在庫引当とは?意味や重要性、メリット、やり方について紹介

2023.06.20

顧客が商品を欲したタイミングで提供できるよう、重要な役割を果たす在庫管理。適切な在庫管理は機会損失の防止や顧客満足度の向上など、企業にさまざまな恩恵をもたらす。

在庫管理を行う上で、必ず理解しておきたい概念の1つが在庫引当である。本記事では、在庫引当の基本から導入する重要性、メリット、やり方・考え方を解説していく。

在庫引当とは?

在庫引当とは、店舗に存在する在庫数から、注文のあった販売待ちの在庫を引いておくことを言う。例えば、在庫数が100個の商品に対し、60個の注文が入ったときを考える。

出荷前の実在庫数は100個であるが、あらかじめ顧客の注文分を確保しておくのが在庫引当なので、この時点における有効在庫数は40個。別の顧客から注文が入った場合は、有効在庫数40個から販売を行う。

主に、在庫管理を必要とする小売業や製造業などで、在庫引当の管理手法は活用されている。

在庫引当のメリットや重要性

ここでは、在庫引当を行うメリットおよびその重要性を解説していく。

トラブルを未然に防げる

在庫引当は、自社で販売可能な在庫数を把握する上で、非常に重要な概念である。先の例で考えた場合、商品出荷前の在庫数は100個であるため、別の顧客から50個の注文が入ったとしても、実在庫数だけ見れば受注可能。

しかし、すでに60個の注文が入っているので、実際に販売可能な商品数は40個となり、後の顧客の注文は受注できないとわかる。在庫引当を行っていないと、受注・出荷のタイムラグを解消できないため、場合によっては受注不可にも関わらず注文を受け、トラブルに発展する可能性も。

小規模の店舗であれば、頭の中で実在庫数と有効在庫数を把握可能かもしれないが、大規模店舗や複数人で受注業務を担っている場合、有効在庫数を管理するのは困難。トラブルを未然に防ぎ、顧客と信頼関係を結ぶ上で、在庫引当は重要と言えるだろう。

機会損失を防止できる

前述の通り、在庫引当を行っていなければ有効在庫数が足りず、注文をキャンセルするといった事態が発生する可能性もある。その点、在庫引当を行っていると、顧客の注文を確実に受注して納品可能。

有効在庫数の不足に伴う注文キャンセルを防止し、機会損失の低減にもつながると考えられるだろう。

過剰な在庫を防止できる

欠品を防いで売上の機会損失を防止することは、売上をあげる上で当然重要と言えるが、過剰な在庫を防止できるのも在庫引当のメリット。有効在庫数を把握できていなければ、実在庫数から在庫発注を行うことになるが、欠品を避けたい心理が働いて過剰発注となる可能性も。

過剰在庫は管理費が発生する、資金繰りが悪化する、不良在庫が増えるといったデメリットをもたらすため、引当在庫で適切に在庫を管理し、リスクを低減していきたい。

在庫引当のやり方や考え方

在庫引当は商品を受注、もしくは予約を受けたタイミングで実在庫数・有効在庫数を計算し、各担当者への共有やシステムへの反映を行う。ここで重要となるのが、リアルタイムで伝票の処理を行い、商品の動きを共有・反映すること。

記録している在庫数と実際の在庫数が合致していなければ、欠品や余剰在庫につながりかねないので、商品の棚卸しを1ヶ月に1回や四半期に1回行うなどして、実際の在庫数と照合することが重要と言えるだろう。

その他、在庫管理の重要性の再認識、ヒューマンエラーを発生させない環境作り、スピード感のある情報共有など、在庫管理を行う上での基本も徹底しておきたい。

在庫引当の方法

次に、在庫引当を行う4つの方法を解説していく。

紙台帳を利用した在庫引当

個人経営で管理する商品数が少ない場合や、システムを導入する予算を削減したい場合などに活用されるのが、紙の台帳を利用した在庫引当。フォーマットの自由度が非常に高いため、在庫管理以外の記録やメモを残したいときにも、紙台帳はおすすめと言える。

当然ながら、商品数の多い中大規模の店舗には不向きな手法。また、記録に手間がかかる、記入ミスが発生しやすい、紛失の恐れがあるなども紙台帳のデメリットと考えられるだろう。

エクセルを利用した在庫引当

馴染みのあるソフトで在庫引当を行いたい場合におすすめなのが、Officeのエクセル。パソコンには導入必須とも言えるソフトなので、在庫管理する上で別途コストが発生しないことも多い。

Web上には在庫管理表のテンプレートが多数配布されており、自店に適したフォーマットを選びやすい。また、使い慣れたソフトで、新たに操作方法を覚える必要がないのもメリットと言えるだろう。

その一方で、エクセルはデータ量が膨大になると動作が重くなってしまい、業務効率の低下を招いてしまう。その他、エクセルには共有機能が存在し、複数人・複数拠点でリアルタイム編集を行うことも可能だが、一部機能が制限されてしまうのも気を付けたいポイントである。

バーコード・QRコードを利用した在庫引当

ハンディターミナルやスマートフォンを利用し、商品の専用コードを読み取って在庫引当を行えるのがバーコード・QRコード管理。リアルタイムで在庫状況を把握可能で、機会損失を回避できる。入出庫時の作業スピードを向上させ、業務効率化を図れるのも魅力と言えるだろう。

ただし、大量の商品を扱う場合、スキャンやラベルを貼る作業がかえって手間になることも。また、バーコードの作成・貼り付け位置・商品の置き方・読み取り完了商品と未完了商品の仕分けなど、さまざまな作業を標準化する必要があるため、社内共有やマニュアル整備も重要となる。

在庫管理システムを利用した在庫引当

入出庫・返品・棚卸・分析・データ抽出など、多様な機能を有しているのが在庫管理システム。人件費の削減やヒューマンエラーの防止などにつなげられるだけでなく、キャッシュフローの改善といったメリットも享受できる。また、オフラインで利用できる在庫管理システムも提供されており、停電や災害が発生した場合でも、業務を滞らせることなく機会損失を防止可能である。

先に述べている通り、在庫引当を行う際は実際の在庫数とシステム上の在庫数を一致させることが重要。その他、多額のコストが発生する点も導入する上では留意しておきたい。

在庫引当のまとめ

在庫管理は企業の利益や経営に影響する重要な要素の1つ。不適切な在庫管理は企業の信頼性低下や売上ダウン、クレームに伴う人件費の増大など悪循環をもたらすため、在庫引当の考え方は必ず理解しておきたい。

加えて、リアルタイムで商品の動きを記録するなど、策定すべきルールも多数存在する。自社に最適な在庫引当の手法を用いて、欠品・余剰在庫なく管理を最適化してみてほしい。

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