レガシーシステムとは?問題点や刷新のポイント、DXとの関係等わかりやすく解説

2023.01.12

レガシーシステムとは、導入されてから長い期間が経ったシステムのことである。レガシーシステムは、既存のシステムが業務の変更や担当者の異動、退職などによって全容が把握できないブラックボックス化したり複雑化したりすることで生み出される

レガシーシステムはDXの足かせとなったり、保守・運用費がかさんだりとさまざまなリスクがある。経済産業省はDXレポートで2025年の崖について触れている。レガシーシステムを刷新するには、モダナイゼーションやマイグレーションが重要になる。レガシーシステムから脱却することで、競争力向上につなげたい。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、導入されてから長い期間が経ったシステムのことである。過去によく使用されていた、メインフレームと呼ばれる大型のコンピュータや古くなってしまった技術、現在ではあまり使われないプログラミング言語などで構築されていることが多い。

これらのレガシーシステムが生み出される原因や、レガシーシステムの問題点、脱却のポイントなどをわかりやすく解説していく。

レガシーシステムが生み出される原因

どのようなシステムでも、導入当初は最新のシステムである。しかし、その後使われ続けていくうちにレガシーシステムとなってしまう。ここでは、便利だった業務システムが時を経て使いにくいレガシーシステムとなってしまう原因についてピックアップする。

システムのブラックボックス化

業務システムが長期にわたって運用され続けていると、法改正があったりプログラムのバグが発見されたりして、システムをアップデートしなければならない場面に遭遇する。

その都度担当者が対応してシステムの修正や更新を行うことになるが、長い時間を経て担当者が変わりながら修正や更新を繰り返していくうちに、システムの全体を把握できる人がいなくなり、適切な運用やメンテナンスが行われなくなる

そうすると、システムを変更することで業務が中断されてしまう危険性も出てくるため、機能の追加やシステムの更新が難しくなり、レガシーシステムとなってしまうのだ。

システムのブラックボックス化は、万が一システム障害が発生したり不具合が起こったりした場合に、対処が遅れてしまう。損害が大きくなるリスクもあるため、早急に改善しなければならない。

部署ごとでおこなわれる部分最適化

特に規模の大きい企業では、部署によってさまざまなソフトウェアが利用されている。

それぞれの部署において既存のシステムを部分的に最適化したり、無理やり新機能を追加したりすると、システム全体が肥大化し複雑になってしまう。そうするとシステムの全体最適化を行いにくくなり、レガシーシステムを使い続けなければならなくなる。

このような状態のシステムでは、顧客の情報が部署ごとに重複して保存されていたり、適切な紐付けがなされていなかったりすることも多い。せっかく得られたデータを活用できていないという点も問題である。

システム開発の外部依存

特に中小企業などにおいて、社内にシステムを開発する環境が整っていなかったり、デジタルに精通している人材が不足していたりする場合、システム開発は外部に委託することになる。

その結果、システムの設計を外部の開発会社に依存してしまうケースが多い。システムへの理解が浅く、適切な保守・運用ができなければ、システムはレガシー化してしまう。

DXレポートにおいても、システム開発企業に対するユーザー企業の丸投げは指摘されている。システム開発企業におんぶにだっこではなく、ユーザー企業が主体となり、明確なビジョンを持って要件定義を行うことが必要だ。

レガシーシステムが引き起こす問題点

レガシーシステムはさまざまな要因によって生み出され、企業の規模や職種にかかわらず存在する。ただ古いだけではなく、企業にとって不利益となる点も多い。ここでは、実際にレガシーシステムがビジネスにおいてどのような問題を引き起こすかについてまとめた。

市場や社会の変化についていけなくなる

現代社会は技術の発展や流行の移り変わりがめざましく、次々と新たな商品や技術が誕生する。

しかし、レガシーシステムは昔の技術が使われているため、新たな技術を取り入れたり連携させたりすることができない。新たに生まれる市場に参入できないことや、社会の変化についていけないことは重大な機会損失であり、企業の競争力の低下にもつながる。

DXの足かせとなる

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、オンライン授業の普及やテレワークの推進など、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている。しかし、レガシーシステムを使い続けていると新しい技術を活用できない。このように、柔軟性に欠けるレガシーシステムはDX化を阻害する大きな要因となる。

また、レガシーシステムは部署ごとにカスタマイズされたシステムを使っている場合が多く、データが分散してしまう。DXの実現にはデータの活用が不可欠であるため、DXの足かせとなるのだ。

保守・運用費が高額になる

レガシーシステムを使い続けるには、保守や運用を行わなければならない。しかし、システムは古くなっていくにつれて不具合が頻繁に発生するようになる。そのため、メンテナンスコストが増大してしまう。

さらに、古いプログラミング言語やシステムを使い続けることで、それらを適切に保守できる人材がいなくなってしまう危険性もある。複雑・肥大化したレガシーシステムは、軽微な変更であってもさまざまな箇所に影響が表れるため、その調査や調整に人手がかかり、コストがかかる原因になる。

システム障害が発生するリスクが高まる

レガシーシステムは老朽化や不具合が頻繁に起こるようになる。システムダウンやデータの消失など、システム障害が発生してしまうと、業務を中断せざるを得なくなり、企業としての損失が発生する。職種やトラブルの種類によっては消費者に影響を及ぼすものもあり、企業の評価や信頼度が低下してしまうリスクもある。

2025年の崖

2018年9月に経済産業省から発表されたDXレポートによると、2025年には複数のソフトウェアのサポートが終了したり、エンジニアが減少したりすることが指摘されている、現状のまま企業がDXを推進しなかった場合、2025年以降、経済損失が最大で年間12兆円にのぼると考えられている。

これが「2025年の崖」問題である。2025年の崖問題を回避するためにはDX推進が不可欠であるが、今なお企業に数多く残るレガシーシステムがDX推進を阻害しているのだ。

レガシーシステムを刷新するポイント

レガシーシステムはさまざまな問題点があり、企業だけではなく、社会全体にも大きな損失となる。しかし、今まで長い期間使い続けてきたレガシーシステムを刷新することは簡単な作業ではない。ここでは、レガシーシステムを刷新するためのポイントや効果的な方法について具体的に考えていく。

クラウドを活用する

レガシーシステムから脱却するのに、クラウドの活用は非常に効果的である。ビッグデータ解析など、最新技術はクラウド基盤での活用を想定している場合が多いうえ、業務上入手した多種多様なデータを保管し活用するためには多大なコストを必要とするためだ。

クラウドへ移行すると、コストが削減されるだけではなく、セキュリティが向上したり、テレワークが可能になるなどして働き方の柔軟性が向上したりする

とはいえ、レガシーシステムをそのままクラウドに移行するだけでは、レガシーシステムからの脱却とはいえない。改修や再構築が必要なシステムはないかなど、クラウドへの移行のタイミングでレガシーシステムを見直す必要がある。

モダナイゼーション

モダナイゼーションとは、「近代化」という意味の英単語である。既存のシステムで培われたデータやプログラムはそのままに、システムを刷新してレガシーシステムを近代化させる手法だ。モダナイゼーションには、「リビルド」「リライト」「リホスト」という3つの方法がある。

リビルドとは既存のシステムをベースに新しいシステムを再定義する方法だ。コストがかかるが、全体を再定義するので部分的にレガシーシステムやその名残が残ることもなく、新しいシステムに置き換えられる。

リライトは、レガシーシステムのロジックを維持したまま、古いプログラミング言語から新しいプログラミング言語に置き換える手法である。システムロジックが変更されないので、業務やシステムの使用感などへの影響が少ない。

リホストは、システムロジックやプログラムをそのままに、プラットフォームなど、システム周辺の環境を整備する方法だ。他の2つに比べて時間をかけずにモダナイゼーションできるが、システムロジックやプログラムの見直しをせずにリホストのみを行っても、レガシーシステムの刷新はできないので注意が必要だ。

マイグレーション

マイグレーションとは、「移行」という意味の英単語である。

マイグレーションには仮想サーバー同士で機能を移動する「ライブマイグレーション」、データを古いハードウェアから移行する「データマイグレーション」、レガシーシステムを新システムに移行させる「レガシーマイグレーション」がある。

レガシーシステムからの脱却という面ではレガシーマイグレーションが主なマイグレーションとなる。具体的な手法はリビルド、リライト、リホストとモダナイゼーションとあまり変わりない。モダナイゼーションとの違いは、マイグレーションはシステムを刷新し、完全に置き換えるという点である。

しかしながら、レガシーシステムを刷新するためにどちらかを選択しなければならないわけではない。マイグレーションをおこなって刷新する部分と、既存のシステムを活用しながらモダナイゼーションする部分を見極めることが重要だ。

レガシーシステムから脱却して競争力を高めよう

レガシーシステムは多くの企業に残っており、今なお使い続けられているが、レガシーシステムには問題点やリスクが多い。

レガシーシステムから脱却することは、不必要なコストを削減できるだけではなく、企業の競争力を高めることにもつながる。目前に迫っている2025年の崖を回避し、グローバル化されたデジタル社会を生き残っていくためにも、レガシーシステムからの脱却は企業として最重要の課題であるといえるだろう。

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