物流コストとは?費用の内訳や上昇する原因、削減方法を解説
2023.06.14

製品や商品を消費者のもとへ届けるための物流の各工程では、物流コストが発生する。
近年多くの要因が重なり、物流コストの上昇傾向が続いている。物流コストに大きな負担を感じている企業の担当者も多いだろう。物流コストを削減するためには、費用の内訳やコストが上昇している原因を把握したうえで、削減や圧縮するための施策を行う必要がある。
本記事では、物流コストの概要と費用の内訳、物流コストが上昇する原因と削減方法を解説する。
目次
物流コストの概要と物流コスト比率について
物流コストの概要と、企業で発生する物流コストを把握するために重要な物流コスト比率について解説する。
物流コストとは
物流コストとは、物流を起因とし物流全体で発生するコストのことだ。モノ(製品や商品)をメーカーや小売業者などの供給者から消費者へ移動させる際に発生するすべてのコストが物流コストに含まれる。モノを輸送する燃料費や車両費、送料はもちろん、商品の梱包や検査などの人件費なども物流コストに含まれる。
物流コストは、物流を事業としている企業で発生する。物流コストを含める範囲で分類すると、以下の通りだ。
・ミクロ物流コスト(業界単位)…物流業界の企業ごとでの売上高の物流コスト比率の平均値
・マクロ物流コスト(国単位)…マクロ統計で推計された国全体での物流コスト
・企業物流コスト(企業単位)…企業で発生する物流コスト
物流コスト比率とは
物流コスト比率とは、売上全体に対して物流コストが占める割合を数値化したものだ。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)では、毎年主要な荷主企業に対して物流コスト調査を行い、物流コスト比率、対売上高物流コスト比率の推移、荷主企業の物流コストの業種別動向、日本全体のマクロ物流コストなどを発表している。
また同協会では、物流コストや物流コスト比率算出に役立つ物流コスト調査票のフォーマットも公開している。経済産業省が定めた「物流コスト算定活用マニュアル」に基づき、縦軸に「輸送・保管・包装・荷役・物流管理」といった機能別の分類、横軸に「支払物流費・自家物流費」といった支払形態別の分類を配置したマトリクス形式の調査票となっている。
物流コストの内訳
物流コストは物流に起因するコストであり、作業の内容や要素によって分類ができる。物流コストの内訳を解説する。
輸送・運送費
輸送・運送費とはモノの販売に必要な運賃を指す。おもな輸送・運送費は以下の通りだ。
・チャーター車両費用
・宅配便の配送料
・自社トラックのガソリン代
・自社の車両の減価償却費など
輸送・運送費は物流コストとしてイメージしやすく、費用も可視化しやすい。その分物流コストの中でも高い割合を占めている企業も多いだろう。車両のメンテナンス費用やガソリンなどのランニングコストが発生するほか、配送ルートなどの物流を構築するための初期コストも高くかかる傾向にある。物流の仕組みを構築するときには費用対効果を考えると良いだろう。
荷役費
荷役費とは、荷役作業にかかる費用を指す。おもな荷役費は以下の通りだ。
・荷物の出し入れをするときの入出庫費用
・運搬費用
・積付け費用
・仕分け費用
・ピッキング費用など
荷役費の要素には荷役の人件費もあるため、荷役の作業量や作業時間によって費用が変動するのが特徴だ。
保管費
保管費とは、取引先へ納品するモノを保管するために発生する費用だ。おもな保管費は以下の通りとなる。
・商品を置く倉庫の賃貸費用
・自動倉庫の管理費
・保管場所の火災保険など
自社で倉庫を用意する場合と外部倉庫を契約する場合で、保管費にかかるコストが大きく変動するのが特徴だ。
管理費・人件費
管理費および人件費とは、物流に関する管理やスタッフの雇用で発生する費用を指す。おもな管理費・人件費は以下の通りだ。
・物流システムや受発注システムなどの導入費用
・各システムの運用費
・物流担当者や作業員、物流会社の営業担当などの給与
システムの導入には初期費用が大きく発生する。物流スタッフの人件費は繁忙期・閑散期を問わず一律で発生するため柔軟な配置がしにくいのが特徴だ。
物流コストが上昇する原因
近年、物流コストの上昇傾向が続いている。日本ロジスティクスシステム協会の2021年度調査では売上高物流コスト比率5.70%と、過去20年間の調査と比較してもっとも高い数値を記録した。2022年度の調査では5.31%と前年比よりわずか減少となったが、依然として高い数値を維持している。
物流コスト上昇の背景にある原因を解説する。
原油価格の上昇
物流コストの中でも燃料費は、原油価格から大きな影響を受ける。原油の原料価格の高騰や社会情勢を受けて、原油価格の上昇傾向が続いているのも物流コスト上昇の原因のひとつだ。
日本は石油原産国ではないため、原油は輸入に頼っている。さらに輸送距離が長ければ長いほどガソリンや軽油などの燃料費がかかる。原油価格が上がればガソリンや軽油などの車両に使用する燃料代だけでなく、物流の他工程で使用されるLPガスの価格も高騰してしまう。これらの要因が重なり、原油価格の上昇によって物流コスト上昇を招くことになる。
人手不足
運搬や輸送を担当するドライバーが不足しているのも、物流コスト上昇の原因のひとつだ。トラックドライバーが不足している背景には以下の要因がある。
・少子高齢化による働き手の母数の不足
・中型免許の取得が必須となった(平成19年6月以降取得した普通免許では3t車以上のトラックを運転できない)
・ドライバーの労働環境・待遇が悪い
トラックドライバーのなり手を確保するためには、給料を上げる、長時間労働を是正するなどドライバーの待遇や労働環境を改善する必要がある。その結果ドライバーにかける人件費が上昇するため、物流コストも上がることとなる。
物流の需要増加
EC市場の拡大、コロナ禍による外出自粛などの影響を受けて、物流の需要が増加している。輸送費はトラックに積んだ荷物の量を表した「積載率」が高ければ高いほど1台のトラックで多くのモノを運べるため、低く抑えられる。ところが物流の需要が増加したことで小ロットでの出荷が多くなった。その結果トラック1台あたりの積載率が低くなるため、結果的に輸送費が高くなる=物流コストも上がる、といった状況となっている。
自社便配車率の低下
自社車両の購入、管理およびドライバーを雇用するための資金力がないため、輸配送業務を個人宅配などのドライバーに外注する企業も増えた。輸配送業務を外注に頼ると、自社内での物流コスト削減が難しくなる。
物流コストを削減する方法
物流コストが増えれば増えるほど、売上や利益が減少する。物流コストはさまざまな要因によって上昇傾向が続いているため、削減のための施策を講じる必要がある。とはいえ「すでに自社内で物流コスト削減の工夫を行っているが、結果が出ない」ということもあるだろう。
物流コスト削減につながる具体的な方法を解説する。
物流拠点を集約する
今ある物流拠点を減らし、集約することで物流コストの削減につなげる方法だ。物流拠点を少なくすることで、発生する倉庫の賃料や保管料、モノやシステムの管理のための人件費が削減できる。トラックが各拠点に分散することがなくなるため、トラックの積載量も上げられる。
ただし物流拠点を減らしたために輸送時間が長くなり、業務上のパフォーマンスが下がる可能性があることに注意が必要だ。物流の輸送経路を見直すなど、リードタイムにおける課題解消のための取り組みを同時に行うことが重要といえるだろう。
システムやツールを導入する
作業用のロボットやツールの導入、勤務状態や輸送時のドライバーの運転状況を管理するシステムなどを導入し作業を自動化、効率化する方法だ。自動化や効率化することで、人件費や管理費を削減できる。削減した分はドライバーの待遇改善に使用するなど、必要に応じた人件費や管理費の見直しも同時に行うことが重要だ。
物流業務全般を、管理できる物流管理システムを導入する方法もある。システムやツールを導入して自動化や効率化を行うと物流コストが削減できるほか、人的ミスが減らせるなどのメリットも得られるだろう。
業務の効率化を図る
自社内で業務内容の洗い出しやルール化を行い、効率化を図ることで物流コストの削減が期待できる。たとえば倉庫内のレイアウトや作業内容を見直すことで二重作業の発生を防いだり、作業の導線が短くなることで工程や作業での無駄が出ないようにしたりする方法がある。
外注を検討する
物流業務を専門業者へ外注(アウトソーシング)する方法だ。物流システムの構築、倉庫管理、検品や梱包、輸送とさまざまな業務を委託できる業者も多い。外注することで自社での倉庫や車両の管理費、人件費、燃料代などが削減できるだけでなく、プロに外注することで在庫管理や輸送の最適化や業務効率化にもつながる。
自社でドライバーや倉庫管理のリソースが不足しているときにも選択肢となる。また、物流コスト削減を検討しているものの、コストを圧迫する原因や削減方法がわからないときには、物流業務のコンサルティングを受けることもできる。
物流コストを見直し、企業の利益を最大化しよう
物流コストの概要や内訳、物流コストが上昇する原因と削減方法を解説した。物流は経済活動に必要な事業であり、物流コストはかならず発生する費用といえる。物流コストは多くの原因によって上昇傾向にあるが、削減する手段はある。物流コスト削減のための取り組みやツールの導入などを検討し、企業の利益を最大化させよう。