減価償却とは?定額法・定率法の違いと計算方法、仕訳方法などを解説

2023.06.14

自社で固定資産を購入し経費に計上する際に「減価償却」が必要となる場合がある。減価償却には定額法、定率法があるため「違いがわからない」「どちらで計上した方が得になるか」といった悩みを持つ経理担当者も多いだろう。本記事では、減価償却の概要に加えて定額法と定率法の違いとそれぞれの計算方法、減価償却のうえでの仕訳方法を解説する。適切な経理処理にぜひ役立ててほしい。

定額法と定率法の存在する減価償却の概要

減価償却は、経費処理のひとつで「定額法」と「定率法」がある。まずは減価償却の概要や対象となる資産について解説する。

減価償却とは

減価償却とは、所得税法や法人税法に定められた経費計上方法のひとつだ。歳月の経過などによって価値が減る「減価償却資産」を取得した際の経費計上に用いられる。資産は時間の経過によって価値が変動する、という考え方から取得した際に一括で経費に計上するのではなく、その資産が使用できる全期間にわたって分割し必要経費として計上するのが特徴だ。

減価償却資産となるもの

減価償却の対象となる減価償却資産は「10万円以上で経年によって価値が減少するもの、かつ使用可能期間が1年以上のもの」が該当する。具体的には、以下のものが減価償却資産にあたる。

・建物(土地は対象外)

・建物附属設備(アーケード、蓄電池、陳列棚などの店用装備など)

・生物(農業などに使用する動物、果樹など)

・車両、運搬具(自動車、リヤカー、大型乗用車など)

・工具(測定工具、切削工具、金型、鋳型、活字用金属など)

・器具、備品(事業所の家具類、事務機器、時計、看板、医療機器など)

・機械、装置(製品の製造用設備、繊維工業設備、その他業種に必要な設備類)

・無形固定資産(パソコンソフト、商標権など)

経年によって価値が減少するものの、10万円未満のものは減価償却資産に該当しない。たとえば事務用の文具類などは、経年で価値が減少するが取得時一括で経費に計上される。

減価償却の方法

減価償却は、減価償却資産の価値の減少にともなって経費の計上を行う。資産価値が減少する期間=資産が使用できる期間と言い換えることができ、減価償却資産を使用できる期間は「耐用年数」と呼ばれる。

耐用年数は、減価償却資産の種類や材質などによって法人税法で定められている。たとえば「事務所用の建物」であれば、木造や合成樹脂製は24年、鉄骨鉄筋コンクリート製は50年の耐用年数となる。

減価償却は、資産が該当する耐用年数の間にわたって減価償却処理を行って経費計上する。

減価償却の目的

減価償却は、収益が上がったタイミングで収益に関連する費用も計上されるべき、という「費用収益対応の原則」に基づいて処理されている。減価償却資産は、取得時だけでなく将来にわたり収益を生むことを前提に取得される。そのため一括で経費計上するのではなく、収益を得る将来のタイミングにかけて費用を計上することが、正確な取引実態に沿った経理処理といえるだろう。

建物や自動車などの固定資産は、取得後減価償却によって価値が減少するが、売上に貢献するため現金として回収される。そのため減価償却することで、固定資産を流動資産に転化することが可能だ。

減価償却は「自己金融効果」ももたらす。減価償却は耐用年数に応じて処理するが、支出は基本的に資産の取得時のみ。そのため減価償却処理によって、減価償却費相当のキャッシュを自社内に貯めていける自己金融効果が得られる。

減価償却の定額法・定率法の違いと計算方法

減価償却は、対象となる減価償却資産に応じて「定額法」「定率法」いずれかで計算して経理処理する。ここでは定額法・定率法それぞれの違いやメリット、計算方法について解説する。なお同じ種類の減価償却資産は、別の計算方法を用いることができないので注意しよう。

定額法とは

定額法とは、減価償却資産の金額に一定の割合を掛けて減価償却費を求める方法だ。掛ける割合は、減価償却資産の耐用年数ごとに定められている。たとえば、耐用年数が2年の場合の償却率は0.500で、原価滅却費を1年目と2年目に半額ずつ計上できる。

計算で掛ける割合が同じのため、毎回計上する額が同一になるのが特徴だ。そのため計算がしやすい。購入初年度の減価償却費が定率法よりも少なくなるため、初年度の節税効果は定率法よりも低いのがデメリットだ。また個人事業主は届け出なしで定額法を利用できるが、法人は定額法を利用する場合届け出が必要となる。

定率法とは

定率法とは、未償却残高(減価償却資産を取得した金額から、減価償却した金額を差し引いた残高)に対して、一定の割合を掛けて減価償却費を求める方法だ。未償却残高は年々減少するため減価償却費も毎年少なくなるが、減価償却費が一定の額を下回った後は毎年同じ金額になる。

定率法は、定額法よりも減価償却資産を購入した初年度に経費計上できる金額が高いのがメリットだ。利益が高い年度に減価償却資産の購入や設備投資を行い定率法によって経費計上をすれば、その分だけ節税効果が高くなる。自社の資産や利益の状況に合わせたタイミングを狙って減価償却資産を取得できる。また法人は減価償却の際、原則的に定率法を用いるため、定額法のように届け出する必要がないのもメリットだ。

ただし定率法は、定額法に比べると計算が複雑で面倒なデメリットがある。特に個人事業主は届け出不要で定額法が利用できるため、わざわざ計算が面倒な定率法を利用するケースは少ないといえる。

定額法・定率法の計算方法と比較

定額法による減価償却は「減価償却費=取得価額×定額法の償却率」で計算する。定率法による減価償却は「減価償却費=未償却残高×定率法の償却率」で計算し、未償却残高が償却補償額以下となった場合は「減価償却費=改定取得価額×改定償却率」で計算する。なお償却保証額は「償却資産の取得価額 × 耐用年数ごとに定められた保証率」で算出できる。

「100万円の軽自動車を購入」(耐用年数4年、定率法償却率0.500、改定償却率1.000、保証率0.12499)した場合の計算方法

定額法

1年目:100万円×0.250=25万円

2年目:100万円×0.250=25万円

3年目:100万円×0.250=25万円

4年目:24万9,999円(全額滅却せず1円残すのは利用中の資産であることを示すため)

定率法

1年目:100万円×0.500=50万円

2年目:(100万円-50万円)×0.500=25万円

3年目:(50万円-25万円)×0.500=12万5,000円

4年目:12万4,999円(全額滅却せず1円残すのは利用中の資産であることを示すため)

定額法・定率法の決め方

減価償却の計算方法は、以下のように減価償却資産の種類によって異なる。

・建物:定額法

・建物附属設備及び構築物:定額法

・機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品:定額法または定率法

・鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物):定額法または生産高比例法

・鉱業用減価償却資産(上記以外):定額法、定率法または生産高比例法

・無形固定資産及び生物:定額法

・鉱業権:定額法または生産高比例法

・リース資産:リース期間定額法

法人の場合は、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具並びに器具及び備品が、定率法が法定償却方法として定められている。これらに定額法を適用したい場合は、所轄の税務署へ「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要だ。届け出の提出期限は新たに法人を設立した場合が設立第1期の申告書の提出期限まで、設立後すでに償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合は、その資産を取得した期の申告書の提出期限までとなっている。

定められた減価償却方法では正しく減価償却計算ができない場合は、特別な償却方法の承認申請を行うことになる。承認されると、例外的に特別な方法での減価償却が可能となるが、ごくまれなケースだろう。

減価償却費の仕訳方法

減価償却費は「直接法」「間接法」いずれかで仕訳をする。いずれの仕訳でも税率や税額は変わらないが、経理処理の方法が異なる。それぞれの仕訳方法を解説する。

直接法による仕訳

直接法は、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法だ。たとえば「100万円の軽自動車を購入」し、定額法で減価償却した場合毎月の減価償却費は25万円となる。その場合の直接法による仕訳方法は、「借方:減価償却費 250,000 貸方:固定資産 250,000」となる。直接法で仕訳後、貸借対照表の資産の部の「固定資産」に未償却残高が明記される。たとえば1年目で25万円を原価償却費として計上した場合、未償却残高には75万円と記載される。

間接法による仕訳

間接法は、減価償却を行った金額を「減価償却累計額」として記帳していく方法だ。直接法のように固定資産を直接減らすことはない。「100万円の軽自動車を購入」し、定額法で減価償却した場合毎月の減価償却費は25万円となる。その場合の間接法による仕訳方法は、「借方:減価償却費 250,000 貸方:減価償却累計額 250,000」となる。

減価償却によって計上された経費の累計を、別途項目を設けて記帳するのが特徴だ。貸借対照表には、資産の額と減価償却累計額の両方が記載される。資産の額から減価償却累計額を差し引くと、未償却残高がわかる。

減価償却の定額法と定率法を知り、適切な経理処理を行おう

会計処理のひとつである減価償却の概要や考え方、目的、減価償却の定額法と定率法について解説した。減価償却資産に当たる資産を企業で取得した場合、減価償却によって耐用年数の間にわたる経費処理が必要となる。定額法と定率法を理解し、適切な経理処理につなげよう。

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