VMDとは? ディスプレイとの違いなどを踏まえて、基本から分かりやすく解説
2022.10.27
2022.01.18
アパレル業界を中心に実践され、店舗設計にも大きくかかわるVMD( ビジュアル・マーチャンダイジング)。店舗を経営する事業者であれば、知っておきたい戦略の1つだ。
本記事では、VMDの基本的な概要を紹介すると共に、実践する上で重要な3つの構成要素について、解説していく。
VMDとは?
VMDとは「ビジュアル・マーチャンダイジング」の略語。マーチャンダイジングは「商品化計画」などと訳され、顧客に商品を販売していくプロセス全てを指す。
そのため、VMDはそれについて「ビジュアル」にかかわる点、つまり、商品開発から始まり、消費者が商品を探しやすく、魅力に感じられる環境を整え、視覚的に購買意欲を向上させるといった一連の戦略を指す。
VMDは視覚的訴求が重要なアパレル業界で、用いられることが多い。例えば、ファッション店で、マネキンにコーディネーションされているのをよく見かけるのではないだろうか。こうした展開に至るまでの過程を設計するのがVMDということになる。
アパレル業界のイメージが強いが、書店でコーナー名を明確に表示したり、POPで商品を訴求するために環境を整えることもVMDに当たる。
VMDの歴史は古く、概念自体は、1944年にアメリカのディスプレー会社が、初めて使用したと言われている。
その後、70年代にアメリカで市場競争の激化や、優秀な販売員の人材不足が発生。マーチャンダイジングだけでは、販売戦略上、不十分とされた。そこで、商品の視覚的訴求に着目され、VMDが定着したと言われている。
日本においても、70年代にVMDが導入され、本格運用されるようになった。古い歴史を持つが、現在も活用される基本的な戦略だ。
VMDとディスプレイの違いとは?
VMDの類語として、ディスプレーという用語が存在する。同義とも捉えられがちなディスプレーだが、VMDと意味は異なる。
ディスプレーは展示そのものを指す用語で、商品が魅力的に見えるよう装飾などを施し、陳列することを言う。
一方、商品を見やすくし、購入されやすい店舗を作り上げることがVMD。つまり、視覚的に購入されやすい店舗を作るVMDの手法の1つとして、ディスプレーが位置するイメージだ。
VMDのメリットとは?
VMDは店内レイアウト設計やディスプレー設計など、実践するには相応の準備が必要となる。しかし、VMDは店舗の売上向上に大きく寄与し得る。
店舗や商品の魅力を視覚的に伝えることで、顧客に興味を持たれやすくなるのはもちろん、顧客の導線を考えた店内レイアウトを組めば、滞在時間も長くなる。結果的に、顧客はより多くの商品に触れ、売上向上を期待できるだろう。
さらに、接客の機会を減らせるのもポイント。優れたVMDであれば、店舗従業員が対応に当たらなくても、顧客の購買意欲を喚起できるため、接客の機会を減らせるメリットがある。
コロナ禍においては、ディスプレー同士の間隔を空けておけば、密を避けることにもつながり、顧客の安心感も増すと考えられる。
顧客視点では商品を探しやすく、顧客満足度の向上につながるだけでなく、奇麗に整った店舗につながりやすく、ブランドイメージの向上も可能。VMDは、顧客・事業者双方にメリットがあると言えるだろう。
VMDを構成する3つの要素とは?
VMDはVP、PP、IPの3要素で構成されるといわれており、それぞれを適切に実践し、顧客の購買につなげていくことが重要になる。ここでは、各要素の詳細を解説していく。
お客を引き付ける「VP」
VPとは「ビジュアル・プレゼンテーション」の略語で、店舗のブランドイメージやコンセプト、お薦め商品などを視覚的に表現することをいう。
VPの事例として挙げられるのが、ブランド店などの店頭で見かけるショーウインドーだ。ショーウインドーはブランドイメージを表現しつつ、通行人を立ち止まらせ、潜在顧客の来店を促進できる施策だ。つまり、VPは店舗の顔とも呼べる部分で、お客を引き付けることが主たる目的となる。
お薦め商品をアピールする「PP」
PPとは「ポイント・プレゼンテーション」の略語で、特定のお薦め商品を視覚的にアピールすることをいう。
例えば、アパレル店にて、季節の打ち出し商品をマネキンに着せ、顧客にアピールするのもPPの1つだ。マネキン以外にも、テーブルの上部や通路の突き当たりなど、遠くであっても顧客の目に入りそうなポイントにお薦め商品を設置するといったこともこれに当たる。店内の回遊性を高め、滞在時間を伸ばすことも可能な施策である。
商品の分類・整とんを行い直感的に訴求する「IP」
IPとは「アイテム・プレゼンテーション」の略語で、顧客が商品をより魅力的に感じ、さらに分かりやすく選ばれやすいよう、商品を分類・整とんすることをいう。
例えば、サイズ順に商品を並べる、パンツやスカートなど種類ごとに分けて陳列するといった手法も、IPの1つである。デザイン、サイズ、価格などを視覚情報として、直感的に分かりやすく伝えることで、顧客は比較検討しやすくなり、類似商品の購入も期待できる。
商品の陳列テクニックは多彩であり、一朝一夕で成功するものではない。PDCAを回し、効果的なレイアウトを組むことが重要である。しかし、消費者を引き付け(VP)、お薦め商品をアピール(PP)した後の、売上に繋がる肝心な施策と言えるだろう。
VMDのまとめ
VMDは顧客目線で商品開発にまで踏み込んだ上で、店舗の外観、内観の環境を整え、視覚的に商品の訴求を行う、実店舗ならではの戦略である。
店舗間の競争が激化し、消費者のニーズも多様化する現代においては、ビジュアルで差別化を図り、感情を刺激して購買意欲を高めることも重要になる。
基本的な戦略ではあるが、いま一度消費者の立場になり、心惹かれる商品や売場となっているか、見直してみてほしい。