セントラルキッチンとは?仕組みやメリット、企業の活用事例を紹介

2023.06.20

セントラルキッチンとは、飲食店や学校、スーパーなどで提供される食事や食品を調理する施設のことだ。セントラルキッチンで調理をすることで、店舗では、大きな調理スペースの確保や調理師の配置などが不要になり、狭小の場所にも出店しやすくなる。

本記事では、そもそもセントラルキッチンとはどのような施設か、セントラルキッチンを活用するメリットや実際に取り入れている企業の事例を見ていく。

セントラルキッチンとは?

セントラルキッチンとは

セントラルキッチンとは、学校、病院、飲食店、スーパーといった場所で提供される食事や食品をまとめて調理する施設のこと。例えば学校では、学校ごとに給食を作るのではなく、給食センターで調理されたものを学校に届けている。学校に限らず、飲食店やスーパーで提供されているメニューや惣菜においても、セントラルキッチンでの調理が導入されているケースがある。店舗では再加熱や仕上げの調理、盛り付けを行うだけだ。

調理範囲は、完成段階まで調理する場合もあれば、肉や野菜を切っておくなどの途中の段階で提供先に届けることもある。セントラルキッチンで一定の段階まで調理・加工がされると、店舗での仕込みや作業が簡略化され、飲食店やスーパーなどに大きな調理スペースがなくても提供できる商品の幅が広がる。

セントラルキッチンでの調理からお客様に提供されるまで

セントラルキッチンで調理をしたメニューがお客様のもとに届くまでの大きな流れとしては、次の通りだ。

【セントラルキッチン】

1.食材の入荷

2.下処理や調理・加工

3.冷却や冷凍

4.店舗へ配送

【店舗】

1.セントラルキッチンで調理されたものの入荷

2.解凍や再加熱、最後の調理

3.盛り付ける

どの段階まで調理をするのか、冷凍や冷蔵などどの温度帯で配送をするのかは、調理をしてからお客様に提供する日数や、調理される食品、店舗側の設備などによって異なってくる。

セントラルキッチンのメリット

セントラルキッチンを導入するメリットは大きく分けて4つある。

効率的に調理ができ、クオリティも安定する

スーパーや飲食店などの場合、各店舗で調理を行うと調理師は多くの作業を担うことになるが、セントラルキッチンでは作業が細かく分担されるため効率的に調理ができる。

また、店舗調理では「A店では揚げすぎている」、「B店では味が薄い」と、味のクオリティが店舗ごとに異なる恐れがある。店舗数が増えれば増えるほど、店舗によって味が変わってしまってはお店の信頼にも関わってくるだろう。複数店舗分をまとめて調理するセントラルキッチンであれば、店舗ごとにクオリティが変わることなく、効率的に作業をしながら品質を維持できる。

固定費削減に繋がる

店舗調理では、店舗ごとに専門で調理ができる人材が必要になるが、セントラルキッチンであれば一か所のセントラルキッチンに必要な調理師だけで済む。各店舗では簡単な作業だけ行えばいいため、アルバイトやパートの方にもお願いができ、人件費の削減に繋がる。

また、賃料も人件費と同様に費用を抑えられる。各店舗に調理スペースを設ける必要がないため、比較的小さな物件であっても作業スペースがあれば出店しやすい。新規出店がしやすいのはもちろん、催事などイベントにも出店しやすいため、売り上げにも繋がるだろう。

仕入れコストの削減に繋がる

セントラルキッチンでは一度に大量発注ができるため、安価に仕入れられる可能性があり、店舗ごとの仕入れに比べてコストが削減できる。

食品ロスの発生を抑える

店舗調理では食材の管理も店舗ごとになり、使いきれなかった食材の食品ロスが発生しやすい。しかし、セントラルキッチンでは複数の店舗の食材を計画的に管理できるため、食品ロスの発生も抑えらえる。

セントラルキッチンの企業事例

実際にセントラルキッチンを導入している企業の事例を見ていこう。

株式会社成城石井

1927年に創業した成城石井では、“調理の手間を省き、おいしく安心して召し上がっていただける商品をお届けしたい”という想いから、自家製商品に力を入れてきた。総菜やデザート、パン、食肉加工品の企画・開発・製造まで一貫して自社で行っており、セントラルキッチンが活用されている。成城石井の自家製商品は、素材のおいしさや本格的な味わいにするため、経験のある料理人を中心に手作業にこだわって作られているという特徴がある。

2022年には3つ目のセントラルキッチンを操業開始

成城石井で自家製商品の製造が始まったのは、1970年代のことだ。当時は店内で調理を行っていたが、1996年10月に町田第1セントラルキッチンを、2004年2月に町田第2セントラルキッチンを操業開始した。町田第1セントラルキッチンでは、パンやデザート、町田第2セントラルキッチンでは和食、洋食、中華の惣菜、食肉加工品の製造を行っている。

2022年7月には、大和第3セントラルキッチンの操業を開始した。大和第3セントラルキッチンは、第1セントラルキッチンと第2セントラルキッチンの機能を集約し、既存商品の製造量を増やすことと、さらに多種多様な商品ラインナップを目指し製造が行われている。面積は、第1・第2セントラルキッチンを合わせた面積の1.8倍で、約3000坪。製造能力は200店舗から約400店舗に向上した。新商品の開発や、これまで設備やスペースの不足でパートナー企業の協力を得ていた分野でも自社製造が可能になった。

環境配慮型の包材へ

セントラルキッチンを増やし自科製造商品にさらに注力する一方で、課題となっているプラスチック容器の使用に関しては、新たな包装機を導入し、年間110tのCO2排出量の削減を見込んでいる。例えば蓋を使用しないトップシール容器や、フルシュリンクから蓋と容器の接合部分にだけフィルムを使用するサイドシュリンクへの変更、デザート容器を環境配慮型の包材へ変更に取り組んでいる。

参考:成城石井、新たなセントラルキッチンを神奈川県大和市に操業開始。デザート品目は2倍・惣菜品目2割増しへ!環境配慮への取組みも強化

セブン&アイグループ

セブン&アイグループのセントラルキッチンは、首都圏戦略の一つである「供給インフラの構築」の中で活用されている。

首都圏食品戦略

首都圏食品戦略は、人口密集地である首都圏の店舗面積やコスト、雇用といった制約を突破するため、グループシナジーを活かした新たな食品スーパー事業体制を構築し、狭小な売場面積への対応、生産性の向上など、首都圏の食品マーケットへの対応を強化していく戦略だ。2020年6月に食品スーパー事業の中心となる株式会社ヨークを発足。従来のヨークマート店舗、イトーヨーカドー食品館やザ・プライス店舗、コンフォートマーケットなどを集約、運営する体制が誕生した。

供給インフラの共有

首都圏食品戦略の一つに「供給インフラの共有」がある。セントラルキッチンや、一次加工センターの新設、精肉などの加工や配送を担うプロセスセンター、生鮮食品の物流センターなどの供給インフラを整備・共有していく戦略だ。

供給インフラを構築することで、材料の一括した調達や、独自商品の展開が可能に。さらに店舗の作業負担の軽減や生産効率の向上にも繋がる。また、都市部の小型店舗などの狭小な立地では店舗での調理スペースの確保が難しく、提供スピードや品ぞろえに課題があったが、供給インフラの整備で狭い売り場面積でも出店できるようになる。

特にセントラルキッチンが共有されることで、精肉加工や調理技術を習得した従業員をセントラルキッチンに集約できるため、安定して質の高い商品を供給できる。また、プロセスセンターの処理で生じる原料の端材を活用でき、食品ロスを抑えることにも繋がる。

参考:首都圏食品戦略

すかいらーくグループ

すかいらーくグループでは、全国に10か所のセントラルキッチンを設けており、一日当たり約400台のトラックで約2600のすかいらーくグループのレストランに食材を届けている。トラックには担当エリアが決められており、1台で複数の店舗を回ることで人件費や燃料費を抑えるようにしている。

コスト削減

すかいらーくグループでは毎日製造をして配送も毎日行っている。そのため余分な在庫はあまり持たずに、野菜の保存料もなるべく使用せず新鮮なまま製造ができていて、コストを抑えることに繋がっている。店舗ごとに業者や物流が違うとコストがかかってしまうものだが、料理以外にも一部を除いて、トイレットペーパーやおしぼり、食器などを全てセントラルキッチンから出荷をすることで物流が一本化され、コストが抑えられている。

指示書を工夫

全国からセントラルキッチンに発注が来るため、発注される品名は何百種類にも上る。そのため指示書には品名ではなくカタカナ、数字、アルファベットを使い、商品の増減があっても出荷ミスが起きないよう工夫がされている。

参考:すかいらーくグループ  流通

セントラルキッチンをうまく活用する

セブン&アイグループで売り場面積の取れない首都圏店舗の戦略としてセントラルキッチンなどの供給インフラをグループで共有していたように、セントラルキッチンを活用することで狭小の店舗でも調理が必要な商品を展開できるようになる。調理のクオリティの安定化や、人件費などのコスト削減といったメリットもあるセントラルキッチンだが、初期費用もかかってくる。セントラルキッチンを取り入れるメリットが自社にあるかどうか見極めてほしい。

お役立ち資料データ

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