7月から予約が始まった「マイナポイント」って何だ?

2022.04.12

2020.08.07

いよいよ、始まったマイナポイントとはなにか?

キャッシュレス決済を使えば中小企業の店だと5%、フランチャイズチェーンだと2%相当のポイントがお客に還元されるという「ポイント還元事業」が6月30日に終了した。昨年10月の消費増税に伴う消費活性化策、さらにはキャッシュレス決済の推進策として経済産業省によって実施されたものだが、ポイントのコントロールによる集客は、実質的な価格競争として日々、各企業が活用していた販促策であったが、国が補助を通じて後押しする形で5%、あるいは2%という非常に強力な販促レベルに相当する方策が使えるということで、業界内で大きな問題となった。

中小企業が有利ということで、資本金5000万円以下などの基準を鑑み、実施に当たって減資をする企業まで現れる動きなどがあった他、フランチャイズチェーンには、大チェーンのコンビニが含まれることから、特にコーポレートチェーンの大企業からは問題を指摘する声が相次いだ。

結局、それなりの規模以上のチェーンは、自己負担による値下げやポイント増加で対応するしかなかった実際、昨年10月以降は、値下げやポイント増加の動きがみられるなど、価格競争が激化した感があった。

ただし、それは年明け以降の新型コロナウイルスの広がりによって、小売業界自体が激変することで、影響については、ほとんど分からないレベルの問題になったといえる。

そして6月30日、当初の予定どおり終了した。6月段階での実態、つまり今回のポイント還元事業の効果については、今後次第に詳細が明らかになってくるだろうが、現状発表されている2019年のデータで見ると、日本のキャッシュレス比率は26.8%で前年比2.7ポイントといった状況。

特にさまざまなキャンペーンなどもあって存在感を増していたQRコード決済が18年の0.05%に対して19年は0.31%と、全体における比率からするとまだわずかではあるが、約6倍の高い伸びを示すといったことがあったものの、ポイント還元が残り3カ月の10月から始まったとはいえ、国としてキャッシュレス決済比率を25年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしていることからすると、「まだまだ」の感を残した形となった。

ポイント付与率は25%、最大5000円分のポイントがもらえる

そして、そのポイント還元事業を引き継ぐ形で消費活性化策として、今度は総務省によって実施されるのが、今回の「マイナポイント」である。

これは「マイナンバーカードを使って予約・申し込みを行い、自身が選んだキャッシュレス決済でチャージや買物をすると、利用金額の25%分のポイントがもらえる」というもの。そして今回は1人当たりの上限が定められており、その金額は「5000円分」となる。申し込みはポイント還元事業が終わった直後の7月1日から始まった。対象となるキャッシュレス決済サービスも7月1日から次第に増加し、今後も増加していく見込みで、現時点でも100種類以上の幅広いサービスから選べるようになっている。

予約、申し込みは、自身のスマホからも可能だが、他に市区町村窓口、郵便局、コンビニ(マルチコピー機、ATM)、携帯ショップなど、今後開設するものも含め、約9万箇所にマイナポイントの予約、申し込みのための端末が設置される。また、マイナポイントに登録した決済事業者が、自社決済サービスなどへの予約や申込手続を支援している場合もある。

つまり、マイナンバーカードを取得し(その後、マイナポイントを予約してマイキーIDを発行、マイナポイントに申し込む)、任意のキャッシュレス決済手段を使って2万円分買物をすれば、5000円分のポイントが付与されるという仕組みだ。

注意したいのは、ポイント付与の対象となる買物が9⽉1⽇から21年3⽉31⽇までとなっている点だ。この間にチャージ、または買物した金額が付与の対象となる。当初は、東京オリンピック・パラリンピック後の消費を下支えすることが意図されていたからだ。

今回のマイナポイントの予算は2478億円で、当然、想定される利用者も予算の範囲内となり、総務省としてはそれを4000万人としている。人口の約3分の1と、限定的だ。

キャッシュレス化の高いハードル「手数料率」マイナカードは普及するか?

ポイント還元事業は、「消費活性化」に「キャッシュレス決済の推進」を加えた施策であったが、今回は、「消費活性化」「キャッシュレス決済の推進」にさらに加える形で、なかなか普及しない「マイナンバーカード」が加わった施策となっている。

ある企業のトップは、キャッシュレス決済のポイント還元事業の開始に当たり、「目的が複数ある施策は大体うまくいかない」と言っていたが、今度は目的がさらに1つ増え、3つになった。

7月に入り、今回の事業の主役であるキャッシュレス決済事業者が自社決済サービスでの予約、申し込みを募る競争が発生しているが、今回のマイナポイントに対して小売業者の関心は高くないように見える。もちろん、今回は、キャッシュレス決済のポイント還元事業とは異なり、企業を差別することもなく、小売業としては特にデメリットがないこともあるだろう。

さらに、今年に入ってからの新型コロナの影響が、まさに経営問題に深くかかわる深刻な事態を巻き起こしていることもあって、関心がそちらに向かないということもあると考えられる。

そのそも、キャッシュレス化の最大の問題は小売業側が決済業者に払う手数料率の高さにある。経済産業省によるとポイント還元事業参加店舗の平均手数料率は約2.41%(2020年3月末時点)だった。一般に中小店舗向けの手数料率は、約5~7%ともいわれている。一部、手数料率を割り引くなどの動きがあるものの、多くの企業が営業利益数%といった状況の中で、この負担は大きい。

一方で、新型コロナを経て、なるべく物にさわらないことが好まれるという点では、キャッシュレス化のメリットは高い上、比率が上がり現金を扱う量が減ること自体は、オペレーション的にはメリットがあるのは確かだ。

手数料率を吸収できるだけのオペレーションコストの削減ができるか、あるいは手数料率自体が下がるか。小売業は、こうした問題をある程度、中長期的な問題として見ている。そうした中での今回のマイナポイントである。25%という高いポイント付与率はお客にとって確かに魅力だが、ことキャッシュレス比率の向上という面ではまだ課題は山積している。

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