CoE (センターオブエクセレンス)とは?意味や役割、導入のメリットなどを解説

2023.05.12

日本企業は事業部門がそれぞれ独立した縦割り組織が主となっており、縦割りに人材やノウハウといった経営リソースが管理されている。しかし、昨今では事業部門の垣根を超えて経営リソースを管理する組織体系「CoE(センターオブエクセレンス)」に注目が集まっている。

本記事では、CoEの意味から機能・役割、メリット・デメリット、導入のポイントまで解説していく。

CoE(センターオブエクセレンス)とは?

CoEとは、「Center of Excellence(センター・オブ・エクセレンス)」の略称で、企業内に点在した優秀な人材・ノウハウ・技術・設備などを一つの拠点に集約し、組織化することを指す。

組織の再構築・社内連携の強化を実施することで、目標達成スピードの向上や業務の効率化など、多様なメリットを享受可能。大手企業を中心として、CoEの導入は進んでいる。

CoEが誕生した背景

CoEは主にビジネス領域で用いられる経営用語だが、その概念は元々1940年代から1950年代に、アメリカのスタンフォード大学で誕生したとされている。

同大学では、優秀な人材が東海岸へ流出し、西海岸に残らないことを問題視していたが、卒業生のフレデリック・E・ターマンが工学部長として戻ってきた際に、大学の地位を高める施策を開始。アメリカ全土の優秀な教授を招き、さらには最新鋭の設備を導入して施設環境を充実化することで、屈指の研究拠点として知れ渡るように。

結果的に、優秀な学生および革新的な技術力を求める多くの企業が集結。後に各機関や企業でもCoEの概念が導入されるだけでなく、シリコンバレーの発展にも大きな影響を及ぼしたと言われている。

CoEが注目を集める理由

近年、CoEの組織体系は注目を集めるようになっているが、その背景の一つには政府によるDXの推進が挙げられる。DXとは、「AIやIotなど最新のデジタル技術を活用してビジネスや組織を変革して、競争力の維持・向上を図る」という意味合いで、ビジネス領域においてトレンド的に用いられている用語だ。

経済産業省はDX推進のポイントの一つに「部門を超えた横断的な組織体制」を挙げており、サイロ化していない組織を定性指標としている。そこで、CoEを導入すれば、人材やノウハウを集約して横断的な組織を実現可能。CoEはDXの推進にもつながる経営戦略と言えるだろう。

CoE(センターオブエクセレンス)の機能・役割

CoEの機能・役割は大きく5つに分類される。導入の可否を検討する際の参考にしてほしい。

社内情報の集約・整理

サイロ化した縦割り組織では、社内情報が事業部間で共有されていないケースも多く、情報の探索に時間を要して業務効率や意思決定スピードが低下するといった悪影響をもたらす。そこで重要となるのが、CoEによる社内情報の集約および整理。

例えば、ナレッジベースを構築するなどして社内情報を集約すれば、素早い知見の伝達で業務フローの効率化につながるのはもちろん、経営層から各事業部・社員への情報共有も早くなる。CoEによる横断的組織の実現で、企業全体の競争力向上も期待できるだろう。

新しい経営戦略・企画の思考

CoEには、企業が存続・発展し続けるための経営戦略や企画を思考する役割がある。例えば、CoEが担う戦略・企画としては下記が挙げられる。

  • 組織体制の変革
  • 分社化・子会社化計画
  • 事業所の統廃合
  • 関連企業・協業企業との関係強化
  • 海外市場への展開
  • 新技術・設備の導入

複数の企画を立案する場合は、重要度・緊急度・難易度などから優先度を決め、計画に落とし込んでいく。

ただし、立案した戦略・企画を一部の事業部だけで達成するのは困難であり、全社的に実行していくことが重要。CoEにより、社内情報を集約・共有できる仕組みを構築しておくことで、異なる事業部間でも効果的な連携が可能となるだろう。

効果測定・フィードバック

CoEでは、導入したシステムの効果測定やフィードバックも実施していく。生産性の向上など、期待する効果にどれほど寄与したか、各事業部にフィードバックを実施して業務改善・効率化につなげていく。

また、社員のモチベーション向上を促進するフィードバックを送ることもポイント。定期的なフィードバックは自己分析の機会を創出でき、「評価の高い部分は強みとしていこう」など、社員の内発的モチベーションの向上にもつながる。

業務プロセスの改善

CoEの役割としては、立案した戦略・企画を達成するための業務プロセスの改善も一つとして挙げられる。業務プロセスの見える化・分析・改善を実施し、事業部ごとに異なる業務を平準化。

社内情報といったナレッジを一つの拠点に集約できるだけでなく、業務プロセスの効率化による労働時間の短縮、コスト削減、商品・サービスの品質向上なども、CoEの導入により実現可能と言える。

イノベーションの促進

日本企業の組織体系の主流となっている縦割り組織は、専門知識・業務経験が豊富なメンバーが高度な案件に携われる、指揮命令系統がはっきりしていて指示を出しやすく、事業部内共有もスムーズに進みやすいといった特徴が存在する。しかし、柔軟な思考や発想を持ちづらく、視野が狭まりやすいのが難点として挙げられる。

一方で、CoEでは事業部の垣根を超えた横断型人材を育成可能。事業部間の連携を取りやすいだけでなく、幅広いジャンルの知見を持つT型人材を育成でき、イノベーションの促進につながる。

継続的にイノベーションを生み出せる組織は、技術進化のスピードが激しい現代においても、生き残れる企業になり得ると考えられるだろう。

CoE(センターオブエクセレンス)のメリット

ここでは、CoEを導入することにより、企業にもたらされるメリットを解説していく。

事業部間の連携を強化できる

CoEは横断的組織を編成することが一つの目標として挙げられるが、本組織体系は事業部間の連携強化に大きく寄与する。

事業部間の連携を強化することで享受できるメリットとしては、例えば生産性の向上。他事業部が自事業部でも効果的に活用できるノウハウを保有していれば、そのノウハウを共有して連携することで生産性向上・業務効率化などを期待できる。

その他、事業部間の連携強化は、全社的な一体感を醸成しやすいのも魅力的なポイント。一体感のある企業はコミュニケーションが活発になり、ミスの低減や社員のストレス緩和などにもつながると言えるだろう。

課題解決力が向上する

昨今の日本は、デジタルイノベーションやグローバル化、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、先行きが不透明となっている。将来の予測が困難な時代においては、消費者行動の多様化や市場変化に対し、高い課題解決力で柔軟に対応していくことが必要と言える。

CoEの組織体系を実現できると、優秀な人材やノウハウが集約されるため、必然的に課題解決力は向上。発生した課題の原因を早期に発見・解決できる組織へ昇華可能と考えられるだろう。

CoE(センターオブエクセレンス)のデメリット

導入企業に多くのメリットをもたらすCoEだが、留意しておきたいデメリットも存在する。デメリットも把握した上で、導入を検討してほしい。

CoE導入メンバーの業務負担が大きくなる

CoEに限らず、新たなシステムや仕組みといった導入に関わるメンバーは、通常業務も兼務するのが基本。ゆえに、CoEの導入メンバーは業務負担が大きくなってしまう点がデメリットとして挙げられる。

業務過多に陥ってしまうと、ストレスや悩みの増加、業務の生産性低下、事故・ミスの発生などさまざまなリスクを伴ってしまう。人的リソースを確保することが困難な場合は、アウトソーシングも検討したほうが良いと言えるだろう。

機能不全に陥る可能性がある

CoEを導入する際は、CoEの機能・役割を社員に周知することが重要。優秀な人材やノウハウなどを集約して組織化するCoEだが、その位置付けを社員に正しく理解されていなければ、意図しない単なる問い合わせ先として認識される可能性も。

あくまでもCoEは、社内情報の集約・整理や業務プロセスの改善などが主たる目的であり、問い合わせ先として優秀な経営リソースを集結させた組織ではない。社内周知を徹底した上で、CoEを適切に機能させていきたい。

CoE(センターオブエクセレンス)導入のポイント

ここでは、CoE導入時に押さえておきたいポイントを解説していく。

組織に必要な人材要件を定義する

まず行いたいのが、必要な人材要件の定義だ。例えば、横断的組織のCoEには、専門性の高い優秀な人材が集約されるが、その人材を統率するリーダーが必須となる。

リーダーにはコミュニケーション能力、業務実行力、判断力、責任感といったスキルが求められる一方で、所属する事業部や職務によって必要なスキルは異なり、理想の人材要件と現状にギャップが生じる可能性も。このようなスキルギャップを明確にした上で、キャリアマップや教育方針を策定し、ギャップを埋めていくことも重要。

複数のスキルギャップが生じている場合は優先順位を定めながら、スキルの底上げおよびCoEの構築を進めていきたい。

CoEと経営陣の連携

CoEの機能・役割としては前述の通り、社内情報の集約・整理や業務プロセスの改善、イノベーションの促進など多岐に渡る。しかし、CoEが進める業務改革に対し、現場から抵抗の声が上がるケースもあるだろう。

現場の不安や不満を収める際はCoEメンバーに一任するのではなく、経営陣がメッセージを発信するなど、一緒に統率を行っていくことも重要。CoEと経営陣の連携により、CoEの導入もスムーズに進みやすいと言えるだろう。

CoE(センターオブエクセレンス)のまとめ

日本企業で主に採用される縦割り組織は、高い生産性かつ専門性で案件に着手し、会社の成長を大きく促進できる組織体系となっている。しかし、経営リソースが分散され、他事業部のノウハウや技術が共有されていない企業が多いのも事実。

その点、全社横断的な組織を構築するCoEでは、経営リソースを一つの拠点に集約し、業務効率や課題解決力の向上などを期待できる。CoEの導入で、一層組織力の高い企業を目指してほしい。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…