都心部を小型店で攻める「オーケー」の競争力、コロナ禍でも前年比120%超え
2022.04.12
2020.08.07
低価格に強みを持ち、業績も一際好調なオーケー。首都圏を地盤とする中、大型の店から100坪台の小型の店まで高い競争力で手掛けることができるのが強みで、曳舟店(東京・墨田)の131.37坪、湘南台店(神奈川県藤沢市)の140.41坪など、150坪クラスの小型店も立地に応じて展開している。
今年も400~600坪クラスの中規模店をオープンする一方で、例えば3月18日オープンの吉祥寺店(東京都武蔵野市)は208.67坪、5月27日オープンの三鷹北口店は286.08坪といった形で、小型店の出店を続けている。
二宮涼太郎社長は「都心は攻めたいので、(売場面積が)小さくても出店していく」と都心部への出店意欲を示す。
目次
インストアベーカリーは外しても、ピザは展開する
3月オープンの吉祥寺店はJR吉祥寺駅から700m、徒歩8分程度の高架下に立地。同じ高架下の近くにはビッグ・エー、駅方面には西友、ライフが営業しており、駅前には大型商業施設が立ち並ぶ。所得が高い層が多い潤沢な成熟商圏だが、競合店も多いエリアでもある。
吉祥寺店は曳舟店に続く2店目の高架下のため、売場は細長いレイアウトとなっているが、通路は一定幅を確保している。また、狭い店ではあるが非冷のゴンドラ什器は一部を除き従来の2.1mから1.8mへと30㎝低くし、照明は照度アップして天井を照らすなど明るい空間を目指した。
売場は狭いが、それぞれの部門やカテゴリーは欠落することなく展開し、標準のSKUに対して食品は80%、生鮮は70%と全体的に商品を絞り込み、非食品は30%と大幅に減らしている。
一方で、5月オープンの三鷹北口店は、中央・総武線で吉祥寺駅から西側に1駅、三鷹駅の北口から150mほどの駅前のビルの2階に出店。エスカレーターで2階に上がったところから青果売場を先頭に売場がスタートする。
小型店の場合、基本的にバックヤードが狭く、作業スペースが取りにくいため、同社として支持が高いインストアベーカリーは展開しないが、核商品のピザについては導入している。また、惣菜については揚げ物、弁当を中心に店内加工の商品も投入している。
精肉は吉祥寺店ではアウトパック、三鷹北口店では店内加工も行うなど、物件の設備状況によって柔軟に対応している。
青果は、カット野菜やミールキットといった簡便調理アイテムを充実させている他、有機野菜も投入。果物も国産、輸入と豊富にそろえ、さまざまな需要の取り込みを図っている。
精肉は、牛肉は一頭買いによるA4、もしくはA5の黒毛和牛を打ち出し、国産牛肉の取り扱いは和牛のみに絞っている。豚肉、鶏肉は国産中心で展開。一腹買いによる内臓系の冷凍肉も投入して一通通りのニーズに対応している。
鮮魚もマイナス50℃の超低温凍結の解凍本マグロを中心に刺身や切り身などをそろえる他、想定以上に売れているノルウェー産「旨い塩さば」を始めフローズンも充実させながらデイリーユースに対応する。
和洋の日配はベーシックアイテムを中心に展開。グロサリー、菓子は、大容量やバラエティ商品を一部カットしながら、一定の品揃えを実現させ不足感を感じさせない。
店舗網の拡大に勢い、高い成長力を維持
オーケーでは、地主や不動産業者からも引き合いが多く寄せられる状況にある。今後も首都圏で店舗網の拡大は続き、消費者の支持も高いことから高い成長力を維持していくと考えられる。
二宮涼太郎社長は「年間1坪当たり売上げは最低ラインで1000万円を目安にしているが、いずれもクリアできており収益性も高く、小型店のフォーマットも確立できている。2022年に向けて新たな旗艦店も視野に入れ、今後も東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県で、物件に応じて居抜きや土地取得などの形で出店していきたい」と語る。
店舗網の拡大に対応するため、昨秋から、神奈川県寒川町、千葉県流山市、埼玉県川口の3カ所の物流センターが稼働を開始、今年2月18日からは全ての常温食品が物流センター経由で店舗に納品されるようになった。検品や配送効率も向上するなど効果が出ている。
二宮社長も、「稼働後、いきなり新型コロナの問題が大きくなって物量が増えたが、幸い順調に推移している。回転率はとても良い。整備していてよかった。店も検品などの効率化したものもあるし、商品の確保としてもより上流にさかのぼってコントロールできるようになった」とその効果を強調する。
この春は、新型コロナウイルスが、世界中で猛威を振るった。3月、4月は業界平均より高い既存店前年比120%超の売上げとなった。
その分、供給もタイトとなり、特に品薄が続いた強力小麦粉はなかなか商品が入って来ない状態が続いた。一方、インストアベーカリー部門で使用している業務用の強力小麦粉が、調達可能と分かったことから、インストアベーカリーを展開する店では小分けするなどして販売した他、そのままの25㎏単位でも販売した。
「お客さまの小麦粉の強力粉の需要を満たす意味もあるが、ベーカリー部門としても使っている粉のこだわりも伝わり、改めてベーカリーを見直していただけたらと思った。図らずも今回のコロナ騒動でベーカリーの小麦粉のこだわりが伝わった」と二宮社長。
もともとオーケーのインストアベーカリーでは、商品ごとに粉を指定してブレンドするなど、品質にもこだわっていた。商品を低価格で販売していることもあり、そのこだわりが伝わっていない面もあったが、今回、改めてそれを伝える結果にもつながった。
パスタも通常は1㎏の商品がメインだが、こちらも業務用の4、5㎏の商品を販売したが、よく売れたという
競合が販促を強める「これからが勝負」
5月に入ってからも高い売上げを維持していたが、6月に入り、学校など徐々に以前の生活に戻る動きも出始める中、次第に競争も激しくなるとみる。
オーケーは、「高品質・Everyday Low Price」を経営方針として「地域一番の安値」を目指しており、価格競争力のあるアイテムを数多く展開している。しかし、価格強化した商品も、時間と共に強さが薄れることがあるため、商品、価格の見直しを常に行っていく必要があると考えている。
特に競合がチラシを控える中、オーケーとしてはもともとの価格優位性をベースに売上げを伸ばした側面もあるため、競合が販促を強める「これからが勝負」(二宮社長)だとする。
オリジナルや留め型商品の開発にも力を入れており、品質を担保しながら低価格を打ち出す。昨年新たに投入したインド製のバスタオルも売れ行きが好調で、直輸入も増やしていく考えだ。