ドローン配達の課題とは?|2022年の規制緩和による需要拡大が期待される

2022.10.25

2021.03.22

人手不足が慢性化している物流業界において、注目を集めているのがドローンだ。すでに米国などでは配達用のドローンの実証実験が実施されており、数社の企業が米連邦航空局(FAA)からドローン配達開始の認可を得た。国内においても楽天などがドローン配達サービスを展開している。

しかしながら、国内のドローン配達には法整備などの課題もあり、現行のルールや制度では円滑にドローン配達ができる内容とはいえない。今後、ドローン配達が一般的になるには何が必要なのだろうか。今回は、2022年を目処に政府が進めるドローン飛行の緩和規制緩和などにも触れつつ、ドローン配達の現状と課題、今後の展望などを紹介する。

そもそもドローンとは何か?

はじめに、ドローンとは何かを振り返る。

ドローンとは無人の航空機

ドローンとは遠隔操作や自動制御による飛行できる航空機である。また、ドローンは無人の航空機だ。機種も多岐にわたり、おもちゃのようなトイドローン、産業用ドローン、軍事用ドローンなどがある。

送信機を使ったりスマートフォンを使ったり、操縦方法もさまざまだ。ラジコンのように飛行を楽しむ人もいれば、空撮をする人もいる。種類によっては特殊な軌道を描いて飛行できるため、撮影した動画をSNSに投稿する人が多い。

ドローンと似ているものとしてラジコンヘリがある。いずれも機体が空中を飛行するものだ。両者の違いは自律性である。ラジコンヘリは、専用のコントローラーを使って手動操作をする。この操作には一定のテクニックが必要だ。

一方でドローンはGPSや電子コンパス、加速度センサーなどが搭載されている。電子制御の技術によりある程度の自律性があるため、操縦者がすべてを操作する必要がない。

ドローンの飛行可能な場所とは

ドローンのような無人航空機は重量が200g以上になると、飛行可能な場所に制限がある。飛行が制限されるのは、以下の空域だ。

・空港などの周辺

・人口集中地区の上空

・150m以上の高さの空域

以上の空域を飛行するには事前に地方航空局長の許可が必要となる。なお、機体の重量が200g未満であっても、住まいの自治体によって公園や公共施設内での飛行を禁じている場合がある。飛行する場所の土地所有や自治体に確認が必要だ。

また、飛行させる場所に関わらず、ドローンを飛行させるには「日中に飛行させる」「目視範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させる」「人または物件との間に30m以上の距離を保て飛行させる」などのルールがある。

このようにドローンの飛行にはさまざまなルールや法律がある。しかし、ドローン専用飛行場であれば、ルールや法律を気にすることなく楽しめるようになっている。

日本国内におけるドローン配達の現状と課題

ここからは、ドローン配達の現状と課題をみていく。

物流業界の人手不足にドローンの活用に期待が寄せられている

物流業界は人手不足が課題だ。その背景には、ECサイト利用者の増加によって物流需要も増えたことがある。荷物も個人向けが多くなり、物流需要の増大がトラック積載率の低下も招いた。

さらに、不在再配達の回数が増加して、労働時間にも悪影響を与えた。労働環境の悪化は若手人材の獲得に影響もあり、物流業界は人材不足から抜け出せていない。

この人手不足の状況に、無人飛行が可能なドローン配達が注目されている。実際にさまざまな企業がドローン配達の実証実験を行い、実用化に向けて動いている。しかしながら、ドローン配達には多くの課題がある。

・法律の整備

・商品の落下やドローンの墜落

・ドローンや商品の盗難

・重量があるものや大量配達ができるか

・受取人の本人確認

・ドローン配達業者を装った詐欺や盗難、危険物輸送

・ドローン配達業者同士による衝突事故

以上の懸念材料に合わせ、管理システムや運営体制の責任者、整備士などの人材育成も課題だろう。そのため、ドローン配達が普及するの地方の過疎地域や近距離配達が有力という声もある。

ドローン配達が実用化されると、労働不足の解消だけではなく配達コストの削減や配達時間の短縮に効果が見込める。現状のドローン配達の課題をいかに解消するかがポイントだろう。

2022年の規制緩和の影響によるドローン配達需要拡大への期待

前述のとおり、機体が200g以上のドローンは操縦者が目視できる範囲で飛行させるルールがある。しかし、政府は2022年度に有人地帯での目視外飛行に向けて制度設計をしている。

国土交通省が、2021年夏にもドローンの飛行の許可基準を一部緩和することを発表している。これによって、高層ビル周辺での高さ150メートル以上の飛行は許可が不要になり、ビルなどの建物を点検しやすくなるなどの効果が期待される。

このまま規制緩和が進み、仮に2022年度に有人地帯での目視外飛行が可能となれば、ドローン配達が抱える現状の課題が解決できるかもしれない。ただし、有人地帯での目視外飛行には認証制度などがある。機体認証、操縦ライセンスの義務付け、運航ルールの遵守の個別審査をクリアして、有人地帯での目視外飛行が可能となる予定だ。

また、制度イメージでは一定の水準に基づいてあらかじめ審査を行い、機体と操縦者について飛行ごとの審査を省くものになっている。機体認証はドローンの安全性が十分であることを、設計や製造過程、実機検査など自動車と同じような流れで認証する仕組みを必要としている。

操縦者については、安全に飛行させるための知識や技術を判断するために学科や実地の試験が必要となるだろう。さらに、気象条件を考慮した飛行計画の作成スキルを含む全般的な運航管理の能力を求めるべきとされている。この操縦者のライセンスも運転免許と同様で、年齢制限、有効期限、目視外(目視内)、行政処分なども定める必要がありそうだ。

とはいえ、このように厳格に制度を整えていくことは、ドローン配達が抱える現状の課題の解消にもつながるだろう。

ANAホールディングス(HD)は、2022年度の制度規制緩和をもくろみ、国内でドローンを使った物流サービスに乗り出すことを発表している。ドイツの新興企業が開発した輸送用ドローンを導入し、全国の離島や山間部に日用品や医薬品を運ぶ予定だ。ANAホールディングスのドローン輸送分野への参入は、国内の航空会社としては初めての例となる。

ドローン配達の実例や今後の展望

ここでは、ドローン配達の実例や今後の展開として、3社の事例を紹介する。

楽天「そら楽」

楽天が取り組むドローン物流サービスが「そら楽」だ。そら楽は世界で初めてドローン物流サービスを一般に提供している。

完全自律飛行のドローンによる目視外飛行を運用しており、約1ヶ月間にわたりゴルフ場でドローン物流サービスを提供した。具体的にはスマートフォンで商品の注文を行い、ゴルフ場内の配達ポイントに配送している。

今後は過疎地などの物流困難者支援や災害発生時の物資配送を目指している

Wing「Google Xプロジェクト」

ドローン配達で先行しているのが、アルファベット社(Googleの親会社)傘下のWingだ。GoogleXプロジェクトとして研究開発を進め、2018年には子会社として独立した。2019年10月には米国連邦航空局から商用配達の承認を得ている。

また、大手薬局チェーンWalgreensと提携して医薬品の配達にも成功した。Wingが開発するドローンは時速120kmでの飛行や地上約122mまで上昇することが可能だ。荷物は機体につけた紐から落とし、玄関先などに届ける。機能性や安全性は米国だけではなく、オーストラリアやフィンランドで数万回もの試験飛行で実証されている。

Amazon「premier Air」

米アマゾン・ドット・コムは、2020年8月29日に米連邦航空局からドローン配送サービスの「premier Air」の商用化に必要な認可を受けた。全米規模の本格展開には数年かかると見込まれるが、約2kgまでの商品を運べるドローンが注文から30分以内に発注者の自宅に商品を届けることを目標にしている。

ドローン配達の普及に期待

ドローンとは無人の航空機であり、遠隔操作や自動制御により操縦する。趣味でドローンの操縦を楽しむ人もいるが、産業ドローンのように我々の生活に有効な活用方法もある。

なかでも物流業界では人手不足などを補うために、ドローン配達に関係する実証実験や制度整備が行われている。米国では当局に認可されて実用化の例もある。しかし、国内でのドローン配達には課題も多そうだ。現在のルールでは日中での飛行や目視範囲内での飛行などのルールがあり、規制緩和が待たれている。

規制緩和やルールの整備などを含めて、今後、どのようにドローン配達が普及していくのか見守ろう。

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