ヤオコー久喜吉羽店がオープン、ミドルシニア層特化の北エリア旗艦店、ベーシック磨き込みと「グローサラント」再挑戦
2024.09.09
ヤオコーの新たな旗艦店の位置づけを持つ久喜吉羽店が9月6日、埼玉県久喜市にオープンした。今回のオープンによって埼玉県は102店体制、他、千葉県33店、群馬県16店、東京都14店、神奈川県12店、茨城県7店、栃木県6店の計190店体制となった。
JR宇都宮線、東武伊勢崎線の久喜駅東口から南東へ約1km、徒歩約20分の距離に位置し、久喜市への出店は2019年オープンの久喜菖蒲店に続く2店目。
ただし、西方面の久喜菖蒲店からはアクセスとして約8.4km離れている他、南方面に位置する新白岡店(埼玉県白岡市)からも同4.5km離れている。また、東方面に位置する幸手店(埼玉県幸手市)からも同5km弱離れていることから、出店としても空白を埋める形となった。
店舗の南北を通るいちょう通りは久喜駅の東西を結ぶ県道153号線と県道85号線につながるなど、車でのアクセスが良好な立地。出店地前道路はインターチェンジ(IC)計画などの開発で延伸が見込まれ、将来的に商圏拡大が期待される。
また、県道153号線沿いには商業施設や学校、団地など生活拠点の中心となる施設が多く点在し、人口が密集している地域となっている。敷地自体は農地転用からの開発で、ドラッグストアのセキ、ダイソーなどとネイバーフッドショッピングセンターを構成している。ショッピングセンターは自社開発。ショッピングセンター内の旗艦店ということもあって、標準店と比べても広い5km圏程度の広域からの集客を想定する。
メインターゲットは50歳以上のミドルシニア層
同社としては、今回の久喜吉羽店を「ミドルシニア層に特化させた北エリア旗艦店」と位置づける。ヤオコーでは出店エリアが広がる中、昨今では客層の違いなどから南北でお客のニーズが変わってきていると実感、政策を分けて取り組んでいる。
同社における北エリアは埼玉県北部、群馬県、茨城県、栃木県の店舗で、商圏内には比較的ミドルシニア層が多い。一方、南エリアは比較的ヤングの比率が高い傾向にある。
久喜吉羽店ストアコンセプトは、「毎日が豊かで楽しく、新たな発見や体験ができるお店~ミドルシニア層に特化させた北エリア旗艦店の構築~」。
周辺は、1~3km圏内には70歳以上の割合が多く、次いで40代~50代といった形で、50代以上が占める構成比が49.4%と高い。さらに商圏が広がるごとに60代の割合が増え、20代の割合が減るという高齢者の多い商圏となっている。
同社では50~64歳を「ミドル」、65歳以上を「シニア」と定義しているが、まさにコンセプトの「ミドルシニア層に特化」させるには適した商圏といえる。そのため、新規性のある商品を多数展開するというよりは、昔ながらのベースとなっている商品に磨き込みをかけ、ミドルシニア層の支持を高めることが主な狙いとなった。
メインターゲットは50歳以上のミドルシニア層で、ペルソナとしては子どもが独立し、2人暮らし、こだわりを持つ一方で節約志向があり、「良いものを安く」との考えで、サービスの良い店を利用し続ける傾向にあるといったものとなる。
サブターゲットは、1つ目が49歳以下のヤングファミリー層で、共働きで子育てに忙しく、食事は簡単に済ませたいと思っていて、価格重視、冷凍ストック大量目の商品の需要があるといったもの。サブの2つ目は、単身者、2人世帯の若年層で、食事は簡単に済ませたいものの、1km圏内に飲食店が少ないことからコンビニ弁当を多用し、若干食べ飽きているといった顧客像となる。
地域のお客に寄り添いながら、「美味しさ」「品揃え」「安さ」「提案力」の4つの価値を生み出し、来店する全てのお客が自然と「笑顔」で買物を楽しむ店にしていくことが理想だという。
売場面積891坪の大型店で、ヤオコーとしてはこれまでで最大の売場面積となる。初年度年商予定は27億円。売上高構成比は生鮮40%、グロッサリー42%、デリカ18%を計画する。SKU数は生鮮1050、グロッサリー1万5400、デリカ360。
ヤオコーの1店当たり平均の年商は約28億円ということで、最大売場面積の旗艦店の年商計画としては控え目に映るが、あくまで初年度計画ということで以後、30億円、さらに40億円超のレベルを狙いたいという。
ネットスーパーにも対応を予定するが、サービス開始は来期からとなる。ネットスーパーは既存店では日販で50万円ほど売上げる店舗もあるというが、便数など配送態勢の上限もあってある程度売上げの高まりには限界がある。
まずは日販30万円を目指し、その後、便数を増やし最大のキャパシティで同70万~80万円までは想定できるが、その辺りは作業場のスペースなどを見ながらの調整となる。ただし、仮に日販50万円だとしても1.5億円超ということで、それなりのボリュームが想定される。
鮮魚の尺数は全店で最大、惣菜の取り組みとデリカとの連動も
久喜吉羽店では、お客に寄り添った提案を深化させるため、新しいサービスや商品の価値を伝えるための取り組みを実施。バイオーダーで出来たてつくりたてをご提供する「YAOKO Deli & Café」、ペットも一緒に楽しく寛ぐことができるテラス席の設置や「みんなの広場」、生鮮の提案に特化したクッキングサポート、商品の魅力を繰り返し発信するデジタルサイネージの設置などに取り組む。
売場は、ショッピングセンターテナント側の入口をメインとし、ヤオコーでは大型店で採用されることが多い青果とデリカを第1主通路に配置したパターンを採用。
マーチャンダイジングの取り組みでは、まず生鮮では、精肉は、国産豚肉をディスカウント販売しつつ、肉のうま味と脂の甘さにこだわった「三元豚(国産)」として、改めておいしさと品質を訴求。
自社製造のローストビーフ、カット野菜を合わせた生鮮サラダ「ヤオコーまるごとサラダ」や、希少部位を使った生肉冷凍、国産和牛のうま味を余すことなく使用した手づくりハンバーグなど、独自性を打ち出した商品を提案する。
ヤオコーまるごとサラダはコーナー化の上、生鮮3部門から素材を集め、精肉部門の作業場で製造した商品を集積している。以前、生鮮各部門の素材を使ったサラダを展開していた「サラダステーション」のコンセプトと同じものだ。
鮮魚は、全店で最大の尺数で展開。豊洲市場から仕入れた近海鮮魚の品揃えを充実させる他、人気のサケは塩ザケの他にこだわりの味付けも加えて提供。また鮮魚ならではの魚惣菜、鮮魚鮨を、品揃え豊かな売場で提案する。
鮮魚はデリカと隣接しているレイアウトを生かし、生魚、デリカの寿司、鮮魚の寿司、魚惣菜が一体化したゾーニングとしている。
また、クッキングサポートとも連動し、魚の知識が豊富なメンバーによるメニュー提案などを通じて「豊かな食生活を提案する」接客を目指す。クッキングサポートは広めにした他、近くにある鮮魚部門との連動が強化されている。移動ワゴンも投入し、試食販売も実施する。
青果は、味と鮮度にこだわったトマトを値頃で、かつ豊富に品揃え。
大型野菜や根菜類はドーリーごと陳列可能な方式にするなど、物量の多い分野だけにオペレーションの負荷を減らす取り組みも実施している。
また、切り花の日持ち保証を全品に拡大し、無償の栄養剤を使用してもらうことで、より美しく、長く楽しめる「花のある生活」を提案する。花売場にはデジタルサイネージを設置し、日持ち保証を説明する動画などを配信している。
グロッサリーの日配食品は、産地や品種、製法にこだわった大豆加工商品(豆腐、豆乳など)を拡大し、健康を意識した品揃えを提案。また、後述する日本酒の品揃え強化に伴って、日本酒に合う練り物つまみをコーナー化し、こだわり商品を厳選した「ご当地企画」でバラエティ豊富に選べる楽しさを実現する。
ドライ食品は、ミドルシニア層を意識して調味料類を強化。全国各地の地元みそは独立してコーナー化している。ニンニクやもろみを使ったおかずみそなども拡大する。他、乾物、ドレッシングなども強化。
豚肉に合うたれや、定番の豆菓子、お茶うけの甘納豆、カフェインレスといったし好品も豊富に品揃え。飲料ではラベルレスボトルの取り組みを強化する。
酒では、日本酒、日本ワイン、国産クラフトビールなど、日常普段からハレの日の食事にも合う「ちょっと良い」酒まで、豊富に品揃え。日本酒については23年オープンのトナリエ宇都宮店(栃木県宇都宮市)で強化したが、今回、小瓶の飲み切りサイズやフルーティな味わいの商品など含め品揃えをさらに強化した。
住居関連では、ペットフードやペット用品のラインアップを強化し、健康を意識したフードやリードなど散歩関連の商品を豊富に品揃えする。
その他、初めて諸国名産品を定番化した他、売場の広さを生かし、それ以外の商品についても地域ごとの催事展開を随所で行うといった取り組みを実施している。
デリカでは「グローサラント」に踏み込む
デリカの惣菜は、「DEEP-FRIED STATION」で店内仕込みの「あじフライ」を、冷惣菜のCREATIVE y’s DELIでは店内で蒸し上げたジャガ芋を使用したポテトサラダを中心に、店内調理のサラダを展開する。
また、米飯では、健康志向に配慮した玄米、発酵食品使用の弁当「幸玄米」シリーズを品揃え。
寿司は、定番のマグロの握り、値頃な巻き物、いなり寿司を豊富に品揃えし、人気のおむすびは素材にこだわり、店内握りたてのライブ感あるオープンキッチンで提供。
商品ではスチームコンベクションオーブンを使ってやわらかく煮上げたアナゴを使った出来たての「煮あなご重」や、健康を意識した玄米使用のおむすび「幸玄米」を提案。
インストアベーカリーは、鉄板調理の「厚焼きたまごフライカツ」や「ナポリタン」、自社製造のローストビーフを挟んだサンドイッチやドッグパンを新たに提案する。作業場には鉄板を全3枚設置しているが、うち惣菜で2枚使用し、1枚はベーカリー用としている。
デリカ部門の寿司、惣菜、ベーカリーは作業場を連結させた上で中にローラーコンベアを設置。商品をパイレッシュに載せた状態で移動できるようにして人の移動を減らしている。既存店でもスペースのある店では一部導入を進めていて、結果として時間当たりの製造量が10~20%増える効果につながっているという。
また、今回、飲食店のように出来たて商品を提供し、その場で食べてもらう「グローサラント」機能に踏み込む。「YAOKO Deli & Café」で、注文を受けてから作ることで、「出来たて、作りたて」の状態で商品を提供。
券売機で食券を購入し、準備状況はモニターに番号表示されることで伝える。
モーニングセットは、ベーカリーの名物商品「ロイヤルブレッド」を使用した厚切りトースト、ドリップコーヒーとサラダのセットなど、数種類のロイヤルブレッドのセットを内容によって税込み300円~400円の価格帯で提供する。また、ランチでは惣菜の名物商品「手仕込みロースとんかつ」「手仕込みロースかつ丼」を各税込み600円で、定食の形で提供。
モーニングセットは7時30分~11時、ランチは11時~14時の時間帯での提供で、あくまで時間帯を限定した上で、ディナーの提供には踏み込まず、酒にも対応しない。この辺りからは絞り込みによるリスクヘッジの姿勢を感じる。
同社は川越南古谷店(埼玉県川越市)を15年に改装した際、海鮮丼、天丼などを提供するグローサラントの取り組みを導入したが、オペレーションや展開商品などの面で課題がありやめたという経緯がある。
その後、新型コロナウイルスによって業界としてもグローサラントの取り組みは影を潜めていたが、今回、川越南古谷店での課題も踏まえて再挑戦する形となった。例えば、今回、専任の担当者を付けるといった対応を取っている。
「新しい取り組みというよりは、ヤオコーのベーシックな商品のおいしさをお客さまにお伝えする1つの機会、ツールとして使おうということ。ただ、川越南古谷店での反省だが、店内で販売している商品と全く同じ商品であると、あえてご注文される方はいない。店内で購入できるものとグローサラントで提供するものの差が十分にできていなかったことが反省としてある。だからこそ、出来たてでおいしさが感じられるものを今回、選択した」(川野澄人社長)
店内のテーブル席は全54席。テーブルが36席、ボックス席が8席、1人用の席が10席。一部エリアをパーテーションで区切って料理教室などができる構造にしている。外のテラス席は32席。こちらはペットといっしょに食を楽しむことができる。
また、隣接したみんなの広場にはベンチを設置し、散歩などペットと過ごす時間を楽しめるコミュニティスペースとして利用できる。
レジについては通常稼働はセミセルフレジ7レーン、フルセルフレジ12台の態勢。また、今回、実験的にレジ回りにデジタルサイネージを5台設置し、ヤオコーのこだわり商品などを紹介すると共に、その下でプライベートブランド商品など紹介する商品の一部を販売する。
ヤオコー久喜吉羽店概要
所在地/埼玉県久喜市吉羽421
オープン日/2024年9月6日
営業時間/9時~21時30分
駐車台数/270台(駐輪場186台、バイク10台)
敷地面積/1万5919㎡(4815坪、施設全体)
延べ床面積/5233㎡(1583坪、ヤオコー床面積)
店舗面積/2947㎡(891坪、ヤオコー売場面積)
店長/高田真也
従業員数/正社員25人、パートナー・ヘルパー・アルバイト175人(延べ人数)
年間売上げ/初年度27億円(予定)
商圏人口/1km圏内1万6000人(7000世帯)、2km圏内5万人(2万3000世帯)、3km圏内10万4000人(4万4000世帯)