VUCAとは?意味や概要、VUCA時代に求められる能力やスキルとは?

2024.03.28

2022.08.19

昨今の社会・ビジネスはデジタルイノベーションや環境問題など、さまざまな外的要因により、将来の見通しを立てにくくなっている。このような情勢はVUCA時代と呼ばれ、多くの事業者を悩ませているが、新たなビジネスモデルが創出される契機ともなっている。

本記事では、VUCAの基本的な概要からVUCA時代の展望、求められるスキル、VUCA時代に重要な意思決定方法であるOODAループについて、解説していく。

VUCAとは?

VUCAとは?

VUCA(ブーカ)とは、社会やビジネスの変化が激しく、先行きが不透明で将来の予見が難しい状況を指す用語である。デジタルイノベーションの加速や、消費者行動・価値観の多様化などで将来の不確実性は高まっているが、昨今では新型コロナウイルスの感染拡大により、さらにVUCAの度合いは加速している。

VUCAは元々、1990年代の冷戦後に核兵器中心の単調な戦略から、不透明な戦略へ変化したことを示す軍事用語だった。それが、2010年代には社会情勢を指す用語として、ビジネス業界に浸透するようになった。

VUCAは、下記4つの英単語の頭文字を組み合わせた造語である。

  • Volatility:変動性
  • Uncertainty:不確実性
  • Complexity:複雑性
  • Ambiguity:曖昧性

それぞれの用語が成す意味を見ていこう。

Volatility:変動性

変動性は、技術革新やマーケティング手法、消費者ニーズの変化など、変動が激しく先行きの見通しが立たない状態を指す。

事例としては、スマートフォンの普及が挙げられる。スマホが消費者の間に定着したことで、フィーチャーフォンは衰退。それにあわせて、一世を風靡した「着うた」や「mixiモバイル」といったサービスは終了し、3Gサービスも各通信事業者が終了の案内を出している。

その一方、Twitter・Instagram・FacebookなどSNSの台頭により、現代人の生活は一変。ビジネスモデルの入れ替わるサイクルが速くなっており、将来の予測を立てるのが難しい時代となっている。

Uncertainty:不確実性

不確実性は、自然環境や政治、制度変更などによってもたらされる、不確実な状態を指す。

事例としては、地球温暖化に伴う異常気象や災害、新型コロナウイルスの感染拡大などが挙げられる。外的要因は不確実性が高く、予見するのは困難とされている。

Complexity:複雑性

複雑性は、グローバル化などビジネスの複雑化に伴い、最適解を導き出すのが困難な状態を指す。

事例としては、キャッシュレス決済サービスが挙げられる。日本では大きく成功しているキャッシュレス決済サービスであっても、海外では浸透度合いが異なり、必ずしも通用するとは限らない。

その他、海外の法律・文化なども障壁となり、ビジネスは一層複雑化している。

Ambiguity:曖昧性

曖昧性は、変動性・不確実性・複雑性など前例がなく、絶対的な解決方法を発見できない曖昧な状態を指す。

事例としては、消費者の価値観の多様化が挙げられる。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、マスメディアが流行を生み出してきた時代と異なり、現在では個人でも容易に情報発信を行える。

同時に、消費者の価値観は変化し、マスメディアの市場規模は縮小傾向に。従来のマーケティング手法が通用しない時代となった。多様化する消費者ニーズをリサーチ・分析し、最適なビジネスモデルを創出することが重要となっている。

VUCAの時代はどうなる?

先行きが不透明なVUCA時代はどのように流れていくのか、想定される事象を解説していく。

予期しない出来事が起こる

ビジネスモデルや消費者行動、自然環境など周囲の環境が流動的に変化するVUCA時代では、予期しない事象が多々起こるとされている。その筆頭として挙げられるのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。

コロナ禍の長期化は人々に経済不安を与え、多くのサービスで売上減少・事業縮小や、雇用・就業・失業に影響を及ぼしている。また、少子高齢化による社会保障費の増大、異常気象による健康・農作物被害なども深刻化。

予期していない出来事の見通しを立てるのは非常に困難であるが、事業への悪影響を回避もしくは最小限に抑えるリスクマネジメントの実施が、昨今では重要視されている。

革新的なサービスが登場する

予期しない出来事は経済の停滞など、日本にとって多くの不利益をもたらすが、逆に新サービスが登場する契機でもある。

例えば、タクシー業界の「Uber」。一般人が誰でもドライバーとなり、顧客を送迎できるサービスで、タクシー会社は運転手・車を保有する必要がない。固定資産を持たず、リスクを極限まで抑えて事業を展開可能な革新的ビジネスモデルと言える。

また、既存の市場に大きな変化をもたらすケースもある。例えば、飲食店のテイクアウトサービス。

外食・中食市場情報サービスを提供するエヌピーディー・ジャパン株式会社によると、コロナ禍に伴う飲食店の時短営業や、消費者の行動制限が影響し、2020年のテイクアウト市場は前年の市場規模を2.6%下回った。それに対し、2021年は2019年比2.9%増という結果に。

事前に予約注文・決済を行い、テイクアウトできるモバイルオーダーも、消費者の間で定着しつつある。フードデリバリー市場に関しても、Uber Eatsの登場により、規模は大きく拡大した。

飲食関連に限らず、Amazon Prime Video・Kindle Unlimited・Microsoft 365といったサブスクリプションサービス市場も規模は拡大。VUCA時代は、革新的なサービス・新サービスが定着する時代でもあると言えるだろう。

常識が非常識に変わる

企業は設備投資・人材育成などを進めることで、競争の優位性確立や差別化を図ってきた。しかし、テクノロジーの進化により、経営資源が意味をなさないようなサービスも登場。

常識であったビジネスモデルが通用せず、未来の予測が困難となっている昨今では、従来の慣習にとらわれず、思考を常にアップデートし続けることが重要と考えられる。

VUCA時代に求められるスキルとは?

VUCA時代を生き残るためには、どのようなスキルが求められるのか解説していく。

自発的に考える力

前述の通り、VUCA時代は革新的なサービスが次々に登場しており、既存のビジネスモデルに沿った戦略立てでは、競争の激化する社会で生き残るのが困難になりつつある。また、これからの時代はAIやロボットの活躍が期待されているが、新たなビジネスモデルの創出には実用的ではないと言われている。

そこで必要となるのが、自発的に考える力。ビジネスの基礎と言えるが、良い商品・サービスを提供するだけでは競争に勝てない昨今において、極めて重要なスキル。日頃から物事に対して疑問を抱き、主観・先入観を捨てて批判的思考でビジネスを考察することが、大切と言えるだろう。

テクノロジーへの理解力

VUCA時代は、テクノロジーを起点として社会・ビジネスに変化をもたらしているケースが多い。よって、既存のテクノロジーはもちろん、新たに登場したテクノロジーに関しても意欲的に情報収集し、企業で共有することが重要。

特に、近年はAIやIoTなど最先端のデジタル技術を活用し、ビジネスや組織を変革して、競争力の維持・向上を図るDX実現に向けて取り組む企業も多い。ライバル企業の動向もリサーチしつつ、最新のテクノロジーにアンテナを張っておきたい。

責任ある決断力

変化のサイクルが速いVUCA時代では、迅速な意思決定・決断が必要となる。しかし、常識や固定観念を捨てることはビジネスモデルの変革に直結し、なかなか決断を下せない企業も多い。

責任の所在を明確にした上で、変革への投資を迅速に決断・行動できる人材やスキルが大切と言えるだろう。

OODAループとは?

VUCA時代では、新たな意思決定方法としてOODAループというフレームワークが用いられている。即応性に優れているのが特徴であるため、社会・ビジネスの変化が激しいVUCA時代に最適。

OODAループでは、下記4つのステップを基に意思決定を行い、急激な市場変化や顧客ニーズへの対応を図る。

  • Observe:観察
  • Orient:仮説構築
  • Decide:意思決定
  • Act:実行

各ステップの詳細を見ていこう。

Observe:観察

最初のステップで行うのが、市場調査・競合分析・顧客ニーズの把握など、現場で生のデータを収集するObserve。これまでの常識にとらわれず、市場の動向や自社が置かれている現状など、ありのままの状態を受け入れることが極めて重要。

VUCA時代の変化を早急に察知するためにも、ポイントとなるステップである。

Orient:仮説構築

前述のObserveで収集した情報を基に、現在の社会やビジネスで何が起きているのか、情勢の判断を行う。OODAループ自体、PDCAサイクルと同様に何度も繰り返して成功を得るフレームワークのため、繰り返し仮説を構築して誤りに気付き、正しい方向性へ軌道修正していくことが重要となる。

Decide:意思決定

Decideのステップでは、どういった行動を取るのか決定していく。Orientの仮説構築は、主に施策の方向性を決めることが目的であったため、それを本ステップで具体化。今後の社会・ビジネスの急激な変化に対応していけるか、アクションプランのチェックも行う。

結果に大きく影響するステップではあるが、先に述べた通り、VUCA時代ではスピード感が大切。迅速な決断・行動で、最大限の成果を得ることが重要と言えるだろう。

Act:実行

最後のActのステップでは、Decideのステップで決めたアクションプランを実行に移す。計画を実行した後は、再び最初のステップであるObserveへ戻り、OODAを繰り返しながら意思決定の精度を高めていく。

リサーチからアクションまで、何度もOODAをループさせることで、先行きの不透明な時代の変化を察知でき、競争の優位性獲得にもつながると考えられる。

VUCAのまとめ

新型コロナウイルスの感染拡大により、一気に加速したVUCA。将来の見えないVUCA時代は、多くの人々および事業者に不安を与えている。

しかし、各事業者はVUCA時代にも立ち向かい、革新的なサービスを開発・提供。不安定な社会情勢の中、社会のインフラや消費者の生活を支え、経済を回している。

OODAループもビジネスに活用しながら、VUCA時代を生き残る施策を講じて欲しい。

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