小型フォーマットの模索① ヨークベニマル今泉店|これまでの実験を集大成
2022.04.12
2021.03.18
ヨークベニマルは標準フォーマットの約2分の1の規模となる300坪型のフォーマットを模索してきたが、2月10日、これまでの実験を集大成した最新店となる今泉店を、栃木県宇都宮市にオープンした。
売場面積は1287㎡(389坪)で、「300坪型」というにはやや大型だが、売場づくりは、これまでの考え方と大きく異なる小型店仕様となっている。宇都宮市の中心部に位置し、JR宇都宮駅から北に1.4㎞ほどとアクセスも良く、店舗周辺には錦中央公園や小・中学校があるなど、住宅街への出店となった。
1㎞圏内の人口は1万7709人、世帯数は8220世帯、世帯人数は約2.1人。1、2人世帯の構成が66.7%と非常に高く、首都圏からの単身赴任者が多いという特色もあるといい、結果として借家が多い地域となっている。
出入口1カ所、大和町店、安積町店などでの実験を集大成
スーパーマーケットは出店のノウハウを蓄積し、競争戦略上も有利になるように歴史的に店舗の面積を大型化してきた。一方で、競争激化と商圏内の人口減少によるマーケットの縮小、あるいはより人口密度の高い立地への出店を模索する中、大型化した店では大きすぎるケースも出てくる。
ヨークベニマルも、旗艦店クラスの700~800坪の店を出店する一方、現在では600坪程度のフォーマットが主力といえる状況で、昨今ではマーケットの小さな商圏を中心に出店する店を次第に小型化し、450坪程度の店を手掛けるようになっている。
これまでの流れの「逆」である小型化は、売れ筋への絞り込みなどをすることで一見容易にできるように思われがちだが、実はこれは意外に難しい取り組みだといえる。売上げから経費、そして利益に至る流れ、オペレーションが品揃え、レイアウトも含めてその面積を前提に成り立っているためで、面積が変わることでそのバランスが崩れてしまうためだ。
ヨークベニマルが都市部をターゲットに、450坪程度の規模からさらに一段の小型化を進めた300坪型の開発に取り掛かったのが2018年11月。仙台市若林区に996㎡(301坪)の規模でヨークマルシェ大和町店をオープンした。フォーマット名を「ヨークマルシェ」と変えたのは、販促なども含めた形で、独自展開で実験するためだ。
当時、店舗運営のローコスト化を図る目的で入口を1カ所にする実験を複数店で重ねていたが、300坪型の大和町店でも同様に、基本の出入口は1カ所とされた。一方で、売場のレイアウトは、出入口から主通路沿いに青果、精肉、鮮魚、惣菜と続く、いわば標準的な構成を採用。結果として同店は、標準的な店を相似に縮小したような店となった。
その後、出入口1カ所の実験と併せ、大和町店でも検証が重ねられた他、福島県郡山市の安積町店の代替店でも同様の小型店の実験を行いながら、小型化の模索を続けてきた同社の最新の成果が今回取り上げる今泉店となった。
青果と惣菜・ベーカリーを第1主通路にまとめる
まず、大きな特徴は売場レイアウトで、今泉店では大和町店とは異なり、青果とインストアベーカリーを含む惣菜を第1主通路にまとめ、その後、鮮魚、精肉と続くレイアウトを採用。さらに洋日配の飲料をへて最後は冷凍食品、ホールセールのパンという流れだ。
同社でも大型店の一部では青果と惣菜をまとめたレイアウトが採用されていた時期があったが、現在では青果と惣菜を両端に振り分けたパターンに落ち着いていたことからすると、これは大きな転換といえる。
これまでの出入口1カ所の実験店や、300坪型の大和町店でさえも、入口すぐの場所に青果を配置する一方、惣菜は壁面沿いに生鮮食品の売場を回った最後、第3主通路に配置されていた。
結果として、これまでの実験店では第3主通路に配置された惣菜への寄り付きが少なくなってしまう傾向にあったとみられる。その問題を、第1主通路に惣菜を持ってくることで解決しようとしたというわけだ。
動線調査などを総合的に踏まえた結果、500坪以下であれば、このパターンの方が買上点数も高くなると判断、今回も採用した。途中段階では青果と惣菜が両端に振り分けられたパターンなど複数案が検討されたものの、最終的にこれに落ち着いた。
1カ所の出入口から入った第1主通路は広く確保され、惣菜と青果の平ケース、平台が並ぶ。空間の広がりが感じられ、小型店であることを感じさせない。
惣菜に続く島型ケースでは青果のサラダ商材、カットフルーツを展開。もともと既存店でも即食のサラダ商材は惣菜と連動した展開となっていたが、今回は青果売場自体がすぐ隣にあるため、管理面ではより好都合になったと思われる。
一方のカットフルーツは店内加工で、既存店では青果売場で展開していたため、サラダや惣菜とは離れていた。今回、惣菜と連動した形でサラダ商材とまとめて展開されることで買い合わせの面でメリットがあるとみられる。
また、売場奥の第2主通路は広く取った上で、和日配、加工肉の島型のセミ多段ケースと鮮魚、精肉の平ケースを2列で入れる「トリプルコンコース」を採用。それによって売場奥も非常に解放感のある売場づくりとなっている。
ゴンドラ側では魚加工品の和日配と肉加工品の加工肉が自然に並ぶことになり、買いやすい。
出入口反対側の売場を「コンビニゾーン」でくくる
第1主通路に青果と惣菜をまとめると、主通路上の客動線を最後まで核売場として引っ張る惣菜を第3主通路に配置することができなくなるため、第1主通路はにぎわう一方で、店内の回遊率が下がるという問題が以前から指摘されてきた。
その点については、奥の第2主通路の途中から第3主通路にかけての壁面と内側のゴンドラにスイーツ、チーズなどの洋日配、酒を含む飲料、冷凍食品、ホールセールのパンをまとめ「コンビニゾーン」と位置づけて集客を図ろうとの意図で売場づくりをした。コンビニで需要の高い商品構成をこの一帯の売場づくりに落とし込んでいる。
今泉店の売場は四角形ではなく、正面から向かって右側の奥がへこんでいる。これは建物の形状から来るもので、意図したものではないが、コンビニゾーン構築においてはこの形状をうまく活用している。広大な冷凍食品が広がるイメージではなく、コンビニ的な商材がコンパクトにまとまっているイメージになっている。
精肉売場に続いて牛乳などの洋日配の飲料売場となるが、ここからが「コンビニゾーン」になる。売場が狭いため、初めて190㎝のケースを導入し、棚段を1段増やし、陳列量を確保。さらにこちらも初めて洋日配の飲料からグロサリーの500㎖のペットボトルの飲料を連続して展開することで、一直線で「飲料」をくくる売場づくりとした。飲料でも1ℓ以上の商品は常温ゴンドラで販売するなど売場を明確に分けた。
通路突き当たりの第2磁石にはヨーグルトを配置し、お客を引っ張る。オープン後、お客の回遊も良いという。
客動線調査を踏まえ、売場の配置に工夫
これまでの課題点についても、客動線を調査しながら解決を図っている。例えば、第1主通路のゴンドラ側の青果の多段冷蔵ケースは、あえて陳列線を短くし、かつ本来であれば、このゴンドラ側の多段ケースで和日配を展開することが多いところ、ヨークベニマルで初めて、ゴンドラ側多段ケースで和日配を展開しないこととした。
その一方で和日配は島型のセミ多段ケースでの展開に特化。さらに今回、青果側の通路に少し突き出す形で島型の和日配のケースを配置し、強いカテゴリーである納豆を展開(レイアウトの➡の位置)。
これは、青果と惣菜を第1主通路にまとめた場合、ゴンドラ側の青果売場を通ったお客が壁面側に行かずに内側に入っていってしまうため、壁面側に配置された鮮魚売場にお客を誘導するために考えたレイアウトだ。あえて通路にケースを突き出すことでそちらにお客を誘導し、壁面側の鮮魚売場に行ってもらうことを狙う。
納豆からそのまま左側に進んでもらいナンバーワンカテゴリーである豆腐でさらに引っ張り、壁面の鮮魚売場に行ってもらおうとの意図だ。
今泉店の総SKU数は450坪程度の店の7掛け程度の4900SKUほどと絞り込んでいるが、それでもより多くのアイテムを品揃えするための工夫が随所に見られる。
また、全社的にもゴンドラ下段を可動式にするなどオペレーションのしやすさなどローコストオペレーションの取り組みを進めてきたが、今泉店独自のローコストオペレーションの取り組みも実施。例えば、早朝と夜間に管理部門でアルバイトを採用し、早朝クルー、ナイトクルーとして生鮮の品出しや簡単な作業を集中して担ってもらうようにしている。
さまざまな実験を重ねながら、それを集大成した上で小型店のモデルとしてオープンした今泉店。比較的都市部の小商圏を深耕するフォーマットとして年商10億円、さらにそれ以上の水準を目指すとしている。小型店に合わせた形であらゆる要素を見直したヨークベニマルの取り組みは、それだけ小型化が難しいことを表しているようだ。
ヨークベニマル今泉店概要
所在地/栃木県宇都宮市今泉町158-1
オープン日/2021年2月10日
営業時間/9時30分~21時30分
敷地面積(ヨークベニマル)/5928㎡(1793坪)
延べ床面積(ヨークベニマル)/1970㎡(595坪)
売場面積(ヨークベニマル)/1287㎡(389坪)
構造/鉄骨造平屋建て
駐車台数/50台
駐輪台数/36台
店長/近藤圭一
従業員数/100人(正社員7人、地元採用者93人)
年商見込み/10億円