知らないうちに見落としがちな「食品表示」のポイント再確認

2022.04.21

2020.08.07

消費者問題研究所代表 垣田達哉

食品表示法の猶予期間が終了し、4月1日から製造・加工された加工食品は、全て新表示に対応したものでないと食品表示法違反に問われる。

特に、消費者でも一目で違反と分かる表示がある。少なくともそこだけは、売場に陳列する前に確認し、クレームにならないように注意しよう。

①栄養成分表示をしているか

容器包装された加工食品には、原則、熱量(エネルギー)・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の栄養成分表示が義務付けられた。

表示を省略できるのは、表示可能面積がおおむね30㎠以下の商品である。5㎝×6㎝の包装紙で包んだものより小さければ表示免除になるが、そんな小さな商品はほとんどない。

店頭では、小さい商品は意外と多い。おにぎりや大福の1個売り、せんべい1枚入り等、総菜や和菓子・洋菓子などに相当数ある。小さい商品だけに、どこに表示をするのかというレイアウトも考えなければならない。

小売側で表示する商品は少ないが、栄養成分表示は内容が正しいかどうかという以前に、表示されているかどうかがポイントだ。仕入業者には中小企業も多いので、法律が変わったことを知らない可能性もある。表示されているかだけでも確認するべきだ。

塩干物の表示を忘れずに

従来、栄養成分表示がほとんどされていなかった代表的な食品が、サバやホッケなどの干物や、塩サケ、シシャモ、シラス干しなどの塩干物だ。

特に、店内で小分けする場合、加工行為であっても店内加工品とは認められないので栄養成分表示が必須になる。栄養成分は、小売業には表示義務はあるが、業者間取引では表示義務はない。小分け商品をどちらが(業者か小売りか)表示するのかを、あらかじめ決めておかなければならない。

小分け以外にも、センター加工品、店間移動商品など、小売業には店内加工品に該当しない商品が多く、店によっても表示が異なることもあるので注意が必要である。

②店内加工かどうか正しい判断を

店内加工品なら原材料と栄養成分等の表示は省略できる。しかし、加工行為を店内でしても、店内加工品と認められないものがある。

加工行為と定義されながらも店内加工品と認められないものは、前述したように、シシャモなどの塩干物や他店で製造されたポテトサラダなどの店内での小分け、その他に再包装や切断、整形、解凍などがある。

ただし、行為は加工に該当するので、店内でこうした行為をした場合は、店内が最終加工地になり、商品には加工者(店舗の住所・氏名又は名称)の表示をしなければならない。

刺し身や食肉の筋切りなども加工行為になるが、産地や名称などの生鮮食品の表示をしなければならない。生鮮食品であっても、加工者の表示も必要だ。刺し身の盛り合わせは、加工食品に表示が義務付けられているので、店内加工でなければ栄養成分表示が必須となる。

③原材料と添加物を「/」等で明確に区別して表示しているか

見た目ではほとんど目立たないが、その意味するところが非常に大きい表示が、原材料名欄に使われる「/」(スラッシュ)である。

食品表示法では「原材料と添加物の区分を明確に表示すること」になった。表示方法は4通りあるが、ほとんどの事業者が、原材料と添加物の区別にスラッシュを使用している。

これは、従来の「、」を「/」に変えるだけなので文字数が変わらないことと、一番目立たない方法だからだ。ただし、「/」の方法は、消費者だけでなく、表示する側にとっても目立たないので、新表示なのか旧表示なのか一目で分かりづらい。旧表示のままだと、原材料の間がすべて「、」になるので、添加物が一切使われていない食品ということになってしまう。

仕入商品の表示責任は、納入業者やメーカー側になるが、陳列される数量が多いので、間違っていると撤去しなければならず、売場構成に大きな影響を及ぼす。

一方、小売店で注意しなければならないのが、自社で作る弁当・惣菜だ。毎日、少量多品種を作り、表示内容も毎日のように変わる。目立たない表示ということは、消費者だけでなく店側も見落としやすいということだ。目立たない表示だからこそ一番注意しなければならない。

④アレルギー表示の一括表示部分に、アレルゲンを全て表示しているか

アレルギー表示は、大原則が「原材料ごとに表示をする個別表示」だが、個別表示が困難な場合や個別表示がなじまない場合に限って、最後にアレルゲンをまとめて表示する一括表示が認められている。

一括表示は、原材料欄の最後に、括弧「()」の中に表示をするが、そこを見るだけでも新表示かどうか見分けがつく。

1つが、アレルギー表示を表す言葉である。旧表示は「(原材料の一部に…を含む)」あるいは「(その他…を含む)」となっていたが、新表示はすべて「(一部に…を含む)」に統一された。

もう1つは、一括表示をする場合、旧表示は、例えば原材料欄に、卵とか卵黄と表示されていれば、一括表示では省略することができた。

しかし新表示は、その食品に含まれているアレルゲンを全て表示することになったことだ。

これは、アレルギー患者にとっても「最後の一括表示さえ確認すれば、この食品にどんなアレルゲンが含まれているかが一目で分かる」という利点があるので、一括表示を認める代わりに、含まれているアレルゲンを一括表示に全て表示することになったのだ。

⑤販売者だけの加工食品はほぼない

食品表示法では、食品関連事業者(表示上の責任者)と製造・加工責任者(衛生上の責任者)の住所・氏名又は名称の表示が義務付けられている。

表示上の責任者は「製造者」「加工者」「輸入者」「販売者」のいずれかだが、衛生上の責任者には、販売者は含まれていない。

製造者や加工者、輸入者が表示上の責任者を兼務することはできるが、販売者は衛生上の責任者を兼務することはできない。つまり、製造者や加工者、輸入者だけが表示された商品はあっても、販売者だけの商品はないということだ。ただ例外的に、製造所固有記号を使っている商品は、販売者だけの表示も認められている。

生鮮食品であっても、刺し身などの生食用魚介類と食肉は、従来通り、個別表示義務で加工者の住所・氏名又は名称の表示が必要だ。

容器包装された加工食品と一部の生鮮食品には「○○スーパー」といった小売店の名称だけでなく、必ず製造者などの衛生上の責任者と住所を表示しなければならないので要注意である。

2022年4月からは、加工食品の原料原産地表示も完全義務化される。特に、弁当・惣菜は要注意商品だ。早め早めの対応を心がけよう。

かきた たつや 1953年生まれ。77年慶応義塾大学商学部卒業。テック電子(現、東芝テック)など、流通関連会社にて、添加物、衣料品の表示、バーコードシステム商品などの企画、開発を担当。91年の添加物表示改正の際には、テック電子の担当責任者として、スーパーや百貨店、食品メーカー、卸業者向けに、全国で講演。現在、消費者問題研究所代表。食品表示の専門家として、マスコミでの評論や執筆、講演活動を精力的に行う。

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