OEMとODMの違いとは?概要やメリット・デメリットをわかりやすく解説
2022.10.05
2022.07.29

OEMはOriginal Equipment Manufacturingを略した言葉である。他社ブランドの製品を製造する企業やそのビジネスモデルのことで、主にアパレルや化粧品業界で採用されている。
ODMはOriginal Design Manufacturingを略した言葉である。他社ブランドの製品を設計・製造する企業やビジネスモデルのことで、パソコンやスマートフォン業界などで採用されている。それぞれにメリットデメリットがあるが、受託業者が設計を担当するか否かや、委託業者と受託業者の関係などに違いがある。
OEMとはなにか
OEMとはOriginal Equipment Manufacturingを略した言葉である。直訳すると「独自機器の製造」という意味になる。アメリカでコンピューターなど精密機器を製造するにあたって、それぞれのパーツの製造を分担するために活用されたビジネスモデルだ。
本来は委託元の製品を製造する企業のことを指した言葉だが、近年多く使用されている文脈では、OEMの企業やそこによって製造された製品のことだけではなく、そういったビジネスモデルそのものを指し示すことも多い。まずはOEMについて、その概要から詳しく解説していく。
他社ブランドの製品を製造する企業やビジネスモデル
OEMは自動車やアパレル、化粧品業界など、さまざまな業界で取り入れられているビジネスモデルである。スーパーなどの流通業においては、プライベートブランドとも呼ばれている。
細かい仕様やデザインなどは委託業者側で決定するため、受託業者側は製品の製造に専念できる。一方で委託業者側は、製品のスペック・品質やコストを決定して製造のみを委託するため管理が容易であり、増産・減産や原料の変更など、主導権を握ることが可能だ。
OEMをおこなう製品の全てを受託業者が製造するケースと、委託業者でも一部を製造している中で、急な増産などに対応するためにOEMを展開するケースがある。
例えば自動車業界では、軽自動車に特化したメーカーがOEM契約を締結して、競合他社の軽自動車を生産している。
また、製造にあたってさまざまな資格の取得や許可等の申請が必要になる化粧品業界も、OEMが盛んである。OEMを利用すれば、自社でそれらの資格や許可申請を準備することなく商品の製造が可能になるからだ。
委託生産という側面もある
OEMの場合は、受託業者は製品の企画や開発には携わらず、委託業者側が製品の細かい仕様や原料などを決定した上で契約する。
必要に応じて委託業者が受託業者に製品の製造に関する技術的な指導をおこなう場合もあり、外注としての側面もある。これらは、製造を外部に委託することによる経営の効率化を狙っておこなわれることが多い。
とはいえ、OEMは全部の工程において委託業者が製造するため、一部の工程やパーツなどの製造のみを外部に委託する外注とは違う点が多いことも理解しなければならない。
特にアパレル業界は、個人のデザイナーが新たなブランドを立ち上げる機会も多い。そういったブランドの多くは小規模であり、自社工場を持つほどの資金力がない。しかし、OEMを利用すれば工場やそこで働く人件費をかけずとも、新たな製品を生み出せる。OEMにはこのような委託生産という側面もある。
ODMとはなにか
ODMはOriginal Design Manufacturingを略した言葉である。日本語では「独自デザインの製造」という意味となる。委託元から指示された製品を製造するだけではなく、製品の企画・開発などにも携わる点が特徴的といえる。
特に国を跨いだ貿易をおこなう際に利用され、現地の企業が外国企業の製品を製造し、委託元のブランド製品として国内市場に流通させたり、海外に輸出したりする。
近年では、受託業者であるメーカーが新たな商品の企画・開発をおこない、その完成品を委託業者に持ち込んでODMを展開するケースもある。ただし、完成品をそのまま販売するだけでは競合他社との差別化を図ることが難しいので、多くは別注という形で自社ブランドの特徴を取り入れて販売する。
設計から製造までを受託する企業やビジネスモデル
ODMは主にパソコンやスマートフォンなど、IT機器の業界で多く採用されている。受託業者が設計から製造をおこなってはいるものの、委託業者のブランドとして販売するため、サポートや修理などのアフターサービスも委託業者でおこなわれる。
それだけに、委託業者も自社ブランドの名に恥じないレベルのクオリティーを求めてくるし、満足行く製品が提供できない場合には契約不適合責任を問われるなど、トラブルの元になるリスクもある。
アウトソーシングの一種
アウトソーシングは、より良い製品を生み出すために外部の資源や人材を有効活用することである。企画・設計の段階から外部に委託することもあるODMは、アウトソーシングの一種であるといえるだろう。
類似したビジネスモデルにEMSがあるが、こちらは受託業者が設計から製造までの工程を一貫しておこなう。ODMは、企画開発や設計は委託業者と受託業者が共同でおこない、製造工程は受託業者がおこなう。同じアウトソーシングの一種であっても、委託業者が関わる工程やその割合によってビジネスモデルが変化するので注意が必要である。
OEMのメリット・デメリット
OEMには、委託業者と受託業者それぞれにメリットとデメリットが存在する。OEMをおこなう場合には、それらのバランスを調整しながら全体のメリットが最大になるように考える必要がある。ここでは、それぞれの立場に存在するOEMのメリット・デメリットを解説していく。
委託業者のメリット:自社工場が不要
OEMは他社に製品の製造を委託するため、自社工場を持っていなくても製造ができる。特に中小企業は自社工場を持つための資金力がない場合もあり、そのような企業が製品を製造する際に有効である。
また大手企業において新たな分野や技術で製品を製造する場合にも、それに特化した工場やラインを新しく作るよりも、OEMで他社に製造を委託する方が低コストになるなどのメリットが存在する。
受託業者のメリット:委託先のブランド力で製品の販売力が高まる
受託業者は、もともとその製品を製造している業者が選定されることがほとんどである。そのため、新たなコストをかけることなく、既存の工場やラインを活用して委託先の製品を製造できるのが大きなメリットといえる。
委託先はある程度以上のブランド力を持っているケースが多い。そのため、OEMをおこなうことで委託先のブランド力を活用し、高い販売力でより多くの利益が期待できるのだ。
特に化粧品業界は、OEMで製品を製造することに特化した企業が多く、消費者にとっては耳馴染みのない企業もあるため、大手メーカーなどのブランド力は非常に重要である。
委託業者のデメリット:技術力が向上しない
委託業者は自社工場を持たずに製品を製造できることがメリットである一方、製造を外部に委託してしまうことでその分野や製品に関する技術力が向上しないというデメリットもある。
自社工場であれば向上するはずの技術力は、OEMで製造を受託した受託業者が手に入れてしまうことになる。それによって、現段階ではパートナー的な関係を構築している受託業者が、将来的には競争相手になりうるという潜在的なデメリットもある。
受託業者のデメリット:消費者に自社ブランドが浸透しない
OEMは販売力の大きい委託業者が、そのブランド力を使って製品を販売するので、受託業者が自社ブランドで販売するよりも売り上げが大きくなることが多い。
これは一見するとメリットであるが、受託業者が同様の製品を販売している場合は、消費者が大手ブランドのOEM製品ばかり手に取ってしまい、自社ブランドを手に取ってもらいにくくなるデメリットが生まれるリスクがある。
OEMの場合、受託業者は製品の企画・開発に携わらないので、自社ブランドの製品を改良したりコスト削減による低価格化をおこなったりすることで差別化を図らなければならない。
ODMのメリット・デメリット
ODMはOEMと似通っている部分が多いため、メリットやデメリットも似通っている。しかし、委託範囲が異なることで違ったメリット・デメリットも生まれる。ここからはODMのメリットとデメリットを、委託業者と受託業者それぞれの立場からチェックしていく。
委託業者のメリット:製品に関する知識やノウハウが無くても商品開発をおこなえる
ODMでは実際に製品を製造する受託業者と協力して企画や商品開発をおこなうので、製品に関する知識や製造のノウハウに精通していない場合でも商品開発に着手しやすいメリットがある。
OEMでは商品開発に関する事柄は委託業者側で決定する必要があるので、受託業者が持っている知識やノウハウを見込んで製造や商品開発を依頼したい場合や、今までチャレンジしたことのない新しい分野や製品を製造しようと考えている場合には、ODMが適しているといえるだろう。
受託業者のメリット:委託業者と対等な関係を構築しやすい
OEMでは、受託業者は委託業者の指示で製造のみを担当するため、垂直的分業になることが多い。製造方法や原材料などについても委託業者に決定権があるため、受託業者の立場が弱くなりがちである。
しかし、ODMでは受託業者も委託業者と共同で商品開発をおこなったり、受託業者が持つ高い技術力や製造ノウハウに期待して依頼したりするケースが多い。そのため、受託業者に委ねられる裁量が大きくなり、委託業者と対等な関係を構築しやすいのだ。
委託業者のデメリット:コストや品質の自社管理が難しい
ODMは製品の仕様や原料、コストなど細かい部分を受託業者と共同で決定したり、受託業者に決定権を委ねたりするために、徹底した低コスト化が難しくなるというデメリットがある。
また、設計や製造を外部に委託するので、自社工場で全てを製造するケースに比べると品質管理がしにくくなってしまうデメリットもある。
どちらも契約締結時や商品開発時の綿密な打ち合わせによってリスクを低減できるが、どうしてもリスクを回避したい場合には自社生産をおこなうか、OEMで開発工程を自社でおこなうようにする必要がある。
受託業者のデメリット:委託業者の都合に振り回されるリスクがある
ODMで新規商品を開発するにあたって、どれだけ良い企画を打ち出したとしても、大元である委託業者がゴーサインを出さなければプロジェクトを進めることはできない。
委託業者内での根回しが必要な場合もあるし、競合のメーカーが先に類似した製品を販売してしまうなど、予期せぬ出来事も起こり得る。今まで順調に進んでいたプロジェクトが急に大きな方向転換を強いられたり、最悪の場合ではプロジェクトそのものが中止になってしまったりと、委託業者の都合に振り回されるリスクがある点はデメリットの1つといえるだろう。
OEMとODMの違いを理解して適切に選択するのが望ましい
OEMとODMは、似通ったビジネスモデルであり、その線引きは曖昧な部分もあるものの、それぞれに特徴やメリット・デメリットがある。
委託業者の立場から見ると、徹底した低コストに重点を置く場合にはOEM、受託業者の高い技術力やノウハウを活かしたい場合にはODMと、自らが求めるビジョンによって最適なビジネスモデルは変わってくる。それぞれの違いをしっかり理解して、利益を最大化させるよう適切に選択することが必要である。