4Mとは?品質管理における意味や、5M+1Eや6Mについて解説

2022.10.05

2022.05.27

製造業をはじめとした生産現場の品質管理における重要な要素として「4M」がある。4Mは問題発生時の分析や課題の解決など、多くの場面で活用されている。

近年では現場や社会情勢の変化によって4Mにさらに要素を加えた「5M+1E」や「6E」という概念も誕生した。この記事では、4Mを構成する要素や活用方法、似ている言葉の意味について解説する。品質管理における課題解決や生産性の向上のために4Mをぜひ役立ててほしい。

4Mとは?概要と4つの構成要素について

4Mとは?4Mとは4つの構成要素

4Mとは品質管理業務を適切に行うための、以下の4つの要素を指す言葉だ。頭文字のMを取り、総称として4Mと呼ばれている。

Man(人)

Machine(機械)

Material(材料)

Method(方法)

4Mの4つの構成要素について、それぞれ解説する。

Man(人)

Manとは、現場の従業員や作業員、スタッフなど人的なリソースを指す。4Mのほか3つの要素は、いずれも人の手によって稼働や作業が行われるものだ。そのため、「Man」は4Mのなかでも基礎であり、もっとも重要な要素と位置付けられている。

現場の人材を適切に配置し、管理することで一定の品質を担保できる。品質を保つためには、現場の人材の能力やスキル、行動を把握し管理することが必要だ。4Mにおける「Man」では品質管理を人の要素から考え、必要に応じた以下の対策や対応、調整を行う。

・人材の能力やスキルに適した人員配置をする

・能力やスキルが充分でない人材に対して研修や教育を行う

・未経験者や新入社員などに対して会社や社会のルールを教える

Machine(機械)

Machineとは、機械や設備を指す。一定の品質を担保した製品を安定的に生産、製造するには機械や設備の状態が適切であることが求められる。4Mにおける「Machine」では、機械や設備に対して、以下の管理を行うのが重要だ。

・最新の機器を導入して生産効率を上げる

・生産、製造するものに合った独自の機器を開発する

・現場のスタッフが作業しやすい、取り扱いやすい機器やレイアウトを導入する

・機械や設備を適切に取り扱える人員を配置する

・機器の清掃、保守点検やメンテナンスを適切に行う

Material(材料)

Materialとは、生産、製造するために必要となる材料や素材のことだ。4Mにおける「Material」の観点から、品質管理において以下のような適切な材料の調達方法や在庫管理が求められる。

・生産数に対して適切な分量を発注(不足や過剰在庫を防ぐ)

・コストや納期を考えて適切な発注先や方法を選ぶ

・安全、時間的制約のない調達方法を選ぶ

・欠品、欠損がないか材料の検査、検品を行う

Method(方法)

Methodとは、現場における生産、製造の方法を指す。生産や製造の現場で作業方法が確立されていないと、作業効率の低下や事故、トラブル発生の原因となるだろう。効率、安全の両面をふまえて手順や方法を明確にするのが重要だ。4Mにおける「Method」の観点では以下のような、作業方法が可視化できるための取り組みを行う。

・手順書、仕様書などのマニュアルを作成し、いつでも参照できるようにする

・誰が読んでも理解できるマニュアルを作成する(図や画像を入れる、専門用語は使わない)

・マニュアルは適宜見直しをする

・標準の作業方法を取り決める

5M+1Eと6Mとは

2022年5月現在、世界は「第4次産業革命(インダストリー4.0)」の時代に突入している。第4次産業革命では消費者のニーズが多様化し、「モノを所有する」だけでなく、「モノの持つ機能」「モノを所有することで得られる顧客体験」までもが求められるようになった。

多様化する消費者ニーズに対応するために、製造業では第4次産業革命において、スマートインダストリーを中心とした生産、製造基盤の構築が求められている。

第4胃産業革命下において、品質管理におけ、従来の「4M」の要素のみでは消費者ニーズに対応できない時代が到来している。

よって近年では従来の4Mにさらに異なる要素を加えた「5M+1E」や「6M」を新しい品質管理の構成要素として採用する企業や事業者も増えてきた。

これからの時代に欠かせない、5M+1Eおよび6Mの概要や言葉の意味を解説する。

5M+1Eとは

5M+1Eとは従来の4Mの要素に以下の2つの要素を加えた、6つの構成要素からなる品質管理の考え方を指す。

Measurement(検査、測定)

Environment(環境)

Measurementは、品質管理における検査、測定を指す。適切に検査、測定が行われないと規格外品や不良品が市場に流通することとなり、大量リコールや事故発生などの原因となる。大きな損害や企業としての信頼損失のリスクを回避するためにも、適切な検査や測定は品質管理における重要な役割を持っていると言えるだろう。

また、検査や測定によって問題点の発見や改善につながり、製品や作業工程の品質向上も見込める。品質管理における「Measurement」の取り組みとして、検査や測定を重視し、独立した工程としている工場や企業も多い。

Environmentは、品質管理における環境のことだ。製品の品質を保つためには、生産、製造現場の環境を適切に管理することも必要となる。たとえば、腐食の可能性のある材料を取り扱う場合には、高温多湿を避け適切な環境を整えることが求められる。

また、従業員が快適に作業できる環境を整えることで、作業効率も上がり品質も向上する。品質管理におけるおもな「Environment」への取り組みは、以下のものがある。

・現場の温度、湿度を適切に整える

・取り扱う材料に応じた温度、湿度、作業時間を定める

・在庫管理のための適切な環境を整える

6Mとは

6Mとは、5MにManagement(マネジメント)を加えた、品質管理における6つの構成要素を指す。従来、同じ商品を大量生産することがスタンダードだった生産や製造の現場でも、消費者の多様化するニーズに対応するために、受注生産や少数ロット生産が求められるようになった。

受注生産や少数ロット生産によって、製品によって生産ラインや製造過程を変更するなど柔軟な対応が求められ、生産ラインや製造過程は複雑化するようになった。製品によって変わる生産ラインや製造過程を適切に管理し、品質を保つためにマネジメントが求められるようになったことが6M誕生の背景にある。

4Mの活用シーン

生産、製造現場で変更が生じたときや、現場でのトラブル発生時や製品不良が出たときなど、品質管理における4Mの活用シーンは多々ある。おもな4Mの活用シーンや方法について解説する。

4M変更管理

生産、製造現場では人員の配置転換、機械の入れ替え、作業工程の見直しなど変更が生じる機会が多い。変更によって起きる可能性のあることや影響をあらかじめ予測し、対策を立てておく「変更管理」は変更時に多く行われる対策方法だ。変更管理を、4Mの項目ごとに管理する「4M変更管理」にも4Mはもちいられている。

4M変更管理は、まず変更項目やポイントを4Mにあてはめる。

Man(人)…作業員の変更、配置の変更、退職などによる人員数の変更、ローテーションの変更、年休や休業など勤務体制やシフトの変更

Machine(機械)…機械・設備の新設や変更、機械・設備の機能の追加、機械・設備のレイアウト変更、工具や器具の変更、工場の移動や増設

Material(材料)…材料の変更、仕入れ先の変更、調達方法の変更、輸送方法の変更

Method(方法)…製造方法の変更、製造条件の変更、作業ルールの変更

変更項目を4Mに分類後、起きる可能性のある影響を予測し、対策方法を考える。

Man(人)…マニュアルを作成する、研修を実施する、人員を補充する

Machine(機械)…人員の配置転換、マニュアルを作成する、レイアウトや設備変更の周知、ルールの作成と徹底

Material(材料)…新材料の分量やリードタイムなどの周知、適切な在庫管理と保管環境の整備、作業と納期との調整

Method(方法)…新ルールの徹底、マニュアルを作成する、現場作業員だけでなく監督者への教育や周知の徹底

4M変更管理は明文化することで効果を発揮する。変更が生じるごとに、マニュアル、管理表、4M変更申請書などに変更点、生じる影響、対策方法を記載しよう。同じ項目を変更時、何らかのトラブルが発生した場合、4M変更管理によって明文化しておくことでトラブルの原因や対処法が把握できる。

変更点が多い場合は、すべての変更に対応できないことがある。4M変更管理で優先順位をつけて、優先度の高い変更から対応するようにすると、スムーズな変更管理につながるだろう。機械の故障、災害発生など予測できない大きな変更についても、対処法を合わせて記載しておくと良い。

4M分析

生産現場や労働現場において事故や災害が発生した場合、4つの要素から原因を分析し対策方法をたてる「4M分析」の手法がある。

4M分析は、特性要因図を作成して行う。特性要因図とは、設定した項目である大骨に対して中骨、小骨として要因を枝で結んで作成していく図表だ。見た目から「魚の骨」と呼ばれることもある。特定要因図をもちいた4M分析の流れは、以下の通りだ。

① 中央部分に事故や災害などの「特性」を指す右向き矢印(背骨)を設置する

② 中央から離れた4方向に、4Mの項目(大骨)を設置する

③ 大骨のなかから、事故や災害の要因となるものをピックアップし、背骨と矢印で結んで要因を記載する(中骨)

④ 中骨で記載した要因が、さらになぜ起きたかを考えて小さい矢印で記載していく(小骨)

⑤ 大骨、中骨、小骨それぞれをチェックし、因果関係を考える

⑥ 各要因のなかでもっとも影響の大きいものをピックアップする

たとえば、大骨を「Machine(機械)」としたら、中骨は「メンテナンス不足」、小骨は「日常点検不足」「清掃が適時行われていない」「長期間稼働していなかった」などが挙げられるだろう。

4M分析では、大骨の項目を5M+1Eや6Eにしての分析も可能。また、品質管理における4Mとは異なる、以下の4つの要素から構成される4Mをもちいることもある。

・Man(人)…人的な原因

・Machine(機械)…機械、設備による原因

・Media(媒体または環境)…作業環境、マニュアル、作業情報の原因

・Management(管理)…管理システム、方法の原因

4Mとともにおさえておきたい品質管理のポイント

4Mは製品の安定した品質を保つだけでなく、製品の改善や不良、事故発生時の原因特定から対策まで役立つ。ただし、不良やトラブルが継続して発生する場合や、より生産性や品質を向上させたい場合には、原因に対する対策方法を根本から見直す必要もある。

たとえば不良やトラブルなどが発生している場合には、検査や測定の工程を改善するために、AIやセンシング技術などのICTを取り入れるのも有効だ。

人よりもはるかに高い精度で検査や検品ができるため、品質の担保だけでなく人的コストの削減にもつながるだろう。

ICTなどのテクノロジーを導入するのは初期費用もかかるが、4Mを検討するとともに新しい対策方法を取り入れていくことも、これからの品質管理のうえでは重要になると言える。

4Mとは品質管理から事故、災害の原因特定まで活用される指標

4Mの4つの構成要素それぞれの意味や概要とともに似ている言葉の概要、4Mが活用されるシーンを解説した。4Mは品質管理における4つの重要な要素であり、活用することで品質の改善や業務の効率化、さらに事故や災害の原因特定までが可能となる。

近年第4時産業革命の流れを受け、消費者のニーズの多様化へ対応するには4Mに加えてさらに別の観点から品質管理を考える必要となった。4Mは品質管理における基礎的な要素のため、技術進歩や消費者のニーズの変化のなかでも重要な指標としてもちいられる。4MやICTなどのテクノロジーを活用し、品質管理を行うことが事業や経済の発展につながるだろう。

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