在庫回転率とは?計算方法、メリット、改善方法などを解説

2022.11.08

2022.06.28

在庫の変動を知り適切にコントロールすることは、売上や顧客満足度に直結する。一方、取り扱い品目が多い、リソース不足などで在庫の動向を正しく把握できないということがあるだろう。在庫の適切な取り扱いや動向を把握するために有効となるのが、「在庫回転率」だ。

この記事では、在庫回転率の概要や計算方法、在庫回転率がもたらすメリット、在庫回転率が悪い場合の改善方法を解説する。在庫管理における課題解決にぜひ役立ててほしい。

在庫回転率とは

在庫回転率の概要や特徴について解説する。

在庫の出入りの指標となる数値

在庫回転率とは今ある在庫の金額(棚卸資産)と、すでに販売された商品の原価金額(売上原価)を比較し、ある一定の期間に在庫が何度入れ替わったかを数値にして表したものだ。棚卸資産回転率または商品回転率とも呼ばれる。たとえば1ヶ月間に在庫が3回入れ替わった場合の在庫回転率は「3」となる。

商品の売れ行きと比例

商品が売れれば売れるほど在庫の入れ替え数が増えるため、在庫回転数が高ければ高いほど、その商品が売れているということになる。逆に在庫回転数が低い商品はその分だけ在庫の入れ替わり数が少なく、売れ行きの悪い商品ということになる。

業種や季節によって水準が変動する

一般的に商品の売れ行きと在庫回転率は比例しているが、業種や季節によって水準が変動することがある。そのため、在庫回転率が低い商品がかならずしも全く売れない商品、というわけではない。

たとえば同じコンビニの食品でも、アイスは夏に在庫回転率が上がり、冬は下がる。肉まんは冬に在庫回転率が上がり、夏は下がる傾向にある。よって、前年比や同業他社との在庫回転率を比較することで、商品の売れ行きをより正しく把握できるだろう。

在庫回転率および在庫回転期間の計算方法

在庫回転率の計算は、数量または期間から求める2通りの方法がある。また、在庫回転率と一緒に把握しておきたいのが在庫回転期間だ。在庫回転率および在庫回転期間の計算方法と、算出に適したシーンを合わせて解説する。

数量からの在庫回転率計算方法

数量から在庫回転率を求める計算式は「出庫した総数÷平均在庫数」。平均在庫数は、「(期首在庫数 + 期末在庫数)÷ 2」の計算式で算出する。

例:1年間に倉庫から出庫した個数が500個、期の初めの在庫の個数が80個、期末の在庫が20個の場合

(80+20)÷2=50個

500÷50=在庫回転率は「10」になる。

数量から在庫回転率を計算する場合、金額をもちいないため決算書不要で算出できる。そのため、月や週などの単位で在庫回転率を算出したいときに向いている計算方法だ。数値以外の要素に左右されないため、実務的な目的で在庫回転率を把握したいときにも活用できるだろう。

金額からの在庫回転率計算方法

金額から在庫回転率を求める計算式は、「1年間の商品の売上総額(売上原価)÷平均在庫金額(棚卸資産)」。商品の売上総額は、売上金額(販売価格)ではなく、売上原価(仕入価格)をもちいるのが一般的だ。

なぜなら、在庫回転数を算出するためにもちいる平均在庫金額は、売上原価のため。売上原価に合わせることで、より実態に近い金額からの在庫回転率が算出できる。平均在庫金額は「(期首在庫金額+期末在庫金額)÷2」の計算式で算出する。

例:1年間の商品の売上総額が8000万円、期首在庫金額が1800万円、期末在庫金額が2200万円の場合

1800+2200÷2=平均在庫金額2000万円

8000÷2000=在庫回転率「4」

金額から在庫回転率を求める場合は、一年間の決算書が必要になる。一年間の財務諸表などの書類作成時や、一年間の動向を見て経営判断をしたいときなどに向いている計算方法だ。

在庫回転期間の計算方法

在庫回転期間とは、商品が入荷してから在庫が入れ替わるまでの期間を数値化したものだ。在庫回転期間が少ないほど、在庫が入庫してから入れ替わるまでの期間が短いということになる。逆に在庫回転期間が多いと、入庫してから在庫として残っている期間が長いことになり、理由がない限り過剰在庫に該当することになる。

在庫回転期間は、「棚卸資産÷(売上総数(売上原価)÷算出したい期間)」で算出する。

例:年間売上金額が3000万円、棚卸資産が100万円の場合

1カ月単位での在庫回転期間…100÷(3000÷12)=0.4 0.4カ月で在庫が1回転する

1日単位での在庫回転期間…100÷(3000÷365)=12.18… 約12日で在庫が1回転する

在庫を適切に管理するには、在庫回転率と在庫回転期間を併用するのが良い。在庫回転数が大きい、かつ在庫回転期間が短い商品は、適切に在庫管理ができている商品ということになる。

在庫回転率がもたらすメリット

在庫回転率を算出することで得られるメリットを解説する。

在庫の動向を数値で可視化できる

在庫回転率を算出することで、棚卸や入庫などの目視による在庫の変動を数値化できる。商品ひとつひとつではなく、全体と比較しての在庫の動向を比較できるため、より適切な在庫管理につながるだろう。

在庫回転率が低く在庫回転期間が長い滞留在庫を思い切って破棄する、破棄することで圧迫していた倉庫や在庫棚のスペースを確保し、在庫回転率の高い商品を入れる、適切な在庫管理をすることで、商品管理業務も効率化するなど、多くのメリットが得られる。

顧客ニーズが把握できる

在庫回転率を算出すると、商品ごとの売れ行きの良し悪しを把握できる。売れ行きの良い商品は仕入れを多くする、逆に悪い商品は仕入れを少なくすることで、顧客ニーズに合致した在庫管理ができ、品切れや過剰在庫を防げるだろう。品切れによる販売機会損失も防げるため、顧客満足度の向上にも有効だ。

需要予測が立てられる

在庫回転率と在庫回転期間を前年度や同業他社と比較することで、顧客ニーズと照らし合わせた需要予測も立てられる。受発注業務の効率化や適正化にもつながり、健全な在庫管理や店舗運営にもつながるだろう。

コスト削減

在庫回転率を算出し、売れ行きの悪い商品を見つけることで将来的にかかるコスト削減にもつながる。売れ行きが悪い商品は在庫として滞留することになり、過剰在庫となる。過剰在庫は在庫スペースの圧迫、さらに廃棄によりコストが発生する原因となる。在庫回転率を算出することでこれらのコスト発生を防げるのもメリットのひとつだ。

作業動線の見直しができる

商品倉庫では、売れ行きの良い商品は手前に、悪い商品は奥に配置することで素早く商品の補充や入庫ができる。在庫回転数を算出して回転の良い商品を把握すれば、入口の近くに配置することで補充や入庫がより効率化できるだろう。作業動線の見直しによって、店舗や事業所の業務の効率化にもつなげられる。

在庫回転率の改善方法

在庫回転率が悪いときの改善方法を解説する。

具体的な在庫回転率の目標設定をする

在庫回転率が悪い場合には、商品の売上を伸ばすための現場努力も必要となる。とはいえ、具体的な数値目標がないと、現場のモチベーションにもつながらないだろう。過去のデータや同業他社との比較をふまえて、在庫回転数の具体的な数値を目標として設定しよう。達成可能な数値とするのも重要だ。

リードタイムを短縮する

リードタイムとは、注文をしてから実際に顧客の手に商品が届くまでの時間を指す。当然リードタイムが短ければ短いほど顧客満足度は上がる。リードタイムを短くすることで、リピーター獲得にもつながり、商品の販売機会が増える、つまり在庫回転率を上げることにもつながる。売り場の動線、ECの場合は流通業務を見直すなど、リードタイムを短縮できる取り組みを導入しよう。

在庫回転率を定期的に算出する

在庫回転率を一年の決算時に出た金額でのみ算出している場合は、数値から算出する方法も併用するのがおすすめだ。一年だけでなく、月単位、週単位とこまめに在庫回転率を数値から算出することで、より商品の正確な動向が把握できるだろう。定期的に在庫回転率を算出すると、在庫回転率が悪くなっている課題の把握にもつながり、価格の見直し、季節などの条件を考慮するなど正しい対策が素早く取れるようになる。

在庫の見直しをする

長期間滞留している在庫があれば思い切って処分しよう。滞留在庫を破棄することで在庫のロケーション管理が最適化され、どこに何があるかすぐに把握できる。その結果在庫の適切な管理にもつながり、汚染や紛失など在庫回転率を悪くする要因を排除できるだろう。

ITシステムを導入する

在庫の品目が多い、複数店舗間で在庫の移動が発生する、実店舗とECで在庫を共有しているなど、在庫管理を煩雑にしている要因があればITシステムを導入するのも有効だ。すべての商品をデータで一元管理できるPOSシステムや、在庫のロケーション適性化にもつながる在庫システムの導入なども検討してみよう。

在庫回転率を算出して在庫の適正化と売上向上につなげよう

在庫回転率の概要や計算方法、在庫回転率がもたらすメリットや在庫回転率の改善方法を解説した。

在庫回転率を算出することで、商品の売れ行きの正確な把握、適切な在庫管理、店舗の健全な運用にもつなげられる。決算期だけ在庫回転率を算出するのではなく、こまめに算出することでリアルタイムでの商品の動向も把握できるだろう。

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