PB(プライベートブランド)とは? PB商品を展開するメリットや、NBとの違いと併せて解説

2023.06.08

2022.04.05

コンビニやスーパーマーケットなどさまざまな店舗でPB(プライベートブランド)商品が販売され、日々の生活に欠かせないものになりつつある。

PB商品は、総体的に低価格で販売されるケースが多く、消費者にとってはうれしい側面があるが、小売り、メーカー側にとってもメリットをもたらす戦略商品でもある。

ここでは、PBの概要と展開するメリット、デメリット、またOEMやNB商品との違いについて解説する。

PB(プライベートブランド)とは?OEMやNB(ナショナルブランド)との違い

ブランドといえば、かつては高級なイメージがつきものであったが、近年では幅広いジャンルのオリジナルブランドが展開され、低価格帯も含めた形で商品が提供されている。

PB(プライベートブランド)はNB(ナショナルブランド)と共にオリジナルブランドの商品であるが、よく見聞きする用語であるPBとOEM、またNBとは、どのような特徴や違いがあるのか順に解説していく。

PB(プライベートブランド)商品とは?

PBとは、英語の「Private Brand(プライベートブランド)」の略語で、メーカーではなく、小売業者が商品企画から製造までをプロデュースし、販売まで行うブランドのことを指し、そのブランドのオリジナル商品をPB商品と呼ぶ。

PB商品は日々、店頭でお客と直接かかわっている小売業が商品開発をしている強み生かすことが前提になることから、メーカーのブランドの商品、NB商品と比べてさまざまな違いを打ち出している。

歴史的に良く用いられている手法に「トレードオフ」と呼ばれるものがある。「何かを得ると、その分何かを失う」といった意味だが、PB商品の開発においては、NB商品の機能のうち「必要ではないもの」を省くことで、その分、価格を低くして買い求めやすくするというものがある。

NB商品には、技術の進歩もあってさまざまな機能が付加されている。その中には、あればより商品的には充実するかもしれないが、もしかしたらなくてもその商品の使用自体には影響がないものもあるかもしれない。それを省くことで、その分、価格を下げる余地が出てくるわけだ。

また、低価格化という点では、機能を省くという点以外に、NB商品には欠かせない広告宣伝費や販促費を大幅に節約できるという側面もある。もちろん、PB商品でもそれらの費用が投入されることもあるが、圧倒的に少ない。小売業はそもそも売場を持っていることから、店頭に並べること自体が広告になるためだ。

また、昨今ではPB商品自体が存在感を増し、多様になってきている。日本は歴史的にNB商品が強いが、欧米では日本以上にPB商品の存在感が大きいところもあり独自の進化を遂げてきたが、日本でもそれらのモデルの影響も受けながらPB商品が多様化している。

例えば、先ほど触れた「トレードオフによる低価格化」は日本におけるPB商品の代表的な例ではあるが、それはあくまで「NB商品に存在する商品をPB商品化した」ことに過ぎず、つまり、あらかじめモデルがあり、それをより低価格化したということになる。

PB商品の多様化の局面では、そうしたNB商品を低価格化した商品をSB(ストアブランド)と呼び、「NB商品にない」商品を小売業の視点で開発した商品をPB商品として区別する考え方もある。

また、価格帯についても、低価格化ではなくむしろ機能を追加したり品質を高めたものを「クオリティブランド」としたり、通常よりさらに低価格化を強化したブランドを「プライスブランド」「コンペティティブブランド」といったようにPB商品内でも階層化を意識する事例もある。

OEMとは? PB商品との違い

OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略した言葉で、他社ブランドの商品を製造すること、または他社ブランドの商品を製造する企業のことをいう。

PB商品を企画、販売する企業が、他社メーカーに製造過程の部分を委託することがOEMである。自社グループ内にメーカー機能を抱える企業もあるが、基本的にはPB商品もOEMで生産されている。製造工場や技術を持たない企業であっても、自社オリジナルのPB商品を作りたいときにOEMは役に立つ。

NB(ナショナルブランド)商品とは? PB商品との違い

NBとは、「National Brand(ナショナルブランド)」のことで、メーカーの商品のことを指す。

一般的にメーカーが卸、小売業者に販売する自社商品のことをいい、PB商品と区別されるときにNB商品という言葉が使われる。

カルビー「ポテトチップス」、明治「おいしい牛乳」、ロッテ「コアラのマーチ」などは代表的なNB商品である。PB商品は基本的に自社店舗のみで販売するの対し、NB商品は原則、どの小売店でも取り扱える販路の広さが特徴である。

PB(プライベートブランド)商品を開発、製造、販売するメリット

PB商品を開発、製造、販売するメリットを小売店、メーカー、消費者、それぞれの立場から確認しておく。

小売店のメリット

小売業がNB商品を販売する場合は、製造コストの他に、メーカー、卸業者の広告宣伝費や人件費、物流費など、さまざまなコストが上乗せされ、その金額が仕入単価となる。

一方、PB商品は、商社や代理店を通さないことも多く、メーカーから直接仕入れることになるので、中間流通コストを低く抑えられる。

さらに自社で広告宣伝を行うことから、安く仕入れて販売価格を自由に決定することができる上、NB商品と比べて相対的に高い利益率で商品を販売できる。

また、PB商品を扱う小売業者は直接消費者と日々接する機会が多いこともあり、消費者の意見をダイレクトに反映させた商品を展開しやすい。結果、ファンを増やすことにつながり、お客の囲い込みが狙えるメリットもある。

メーカーのメリット

メーカー側は発注を受けた分だけ製造するので、生産計画が立てやすく、商品が売れずに残ってしまっても、NB商品のように在庫を引き取る必要がない。工場内でリソースが余っている場合は、人員や設備を有効活用できるため稼働率が上がり、継続発注となれば安定的な収益が見込めるだろう。

委託者が企画、販売のノウハウに長けた企業であれば、PB商品の製造に携わることで、製品企画や製造に関するスキルやノウハウが得られ、メーカーの技術レベルが向上する効果も見込める。

他にも、昨今ではPB商品には生産者の表示が義務づけられていることから、広告宣伝費をかけずに自社をアピールすることも可能だ。

ちなみに、自社のNB商品と競合にもなり得るPB商品の製造を請け負うか否かは、メーカーにとってさまざまな思惑が絡む事象といえる。NB商品同士のシェア、あるいは販売政策などさまざまな要素が絡んだ事象として、今後も戦略的な取り組みが進んでいくだろう。

消費者のメリット

比較的安価で購入きる点が消費者にとっての最大のメリットだ。小売店のメリットでも触れたが、基本的に仲介業者を挟まずに商品を仕入れられるPB商品は、小売業者にとって高利益な商品であると同時に低価格で提供しやすくもある。

近年、消費税の引き上げや社会情勢の影響による食品、日用品の値上げなどで、できるだけ商品を安く購入したいと考える消費者が多い現状がある。もちろん、PB商品も同様に原料高騰の影響は受けるが、先述のような構造的な理由から、例えば「価格据え置き」など、PB商品を価格面で戦略的に活用する事例も目立つ。

PB(プライベートブランド)商品を開発、製造、販売するデメリット

多くのメリットをもたらすPB商品だが、デメリットも存在する。小売業、メーカー、消費者がこうむる可能性のあるデメリットを事前に見ておこう。

小売業のデメリット

小売業で売れ残ったPB商品は小売店が直接メーカーから商品を買い取っているため、在庫が発生してもメーカーに返品できない。売れずに在庫となった商品であっても他社に転売は難しく、在庫管理、保存のための人員やスペースを確保しなければならない。

そのようなリスクを回避するには、過剰在庫にならないよう、計画的に発注を行う必要がある。この「在庫」という側面は、PB商品において最も重要な要素といえるかもしれない。

PB商品は小売業が主体となって提供する商品であり、品質が悪かったり、何か問題が生じたりした場合は、当然のことながら小売業自らクレームやサポート対応をしなければならない。商品の不具合や価値低下はすべて小売業側が責任を負う形となる。

メーカーのデメリット

NB商品を提供するメーカーにとって、PB商品の需要が拡大していくと、店頭で提供する商品の幅が狭められる可能性もあり、売上低下を招くリスクが生じる。PB商品の登場で、たとえNB商品であっても販売側のイメージにそぐわないと判断された場合は、今までNB商品が並んでいた優位な陳列棚にPB商品が陳列され、売場の縮小や受け入れ拒否といった最悪の事態も考えられる。

また、PB商品の製造に携わるメーカーの場合は、PB商品の売れ行きが芳しくなければ短い期間で撤退する可能性もあるため、当初想定していた計画が大幅に狂うことになる。販売側との関係維持、パワーバランスの変化に気を配る必要があるだろう。

消費者のデメリット

小売業者がPB商品を優先して取り扱うようになると、NB商品のラインアップが制限される可能性があるため、選択肢が狭まるデメリットが考えられる。

PB(プライベートブランド)の事例

PB商品を成功に導くには、自社の価値を高めるブランディングを正しく行い、消費者の声に耳を傾けながら、認知度やロイヤルティ、評判、イメージの向上に努める必要がある。PB商品を開発、展開する代表的な企業の成功事例をいくつか紹介する。

イオン「トップバリュ」

「トップバリュ」は、1974年にイオンに創設されたプライベートブランドである。カップ麺「ジェーカップ」の発売を皮切りに、40年以上もの間、食料品や日用雑貨、衣料品、家電製品まで幅広いPB商品を展開している。

トップバリュは顧客ニーズに対応するために、『確かな品質、この安さ』をキャッチフレーズに、日々の暮らしに寄り添った商品を提供する衣食住ブランド「トップバリュ」、満足品質・低価格を目指す「トップバリュ ベストプライス」、自然と健康に配慮したオーガニックブランド「トップバリュ グリーンアイ」、こだわり抜いた高品質の逸品を提供する「トップバリュ セレクト」の4つのサブブランドを展開している。

日頃、消費者の意見やニーズを商品に反映させるべく、新商品のモニターテストやホームユーステストを実施するなど、トップバリュのさらなる品質向上を目指し、さまざまな取り組みを行っている。

セブン&アイ・ホールディングス「セブンプレミアム」

セブン&アイグループで販売される「セブンプレミアム」は、2007年からセブン&アイ・ホールディングスがグループPB商品として展開している。コンビニで日本最大の店舗網を持つセブン‐イレブンで主力商品として販売されていることから、広く認知されているブランドで、根強い人気を誇る。当初から「低価格であることを優先したPB商品」とは一線を画した戦略を採っていることが大きな特徴だ。

セブンプレミアムは、消費者も活発に商品開発に参加できる公式サイト「セブンプレミアム向上委員会」を設置し、新商品の開発だけでなく、既存商品のリニューアルにも積極的に取り組んでいる。

西友「みなさまのお墨付き」

「みなさまのお墨付き」は、12年に発売が開始された西友のPB商品で、一般消費者から80%以上(当初は70%以上)の支持率を獲得した商品のみを販売するというユニークな仕組みを採用している。

100人の主婦が試食を行い、支持率が80%以下なら消費者の声を反映させて商品改良、または終売を実施しなければならないという、徹底した消費者テストが特徴的だ。

NB商品と同等以上で低価格といったコンセプトで開発を行っていたが、コロナ禍の影響で、より健康的で節約志向が高まったことを受けて、低価格と高付加価値を両立した定番商品以外も拡大し、現在は1000アイテム以上発売するに至っている。

PB商品の領域を超えた商品開発を打ち立て、西友としては2025年度には「スーパーマーケットナンバーワン」を目指すと表明している。

PB(プライベートブランド)まとめ

自社のPB商品を確立し、顧客ニーズに対応した独自の商品を生み出していければ、お客の注目度や満足度が高まり、売上げの向上につながるだろう。PB商品は販売側である小売業者だけでなく、消費者やメーカー側にもメリットが多数あるので、多くの企業がPB商品の立ち上げに乗り出している。PB商品を成功に導いた企業の事例を参考に、自社に最適な戦略、方法を模索し、PB商品の展開に乗り出そう。

編集長竹下より

日本におけるプライベートブランドの存在感は、欧米に比べると歴史的にはそれほど大きくはなかったといえる。ナショナルブランドの存在感が大きいといったこともあると思われるが、プライベートブランド自体の歴史は長いものの、売上げに占める構成比は多くの企業が1割程度にとどまる状態が続いていたといえる。

しかしながら、価格的にメリットを打ち出せることもあって、特に節約志向が高まったときに支持が高まる動きが何度か繰り返されてきた他、昨今では高付加価値型などナショナルブランドにない機能を付加するなど、その開発方針も多様化している。さらに、オンラインチャネルが発展する中、「差別化できるのは最終的には商品」という意識も高まっていることから、今後、一層重要性を増すことは間違いない。

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