ナショナルチェーンとは?リージョナルチェーンやローカルチェーンとの違いや特徴を解説
2023.06.20

多店舗展開を行うチェーンストアの規模を示す言葉には「ナショナルチェーン」、「リージョナルチェーン」、「ローカルチェーン」の3種類がある。小売業を営む際には特定の地域だけで展開していくか、全国に広げることを目的とするかなど、展開規模を考えることは不可欠だ。
本記事では、それぞれのチェーンストアの規模の違いや、各チェーン規模で運営するメリットなどを解説していく。
目次
ナショナル・リージョナル・ローカルチェーンの違い
チェーンストアには、「ナショナルチェーン」、「リージョナルチェーン」、「ローカルチェーン」という規模による段階がある。それぞれの違いは、どのくらいの商勢圏を持っているかである。
「商勢圏」とは、複数の店舗が勢力を示す範囲のことだ。例えば、A というスーパーマーケットが東京都・神奈川県・埼玉県に出店しており、そこが勢力範囲となるイメージだ。一方で「商圏」という言葉もある。「商勢圏」は複数店舗の勢力範囲であるのに対し、「商圏」は一店舗あたりの勢力範囲を指す。
ナショナルチェーン、リージョナルチェーン、ローカルチェーンというチェーンストアの規模は、この商勢圏をどのくらい持っているかで変わってくる。定義としては次の通りだ。
ローカルチェーン・・・一つの商勢圏に11店舗以上出店しているチェーンストア
リージョナルチェーン・・・二つ以上の商勢圏に展開するチェーンストア
ナショナルチェーン・・・二つ以上のリージョナルチェーンを展開しているチェーンストア
一番大規模なのがナショナルチェーン、その次がリージョナルチェーン、一番小規模なのがローカルチェーンだ。それぞれ詳しく見ていこう。
ナショナルチェーンとは?
ナショナルチェーン・・・二つ以上のリージョナルチェーンを展開しているチェーンストア
リージョナルチェーンは二つ以上の商勢圏に出店していること。ナショナルチェーンが「二つ以上のリージョナルチェーンを持っている」、ということは四つ以上のローカルチェーンを持っていることにもなる。
ナショナルチェーンは「全国展開しているチェーンストア」というイメージがあるが、必ずしも全国各地に店舗があるチェーンストアではない。最低ラインはあくまでも二つのリージョナルチェーンがあることだ。ナショナルチェーンはいきなり目指すのではなく、ローカルチェーン、リージョナルチェーンの小規模から少しずつ規模を大きくしていくのが望ましい。
リージョナルチェーンとは?
リージョナルチェーン・・・二つ以上の商勢圏に展開するチェーンストア
二つ以上の商勢圏に展開する、ということはローカルチェーンが二つ以上あれば、リージョナルチェーンとなる。
リージョナルチェーンのポイントは、商勢圏の場所を問わないことである。例えば、東京と大阪のように商勢圏が隣接していなくても二つ以上のローカルチェーンがあればリージョナルチェーンとなる。
ナショナルチェーンよりも小規模のため、地域に密着した店舗づくりができるのがリージョナルチェーンの特徴でもある。
ローカルチェーンとは?
ローカルチェーン・・・一つの商勢圏に11店舗以上出店しているチェーンストア
ローカルチェーンというと地方にだけあるチェーンストアというイメージがあるが、地方に限らず東京都だけに出店していてもローカルチェーンとなる。明確な決まりはないが、ローカルチェーンは同一県内の複数市町村を含んだエリアを商勢圏としていることが多い。
ローカルチェーンの特徴は地域に密着した店舗経営はもちろん、一つの商勢圏に出店していることで、そのエリア内での認知度を高められるため、プロモーションがしやすいという点もある。
各チェーン規模で運営するメリット

ナショナルチェーン、リージョナルチェーン、ローカルチェーンの規模で展開していくにはそれぞれどのようなメリットがあるのだろうか。
ナショナルチェーンのメリット
知名度や信頼度が高まる
ナショナルチェーンで展開するということは、異なるエリアで店舗数が増えていくことにもなる。「このお店なら安心」、「ここは他の人も良く知っているから」といった知名度アップや信頼度アップに繋がり、集客力や売上にもなるだろう。
スケールメリットの発生
スケールメリットとは、規模の経済や規模効果と呼ばれ、チェーン展開のように同種のものを集めることで単体よりも効果を出せることだ。例えば仕入れでは、大量に仕入れて分配を行えるためコストの削減になる。人材や物流、商品の独自開発においてもリソースを分配することでスケールメリットが発生する。
リージョナルチェーンのメリット
地域に合わせながら規模を広げられる
リージョナルチェーンの特徴は、ローカルチェーンよりも大きな規模で、ナショナルチェーンよりも地域が絞られていることだ。ナショナルチェーンよりも地域に合わせた店舗が運営でき、ローカルチェーンよりも規模を広げた運営ができる。
地域密着型
ナショナルチェーンよりも規模が小さいため、地域密着もリージョナルチェーンのキーワードになる。地元の食材を使用した商品開発や、地元メーカーとの連携など、リージョナルチェーンではその地域に密着した店舗経営ができる。
商勢圏の消費者ニーズを把握しやすい
地域密着型にも繋がるが、リージョナルチェーンでは消費者のニーズが把握しやすい。どのような商品が求められているのか、商勢圏に合わせた店舗経営ができる。
ローカルチェーンのメリット
物流、広報の効率化
ローカルチェーンでは一つの商勢圏内に出店しているため、リージョナルチェーンよりもさらに地域に密着した展開ができる。それは商品開発だけでなく、物流や広報の面でもメリットがあるのだ。例えば、同じエリアに複数の店舗を出店することで、そのエリアの人にお店の存在を認知してもらえる。わざわざ広告やチラシを出さなくても、店舗そのものがプロモーション要素を含むということだ。また、物流においてもエリアが限定されているので効率化が図れるメリットがある。
チェーンオペレーションの確立でドミナント化を促す
経営面での戦略を一つ紹介したい。「ドミナント戦略」だ。「ドミナント戦略」とは、特定の地域内に集中して出店を行い、そのエリアでのシェアを拡大して他の小売業よりも優位な立場になる戦略だ。自社が最も高いシェア率で展開する特定のエリアは「ドミナントエリア」と呼ばれる。商勢圏内で他社よりも優位に立ち、ドミナント化をしていくためには、規模が小さいときからチェーンオペレーションを確立しておくことが大切だ。
チェーンオペレーションとは、本部が仕入れや、財務、プロモーションなどを管理し、店舗側は販売や営業に集中する経営システムのこと。これにより店舗の販売力、管理レベルが維持される。リージョナルチェーンの段階でチェーンオペレーションシステムが確立されていると商勢圏でのドミナント化が促される。
どのようなお店にするかで展開規模を考えよう
ナショナルチェーン、リージョナルチェーン、ローカルチェーンにはそれぞれにメリットがあった。ナショナルチェーンを目指し、大規模に展開をしていくのか、リージョナルチェーンやローカルチェーンで地元に密着した運営をしていくのか。どのようなチェーンストアを目指したいかを考えて、まずはローカルチェーンからスタートをしてほしい。また、上記では紹介していないが、チェーンストアには規模だけでなく、「レギュラーチェーン」、「ボランタリーチェーン」、「フランチャイズチェーン」という3つの経営形態もある。チェーンストアの経営形態についても合わせて確認してみてはいかがだろうか。