギュラーなお便りも多く、やることが増えています。

お店で働くことで、いつ感染するか分からない危険と常に隣り合わせでもあり、医療従事者に近い緊張感で働いています。店頭でのカートやかごの除染作業や、追い付かない品出しなど、職場も余裕がない状況が続き、働く仲間同士がギスギスしてしまいます。

それをやわらげるのは店長さんの「〇〇さん、おはようございます。今日もありがとうございます」というねぎらいの小さなひと声です。危険手当などのお金ももちろんうれしいですし、欲しいですが、「このお店で働けてよかった」「この人たちと働けて良かった」と思いながら、忙しく働いていただくことが肝心だなと私はいつも思います。

低コストでも良い人が採用できる絶好のチャンスです。疲れている既存のパートさんを助けるため、そして仕事を失って困っている世間の人を救うため、店頭での求人活動にはぜひ力を入れてください。

あかぬま るみこ 1971年岡山県倉敷市生まれ。95年、津田塾大学卒業後、ファミリーマート入社。店舗マネジメントとパート・アルバイトのトレーニング・評価システムの仕組みづくりに携わる。2004年に独立後、スーパーマーケットなど200社以上の企業に対し、求人・定着支援に取り組む。

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