フィンテックとは?具体例や市場規模などを交えてわかりやすく解説

2023.01.06

2022.12.16

フィンテックとは、Finance(金融)Technology(技術)をかけ合わせた造語で、ビジネスや日々の暮らしの中に浸透しているさまざまなサービスを指す。

フィンテックが使われているそれぞれの分野や、具体的なテクノロジーについて詳しく紹介する。さらにフィンテックの今後の市場規模も予測する。

フィンテックの意味とは

フィンテックはFinance(金融)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語である。ITのテクノロジーと金融サービスを組み合わせたもので、業務の効率化や顧客満足度の充実を図るさまざまな技術が導入されている。

私たちの身近な生活の中では、スマホ決済や暗号資産、AIによるサポートなどが挙げられるだろう。最新のテクノロジーを活用した新しい金融サービスは、今後もさらに進化し普及していくと見られる。

フィンテックの歴史は意外と古く、1860年代に遡る。海底ケーブルを引き、電子による資金の送金や決済ができるサービスが始まりといわれている。その後、1950年代にクレジットカードが登場し、1960年代にはATMによる資金操作が可能になった。

1980年代に入ると、世界各地でオンラインバンキングが誕生する。テクノロジーの進化とともにさまざまなデジタル化された金融サービスが広まってきたのがわかるだろう。

フィンテックが使われている銀行や株などの市場

フィンテックが導入されている金融市場を紹介する。銀行や証券会社、保険などだけではなく、融資やローン、会計や財務業務、個人財務管理、セキュリティなどさまざまな分野でフィンテックは取り入れられている。

フィンテックが何か具体的にはわからなくても、日常生活でフィンテックによるサービスを当たり前のように利用している人も少なくない。

送金や支払いなどのキャッシュレス決済

クレジットカードをはじめ、QRコードやバーコードを利用したスマホ決済や、手数料無料でユーザー間での送金ができるPayサービスなどは、フィンテックの技術が活用されている。

手元に現金がなくても支払いができるうえ、クレジットカードやスマホ決済を利用するとポイントが還元されるものも多く、日常の買い物にキャッシュレス決済を使う人も少なくない。

消費税増税の際にキャッシュレス・ポイント還元事業がスタートし、その影響で日本のキャッシュレス決済利用者はさらに急増した。キャッシュレス決済をよく利用しているという人は、2019年12月は54.2%だったが、2022年2月には64.0%に伸びている。今後も市場規模は順調に拡大するとみられている。

また、複数のクレジットカードや電子マネーをアプリで一括管理できるApple Payの需要も高く、2025年までには世界のクレジットカード総取引件数の10%を占めるだろうといわれている。

投資・資産運用

個人の資産を運用するときにもフィンテックは使われている。投資や資産運用を分析するツールやWebやアプリで簡単に投資できるサービスなど、AIによる技術が活かされている。

資産運用では、自分で投資先を選ぶものと資産運用をすべて人工知能に任せて自動で資産運用するものや、金融商品を選んでくれるものがある。

個人の資産運用では、初心者でも気軽に始めやすくするために、AIの最新技術が使われている。THEO、folio、WealthNaviなどは、人工知能によるロボットアドバイザーがポートフォリオやリスクを提示してくれる。初めて投資を行う人でも、目的によって最適な資産運用を選べるのが特徴だ。

融資

ローンや融資でもフィンテックによるサービスが提供されている。Web上でローンや融資を受けられるサービスでは、ネットでの実績や取引履歴をもとに審査を行い融資するので、店舗に出向く必要がなくスピーディーに融資が受けられる。

また住宅ローンのオンラインワンストップサービス・モゲチェックは、借り入れ可能な金額の判定や最適な住宅ローンの提案、借り換え手続きの代行など、利用者のニーズに合わせたさまざまなサービスが、フィンテックによって実装されている。

暗号資産

暗号資産、仮想通貨とも呼ばれる電子データで取引される通貨もフィンテック技術である。特定の国が価値を保証するものではない通貨だが、銀行など第三者を介することなくインターネット上の仮想通貨の取引所を通して取引ができるものだ。

代表的な暗号資産といえば、ビットコインやイーサリアムなどが挙げられるだろう。やりとりした仮想通貨は、専門の取引所で円やUSドル、ユーロなど実際に使われている通貨と交換ができる。また一部商品やサービスの決済にも利用可能だ。

暗号資産を改ざんできないようフィンテックの技術でブロックチェーンを作り、仮想通貨の取引データを安全に残すことで価値が保証される仕組みになっている。

保険

保険業界におけるフィンテックは、Insurance(保険)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせInsurTech(インシュアテック)と呼ばれることがある。人工知能AIを使い、健康増進型の保険や業務の効率化を図っている。

保険会社justInCaseでは、がんになった契約者数をもとに毎月の保険料を算出する「わりかん保険」を発売。保険金の用い道や内訳を公開しているので、契約者同士がリスクをシェアして成り立っている新しいスタイルの保険である。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、オンライン上で資金を集めて事業の達成などを図る仕組みだ。出資者は主に個人で、目的は商品開発や社会活動の支援など多岐にわたる。クラウドファンディングには、購入型・寄付型・融資型・投資型の4つがある。

購入型は出資者にリターンを提供する。リターンは、自社製品やサービスなど起案者の方で自由に決められる。寄付型はリターンを求めず、純粋に起案者の趣旨に共感して出資するスタイルだ。

融資型は、投資家が投資をして金銭的なリターンを受け取る。投資型クラウドファンディングは、リターンを金利や分配金、株式などで行う。少額から手軽に支援ができて、資金を提供した後のプロジェクトの進捗を確認できる点も人気だ。

最近では、コロナの影響によって事業継続が難しくなっている業種や企業などによるクラウドファンディングの起案も増えている。

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは融資型クラウドファンディングの一種で、個人間での金銭の貸し借りを仲介するオンラインサービスである。資金を調達したい人と資産を運用したい個人投資家をマッチングするシステムだ。ソーシャルレンディングでは、借り手の審査や投資家集め、貸付や返済金の分配など細やかなフォローをしてくれる。

2020年2月、アメリカのソーシャルレンディングのプラットフォームを運営するLending Clubは、銀行の買収を発表した。フィンテックの企業としては初である。従来よりも低い融資手数料の設定、キャッシュフローの効果的な管理方法の提供など、柔軟性が高く質のいい金融サービス提供を目指している。

個人の財務管理

個人財務管理サービスは、PFMとも呼ばれる。Personal Financial Managementの略で、家計簿アプリなど個人の財務管理に役立つ多数の商品の総称である。

銀行口座やクレジットカードと連携して自動的に財務情報を集計して家計簿をつけてくれるものや、家族構成や居住エリアなどの情報から受給できる給付金を知らせてくれるサービス、よく利用する店舗のキャンペーン情報を通知してくれる機能など、個人向けの便利なサービスが充実している。

家計簿をつけるのが苦手な人や、期間を決めて目標金額までお金を貯めたい人などは、PFMを使うとお金の流れを効率的に把握でき無駄を省けるだろう。

セキュリティ

金融業界において、さまざまなシステムやサービスがデジタル化することで課題となるのがセキュリティ対策だ。業務でITシステムを利用していると、サイバー攻撃や不正ログイン、情報漏洩などの対策を万全にしなければいけない。

セキュリティシステムでも最新のフィンテック技術が使われているものが多く、生体認証技術や高精度の画像による照合など偽造しにくいものが取り入れられている。取り扱っている情報の重要度に合わせて、それぞれの部門で適したレベルのセキュリティ対策を行うといいだろう。

今後もセキュリティ対策に活用できるフィンテックの精度は、ますます上がっていくことが予測される。

フィンテックで用いられている技術

フィンテックで使われている技術を具体的に見ていこう。ビッグデータやブロックチェーン、生体認証など、聞いたことはあるけれどどんな技術なのか明確には理解できていないものも少なくないだろう。技術や仕組みが見えると、いかに私たちの生活の安全性や利便性を支えてくれているものかイメージしやすくなる。

IoT(Internet of Thing)

IoTはInternet of Thingsの略である。もののインターネットの意味になり、パソコンやスマホなどのデバイスのほかにも生活の中の身近にある自動車や医療機器、電化製品などさまざまなものがインターネットに繋がる仕組みをいう。loTによって多種多様で膨大なものがインターネットを通してリアルタイムに蓄積でき、ビッグデータを構築できるようになる。

例えば、自動車保険のデータから加入者の運転技術や車両の状態を分析しリスクを測定する、生命保険で加入者の食生活や運動習慣などを収集するなどすれば、保険料の割引に利用できるだろう。データは多ければ多いほど予測する精度が上がる。

loTを活用すれば、新しいサービスや商品の創出、顧客へのサービス向上などに役立てられる。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、暗号資産に用いられている技術である。中央サーバーを設けずにネットワーク上にある端末同士が対等な関係でデータを共有する仕組みで、コストを大幅に削減できるメリットがある。

また、中央サーバーに不具合が生じたときに起こりうる情報漏洩やシステム障害などのリスクを避けられる。ブロックチェーンを使えば、データを共有する一部の端末に不具合が起きても、他の正常に動いている端末同士で安定した運用ができる。

AI

AI(人工知能)は、人間の持つ認識や推論などの能力をコンピューターが実行可能にするための技術をいう。

金融サービスだけに限らず、このフィンテックのAI技術はさまざまな業界ですでに取り入れられている。顧客のニーズや疑問に応えるチャットボットを利用したことがある人も少なくないだろう。また接客ができる客型サイネージ、金融業界では資産運用や保険のプランなどのアドバイスなどをAIが行っている。

ビッグデータが収集できるようになった結果、その膨大な情報量を人間の手では処理しきれなくなった。そのためビッグデータを集め、解析したり管理したりするときにAIが使われるようになったのである。AIによるビッグデータの取り扱いは業務の効率化だけではなく、人間が見つけられなかった規則性や傾向などを発見することもできる。

生体認証

生体認証は、指紋や静脈などその人の身体的特徴をもとに本人確認する認証技術をいう。暗証番号やパスワードよりも安全性が高い。生体認証は、個人情報の漏洩やスキミング防止などには効果的だ。

生体認証の種類は、指紋や静脈以外にも顔認証、目の動きから識別する虹彩認証、周波数から識別する音声認証、耳の形から見分ける耳介認証、遺伝子から判断するDNA認証、習性から判断する行動認証などがある。

生体認証は、身近なところではスマホの待ち受け画面のロック解除、ATMの静脈認証が一般的で、利用経験がある人も多いだろう。2016年の時点で約10兆円の生体認証市場は、2026年には50兆円まで拡大するといわれている。

API

APIはApplication Programming Interfaceの略。コンピューターの内部やWeb上のアプリと、外部のアプリの接点を作る仕組みをいう。APIでアプリの連携を行えば、毎回新しいアカウントを作成する手間が省ける。企業側としてはユーザー獲得に役立つうえ、ログイン情報の管理やセキュリティのコストを削減できるメリットがある。

FacebookやTwitter、Googleアカウントを使ってほかのアプリにログインできる機能は、API連携である。金融業界では既存のインターネットバンキングとフィンテックを繋いで、口座情報や入出金明細や残高の照会などが行える。

フィンテックの市場規模は

世界のフィンテック市場規模は、2019年は1112億4050万米ドル。2025年に1918億4420万米ドル、2030年には3253億1180万米ドルに達すると見込まれている。中でも決済ペイ・送金サービスが、フィンテック市場の半分以上を占めている。アジア地域でもユーザーが拡大しており、2019年6月には中国Alipayの決済サービスユーザーが12億人を超えた。

日本国内でのフィンテック市場規模は、2018年は2145億円であった。2018年10月に消費税増税が表明され、増税後のキャッシュレス・ポイント還元事業の影響でQRコード決済を利用する人が急増した背景もあるだろう。矢野経済研究所によると、日本でも2022年度にはフィンテック市場は1兆2102億円まで拡大すると見られている。

フィンテックは今度も成長するサービス

フィンテックは、今後もIT技術の進化とともにさまざまな便利で効率的なサービスを提供してくれるだろう。人々が生活をしていくうえで、金融業界のサービスの利用は不可欠だ。フィンテックはこれからもっと快適で身近なものとして、多くの人が活用する欠かせない技術である。

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