ダブルチョップとは?意味やPB・NBとの違い、導入のメリットなどを解説
2024.02.08
2023.03.23
コンビニやスーパー、家電量販店などでは、近年NB商品のほかに、小売業者が独自開発を行うPB商品や製造業者と小売業者(もしくは卸売業者)が共同で開発する「ダブルチョップ」商品を展開する店舗も増えてきている。
ダブルチョップは小売業者だけではなく、メーカー側にもメリットのある商品戦略の1つだ。この記事では、ダブルチョップを導入する意義やメリット・デメリット、PBとNBとの違い、ダブルチョップを採用する企業の実例を解説する。
ダブルチョップとは?意味とPBやNBとの違い
PB商品を展開する小売業者が増えているが、NBに比べて認知度の低いPBよりも、信頼や認知が得られやすいダブルチョップを採用する企業も多い。ダブルチョップの意味やNB、混同しやすいPBやダブルブランドについて解説する。
製造者と販売者の名前を併記する表記方式
ダブルチョップとは、製造者と販売者が共同で企画・開発し、裏面の製造業者の欄に両社の名前が表記された商品のことを指す。ダブルチョップ(Double Chop)のチョップ(Chop)には、「商標」という意味があり、双方の企業名が併記されるため、ダブルチョップといわれる。
実際は小売店のブランドネームが入ったパッケージに変えて、メーカーの商品と同じ中身、または、価格や品質の一部を仕様変更した商品などがダブルチョップ商品にあたる。ダブルチョップは、SB(ストアブランド)と意味合いとしてはほぼ同義である。
ダブルチョップとPBやNBとの違い
小売業者の店舗で販売される商品には、ダブルチョップのほかに、一般的に大手メーカーが開発・製造する商品であるNB(ナショナルブランド)と、ダブルチョップと混同されやすいPB(プライベートブランド)がある。
PBは、製造・生産を行わない小売店や流通業者、卸売業者などが独自に展開するブランドだが、PBは基本的に小売企業のブランド名しか表記されないが、一方、ダブルチョップは、製造企業と小売企業双方の企業名が併記される分より信頼性や品質などをアピールしやすい。
NBとは、一般的に製造者(メーカー)が自社商品やサービスに付けたブランドを指す。商品の企画、開発、製造までを製造者が責任を持って行い、市場へ流通させる。ナショナルブランドの商品やサービスは日本全国の小売店などで販売され、広告活動についてもメーカーが行う。
ダブルチョップの導入で得られる小売店側のメリット
小売店がダブルチョップを導入することで得られるメリットを確認する。
競合店との差別化が図れる
ダブルチョップを小売店が導入することで、ほかの競合店・企業との差別化が図れるメリットがある。ダブルチョップは自社の店舗でしか販売されていない商品であるため、差別化が難しい製品であっても、独自性のある商品を提供することが可能だ。
ニーズにマッチした商品を展開できれば、顧客の囲い込み効果も期待できるだろう。また同じ商品を扱う他社の店舗がなく、価格以外の魅力や品質で勝負できるので、価格競争に巻き込まれにくい特徴を持つ。
NB商品より商品価格を抑えやすい
ダブルチョップの場合は、NB商品の場合と比較して、小売企業にとって販売チャネルのコントロール・圧縮しやすい傾向にあり、中間マージンの発生を抑えやすいといえるだろう。これはPB商品も同様である。また、NB商品と比較して、広告宣伝費も抑えられるのも大きいだろう。
販売に関わるコストを圧縮することで、お客により安価で商品を提供できることになり、売上増加の効果を期待できる。
製造業者の可視化が安心感につながる
ダブルチョップは製造業者が可視化されているので、信頼や安心感につながる傾向にある。PB商品では、製造業者の欄に小売業者の名前のみ記載されており、どこで生産されたものなのかわかりにくく、不安を感じる消費者も多い。
その点、ダブルチョップは、小売業者と製造業者の名前が連名記載されているため、消費者は安心して商品を購入できるようになるだろう。ダブルチョップやPB商品はNB商品より知名度が低いことから、訴求力のあるNB商品の力を借りてブランド力をアピールできるメリットもあり、収益の向上も期待できる。
ダブルチョップの導入で得られる製造者側のメリット
ダブルチョップを導入したことで、製造業者、メーカー側にはどのようなメリットがあるのか見ていこう。
在庫リスクの軽減・安定した発注
ある程度決まった売り場を持つダブルチョップでは、受注分を計画的に生産することが可能で、安定的な発注が望めるメリットがある。売り場を確保するための売り込みなどの営業活動のコストも抑えられる。
多数のチェーン店を有する小売業者と契約できれば、既に作った商品の廃棄も減り、通常商品と比較して、製造企業にとっては在庫リスクの軽減が期待できる。
ダブルチョップとNB両者でシェアを獲得できる
PB商品が多数登場し、NB商品の棚割スペースが縮小されていることを受けて、PBとNB両方の強みを持つダブルチョップを採用することで両方のシェアを獲得していけるのも、メーカーにとって期待できるメリットの1つである。
もともと価格競争によりNB商品の安売りが続いたことに危機感を覚えたメーカーサイドの動きで一般化したのがダブルチョップとされているが、ブランドイメージを崩さない程度に、値引き幅を調整できる方法としても採用されている。
ダブルチョップの導入で考えられるデメリット
小売店はもちろん、メーカー側にもメリットがあるダブルチョップだが、デメリットもそれぞれ存在する。小売業者では、売れ残りがあった場合、返品できる場合のあるNB商品とは異なり、販売責任を負う必要があり、在庫リスクが生じる可能性がある。
売れ行きのよくない滞留在庫は倉庫内の保管スペースを圧迫し、在庫を保管し続けるのにも、賞味期限切れなどの不良在庫が出た場合にも、管理費や処分コストが発生する。
メーカー側のデメリットには、NB商品の売上に影響を及ぼす可能性があることが挙げられる。商品を供給する際には、ダブルチョップとNBのバランスも一考の余地があるだろう。
ダブルチョップを採用する企業の実例
コンビニやドラッグストア、スーパーマーケットなどで、ダブルチョップを採用する企業が増加してきている。スーパーマーケットのライバルチェーンであるイオングループとセブン&アイグループが展開するダブルチョップの例を紹介する。
イオングループ「トップバリュ」
イオンのプライベートブランドである「トップバリュ」は、原則、製造元やの他ブランド名の記載がなく、製造所固有記号のみ記載がある。
その中でも、製造業者の欄に大手メーカーの企業名が記載されたダブルチョップ商品も多数登場している。サントリー「トップバリュ 麦の薫り」やサッポロビール「富良野生ビール」、湖池屋「トップバリュ 厚切りカットポテトチップス」のような大手と共同で提供する商品などがある。
セブン&アイグループ「セブンプレミアム」
セブン&アイグループ「セブンプレミアム」でも、多数の企業と共同開発したダブルチョップが多数販売されている。セブンプレミアムのダブルチョップには、カルビーの「セブンプレミアム フルグラ® フルーツ&クラッシュアーモンド」、ジョージア「セブンマウンテン」、UCC「リッチアロマブラック」などがある。有名企業とダブルブランドにすることで、消費者に早くから認知と信頼が得やすく、それぞれの強みを活かしたシナジー効果が期待できる。
ダブルチョップの意義や利点を理解しよう
ダブルチョップは、NBとPBの特徴を備えており、独自性が出しやすく、ほかの競合店との差別化が図れるメリットがある。大手スーパーマーケットでは当たり前になりつつあるダブルチョップだが、PB商品やダブルブランドのような混同しやすい言葉も多い。今後、PB商品とともに重要性を増すであろうダブルチョップの意義や利点を理解しておこう。
編集長竹下の視点
欧米ではメーカーのブランドを冠したナショナルブランド商品、小売業が企画し、小売業独自のブランドで展開するプライベートブランド商品が比較的明確に分かれており、プライベートブランド商品にはメーカー名は記載されないのが通常。
それは小売業が全ての責任を持つことの表れでもあるが、日本の場合、製造者の表示が義務付けられていない商品も含め、問い合わせ先などメーカー名を記載するケースが多い。背景には、「製造者を表示した方が信頼度が増す」という考え方もある。
ダブルチョップはさらにそこから進んで、メーカーのブランドを生かした上で、特定小売業独自の規格とうたう点で特徴的だが、以前は量目などの小幅な変更のものも目立ったが、昨今ではフレーバーや規格などより踏み込んだ開発の商品も目立つようになっている。
商品開発に限らず、さまざまな分野で「協業」「コラボレーション」が増えている時代でもあり、ダブルチョップ的な商品開発はむしろ今後、以前にも増して注目すべきといえるかもしれない。