流通業の「ムダ・ムラ・ムリ」をなくし、安さと便利さ、そしておいしさを提供する トライアルホールディングス 永田洋幸代表取締役社長

2025.12.26

2025.12.19

西友を加えたリテールメディアに大きな可能性

 2025年の小売業界に最も大きなインパクトを与えたと言っても過言ではないのが、トライアルグループによる西友買収だ。傘下の事業会社を通じて九州を地盤に全国的にディスカウントストアを展開するトライアルホールディングスが、投資会社であるKKRとウォルマートから西友の株式を取得し、完全子会社化した。24年12月期で4835億円の年商規模を持つ西友を子会社化することで、26年6月期の連結売上高は1兆3225億円を見込むなど、小売業界での存在感は一気に高まった。

 店舗網の補完性の面でも大きな注目が集まる。西友は関東、中部、関西、東北に店舗を展開するものの圧倒的に関東の店舗が多く、しかも、駅に近接した好立地の店が多い一方で、トライアルは九州から北海道までナショナルチェーン化を果たしているが、関東の中心部、ちょうど西友が出店しているようなエリアにはなかなか進出できていなかった。

 もともとトライアルは、リテールAI(人工知能)事業を含むリテールテックの導入、およびメーカー、卸など取引先と連携する形でのサプライチェーンの効率化に先進的に取り組んできた。前者の象徴的なものが、商品読み取り機能の他、さまざまな情報発信も可能な端末の付いたカートであるSkip Cart(スキップカート)やリテールメディアの展開などであり、後者の象徴が、福岡県宮若市の「リモートワークタウン ムスブ宮若」を産官学による「リテールDX(デジタルトランスフォーメーション)の拠点」と位置づけ、日々、実践されているトライアルと取引先による共同の取り組みなどである。

 大きな局面を迎えるに際し、従前から務めるリテールAI事業を推進するグループ企業のRetail AIの代表取締役CEOに加え、25年4月からはトライアルホールディングスの代表取締役社長にも就任した創業家出身の永田洋幸(ながた・ひろゆき)氏に西友をグループに加えることでトライアルが目指すもの、さらに、これからの流通業界の見とおしについて聞いた。

 首都圏に数多くの店舗網を持つ西友を買収したことは、出店戦略上、大きな意味がある。

 「店舗配置という意味合いでは、そもそも西友は駅前に好立地での出店されているということもあります。トライアルグループとしては、やはり首都圏への戦略がいままでなかなかできなかったということがありますので、今回西友を買収することによって、新しく首都圏への拡大ができるのではないかと思っています」

 西友の店舗網に具体的に期待することは何か。

 「やはり、(西友で展開する)リテールメディア(小売業の資産をメディアとして活用する広告)における今後の付加価値が見込めると思います。私たちがいままで進めてきた田舎立地でやれることと、都心での価値の提供、リテールメディアの可能性は大きな差があるのではないかと考えています」

 リテールメディアについては、これまでの取り組みで得られた成果にはどのようなものがあるか。

 「いまメーカーに『ムスブ宮若』に来ていただきながら、メーカー販促のローカル化の実験を進めています。いままでメーカーにとっても見えなかったデータが可視化できるものが着実に進んでいるのではないかと考えています。

 そもそも4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビの主要な4つのマスメディア)の効果は限定的だったと思っています。分かりやすいのが某テレビ局の例で、(トラブルによって)某テレビ局でメーカーでもCMを止める動きがありましたが、それでは商品の売上が下がったのか、ブランド価値が下がったのかと言えば、実際には下がっていないはずです。実際、それを見て「CMをやる意味がないよね」と言われる方もいらっしゃいました。

 それで、その分のメーカー販促が流通のリテールメディアに移しやすくなります。やはり、『買物中』にリテールメディアを通じて伝えることで、さらなる付加価値を生むことができます。リアルの買物中のお客さまに伝えやすくなるということに対する理解度の高いメーカーが増えてきていると考えています。

 私たちは、『イノベーションのジレンマ』と呼んでいるのですが、結局、流通も、メーカーも販促費の使い方が決まっていたということです。流通だったらチラシ販促が絶対的なものとして認識されていましたし、メーカーであれば広告代理店が強かったわけで、そこの担当者が圧倒的な権限を持っていました。

 それではデジタルサイネージの担当者の権限が(従来の販促の担当者のそれと)同じかというと、やはり、既存のメディアの方が圧倒的に強い可能性が高いわけです。リテールメディアは店舗で販促を流しているわけですが、それがやっと価値として提供できるということを理解してくださるメーカーが着実に増えてきました。

 私たち流通側も、チラシが圧倒的で、例えばSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)クーポンを配布するといったこともまだまだ少なかったわけですが、ここ数年間で力が生まれてきたことでそこに対する付加価値が生まれたのではないかと考えています」

 リテールメディアの主な「面」としては店頭のデジタルサイネージ、Skip Cartの端末、アプリなど、いろいろあるが、どのような状況なのか。

 「やはり、サイネージ回りでの併売の実績がとても大きいのではないかと考えています。私たちの場合は、トライアルという『面』がある分、そこにおけるメーカーとの施策、さらにリテールメディアとしてだけでなく、商品開発における付加価値などを付けることができるのではないかと思っています」

 やはり、店内に設置されたサイネージの画面の訴求力は高いのだろう。店舗への設置はどの程度進んでいるのか。

 「全店に設置することがマストではないとは思いますが、進められるところから粛々と進めていきます。例えば、田舎立地の店と都心型の西友の店で比較すると、『都心でリテールメディアをやった方が良いだろう』といった形で、優先順位は明白になると考えています」

 Skip Cartの端末のリテールメディアとしての効果はどうか。

 「そうですね。私たちとしては、お客さまへの商品のアピールのしやすさという点では、付加価値を提供できていると考えています。例えば、携帯電話の場合、買物中にそれほどアプリを開いたりはしないものです。その点、カートにしっかり面があることで、視覚と聴覚でお客さまに伝えることができます。これは、いままでにないリテールメディア戦略としては価値になっているのではないかと思っています。

 ただ、もちろん、(携帯電話で使う自社の)アプリでもリテールメディア戦略を進めていきたいと思っていますので、アプリはアプリで粛々と進めていきます。アプリは会員さま数がおかげさまで増えていますので、お客さまのニーズに合ったアプリ展開を今後も進めていきたいと考えています」

 Skip Cartは26年第1四半期段階で602店中、266店に導入(トライアルグループ外での導入店舗数・導入台数を含む)。今後、全店導入を目指していくのか。

 「全店に導入するのが正かというと、そうではないと思います。例えば、稼働率の高いところに導入した方が良いだろうといった形で、戦略に基づいて検討しながら進めています。特に小型店であればカートの利用率が低いので、小型店には導入しなくても良いのではという考え方です」

 リテールメディアは、店舗規模による効果の違いはあるのか。やはり大型店の方が、効果が大きいのだろうか。

 「そうですね。買上点数も大きい分、お客さまに伝えられる内容も増えていきます」

デジタルサイネージなどを通じたリテールメディアには大きな可能性がある。新フォーマットとしてオープンしたトライアル西友花小金井店の店頭にはサイネージが多数設定された

「データドリブンビジネス」ができるのがトライアルの強み

 店舗から得られる販売データ面にもメリットがあるのではないか。

 「西友はまだ、グループに加わったばかりです。データの統合が、どこまでできるかは分からないのですが、追々できるように仕組みを構築していくのが、データドリブンに取り組んでいくトライアルグループの大きな方針だと捉えています」

 今回、手薄だった首都圏のデータが西友によって加わることも期待できるが、トライアルはもともと全国的に店舗網を拡大してきた。その意味では、データの蓄積も積み重なってきていると思うが。

 「ID-POSデータは、Skip Cartを含めて蓄積し始めましたので、サプライチェーンによる付加価値を追求していきたいとは思います。そうは言っても、蓄積してきたとはいえ、それをしっかりマネタイズできるまで蓄積したかというと、まだまだ蓄えたいというのは正直なところです。

 その点、当社の出店は、普通のスーパーと比べて大型店ですので、(首都圏への出店が)なかなか容易ではなかったところが、今回西友を含めて大型の物件が獲得できたので、そこで展開できるような環境が作れたのではないかなと考えています。

 西友のデータはまだ取れていないのですが、トライアルの中でもTRIAL GOであったり、スーパーセンターであったり、そもそも違います。『違う』からこそ、今後、付加価値が出てくるのではないかと思っています」

 Retail AIも含め、長年にわたって流通小売業界に存在する「ムダ・ムラ・ムリ」を削減する取り組みをしてきた。西友が加わることはそれに対する影響も大きい。

 「私たちがそもそもビジョンとして掲げている流通の『ムダ・ムラ・ムリをなくす』ということは、トライアル1社ではできなかったものです。それが西友を含めて面が広がったことで、流通業界全体に渡ってムダ・ムラ・ムリをなくすための仕組みを提供できる環境に対して、一歩前進できたのではないかと考えています」

 年商規模でも1兆円を大きく上回るなど、食品主体の小売業では日本でも有数の規模になった。

 「私たちとしては、流通のムダ・ムラ・ムリを削減していくことがそもそもの目的ですし、そのためにSkip Cartであったり、メーカーのデータだったりのつなぎ込みをすることで、整理をしていくことがミッションになります。

 それをやることで、結果、流通業全体のお客さま、ステークホルダーの皆さまに対して、ちゃんと貢献することが私たちの存在意義です。『売上高日本一の流通業』になるために私たちは存在しているわけではありません。あくまで、流通業全体のムダ・ムラ・ムリを改善するために、私たちがどのポジションにいるのかということが重要です」

 流通小売業界のムダ・ムラ・ムリをなくすためのサプライチェーンマネジメント最適化実現に向けて、24年1月に連携協定を締結した日本電信電話(NTT)との取り組みの一環として、7月にRetail AIとNTT子会社のNTT AI-CIXと合弁会社となるRetail-CIXを設立。

 小売業向けには自動発注、棚割最適化、業務負荷軽減、卸売業向けには小売業と連携した需要予測による在庫最適化コントロール、そしてメーカー向けには小売業と連携した生産・出荷計画最適化のためのサービスを提供するとしている。

 「どちらかというと小売業の店舗業務というよりは、データリンクとサプライチェーンの物流改革のための意味合いが強いですね。NTTとはもともと、『いっしょに何かやろう』ということで取り組みが始まりました。『NTTが流通業でできることは何か』というところを話したときに、やはりサプライチェーンの分野でNTTのリソースを使うことで、流通業を改善できるのではないかということです。

 流通の私たちの持っているデータと、NTTが持つ分析ツールを使って改善するものをいっしょに組み立てようというものです。これから、いろいろ課題を見つけて解決していくということです。

 もちろん、それほどすぐには実現できるものとは思っていませんので、時間はかかると思います。ただ、流通業界でNTTと組むということで、特に私たちの『IT×流通』(の考え方)を理解してもらえたのかなと思っていますし、期待をしていただいていると思います」

 メーカーと店舗にかかるあらゆるデータを共有することができるデータプラットフォームとして「MD-Link」を13年から運用している。データを共有しながら全体最適を図るオープンイノベーションのツールとなるが、この取り組みはもともとウォルマートが始めたリテールリンクが元祖ともいえる存在だ。

 トライアルも開始から12年ほどと歴史を積み重ねているが、現状はどのような状況なのだろうか。

 「メーカーに使っていただいていることで、お互いの発注、カテゴリーマネジメントがだいぶ進むようにはなっています。いま『宮若week』(毎月1回メーカーや卸と宮若の施設で行っているWS(ワークショップ)、そこでしか使えないトライアルの顧客データを用いて棚割りなどの実験を行っている)に300人以上(25年7月時点)に参加していただいていますし、各メーカーからいらっしゃる人数は増える形でいま進めています。

 そこはやはり、『データドリブンビジネス』ができるのはトライアルだけということでしっかりやっていますし、メーカーのカテゴリーマネジメントの面ということではトライアルがしっかり広げているところがそもそもの差別化になっています。

 理想はウォルマートの(本社所在地で、取引先が常駐して取り組んでいる)ベントンビルですね。ただ、最終的な理想はウォルマートを超えるものでなければならないと思います。ウォルマートを超えるような、メーカーとのJBP(ジョイントビジネスプラン)の取り組み、ムダ・ムラ・ムリの改善、またはAIを使った発注であったり、商談であったり、改善が理想に近い形になるでしょうが、実際には理想を達成することは永遠にないと思います。

 仮に将来、いまの理想に近づいたとしても、そのときにはまた、(新しい概念が登場して)ふり出しに戻ることになるでしょうし、その意味では新しいリソースによって可能性が広げられることが、今後のデジタル化において必要なことだと思っています。そこは社名のとおりずっと挑戦(トライアル)していきたいと思っています」

取引先と協働も含め、データドリブンビジネスを進めることで流通業の「ムダ・ムラ・ムリ」を減らしていく。理想の追求には終わりがなく、常に社名のとおり、「トライアル」していくと語る

「安さ」「便利さ」、そして「おいしさ」を追求

 永田社長には、いまの日本の小売業界のDXの状況はどう見えているのか。

 「自社(トライアル)は自社でできていること、できていないことがありますし、そんなに簡単に進められれば苦労はしないです。

 トレンド全体では、進んでいるところは進んでいるでしょうし、進まないところは、これからどうやって進めるのかが個人的には気になるところですね。結局、各社IT予算がいろいろある中で、そのIT予算をうまくDX化に効率的にあて、進めている企業はうまく進めているという気持ちもありますし、一方で、小売業の人間にDX課題を持たせても、『何をどうやればいいのか』となってしまっていることもあります。

 (ITを)うまく活用できれば良いのでしょうが、活用できない人からすれば、やはりDXはすごく難しいと思いますので、そういった意味での違いがあるのかなと思っていますし、そこを皆さんどうするのかなと見ています」

 一方で、共同で取り組む相手として、メーカーと卸の意識は変わってきている。

 「そう信じています」

 DXを担うハードの面では、進化を遂げながら徐々に変わってきている部分もある。Skip Cartなどは継続して展開を強化しているが、一方で、例えば以前は売場に多数のAIカメラを設置していたが、最近の店では見かけることがなくなっている。

 「だいぶ用途が限られたので、最近はAIカメラの開発については大きなものは進めていません。顔認証の決済の開発については進めていますが、これも入店からの顔認証はコストが合わないので、あくまでも決済だけのワンショットで行う形となっています。

 TRIAL GOで顔認証の決済を一部実験しています。実験をしながら、あとはどうお客さまに顔認証の登録をしてもらうかということにはまだまだ課題がありますので、お客さまの便利性をどう実現するかに取り組んでいます。使ってみると、実用的であるのは間違いないと思います。お財布を持たずに買物ができるので、非常に便利です」

 あくまで効果を見極めながら、最適化に向けて取り組んでいる様子が伝わってくる。その意味では、生鮮や惣菜の分野について、最初から効率一辺倒ではなく、まずはあるべき品質を実現することから始めていることも同社の大きな特徴といえる。

 惣菜については11月に「こはく本舗」に社名を変更した子会社の旧明治屋が長年に渡って「職人の技術」をデジタル技術によって量販体制に乗せる形での商品開発を実践している。決して「効率」からの発想ではなく、あくまで重視するのは職人が作る「おいしさ」であり、それを「どのように効率的に実現するか」に挑戦することが戦略になっている。

 「やはり、お客さまが求めるものを考えた結果、『おいしいもの』が、お客さまが喜んでいただけるものだよね、ということで、安くて良いものを提供しようという方針を決めました」

 それではトライアルとして、最終的にお客が求める理想の買物の姿をどう描いているのか。

 「そもそも、買物がなくなることはないと思っています。例えば中国や東南アジアなどの発展途上国と、先進国の買物のやり方は全然違うと思っています。また、田舎と都心、あるいはライフステージなどによっても環境は大きく異なります。

 発展途上国でいえば、例えば貧富の格差がある中で、人件費もそれほどかかわらないこそ、デリバリーが容易であり、ラストワンマイルのEコマースがすごく発達しているということがあると思います。一方で、日本やアメリカなど先進国でのラストワンマイルが実際、市場がそれほど大きくなっていないということは、コスト感の考え(コストがより高い)からそうなっていると考えれば、示唆の1つになっていると思います。そこはすごく分かれていると思います。

 そう思うからこそ、やはり、私たちはディスカウンターを求めるお客さまに対して、トライアルで買物していただくことで生活を豊かにしたいと考えています。私はイノベーションの概念として、『安さ』と『便利さ』と『おいしさ』があれば、お客さまは来店していただけると思っています。そこを実現することがそもそも私たちの存在意義です。

 お客さまの購買行動は、もちろん、デジタルで変わってしまうものもあると思います。だから、それ(比較できる手段)以上に便利なものをしっかりとお客さまに伝えることができれば、しっかりとお客さまの心をつかむようなイノベーションを私たちが提供できれば、お客さまは来ていただけると思います。だからこそ、便利さをいかに追求するかが重要です。

 例えば、TRIAL GOの開発について。流通業界が今後、(少子高齢化で)人手不足になっていくことは分かっていることです。コンビニに外国人(の従業員)の方が増えていく状況になっていく中で、複雑な仕事をどんどんデジタル化しなければ採用もできなくなるし、コンビニのような複雑な業務をどこまでいまのような態勢で回すのかということが、今後、さらに課題になっていきます。

 そういう中で、私たちがいかに安くて、おいしいものを提供できるのかということが問われてくるわけです。いまの競争の環境で、これは流通業界全体のトレンドの1つになっていると考えています。

 また、これには地方創生という意味もあります。田舎で人が減っていく中で、私たちが流通の環境をどう提供するかとなったときに、いかに省人化をした上で流通のライフスタイルを提供できるかといったことが、われわれの田舎での存在意義の明確化につながってくると思います。

 しっかりデジタル化し、導入することで、都心であれ田舎であれ、お客さまの買物を効率良くすることができれば、そして価格が安く、さらに商品がおいしければ、お客さまは離れないのではないでしょうか。

 流通業界全体にはもともと安さ、おいしさというニーズはあると思いますが、私たちはそこにデジタルによる(買物の)快適さをさらに提供することで、差別化要素をしっかり訴求していきます。それによって、お客さまはさらに多く来てくださるのではないかと思っています」

西友の店舗での製造能力を資産として出店を開始したTRIAL GO。目指すのは都心部で、安くて、おいしいものを便利に提供することだ

リアル店舗だからこそ、ディスカウントを実現できる

 「リアル店舗」に対する大きな意気込みを感じる。一方で、ネットチャネルの普及によって、今後のリアル店舗の存在意義については議論があることも確かだ。

 「そうですね。全てがダークストアになれば(お客さまは)楽でしょうが、やはり、ダークストアで出せる価格と、リアル店舗でいままでの流通業が培ってきた価格帯の安さには大きな違いはあると思います。田舎で水を29円(の売価※店舗によって価格は異なる)で出せるのは、(商品調達から店舗への配送も含め、効率化を進めてきた)リアル店舗だからこそ実現できる、いままでのノウハウと仕組みがあります。

 デリバリーの場合、価格が高いことが前提ですし、さらにガソリン代、電気代、人件費などが上がるほど高くなります。例えば、来店すれば600円、700円で食べられるものが、デリバリー代を含めて2000円などとなったとき、そこで払う人、払わない人はお客さまでも分かれるのではないでしょうか。

 私はその中では、ディスカウントを求めるお客さまへの提供ということが存在意義だと思っていますし、そのお客さまがゼロになることはあり得ません。そもそもインフレで、ディスカウントを求めてくださるお客さまがいるからこそ、私たちには存在意義があるのではないかと思っています。

 実際、ネットで買物をしても、全てが安いわけではないということは皆さんご存じですし、生鮮はやはり、店舗で新鮮なもの、おいしいものを目で見て買うことが求められているのではないかということがはっきり分かっています」

 それでは、ネットチャネルについてはどのようなスタンスなのか。

 「それはそれでがんばってはいますが、やはり優先順位となったときには、リアル店舗のデジタル化の方がお客さまに求められるところかなと思います。一方で、ネットはむしろ西友に、25年培ったノウハウがありますので、そこは勉強させていただきながら、トライアルグループの中でもマージできたらと考えています」

 「ITが祖業の一つ」というように、これまで培ってきたデジタルの強みをベースとしつつ、首都圏の店舗網の補完という意味に加え、ネットチャネルの長年のノウハウを持つ西友を買収した意義は大きい。店舗小売業にこだわりつつ、ネットも活用した新しい流通業の姿の実現に期待する共に、周りを巻き込みながら、さまざまな手段を用いて流通業の「ムダ・ムラ・ムリ」の削減に挑戦するトライアルの動向に今後も注目し続けたい。

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