ヤオコー杉並桃井店が6月11日オープン、ヤオコーの東京23区初出店、都市部立地で高販売効率目指す

2025.06.12

ヤオコーは6月11日、東京・杉並にヤオコー杉並桃井店をオープンした。東京都15店目の出店で東京23区には初出店となる。全社では196店体制になった。もともとヤオコーは都心から20km~40km圏の「ドーナツエリア」を出店のターゲットとしていたが、今後は20km圏内にも出店を進めていく意向で、今回の出店はその足がかりの位置づけとなる。

都道4号線(青梅街道)沿いに立地し、JR中央本線西荻窪駅から約1.2km、西武新宿線上井草駅から約1.5kmと鉄道駅からはやや距離があるものの、これら鉄道駅を起点としたバス路線も充実していることから、交通利便性の高い立地といえる。店舗北側には大型共同住宅や新しい戸建て住宅などが密集している他、小、中学校も多く、子どもがいるファミリー層が多いエリアとなっている。

もともと2004年12月にオープンし、24年6月に閉店したクイーンズ伊勢丹杉並桃井店があった場所で、建物の躯体を生かした上で内装を含め改装を加えた居抜き出店。もともとテナントが入った2層のネイバーフッドショッピングセンター的な店であったが、今回、基本的に以前のテナントが入った上で医療機関を加えた形で再オープンした。

テナントはヤオコーによるリーシングで、ドラッグストアに調剤薬局が併設されたトモズ、モスバーガー(6月18日オープン予定)、ポニークリーニングなど。医療機関は7月以降に開業を予定しているが、調剤薬局と併せ、日常使いの利便性が高い施設となっている。

核店のヤオコーは前述のとおり、東京23区初出店となった。都心に近いエリアはそもそも不動産費が高い上、建物が密集していることからスーパーマーケットが出店するのに適した物件が少ないという宿命があるが、今回は商圏人口が半径1km圏で5万5000人と非常に多い一方で、もともと同業が営業していた物件ということもあって売場面積は510坪と都市部としては比較的大きく取れたといえる。

ただし、家賃水準はそれなりに高いとみられ、初年度の年商予定は30億円とハイレベル。坪当たり販売効率で約590万円を売り上げる売場づくりが求められる。今後、さらなる都心部に出店する上でも、この店での経験を生かす考えもある。

初年度の売上高構成比計画では生鮮が37%、グロッサリー(日配、加工食品)が44%、デリカ(惣菜、寿司、ベーカリー)が19%と、デリカは全社平均の15%と比べかなり高くなると見込んでいる。オープン時のSKU数は生鮮が850、グロッサリーが1万2540、デリカが340。

ヤオコー杉並桃井店のストアコンセプトは「『美味しさ』『品揃え』『提案』で豊かな食生活を提案するお店~ヤオコーの『魅力』を杉並へ!!新たなファンを獲得しよう!~」。

東京都23区初出店ということで、半径6km以上に渡ってヤオコーの既存店がないなど認知度が低いとみられることから、まずは「ヤオコー」の魅力を知ってもらおうという意味合いが強く感じられる。加えて、都市部立地という点を踏まえ、少しハイグレード、ハイエンドの商品を差し込む。

半径1km圏内は30代~50代の世代がボリュームゾーンで杉並区平均と比べ高い46.6%を占める。10代、10代未満も杉並区平均と比べて高く、ファミリー層が多いエリアとなっている。特に500m圏内は比較的所得が高い世帯が住む。周辺の住民像としては共働き世帯が多く、平日は足元の店に、週末は駅前の商業施設などに買物に行くといった形で、平日と週末で買物のし好や仕方が異なる人が多いとみる。

それらを踏まえ、メインの顧客層として30代~50代のヤングミドル層で、2人~4人の家族を想定。想定する顧客像としては、夫婦共働きで子育てに忙しく、食事を簡単に済ませたい一方で、安全・安心の意識が高く、子どもに食べさせるものは素材から作りたいと思っているなど、子ども中心の食事や行動になっている家族。あるいは情報や流行に敏感でスマホを駆使して情報収集する新商品や話題商品に興味がある層。

続いて多い顧客層として、10代~20代のヤング層の単身者を想定。仕事とプライベートのバランスを重視したライフスタイルで、即食ニーズも高い層。自炊もするが、タイムパフォーマンスを重視していて、むだな出費を抑えたいと考えていて、食べ切り、使い切りへの意識が高い層となる。

駐車場について、ヤオコーで買物することで通常30分の無料時間が90分に延長されるなど割引があるものの基本有料であることもあって、来店手段は自転車や徒歩がメインとなると想定している。

売場面積は510坪で、小型店という規模ではないが、ヤオコーの標準店としてはややコンパクトといえる規模。正方形に近い形ということもあって、入口を1カ所にした上で、青果と惣菜を第1主通路に配置するパターンとなっている。

売場レイアウト図

具体的なマーチャンダイジングは、まず、精肉は黒毛和牛ロースや黒豚を訴求し、メニューに合わせてさまざまな部位を提案。また、夕方の即食ニーズに応えるため、自社製造ローストビーフなどのミートデリカを豊富に品揃えする。精肉部門にもスチームコンベクションオーブンを設置し、調理した商品を展開する。

鮮魚は豊洲市場で仕入れた魚を豊富に取りそろえ、「旬を感じる」売場の実現を目指す。厚切りの切り身の他、夕方にかけて切りたて、造りたての刺身の盛り合わせを強化。ニーズに合わせた提案を目指す。盛り合わせの刺身は従来の商品と比べて厚切りにすることで、価値の向上を図った。

青果は、ヤオコーこだわりの木熟ブランドトマトを中心に、味や糖度にこだわったトマトを強化。オープン日は「幸の匠」ブランドとして「極上のフルーツミニトマト」を訴求していた。他、有機野菜の品揃えにもこだわり、さまざまなメニュー提案を実施する。

果実ではオープン日、国産の完熟マンゴーとアメリカカリフォルニア産のアメリカンチェリーを訴求。また、即食ニーズに対応するため、個食用を含むカットフルーツの品揃えを強化した。

デリカの惣菜では、ヤオコー名物の「手握りおはぎ」を粒あん、きなこ、ずんだの3種類を展開。粒あんには北海道産アズキを使用。また、ランチや夕食などの時間帯のニーズに合わせて、出来たてでの提供に努める。

また、杉並桃井店から米飯の新ブランドとして「極み幸米」のシリーズを展開。高付加価値商品としてまずは「うな重&焼きとり重」(本体価格880円)、「無保水特大海老天重」(同980円)など6アイテムを展開する。

温惣菜では豚カツについて、刺身盛り合わせと同様、厚切りを実験。通常の1.5倍の厚さで商品化している。また、鶏惣菜の「幸唐」では「手羽先&チューリップ」といった商品も開発。

平ケースの冷惣菜などは創作性の高いクリエイティブy’sデリなど一部を除いて自社工場製の商品がメインとなっている。和惣菜では本体価格158円のかなり小さな量目も用意。店内でのパック詰めではなかなか品揃えが大変だが、工場製にすることでその問題の解決を図っている

寿司では、ランチにうどんセットの「シン・花寿司」や「やみつきポキ丼」など、夕方以降は握り寿司を中心にするといった形で、時間帯のニーズに合わせて品揃えを変化させる。また、巻き物の他、とろから赤身までしっかり入った「本鮪握り入り鮪尽くし」(本体価格1380円)や惣菜で展開する「自家製厚焼玉子」を使った握り寿司なども展開する。

インストアベーカリーは、「北海道小麦のカレーパン」や「具シリーズ」など、時間帯に合わせて出来たてでの提供に努める。ランチニーズを狙い、「鉄板巻上自家製厚焼玉子かつサンド」や惣菜のメンチカツの肉を使った「ハンバーガー」なども展開。

また、ベーカリーの新商品として、自社製造の玄米赤飯をパンに練り込んだ「小豆香る玄米食パン」(本体価格698円)を今回、新発売した。

「小豆香る玄米食パン」のスライス

グロッサリーでは、日配はこだわりのプライベートブランド商品などのプレーンヨーグルトを豊富に品揃えし、「地域1番」の品揃えの実現を目指す。また、ご当地の練り物を豊富に品揃えする他、定期的な産地フェアを通じて「選んで楽しい」売場の実現を目指す。

日配の冷蔵ケースでは冷蔵ケースが入らない柱周りを活用して、関連する商品を常温で単品大量で訴求するなど、プロモーションスペースとして活用している。右側は強化したプレーンヨーグルト売場
練り物1つとってもコーナー化などでアクセントを付ける。日配は利益商材だけに、品揃えを打ち出しての売り込みが重要になる
この店ならではの品揃えとして、島根県出雲市の漬け物会社であるけんちゃん漬の商品をこだわり商品として集合展開
豆腐は500円超の高単価の商品も取り扱うが、売り込み商品として、2種の国産大豆をブレンドした豆腐の取り扱いをこの店から開始。本体価格で198円

冷凍食品では、メインの顧客層も踏まえ、この店から個食のおにぎり、子ども用の離乳食の取り扱いを開始。

売場面積が限られる一方、販売効率を高めることも求められることから、冷蔵のケースなど上段でも陳列量を確保する工夫がみられる

ドライ食品は、旬の生鮮食材と合わせたドレッシングの提案を強化する他、豆菓子のナッツやドライフルーツをメニューに合わせて提案する。

酒はスパークリングワインを中心にヤオコーの直輸入ワインの品揃えを強化し、さまざまなシーンで楽しめるような提案をしていく。また、東京・杉並という立地も考慮し、ワインではワインセラーも導入、5万円を超える高単価の商品も取り扱う。

レジは通常時は、セミセルフレジ6レーン、精算機12台、フルセルフレジ8台での運用を予定しているというように、セルフレジが主体になってきている。

ヤオコー杉並桃井店概要

所在地/東京都杉並区桃井3-5-1

オープン日/2025年6月11日

営業時間/9時~22時

駐車台数/101台(駐輪場200台、うちバイク8台を含む)

敷地面積/3901㎡(1180坪、施設全体)

延べ床面積/5213㎡(1577坪、ヤオコー床面積)

店舗面積/1686㎡(510坪、ヤオコー売場面積)

店長/鈴木裕一

従業員/正社員20人、パートナー・ヘルパー・アルバイト140人(延べ人数)

年間売上げ/初年度30億円(予定)

商圏人口/1km圏内5万5000人(2万9000世帯)、2km圏内20万4000人(11万2000世帯)、3km圏内44万7000人(24万5000世帯)

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