2025年問題とは何か?人材不足や医療など、及ぼされる影響や対策を解説
2023.06.14
2025年問題とは、日本において75歳以上の後期高齢者が急増する社会問題である。2025年には、日本の総人口のおよそ2割が75歳以上となると推測されており、社会保障制度や医療・介護など、さまざまな分野に影響を及ぼすことが懸念されている。この記事では2025年問題の概要を解説し、私たちの暮らしやビジネスに2025年問題が与える影響とその対処法について考察する。超高齢社会に突入した日本が直面する問題を考え、今後のビジネスの在り方を探る契機としていただきたい。
2025年問題とは
西暦2025年には、1947年~1949年に生まれた、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本は超高齢化社会へと突入する。それに付随して発生するであろうさまざまな問題は、「2025年問題」と呼ばれている。
2025年になると日本の高齢者の人口は、およそ3,500万人になると推測されている。この数字は日本人の4人に1人が高齢者となることを表している。結果として社会保障費の増加や医療現場のひっ迫、労働人口の不足といった社会現象が引き起こされることが予測される。
日本は、世界でも高齢者の割合が高い長寿国として知られている。これまでは本格的な高齢化社会に達するまでの速度が話題となってきたが、現在では高齢化した人口比率に注目が集まっている。
予測される2025年問題の影響
2025年問題は、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼすと考えられている。ここからは2025年問題が社会とビジネスに与える影響を解説する。
2025年問題が社会に与える影響
まず、2025年問題が社会に与える影響について見ていこう。
要介護者の増加
2025年問題が社会に与える影響として、要介護者の増加があげられる。人口の多い団塊世代が75歳以上の後期高齢者となれば、介護が必要な人口も増加する。現代では核家族化が進み、独居の高齢者が増えていることもあり、介護サービスの需要はますます増加するだろう。しかし介護施設や人材が需要に追いつかない可能性は高い。
また、高齢化にともない認知症を発症する人口も増加が懸念される。認知症のケアは専門的な知識やスキルが必要とされ、介護人材に与える負担も大きい。
さらに、介護保険料の増大に対する財源の不足も拍車をかけ、要介護者の増加は2025年問題の大きな懸念点となっている。
医療体制の維持
2025年問題には、医療体制の維持も課題となることが予測される。近年では、地方を中心に病院の数は減少傾向にある。
さらに、医師や看護師の人材不足も表面化しはじめており、医療現場のひっ迫が話題となることも増えてきた。
今後もこの状況が続き、医療を必要とする高齢者人口の割合が増えていけば、医療体制を維持すること自体が困難になるだろう。
社会保険料負担の増
2025年問題は、介護や医療に必要な社会保障費にも大きな影響を与えることが懸念されている。
介護や医療の社会保障を必要とする人口が増加すれば、それだけ国や自治体の財政を圧迫する。介護や医療に対して、国民が負担する金額の増加は推測するにたやすい。
そして、その負担増は高齢者のみならず現役世代へと及ぶことが予測できる。とくに、人口の少ない若者世代が負担しなければならない社会保障費の増額も、2025年問題が社会に与える影響の1つといえる。
2025年問題がビジネスに与える影響
次に、2025年問題がビジネスに与える影響について見ていこう。
人材不足の慢性化
2025年問題がビジネスに与える影響として、人材不足の慢性化があげられる。2025年には、高齢者の増加により労働人口が減少することが推測される。さらに日本では出生率の低下も続いているため、労働人口のさらなる低下は免れないだろう。
近年ではすでに人材不足が始まっており、医療・介護業界をはじめ製造業や建設業、小売業などさまざまな分野で人材の確保が大きな課題となっている。
生産性の低下
2025年問題が労働人口の減少に拍車をかけ、ビジネスにおける人材不足が予測されることは前項で述べた。さらに2025年には、企業の業績の悪化も懸念されている。
2025年には、生産年齢とされる15歳から64歳の人口比率は大きく減少することが推測される。これにより、優秀な人材の輩出と確保はますます困難になっていくだろう。その結果として企業の業績が低下してしまうことも、2025年問題の懸念事項の1つだ。
事業継承の問題
2025年までには、中小企業や小規模事業者の経営者の多くが引退する年齢を迎えることが予測される。しかし日本の中小企業・小規模事業者の多くが、いまだ後継者不在といわれている。この状態が長引けば、後継者が未定の中小企業・小規模事業では黒字廃業してしまう可能性もあり、事業継承が危急の課題となっている。
中小企業・小規模事業者が所有する技術力やノウハウは貴重な経営資源であり、日本の宝ともいえる。これらを引き継ぎ守っていくためにも、事業承継型M&Aなど第三者による承継に近年注目が集まっている。
2025年問題への取り組み
2025年問題の対策として、行政や医療介護の現場ではさまざまな取り組みが始まっている。また、そのほかの分野でも2025年問題を見据えた動きがある。ここからは、2025年問題への各種取り組みを解説する。
政府・自治体の取り組み
2025年問題への取り組みとして、政府は雇用や年金、医療、介護など各分野における対策を議論している。具体的には、年金や保険料といった公費負担の公平化や、多様な人材確保のための施策、予防医療への取り組みの拡大、介護保険制度の改革などが挙げられる。また自治体単位でも、2025年問題への取り組みが推進されている。
また、全国の各自治体では、学校や空き店舗を活用した高齢者の居場所づくりや、福祉施設の送迎車を利用した買い物サービス、後述する「地域包括ケアシステム」の構築など、さまざまな取り組みが行われている。
医療・介護業界の取り組み
介護・医療の現場でも、2025年問題を見据えたさまざまな取り組みが進んでいる。加速する人材不足・医師不足への対策として注目を集めているのが、ロボットやICT機器を活用した医療や介護だ。
オンラインでの遠隔診療や、ロボットアームを使った治療・手術、介護現場でのサポートロボットなどの導入により、介護・医療現場の人手不足の解消が期待されている。また今後はARやVRといった最新テクノロジーの導入でも、未来の医療が発展していくと予測される。
さらに官民一体となった「地域包括ケアシステム」の構築も進められている。地域包括ケアシステムとは、予防医学や在宅での医療・介護サービスなどを地域全体で連携して提供する仕組みだ。後期高齢者でも可能な限り住み慣れた場所で健康に暮らしていける体制づくりとして、自治体や医療介護施設、地元の薬局などの協力のもとで行われる。地域包括ケアシステムは、高齢者ケアの理想的な在り方として、今後の発展が大いに望まれている。
そのほかの取り組み
ビジネスの現場でも、2025年問題への取り組みが始まっている。製造業界では、労働人口の減少を見越したオペレーションの改善に着手している。生産設備のデジタル化や、ノウハウのデータ化をとおして大幅な省人化を目指す試みは「製造業DX」とも呼ばれ、さまざまなジャンルの企業が取り組んでいる。
また、IT業界では「2025年の崖」への対策が進んでいる。2025年の崖とはこれまで使用されてきたITシステムの老朽化や、それらを保守・運用できる人材の減少に伴って発生する問題をさしており、2025年問題と並行して起こることが予測されている。これを見越してIT業界の各社では、基幹システムの刷新などの対応が行われている。
ビジネスにおける2025年問題の対策
ビジネスの現場でも、間近に迫った2025年問題は危急の課題となっている。ここからは、2025年問題に対して企業が取り組むべき対策を紹介する。
DXの推進
ビジネスにおける2025年問題への対策としては、DXの推進があげられる。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」をさし、業務のデジタル化を図る取り組みだ。
DXは、業務の効率や収益の向上以外に省人効果も期待できる。DXが実現すれば、少ない人数でも業務の遂行が可能となるのだ。
DXの推進は、2025年問題に起因する人材不足の対応策としても、効果が期待されている。
ダイバーシティ化で人材を確保する
2025年問題に対する企業の取り組みとしては、人材のダイバーシティ化も有効な対策だ。
ダイバーシティとは英語で「多様性」を意味する言葉で、ビジネスにおいては性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけではなく、キャリアや経験、働き方などにとらわれない人材の登用を意味している。
日本においては、労働人口の減少に対応しながら生産性の向上を図ることが課題となっているが、ダイバーシティ人材を確保することが、課題の解決につながるかもしれない。
健康経営を目指す
2025年問題では、病気や介護を理由とした従業員の離職増加も予測されている。その対策としては、従業員が長く働きやすい労働環境の整備が欠かせない。そのために提唱されているのが「健康経営」の考え方だ。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営面の重要課題とし、健康投資を行うことで生産性の向上や組織の活性化を目指す考え方だ。従業員の健康増進をはじめ過重労働防止やストレスチェック、労働時間や休暇日数の再設定などが健康経営の項目としてあげられる。
健康経営の実現には、従業員が多様な働き方ができるよう、社内制度を整備していく必要がある。
2025年問題が示す未来
日本の人口減少と高齢化は2025年以降も継続し、さらに加速することが予測されている。それに伴いさまざまな社会問題が起こってくるだろう。
2025年問題の先には、後期高齢者の人口比率が高まることで「2035年問題」が起こるといわれている。2035年問題では、ますます増加する高齢者人口と、それを支える若い世代の公費負担増などが危惧されている。
さらにこの状況が進むと「2045年問題」も起こるといわれており、医療の受給バランス崩壊や国力の低下が懸念されている。
2025年問題を見据えてビジネスを構築する
後期高齢者の人口比率の増加から引き起こされる2025年問題は、介護や医療の現場みならず社会全体に与えるインパクトの強さが懸念される。また2025年問題がビジネスに与える影響も、非常に大きいことが予測できる。
政府や自治体も積極的に2025年問題への対策をたてているが、私たちビジネスパーソンも人材確保や業務の効率化に努めていきたい。
2025年まであまり時間は残されていないが、今後予測される変化を意識してビジネスを構築していく必要があるだろう。