どうする? 2023年の商品と売場 鮮魚編|夕方、夜間の見直しと即食、ロングライフの再強化

2022.12.22

全面的相場高の中、2022年は厳しい商売を強いられた。特に粗利益面では大きく前年実績割れした企業、店舗が多かった。この相場高は一過性のものでなく、23年も続くものと予測される。

中には一段の相場高となる商品もあり、あるいは少し相場が緩むと予測される商品あり、と一様ではないが、大勢において相場高基調は変わらない。「魚離れ」など消費傾向も変わらず、水産部門にとっては課題多き23年となる。今後の鮮魚部門の採るべき方向性について考えてみる。

夕方、夜の時間帯の重要性

この間、夜間の買物が増えてきたとの指摘がある。コロナ禍で少し流れが変わった面もあるが、社会構造が変わらない限り、夜間の買物客の比率は今後も増え続けるものと考えられる。鮮魚部門にとっても売上状況の厳しい中、「いかに夜間に売上げを取るか」が課題であり、伸びしろとして期待される。

夜の買物客の消費傾向は、刺身、生食など即食傾向が強く、いわゆる「レディトゥイート商品」の比率が高い。夜間に昼の生魚丸物、切り身などの品揃えを実現しても売上げにはつながりにくい。これまで夕方の「再開店」という文脈で語られたときの中身としては、①夕方の品切れをなくして陳列基準を満たすこと、②夜に強い商品の品揃えを増やすこと、③夜に売れにくい大型パックは小割して販売、というレベルであったが、今後の「再開店」については開始時間と商売構造について、もう少し根本から考え直す必要がありそうだ。

理屈の上では、「生魚丸物や切り身は夕方までに売り切り、夕方からは刺身、寿司など即食商品の品揃えを強化する」というのはたやすいが、拙速な値下げではロスがいたずらに増えるだけとなり、夕方から夜の刺身、寿司強化と言っても、現状の人手不足の中では難易度が相当に高くなる。

刺身、生食、魚惣菜の対策

一口にレディトゥイート商品、即食商品といっても、刺身造り、魚惣菜、鮮魚の寿司、サラダ類、魚卵、生珍味、加工品などさまざまある。刺身造りやサラダセット、刺身、生食商材といった商品はD+0やD+1が多く、中でもD+0商品は夕方から夜間に積極販売することは難易度が高い。

ただ、このところ盛んに指摘される食品ロス防止の観点からも消費期限の見直し機運が高まっている。現実に企業によっては包装技術などの工夫で刺身用サクなど一部の商品の消費期限を延ばしつつある。解凍キハダマグロ、メバチマグロや養殖ブリ、カツオたたきなどはD+1のままだが、蒸しタコ、生本マグロ、解凍サーモンや解凍ギンガレイなどはD+2となっている。

消費期限を短くして高鮮度訴求をすることは鮮度イメージの訴求にはつながるかもしれないが、食品ロスの点で売る側、買う側の双方にとって縛られる結果となった。

刺身造りについても課題は多い。つま、大葉なし(野菜なし)仕様を具現化すること。コストダウンと生産性アップ、さらにはD+0からD+1へと消費期限を延長できることで売上機会が増える。マグロ切り落としのような切り落とし仕様、規格が刺身、生食の主力商品となる可能性もある。

夕方から夜のための「専用規格」を作るのも一考だ。消費期限がD+0からD+1に変わるだけで、ロスが減る分、陳列量が増え、その分、売上げの機会も増えることが期待できる。今後、どういった形が主力となって、どう進展するかをしっかりと見極めたい。

今後、特に期待したいのは魚惣菜の活用。先述したように生魚丸物、切り身は夜の時間帯には需要が減る。これまでよりも売り切り時間を早めると値引きロスも増える。ある程度仕入量や陳列量を調整したり、値引きを強めたりしても残る。

その結果、残った商品を魚惣菜で処理するのも今後の商売として考えたい。鮮魚部門で魚惣菜を運営する店舗は良いが、問題は魚惣菜を運営してない店舗。当然ながら惣菜部門にお願いする形となるが、よく話し合って惣菜部門、鮮魚部門双方にとって長く継続できるような取り決めにしてほしい。

現在多いのは、残った商品を鮮魚部門から惣菜部門へ振り替え、惣菜部門の売上げとするパターンである。そのときも、仕入原価にどれだけ利益を見込んで振替原価とするのか慎重に決めたい。あらかじめ期間設定し、節目で振替条件を見直すのも一考だ。

個人的には調理を伴わないで右から左の商品は10%乗せ、調理の必要な商品は15~20%乗せくらいが、妥当な線ではないかと考える。

ロングライフ商品の積極的な取り込み

コロナ禍の中で顕著になった消費傾向として「ロングライフ志向」がある。

お客は好きな商品をストックし、好きなときに好きなだけ食べられることの便利性を重視するようになった。世界的に食品ロスが問題視される中、鮮魚部門でもさまざまな商品の販売方法が変化しつつある。

真空包装うなぎかば焼きは、シーズンオフに効果発揮

1匹2000円前後もする国産うなぎが、陳列してから半数も売れないうちに値下げ、そして最後には廃棄となるといったケースがみられる。シーズンオフには3、4パック出して1、2パック売れるか、売れないかで残りの2、3パックは値下げ、やがては半額、廃棄となる。

真空包装を導入すると1パック当たり70円~80円のコストはかかるが、消費期限がD+4からD+30などに大幅に延びる。

値下げが4、5日に一度発生するのか、30日に一度発生するのかでロス率は格段に良化する。そうなれば陳列量を増やし、積極的な商売が可能になる。真空包装を導入している企業では売上げも伸び、ロス率も改善されたとの報告がある。特にシーズンオフの効果は抜群だ。

真空うなぎ導入前の売場。夕方の売場は値引商品のみ。ロスを恐れるあまり品薄状態が常態化
真空うなぎ導入後の売場。販売期限に余裕があるため、夕帯、夜間でも陳列量が多く売上機会が増える

塩干商品の冷凍ケース販売および真空包装化

塩干魚は、従来、多くのスーパーマーケットにおいて冷蔵ケースで売られてきた。もともと一定の保存性を有する商品なので、買い置き的に購入される場合も少なくない。

一方、塩干魚がメーカーから店舗に届くまでは、以前から冷凍流通が基本なので、買い置き的に購入される場合は、家庭まで冷凍状態がリレーされた方が品質は維持される。

店舗で冷蔵ケース販売した場合、購入したお客が家庭の冷凍庫で保存すれば再凍結になってしまう。以前からこの状態を不合理と感じてきたが、ここ数年は、塩干魚を冷凍ケースで販売する企業、店舗が少しずつ増えつつある。

冷凍販売には霜付きによって見栄えが低下する弱点があるが、あらかじめ真空包装することでその軽減を図るようになってきた。

お役立ち資料データ

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