EC化率とは?日本における業種ごとのEC化率の現状や世界の状況などを解説

2023.06.20

EC化率とは、商取引全体でどのくらいの取引がECで行われたかの率だ。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により在宅時間が増え、ECの利用拡大に繋がっている。

本記事では、EC化率の求め方や日本のEC市場規模やEC化率や現状、世界のEC市場規模などを、経済産業省の「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」を基に解説していく。

EC化率とは?EC化率の求め方

EC化率とは、全ての商取引の市場規模に対するEC市場規模の割合のこと。対面や電話など全ての商取引に対して、どのくらいECでの取引が行われたか、である。

そのためEC化率は、次のようにして求められる。

EC化率=EC市場規模÷商取引市場規模

日本のECの現状

この章ではBtoC、CtoC、BtoBにおけるEC市場規模と、各トレンドや状況を説明していく。

BtoCにおけるEC市場規模・トレンド

市場規模

2021年のBtoCにおけるEC市場規模は 20兆6,950億円で、初めて20兆円に達した。前年からは1兆4,171億円増加している。

実店舗の役割の変化

実店舗ではECと関連付けた取り組みが行われている。例えば、インターネット上で顔を合わせて接客をする「オンライン接客」や、消費者が実店舗で商品を見てからEC上で購入する「ショールーミング」という消費行動がある。ショールーミングを積極的に促すため、実店舗には試着用商品のみを置き、EC上で購入してもらうアパレルや、消費者データを収集するための体験型店舗など、ECでの売上に繋げていく取り組みもあり、実店舗の役割は変化している。

また、ECで購入した商品を店舗で受け取る「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」もある。これには店舗側からすると、物流コスト削減や、オンラインとオフラインで分かれてしまう消費者データを個別IDに紐づけることで一元管理ができ、マーケティングに活用ができるといったメリットがある。

DtoC

DtoC とは「Direct to Consumer」の略で、メーカーが自社ECサイトで販売を行うことだ。大手ECプラットフォームは集客力があるが、手数料や競合とのバッティング、顧客情報の入手制限などの制約がある。一方で自社ECではブランド世界観を伝えられ、消費者と直接的に繋がることもできる。

サブスクリプションサービス

サブスクリプションサービスは定額の利用料金を支払うことでサービスの利用ができ、様々な商品を試して自分に合うものを見つけられるという特徴がある。食品の定期宅配や有料動画配信だけでなく、化粧品やファッション、家具、車など様々な分野で広まっている。

スマートフォンやSNSの利用

スマートフォンを経由した物販のBtoCにおけるEC市場規模は、推計6 兆 9,421 億円で、物販のBtoCにおけるEC市場規模全体の52.2%に相当する。BtoCにおけるEC市場で半分以上の人がスマートフォンを利用してECで物を買っているということだ。また、買い物の情報を得るため InstagramなどのSNSが利用されている。 ソーシャル広告は前年比3.0ポイント上昇し、SNS上での広告が重視されていることが分かる。

CtoCにおけるEC市場規模・トレンド

市場規模

2021年のCtoC-EC 市場規模は、推定2兆 2,121億円で、2020年の推計1兆 9,586億円からは12.9%の伸び率だ。

フリマアプリ

CtoCにおけるEC市場は主にフリマアプリやネットオークションを指しており、市場拡大にはフリマアプリ市場の成長が影響している。

フリマアプリは、CtoCだけでなくBtoCの中古品売買市場も含むリユース市場の一つであり、リユース市場そのものも拡大していくと見込まれている。

CtoC-EC の市場拡大の背景としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、在宅時間が増え、家の中を整理したことで出品が増加し、1人当たりの利用頻度や顧客単価が上昇したことがある。

BtoBにおけるEC市場規模・トレンド

市場規模

2021年のBtoBにおけるEC市場規模は、372兆7,073億円で、前年比11.3%の増加であった。EC化率は、2019年には31.7%、2020年には33.5%、2021年が35.6%と年々増加傾向にある。各業種のEC市場規模とEC化率は次の通りだ。

引用:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」91ページ

中でも例えば卸売業では、流通BMSなどEDIの標準化が大手のスーパーマーケットや大手GMSを中心に進められ、EC化率が増加している。

IP網への切り替えに伴うINSネットの廃止

NTTでは固定電話の契約数減少や、電話の交換設備の維持限界のため、2025年1月までにIP網に移行するとしている。それに伴い2024年1月にはNTT提供のINSネットというデジタル通信サービスが終了するため、BtoB-ECでINSネットを使用している場合は、更新をしなければならない。

日本のECの現状

物販系、サービス系、デジタル系の各分野の市場規模を見ていく。

物販系

2021年の物販系分野のBtoC市場規模は13兆2,865億円。前年の12兆2,333 億円から1兆532億円増加し、伸長率は8.61%となった。2019年から見ると、物販系分野のBtoCのEC市場規模は、年平均成長率約15%で成長し続けている。

また、EC化率は8.78%であった。

市場規模2兆円を超えたのは、「食品、飲料、酒類」、「生活家電、AV 機器、PC・周辺機

器等」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「衣類・服装雑貨等」で、全体の73%を占めていた。

食品、飲料、酒類

市場規模:2兆5,199億円(前年比14.10%)

EC化率:3.77%

「食品・飲料・酒類」の分野で市場規模拡大に大きく寄与したのはネットスーパーだ。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、非接触の需要が高まり、ECで買い物をする消費行動が加速したことで、多くの企業でネットスーパーの売上高が増加した。

また、買い物に行く時間が取れない消費者を支える「クイックコマース」というサービスの利用が広まっている。これは、フードデリバリー各社が食品小売事業者と提携し、配達員がバイクや自転車で店舗の食材を数十分で届けるサービスだ。

衣類、服装雑貨

市場規模:2兆4,279億円(前年比9.35%)

EC化率:21.15%

衣類、服装雑貨では、販売の主戦場が実店舗からECへ移行する流れが新型コロナウイルス感染症拡大を契機に加速したと見られる。さらに大手ECプラットフォームや、DtoCにより、今後もEC化が進んでいくだろう。しかし、SKU数に制約のないECと、実際に手に取れる実店舗ではマーチャンダイジングの考え方が異なり、同じ商品が同じように売れるとは限らない。

また、ECだけでなく、「日本のECの現状」でも説明をした「オンライン接客」や「ショールーミング」により、実店舗の役割が変化してきている。

サービス系

2021年のサービス系分野のBtoCーECの市場規模は、4 兆6,424億円で、伸長率1.29%であった。

EC化率は、サービス系では計算されていない。これは飲食店などで元々ネットが活用されてないことが多く、外食市場規模を基にしても正確にEC化率を捉えられないことや、証券取引に置いて店舗とネットでそもそも異なる性質を持ち、確立しているなど、比較ができないことがあるためだ。

飲食や旅行では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けマイナスとなった。一方でチケット販売、フードデリバリー市場の規模が拡大したことで、全体では前年比 1.29%の増加となっている。

旅行サービスは前年より減少したものの、元々インターネットの活用度の高かいこともあり、最も市場規模が大きく、1兆4,003 億円だ。

チケット販売

市場規模:3,210億円(前年比67.01%%)

インターネットでのチケット申し込みは、2020年に市場規模が縮小したが、2021年には増加をした。注目されているのは、ライブ動画配信だ。コンサートなどのステージが配信されるだけでなく、複数の角度やアーティスト応援機能などオンラインならではのシステムがある。

フードデリバリー

市場規模:4,794億円(前年比37.48%%)

フードデリバリーは2020年から2021年にかけて37.48%と大きく拡大した。しかし、国民全体の食事量が増加するわけではないため、外食・中食・内食・テイクアウト・フードデリバリーの間で市場を取り合う構図は変わらない。また、外食利用頻度が戻ったとき、フードデリバリーの利用度が下がる可能性もある。

デジタル系

2021年のデジタル系分野のBtoCのEC市場規模は、2兆7,661億円で、伸長率12.38%であった。

EC化率については、商材がインターネットを通じた提供が前提のため算出対象外としている。

オンラインゲーム

市場規模:1 兆6,127億円(前年比7.82 %)

オンラインゲームは大きな市場で、デジタル系分野の約6割を占めている。オンラインゲーマーの世界的な増加や「eスポーツ」、オンラインゲームトーナメントの開催数の増加などが市場拡大の背景にあるとされている。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ゲームに搭載されたボイスチャット機能や、外部ツールの利用など、オンラインゲームが非対面でできるコミュニケーションの手段となる傾向もある。

電子出版

市場規模:5,676億円(前年比24.23 %)

オンラインゲーム市場に次いで大きかった市場は、電子出版だ。特に電子コミック市場の規模が拡大した。スマートフォンに合わせた縦スクロールコミックが読めるアプリの普及で、これまで漫画を読まなかった層も漫画を読み始めている。

電子雑誌では、定額制会員が減少している。Web版での雑誌の閲覧を可能にし、広告費を得るビジネスモデルも出てくるなど、電子雑誌のビジネスモデルが多様化する可能性がある。

世界のEC市場の動向

世界のEC市場規模

2021 年の世界のBtoC-EC 市場規模は 4.92兆USドルで、EC化率は 19.6%と推計される。世界的にも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でECの需要が伸び、EC化率も増加した。2025年には7.39兆USドル、EC化率は 24.5%にまでのぼると予測され、今後もEC化が広まるとされる。

世界のEC市場規模のランキングは、次の通りだ。

1位 中国

2位 米国

3位 イギリス

4位 日本

5位 韓国

中でも、中国は全体の52.1%と世界の半分以上を占めており、2兆4,886億USドルの市場規模で前年比15.0%。また、米国は世界の19.0%を占めており、6 兆5,866億USドルで前年比18.1%であった。中国と米国合わせて、2か国で世界の71.1%のシェア率である。

また、日本は世界全体の3%のシェア率だ。

越境EC市場

越境ECとは、消費者が住む国以外にある販売者や提供者から購買すること。例えば、日本から米国に所在するECサイトで買い物をすることだ。この越境ECが今後伸びるとされている。

2019年の世界の越境EC市場規模は、7,800億USドルの推計だ。それが2026年には4兆8,200 億USドルにまで拡大すると予測されている。

拡大する理由としては、消費者にとっては自分の国にない商品を購入したいという消費者の思いや、自国より安く購入できるメリットなどが予測されている。また、事業者側ではターゲットを積極的に世界に広げる動きや物流レベルの向上があると考えられている。

分野を問わず進むEC化

日本では物販系のEC化率は8.78%、伸長率8.61%で、サービス系の伸長率は1.29%、デジタル系の伸長率12.38%と、どれも伸びている。それぞれに背景があったが、主に共通していたのは新型コロナウイルス感染症拡大により2020年から生活様式が変わったことだ。世界全体で見てもEC化は進み、特に中国は52.1%の高いシェア率であった。また、世界においては越境ECが今後のポイントとなるのではないだろうか。

出典:令和4年8月 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書

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