【21年4月から】総額表示の義務化はなぜ?対応方法や違反の罰則などを徹底解説

2021.01.08

更新:2021.03.30

小売店や飲食店には、本体価格と消費税額を合算した「総額表示」が、2021年4月から義務付けられると、聞いたことはないだろうか? しかし、流通業界に詳しい人なら、「あれ? 総額表示って、もっと前から義務化されていたんじゃなかったっけ」と思う人もいるだろう。ではいったい、総額表示の義務化とは、どういうことなのだろうか?

本記事では、総額表示の変遷、なぜ義務化されるのかという理由や背景。実際に総額表示が義務化れるのはいつか、対応にあたっての注意点や罰則の規定、各企業の対応の事例なども併せて、網羅的に解説をしていく。

総額表示の義務化とは?

総額表示の義務化とは?

流通関連の仕事をしていると、価格の「総額表示」というワードを耳にすることも多いのではないだろうか?

「総額表示」とは、消費者に商品を販売したり、サービスを提供したりする場合、値札やチラシなどに記載する価格を、消費税相当額(地方消費税額も含む)をあらかじめ含めた支払いの総額とする表示方式のことだ。

国税庁によれば、本体価格1万円、消費税10%を例にすると、次のような表示が、総額表示に該当するという。

・11,000円

・11,000円(税込)

・11,000円(税抜価格10,000円)

・11,000円(うち消費税額等1,000円)

・11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円) 

つまり、上記の例のように、商品やサービスの本体価格と消費税額の内訳がわかるように表示するのは、もちろんかまわないが、「本体価格と消費税額の合計金額」をはっきり示すことが、ポイントとなるわけだ。

例えば、「10,000円(税込11,000円)」という表示も、消費税額を含んだ価格がはっきり示されていれば、総額表示に該当するという。

なお、総額表示で税込み価格を設定する場合、1円未満の端数が生じるときは、端数を四捨五入しても、切捨てても、切上げても、差し支えないとされている。

そして、2021年4月から、小売業や飲食業などに「総額表示が義務付けられる」という話題も、よく取りざたされているのをご存じだろう。

総額表示は、消費税課税事業者が、消費者に対して商品の販売などを行う場合、小売段階の価格表示をするときに義務付けられる。つまり、小売店や飲食店でも、消費税の免税事業者には、表示義務がないのだ。免税事業者は、「税抜き価格」を表示して別途、消費税相当額を受け取るといったことが、想定されていないからだ。

消費者に対する価格表示であれば、媒体の種類を問わず、総額表示が義務付けられる。具体的には、次のようなケースが考えられる。

・値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログへの価格表示

・商品のパッケージなどへの印字、あるいは貼付した価格表示

・新聞折込み広告、ダイレクトメールなどで配布するチラシ

・新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メールなどを利用した広告

・ポスター

ただし、例えば、屋台での口頭による価格の提示といった、価格表示を行っていないケースは、総額表示の義務の対象には含まれない。

実は、すでに平成16年(2004年)4月から、総額表示は義務化されている。ところが、実際には、現在も総額表示をしている店舗と、していない店舗がある。例えば、「10,000円(税抜)」「10,000円+消費税」といった値札の表示を、見かけたことがあるだろう。それはいったい、どうしてなのか?

その答えは、令和3年(2021年)3月31日まで、必ずしも総額表示をしなくてもいいという特例が定められていたからだ。つまり、その特例が3月で終わってしまうので、4月からはいよいよ例外なく総額表示に切り替えなければならないというのが、“総額表示の義務化”というわけだ。

総額表示の特例とは?

消費税率を10%に引き上げたのに伴い、「消費税転嫁対策特別措置法」によって、平成25年(2013年)10月1日から令和3年(2021年)3月31日までは、条件付きで総額表示をしなくてもよいことになった。

具体的には、「現に表示する価格が、税込み価格であると誤認されないための措置」を講じていれば、税込み価格を表示しなくてもよいとされた。

誤認されないための措置とは、「価格は税抜きです」のような説明文を商品に記載するといった具合に、消費者が商品を選ぶときに、「価格に消費税が含まれているかどうか」をすぐに判別できる状態にしておくこと。

例えば、レジ周辺だけに「当店の価格は税抜きです」と表示したり、商品に表示された説明文の文字が小さくて消費者が読みにくかったりすれば、誤認されないための措置が不十分とされることがある。

では、総額表示について、どうしてそのような特例が設けられていたのだろうか? 

それは、消費税を納付する事業者に、過大な負担をかけないための配慮なのだ。

消費税率の引き上げと同時に総額表示を義務化すると、事業者は引き上げの時期に合わせて、値札の張り替えといった価格表示の変更をしなければならない。

また、ITシステムでレジの精算や会計・税務処理を行っている場合、総額表示にも対応できるように、ITシステムも更新しなければならない。

消費税率引き上げの決定から実施までの期間が短い場合、あるいは、消費税率引き上げが立て続けに行われた場合、事業者にとって、総額表示を行うためのコストや手間は、とても重くなってしまう。

そこで、事業者の負担を軽減し、総額表示にスムーズに移行できるようにするため、特例によって、総額表示をしなくてもいいという猶予期間を設けたわけだ。

例えば、令和元年(2019年)10月に、消費税率が8%から10%に引き上げられたときのことを考えてみよう。

引き上げの時期は当初、2015年10月の予定だったが、景気対策のため、政府が17年4月、19年10月と二度にわたって延期し、しかも、食品にかける消費税には、8%の軽減税率を適用する制度が新設されるなど混乱した。

もし、総額表示を義務付けられていたら、個人営業の小売店や飲食店は、二転三転する消費税制に振り回され、大変な苦労をしたかもしれない。

だが、総額表示の特例のおかげで、とりあえず本体価格をそのまま表示し、「税抜き価格」といった表示を併記していれば容認されたので、混乱を防ぐことができた店舗が、多かったのではないだろうか?

とはいえ、政府も、猶予期間をいつまでも事業者に与え続けるつもりはない。総額表示へ移行するための十分な準備期間は設けたとして、特例措置の期限を2021年3月としたのだ。

例えば、猶予期間中に、事業者が、消費税率の変更に即応できるようなレジシステムや会計・税務管理システム、商品陳列棚の価格変更を自動化できる「電子棚札」などを導入することを、期待していたというわけだ。

また、消費税転嫁対策特別措置法では、特例で税込み価格を表示しない事業者も、「できるだけ速やかに、税込み価格を表示するよう努めなければならない」という努力義務規定を盛り込んでいる。

総額表示の義務化はなぜ必要?

ところで、そもそも政府はなぜ、総額表示を事業者に義務付けようとしているのだろうか? それについては、国税庁が理由を明確にしている。

流通業界では、これまで消費税相当額を価格に含めない「税抜き価格表示」が主流だった。そのほうが、価格訴求をしやすいといったメリットがあったからだ。

例えば、「100円均一ショップ」は、実際の商品の税込み価格は「110円」でも、税抜き価格の「100円」と表示したほうが、消費者にはアピールできるわけだ。

しかし、税抜き価格表示では、レジで請求されるまで最終的に対価をいくら支払えばいいのかが、消費者にはわかりにくい。また、税抜き価格表示の店舗と、税込み価格表示の店舗が混在していると、同一の商品やサービスでも、価格の比較がしづらいといった問題が生じていた。

一方で、総額表示を実施すれば、消費者は、いくら支払えばその商品やサービスが購入できるのかが、値札や広告を一目見ただけで簡単にわかるし、店舗間の価格の比較も容易になる

税抜き価格表示によって生じていた煩わしさが解消され、消費税に対する国民の理解を深めることにもつながると考え、総額表示を義務化したと、国税庁は説明している。

総額表示の義務化への対応や注意点を解説

●総額表示の方法

冒頭で説明したように、「本体価格+消費税額の合計金額」をはっきり示してさえいれば、総額表示の方法は、各社の自由でかまわない

財務省の提示している資料によると、税込価格10,780円(税率10%)の商品の場合、「10,780円」「10,780円(税込)」「10,780円(うち税980円)」「10,780円(税抜価格9,800円)」「10,780円(税抜価格9,800円、税980円)」などが、総額表示に《該当する》価格例として挙げられている。

従来使用されてきた、「9,800円(税抜)」「9,800円(本体価格)」「9,800円+税」などは、総額表示に《該当しない》価格表示となる。

総額表示の義務化は、消費者が商品やサービスを購入する際に、「消費税相当額を含む価格」を一目で分かるようにするためのものであり、棚札やPOPなどで税込価格が一目で分かるようになっていれば、個々の商品に税込み価格が表示されていなくても問題ない。

このように、総額表示の方法はある程度自由に決められるが、多店舗展開しているチェーン店の場合、価格表示の統一ルールを決めておくべきだ。同じチェーンなのに、店舗によって価格表示が違うと、顧客が混乱しかねないからだ。

大型店やショッピングセンターによっては、価格表示の統一ルールを決めているところもあるようだ。テナントとして入居している店舗は、統一ルールがあるかどうかを確認し、自社の価格表示ルールとのすり合わせをしたほうがいいだろう。

参考:消費税の総額表示義務と転嫁対策に関する資料

●総額表示の対象となる取引と例外となるケース

国税庁によると、 消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときには総額表示が義務付けられる。

一方で、事業者間での取引は総額表示義務の対象とはならない

総額表示は、「不特定かつ多数」に対する商品やサービスに適応されて、事業者間の取引(B to B)「特定かつ少数」「不特定かつ少数」「特定かつ多
数」への販売は対象外となる。

つまり、不特定多数の消費者に対して商品を訴求、提示する小売店や飲食店、出版物などにおける、値札、チラシ、メニュー、商品カタログなどは対象となり、法人における見積書や契約書、請求書には総額表示の義務は適用されない。

「不特定多数」の消費者を対象とした商品カタログは総額表示の義務化が適用されるが、事業者を対象とした商品カタログは総額表示義務の適用外となる。

●インターネット販売(EC)や広告表示における対応

インターネット販売(EC)においては、WEBサイト上において総額表示がなされていれば、実際に消費者の元に配送される商品自体に総額表示をする必要はない。

チラシ、新聞、雑誌、テレビ、ダイレクトメール、インターネットにおける広告は、「不特定多数」に向けたものになるため、総額表示が必要となる。

●イートインとテイクアウトで税率が異なる飲食店の対応

総額表示にあたって注意したいのが飲食店。軽減税率制度によって、料理を店内で食べるのか(イートイン)、持ち帰るのか(テイクアウト)で、消費税率が変わってしまうからだ。

国税庁は、税率の違いによる総額表示への対応について、下記3つの例を提示している。

① 持ち帰りと店内飲食両方の税込価格を表示

「持ち帰り:162円」「店内飲食:165円」と、テイクアウトとイートインで両方の総額表示を明記する方法。

② 店内掲示等を行うことを前提にどちらか一方のみの税込価格を表示

店内では、「惣菜パン:162円」「店内飲食される場合、価格が異なります。」とテイクアウトの場合の総額表示のみを記載し、併せてテイクアウトの場合には価格が異なることを明記。

③ 持ち帰りと店内飲食を同一の税込価格で表示

税込みの価格を統一してしまう方法。「惣菜パン:170円」とイートインの場合もテイクアウトの場合も同様の税込み価格を設定する。

参考:消費税軽減税率制度-国税庁

●レジシステムの変更などは必要?

「総額表示義務」は、値札や広告などにおいて「消費税相当額を含む支払総額」の表示を義務付けるもののため、レジシステム自体を変更する必要はない。

ただ、購入者に渡すレシートの記載は総額表示にする必要があるため、出力されるレシートが総額表示に対応していない場合は、変更が必要となる。

●総額表示義務に違反した場合の罰則は?

総額表示に関しては、消費税法63条によって義務付けられているが、「総額表示義務」を違反した際の罰則は特段定められていない。

つまり、総額表示が義務化されているとはいえ、違反した場合にも、処罰されることはない。

●各企業の対応例

2020年12月18日付日本経済新聞は、総額表示が義務化される2021年4月以降、小売業や飲食業の主要企業の過半は、税抜き価格表示と総額表示を併用する予定だと報じている。

コロナ禍で先行き不透明感が広がる中、消費者の節約志向も強まっているため、総額表示のみで値上げした印象を持たれるのを避けたい狙いがあるようだ。流通業界の価格戦略にも、影響を与えそうだ。

・ファイーストリテイリングの事例

一方、ファーストリテイリンググループのユニクロとジーユーは、3月12日からすべての商品を総額表示とし、商品本体価格をそのまま消費税込みの価格に変更するとしている。これは、現在の価格と比較して、全商品を実質約9%値下げする形になる。

総額表示について、ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長は、「私たちは、できるだけ多くの商品の価格をそのままに、消費税込みのお求めやすい価格で販売し、お客様の生活に寄りそっていきたいと思っている。」と述べている。

・モスバーガーの事例

モスバーバーは、総額表示への対応として、2021年4月からイートインとテイクアウトで価格を統一する方針を3月10日に発表している。

この価格改定に伴い、モスバーガーは従来の377円(イートイン)、370円(テークアウト)から、統一で390円に、ホットドッグも従来は326円(イートイン)、320円(テークアウト)を340円に変更するなど、一部の商品が値上げとなる。

値上げとなる商品もある一方で、 ブレンドコーヒー(イートイン)は従来255円だったが、新価格ではテークアウトと同じ250円にするなど、価格が引き下げられる場合もある。

総額表示義務への対応と併せて、1円単位の価格設定を廃止し、分かりやすくする狙いもあるという。

税抜き価格表示の店舗は、4月までに値札などを総額表示に切り替えなければならないが、前述のように、デジタル表示の電子棚札システムを導入している店舗なら、すべての商品の価格をごく短時間で総額表示に変更できるので、便利だという。

まとめ

国税庁が主張しているように、総額表示は、消費者にとって利便性が高いため、消費市場に浸透しやすいと考えられる。総額表示が流通業界のスタンダートになる以上、消費者も総額表示に慣れていくだろう。総額表示をしていない店舗は、顧客からの信用を失うリスクもはらんでいる。

店舗にとってコストや手間がかかるといっても、総額表示への移行は、怠りなく進めたほうがいいだろう。

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