【21年6月から完全義務化】HACCP(ハサップ)とは?対応方法から罰則、義務化の理由まで徹底解説

2021.05.27

2021年6月に完全義務化されるHACCP(ハサップ)は、食品の安全性を向上させるための、国際的な衛生管理手法である。HACCPによって何が変わるのだろうか? 具体的な導入方法も気になるところだ。本記事では、HACCPについて詳しく解説していく。

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HACCP(ハサップ)とは?

HACCPの基本情報

HACCP(ハサップ)は「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称。1960年代にアメリカで宇宙食の安全性を確保するために開発された。日本語に訳すと「危害要因分析重要管理点」となる。

原材料の受入から製品出荷に至るまでの全工程において、食中毒などの健康被害を引き起こす恐れがないかを分析。危害要因を取り除いたり低減したりするために重要な工程を管理して安全性を確保する衛生管理の手法である。

HACCPは、国連食糧農業機関である「FAO」と世界保健機関の「WHO」による合同機関の食品規格 (コーデックス) 委員会が発表し、世界各国で推奨されている国際的な手法だ。

HACCPを基準とした衛生管理

前述したHACCPの正式名称にある「Hazard Analysis」を訳すと「Hazard」は危害、「Analysis」は分析で、危害要因(ハザード)分析を意味する。

原材料や製造過程において、有害な微生物や化学物質、金属などが混入したり繁殖したりした場合に、どのような健康への悪影響(危害)を引き起こす可能性があるかの予測が必要となる。

危害要因(ハザード)分析によって、有害物質、異物、微生物や細菌といった危害要因の管理方法を明確にする。

「Critical Control Point」を訳すと「Critical」は重要、「Control」は管理、「Point」は点で、重要管理点(CCP)を意味する。

食品製造の工程を細分化して行った危害要因(ハザード)分析に基づき、健康に影響しない程度まで減少・除去するための重要な工程の管理を行う。

例えば、原材料に病原微生物が存在する可能性があり、殺菌で管理すると分析した場合、殺菌の工程が重要管理点(CCP)となり、殺菌温度や殺菌時間の連続的な管理が必要となる。

HACCPが完全義務化されたのはなぜか?

21年6月からはじまるHACCPの完全義務化は、どういった背景で決定されたのだろうか?

HACCPが完全義務化された背景

HACCPは大規模事業者への普及が進んでいたものの、中小事業者への普及が課題となっていた。

高齢化が進んでいることから、食品が起因となる感染症のリスクの高まりが懸念されている他、ガラスや金属などの危険異物混入による食品回収事例も増加傾向にある。

国内で流通する食品全体の安全性向上を目的として、HACCPによる衛生管理の制度化が進められる運びとなった。

18年6月に食品衛生法の改正法案が可決され、周知期間に条例などの整備や手引書の整備がおこなわれた。20年6月に施行がスタート。HACCPに基づいた衛生管理の導入などのため1年間の経過措置があり、21年6月1日からHACCPによる衛生管理が完全義務化される。

HACCPとこれまでの検査の違いとは?

HACCPの導入前は、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」を受けて、各都道府県などが管理運営基準を条例化してきた。

14年にHACCPの考え方を導入した内容へ改正された際、「第2 食品取扱施設等における衛生管理」に明記されたのが下記の項目だ。

・危害分析・重要管理点方式を用いて衛生管理を実施する班の編成

・製品説明書及び製造工程一覧表の作成

・食品等の取扱い

・記録の作成及び保存

また、製造環境の衛生管理などは、「一般的衛生プログラム」によって行われている。最終製品の安全性は、一定率の抜き取り検査を実施し、規定の基準を満たしているか確認していた。

HACCPでも「一般的衛生プログラム」の実施を前提条件として、原材料の受入から最終製品に至るまでの工程ごとに危害を分析し、重要な工程の継続的な監視や記録を行う。一連の流れが最終製品の安全性を証明する内容となる。

HACCPの義務化に違反したときの罰則

21年5月現在、HACCPについての罰則規定は明記されていないが、食品衛生法には罰則がある。違反した場合は懲役や罰金などの罰則を受けなければならない。

例えば、第6条の「不衛生食品等の販売等の禁止」などに違反した場合、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられる。

第13条の「食品等の規格及び基準」にある規格基準違反食品の販売等禁止に違反した場合の罰則は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金だ。

HACCPを導入するための具体的な対応方法

HACCPはどのようにして導入したらよいのだろうか?

HACCPの7原則12手順

HACCPには、衛生管理に関する7つの原則と12の手順が設けられている。それぞれの内容を具体的に確認していこう。手順の6~12は7原則を進めるための準備となる。

手順① HACCPのチーム編成

製造にかかわる必要な情報を集めるため、HACCPを管理するチームを作る。専門的な知識を持った人材がいない場合は、外部から招いたり専門書を参考にしたりするとよい。

手順② 製品説明書の作成

原材料や製品の特性など、危害要因を分析するための基礎的な資料を作る。仕様は問わないため、既存する仕様書やレシピで代用可能。

手順③ 意図する用途及び対象となる消費者の確認

用途とは、加熱の要不要など製品の使用方法のこと。誰がどうやって食べるのかをまとめて書き出す。製品説明書に盛り込まれていると分かりやすい。

手順④ 製造工程一覧図の作成

原材料の受け入れや保管、製造、加工、包装、出荷に至るまでの流れを工程ごとに書き出す。温度や製造時間も記載しておくとよい。

手順⑤ 製造工程一覧図の現場確認

製造工程図(手順④)を現場の動きと確認し、必要に応じて調整する。

手順⑥ 【原則1】危害要因分析(ハザード)の実施

工程ごとに発生する可能性がある危害要因の一覧表を作成し、管理するための措置を決める。

手順⑦ 【原則2】重要管理点(CCP)の決定

特定した危害要因の発生を取り除いたり低減したりする上で、特に重要となる工程を決める。

手順⑧ 【原則3】管理基準の設定

それぞれの重要管理点(CCP)を管理するために、殺菌時間や温度などの基準を設定する。

手順⑨ 【原則4】モニタリング方法の設定

重要管理点(CCP)が正しく管理されているか、実施状況をモニタリングするための方法を設定する。

手順⑩ 【原則5】改善措置の設定

重要管理点(CCP)のモニタリングによって、管理基準を逸脱していた場合の措置を設定する。

手順⑪ 【原則6】検証方法の設定

HACCPプランの効果を定期的に検証する手順を定める。

手順⑫ 【原則7】記録と保存方法の設定

それぞれの工程における管理状況を記録することで、HACCPを実施した証拠と共に、問題発生時に原因を追求する資料になる。

なお、小規模な営業者等の場合は、厚生労働省が確認した業界団体作成の手引書に基づいた対応が可能である。

HACCPの危害要因分析

HACCPが効果を発揮するためには、危害要因(ハザード)分析が重要なポイントとなる。各工程でどんな危険が潜んでいるのか、起こりうる可能性はどれくらいか、健康に及ぼす被害の程度についても明らかにしていく。

各工程の危害要因(ハザード)分析によって、生物、化学・物理の項目ごとに潜在的な危害要因をすべて記していく。重要管理点(CCP)に設定する必要があるか判断し、どの工程で管理するのか手段を決定する。

例えば、ナチュラルミネラルウォーターを製造する工程で考えられるのは、原材料である原水の存在する病原微生物と、除菌処理における病原微生物の残存となる。

原水には環境由来の病原性大腸菌やエルシニア、 サルモネラ属菌などの病原微生物が存在する可能性がある。しかし、危害要因(ハザード)分析によって、ろ過処理の工程で除去できると判断されるため、重要管理点(CCP)に設定する必要はない。

除菌処理における病原微生物の残存については、危害要因(ハザード)分析によって除菌処理の工程でフィルターに不具合が起きていると通過する恐れがあると判断される。重要管理点(CCP)に設定され、除菌フィルターの差圧が適切かを確認することで管理を行う。

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HACCPの導入前にはさまざまな準備が必要だが、大切なのは正しく運用することである。手順に沿って、安全な製品を提供するためのツールとして活用しよう。

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